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第27回フラメンコ・ルネサンス21「新人公演」

2018.10.09

選考委員(名前から各講評へリンク)

濱田滋郎(評論家・会長)[G,C]

「フラメンコ・ルネサンス21/新人公演」今年度第27回を無事につつがなく終えることができました。催しの統括責任者としましては、このことに関し、たずさわられた皆様-出演者、舞台関係をはじめすべての裏方さんがた、そして来会者の皆様-のご協力に深い感謝を捧げねばなりません。思えばこれまで、大きな問題は何ひとつなく、ANIFにとって大切な「新人公演」を続けて来られたのも、皆様がこの催しを「自分たちのもの」と認識し、愛情と責任感をもって臨んでくださっているからだと思います。心より嬉しく、有難く存じます。

今回もこの公演は、全体として、日本のフラメンコが達するに至った高い水準を保つものであったと思います。バイレに関しては私個人は選考委員はつとめておりませんが、3日間ともつぶさに観させて頂きました。ソロ部門で奨励賞を受けられた6人の方がたを初め、精一杯に己を示されたすべての出演者がたに敬意を表します。ただ敢えてひとつ申し上げたいのは、すべてによく行き届いた踊りが多かった反面、本来フラメンコには最も必要なはずの、個性的な魅力をきわ立てた踊りは、今年も少なかったと感じることです。舞踊の技術的な細かい点は私には解らないわけですが、奨励賞に選ばれなかった方がたの中にも、個性的な魅力、味わいといった点で強い印象を残した人たちはいらっしゃいました。敢えて挙げさせて頂けば、25日13番の諸藤ふみさん。この人には、たとえばヘレスあたりの横町に住む、プロにはならないけれど近所では踊りの名人として親しまれている小母さん(失礼!)のような味がありました。また、大ベテランの25日15番、草野干夫さん。この方のなにか昔懐かしい趣のファルーカは、ずいぶん以前にも拝見したような気がしますが、三木さんのヴァイオリンと共に踊られた今回のそれも、印象に残るものでした。

ギターは今回5人のみと、これまでで最も少ない出演者数だったのは、少々残念です。ただ、演奏は皆さん、聴き応えのあるものでした。カンテの出演者は逆に17名と多く、フラメンコにおける歌の重要性を思えば、嬉しいことです。このジャンルも水準はずいぶん高まりましたが、バイレのところでも触れたように、にじみ出る個性的な味ということでは、どうでしょうか。中で斎藤克己さんあたりは、さすがに“フラメンコ人”としての年季の味でしたが。準奨励賞を得られたお2人はそれぞれに立派でしたが、とりわけ、九州の地で研鑽を積んでおいでの占部智恵さんのファンダンゴスには心打たれました。奨励賞まではほんの一歩で、この人ならきっと越えられる、と私は思っています。

長くなるのでこれ以上は控えますが、改めて、フラメンコを愛し日常の糧にしていらっしゃる日本のあちこちの皆様に、心よりの親愛の情をお伝えしたいと願います。皆様の上に喜びと幸せとが在りますように!

山田恵子(舞踊家)[Bg]

「群舞のすばらしさ」

今年は参加作品が5団体と少なかったのですが、それぞれユニークでした。ソロとは違って何人かで1つのテーマを踊るすばらしさ。構成・振付をする作者はオーケストラで言えば指揮者であり、表現者であるダンサーは楽器です。思う存分各パートの良さを発揮して欲しいものです。

それぞれの作品について。
①斎藤克己フラメンコ アカデミー札幌(グラナダ狂詩曲)
5人の板付から始まって3人、2人、ソロ等と変化していくのですが、時間が限られているので、出入りを抑えてその分ダンサー同士の対比を考えてみると重みが出てくると思いますが、如何ですか。あと、ダンサー全員の心の調和が弱いので、喜怒哀楽をはっきり踊れば最後のポーズの静かさが生きたと思います。

②Estudio El Patio(シギリージャ)
シギリージャはソロでも難しい曲ですが、群舞としてよくまとめましたね。6人が椅子に座ったところから始まった構成が生きています。構成・振付が大変良く、ダンサー達も作者の意図を理解しのびのび踊っているのでその気持ちが伝わりました。私も昔椅子を使用して創作し賞を頂きました。シギリージャのオリジナル曲で。

③島崎リノフラメンコスタジオDaiDai(ロマンセ)
白の衣装で上、下よりパルマでの登場は良かったのですが、構成をもう少し考えてください。空間の美しさが欲しかったです。群舞は全員揃うところから始まりますので、細かいところに注意してください。ブラソがきちんとしていない人が目立ち、中途半端な手の動きにはびっくりが何か所かありました。ブラソに気を使ってください。表現が豊かになります。

④“Hermicanas”~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松(タンギージョ デ カディス)
2人がほとんど同じ振りでした。個性の違いが出たらもっと面白くなったのではと思います。それとブラソをもっときれいにマスターしてください。女性のダンサーはブラソが命だと私は思います。指の先までしっとりと踊る事と、あと2人の踊りの会話が観たかったです。

⑤Las Niñas de Belen(ソレア)
黒の衣裳で上、下に2人ずつポーズ、パルマのリズムで始まりました。ギターが入ってきてテーマへと流れていくのですが、4人のダンサーのハーモニーが欲しかったです。あと一歩考えてみてください。

私の群舞の考え方は①構成・振付②テーマのすぐれた展開③感性あふれる表現力④テーマに合った群舞のハーモニーです。①~④までの中で1つでも理解して頂けたら、良い作品になると思います。来年また良い作品にお目にかかれる事を期待しております。

三澤勝弘(ギタリスト)[G]

参加者5名ということでありましたが、とても今後が楽しみな演奏者たちでした。全体に気付いたことは、音が潰れてしまう場面が多く見られたこと。その原因理由は様々かと思いますが、例えば左右のタイミングのズレ。右手の動きに任せた弾き方ではなく、流れ(歩み)を感じつつ繋ぎ・連絡・渡ってゆくこと。簡単なようでとても難しいことです。その移りゆくさまに“意味(情の世界)”を与えてゆく。ただの丁寧さとは違います。質・密度の変化(音量・空間・音程・音色その他あらゆる移ろい)を感じながら進む。これも難しいことですが、それが無ければ、やはり伝わらない。

・磯谷氏:音の潰れが目立ち、とても残念に思いました。コマ数の多いスローモーションのような練習、そしてその中へ必要な要素を織り込んでゆく。そんなことも大切か。
・大場氏:表現の振れ幅が小さいと感じました。ブレリアといえども懐の深いところも必要かと思います。空間の連結性が少し弱く、表情が前に飛んでこない場面が多かったと思いました。また、低音の動きが少し見えづらく聞こえづらかったのは、装飾的な高音とのバランスに問題があったのか。
・鈴木氏:演奏の物理性に明瞭さを欠いてしまいました、結果的に。表そうとしてはおりましたが、上手く処理ができないようでした。個人的に氏の指の健康状態を知っているがゆえに心苦しさは感じるのですが、演奏に対しての印象としては、やはり、音が前に出てこない感がありました。もっと音数を減らし、“情”のスペースを作っては、と思いました。次の機会には内面に焦点を絞っては…と思いました。ところで気持ちが浮いた状態でのエンディングは……?
・福嶋氏:フラメンコらしい魅力は十分に出ていました。とくに中盤からは更に良かったと思いました。ソロ芸術には不可欠である、ある種の“孤立性”も感じられました。今後は、ソレア、シギリージャやティエントなどでの境地を聴いてみたいと思います。
・内山氏:とても優しく佳い演奏でした。音の潰れもなく、奇麗に聴くことができました。また、好く歌わせておりましたが、私にはその表情が少し多様性に欠け、1つのパターンの繰り返しのように思えました。音の響く領域をもっと広くイメージし、ホール全体に飛ばすという心で演奏に当たるのもよいかと。

出場された方々には、それぞれの可能性がありました。ひとつ、音の飛んでゆく方向とその道筋を考えてみてはどうでしょうか。

小林伴子(舞踊家)[Bs,Bg]

今年も熱い見応え聞き応え充分な3日間!体力、集中力、きつく感じながらも皆さんの熱唱熱演に触れるのは私にとって毎回楽しみな事です。今回は群舞とバイレ・ソロの選考に参加しました。
記憶力の限界を感じつつ3日間のメモを頼りにこの講評をかきます。選考、投票した立場から書くので上から目線を感じたら、ゴメンナサイ!個人的見解です。

<バイレ・群舞部門>
今年の群舞は参加チームも多く、作品はそれぞれ個性的で楽しんで拝見しました。以下各チームの感想です。◎は実際の奨励賞にかかわらず私が奨励賞に投票した、チーム、個人、です。

21.斎藤克己フラメンコアカデミー札幌「グラナダ狂詩曲~Rhapsody~」
チンチーネスの響きと手首がキラキラ光る演出の幻想的始まりとエンディングが素敵でした。
22.◎Estudio El Patio「シギリージャ」
椅子を効果的に使い、踊り手達の揃った動きの確実さがシギリージャの空気感を的確に表現して見ごたえありました。
23.島崎リノフラメンコスタジオDai Dai「ロマンセ」
ノリノリで皆が楽しんで踊っているのが伝わって、好感度大。
24.Hermicanas~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松「タンギージョデカディス」
観ている私達が思わず微笑んでしまう!生き生きと楽しい作品でした。
25.Las Niñas de Belen「ソレア」
ゆっくりな音楽のリズムや動きを、皆で揃って踊る、というとても難しい事に挑戦しました!

<バイレ・ソロ部門>
以下私のメモから気になった方へ一言、「個人的見解」です。初日は記憶が希薄になりやすいので、24日は全員を、2日目、3日目はピックアップして書きました。

【24日】
1.宮崎美香「シギリージャ」トップバッターで緊張したと思いますが、表現したい事への意欲と気持ちを込めて踊っているのが伝わりました。
2.◎平川亜紀「バンベーラ」粘りのあるどっしりとした動きでした!後半少し疲れたか?
3.大里尚子「アレグリアス」手助けと言う言葉が有ります。フラメンコのブラッソの動きも単なる振り付けではなく、身体の動きを助けてより表現しやすくしてくれる物としてとらえてみて下さい。
4.橋田佳奈「カーニャ」身体能力が高く良く動ける方だと思います。フラメンコへの挑戦、続けて下さい!
5.畑中美里「ソレア」決め所がかっこよかったです。その反面全体の流れが途切れ途切れになったのが残念!
6.◎林由美子「ソレア」抑制の効いた渋い動きで素敵でした。私は1票を投じましたが、メモに平川さん同様後半疲れたか?とあり、後一歩だったかも。
7.川田久美子「アレグリアス」膝丈ファルダとエプロンでカッコよく堂々と踊りすごく雰囲気がありました。ただアバニコを使って踊った時、良く踊れる分何時もの空気感?になったのが残念。
8.脇川愛「タンゴデマラガ」丁寧にしっかりと踊っていました。準奨励賞の方は後一歩ぬければ…と言う所でした。
9.谷口祐子「アレグリアス」鮮やかなバタデコーラさばきが素晴らしかったが、私には、それが目的になっている様に見えてしまったのですが…。
10.寺嶋いずみ「カンティーニャデピニーニ」素敵な振り付けなので、フラメンコ力もアップしながら身体に馴染むまで沢山稽古して下さい!
11.持田賀津子「グアヒーラ」始まりのポーズ凄く美しかった!マルカールと苦手な所の表情の差が激しかった。正直な方ですね。是非苦手な部分を克服して下さい。
12.波田多真紀「アレグリアス」バイオリンが参加する意欲的な取り組みでした。素晴らしい音楽を感じながら踊れたら幸せですね!
13.蓮真佐江「ソレアポルブレリア」緊張感を保ちながら最後まで丁寧に踊った。そのぶんメリハリが付き辛くなったのは残念。
14.中溝直美「ティエント」どっしりと、自分の好きなスタイルを貫いて堂々踊り素敵でした。
15.◎渡辺なおみ「シギリージャ」気迫充実して最後まで貴女の世界に引き込まれました。
16.大津絵里香「アレグリアス」私のメモには、若さハツラツ爽やかで可愛い!これからが楽しみ、とあります。実際のお年を知りませんので、的外れだったら御免なさい!
17.川端淳子「ソレア」皆さんの熱い声援を受けて、堂々と踊りました。フレーズの頭が強くなり終わりが弱くなるのが残念。
18.流石泰美「ソレアポルブレリア」カッコ良く始まりましたが姿勢が残念でした。コアなフラメンコを目指すのでなければ、基本姿勢が猫背になるのはもったいないです。
19.鈴木旗江「ソレア」メモでは高いレベルだとあり高得点がついています。後半に疲れが出て姿勢が崩れた、とありました。
20.沖山美環「アレグリアス」不自然な所が全く無くのびのびと、フラメンコ黄金期のスペインの踊り手の雰囲気でした。これからが楽しみです!

【25日】
10.池田理恵「アレグリアス」動きの緩急が心地よく素晴らしかった!昨年に続いてタイムオーバーで投票出来なかったのは残念です。
13.諸藤ふみ「ソレア」好きな踊りのスタイルです。体型を活かして、堂々とどっしりとして素晴らしかった。
14.灘辺佳代子「グアヒーラ」カッコ良い振り付けとステキな照明で印象に残っています。コロンビアーナへの変化がオシャレでした。
24.有田ゆうき「ソレア」ギター無しで歌から始まった演出良かった!ずっと怒っている表情だったのは意図的?
25.◎野上裕美「ソレア」美しい身体条件を活かして、堂々とした演技が印象に残りました。
33.◎齋藤朋之「ソレアポルブレリア」体型や風格から年配の方かと思いました。前回も音楽的感性が素晴らしいと感じ印象に残りましたが。今回はグレードアップしての出演、エンディングの無音の中での佇まいがカッコ良かったです。

【26日】
22.佐藤陽美「ブレリアイシギリージャ」パワフルな演技。細密で強いサパテアードで実力を印象付けました。
28.◎岩丸綾子「ソレア」力強くも抑制の効いた表現が良かった!
31.沖真悠子「シギリージャ」柔らかい肩のブラッソが美しい実力派です!…フラメンコは衣装とパロは関係無いと言う意見も多い様です。実際存在その物が、フラメンコのヒターナの踊り手達は色も形も何でも有りOKです。でも私には貴女の踊りがその路線を目指しているようには見えなかったので、素敵でしたが、衣装の柔らかな雰囲気に凄く違和感を感じてしまいました。
33.◎藤本ゆかり「マルティネーテ」グラマラスな体型を活かしてどっしりと迫力のマルティネーテでした。
34.石田久乃「アレグリアス」始まりの後ろすがたがスペイン人形の様でした。もちろん踊りもとても自然で素晴らしく、アンダルシアの空気を感じました。将来楽しみです。
37. ◎大塚歩「アレグリアス」トリの出演が実力派には、プレッシャーよりパワーになる!不動の安定感で、3日間を心地よくエキサイティングに締めてくれました!

飯ヶ谷守康(ギタリスト)[G,C]

<ギター部門>
奨励賞を受賞された福嶋隆児さん、おめでとうございます。ただ辛口に言いますと、音がブツ切れの時が多かったこと、全体に1本調子に感じられたこと、そして何よりもリズム感・コンパス感に多少なりとも問題が垣間見れてしまいました。今回は出演者も少なく、運が味方した感もありますが、今後の更なる精進を期待したいと思います。

私的には、1番最初に演奏してくれた磯谷徳志さん、しっとりとしたコルドバ風のソレアと、勝手に感じてしまいました。素晴らしい感性をお持ちかも、と思います。また、最後にアレグリアスを演奏してくれた内山友樹さん、ファルセータ群に、これも勝手に粋なセビージャの空気を感じてしまいました。とても洒落た曲作りで、良い意味で日本人離れしていたと思います。ただ、もう少しテンポが欲しかったと思います。

ただ、残念なことは、お2人共に、全体に音が細くて弱かったように感じました。別に力任せの大きな音は必要ないのですが、音の際立ちがあったら、と思います。このあたりのことを多少なりとも意識して今後の練習時に採り入れいただければ、と思います。今後の進化を期待していますので、ぜひ丁寧な練習を積み重ねてください。

<カンテ部門>
今回は出演者が17名と、驚くばかりの人数の参加でした。しかし、残念ながら奨励賞ではなく、準奨励賞の受賞者が2名、という結果になりました。

まず私の耳とフラメンコ心を刺激してくれたのは、小林カルメンさんでした。発音も発声も、パルマの打ち方も音程も…すべて、フラメンコのカンテとして普通に聴けました。素晴らしいと思います。そして、ファンダンゴを唄ってくれた占部智恵さん、かなり本格的なカンテを聴かせてくれました。

ただ、今回も音程が不安定な方、スペイン語の発音に問題がある方、発声がフラメンコ的ではない方、そしてカンテの詩の理解に問題がある方、更に不必要に“がなる”傾向の方が多く見受けられてしまいました。残念でなりません。もちろん、好みで分かれるところでもあると思いますが…!?

勘違いだったらゴメンナサイなのですが、喉に力が入り過ぎの発声をしている方が多かったように感じました。これでは喉が詰まり気味になり、身体全体の共振が不可能になってしまい、説得力の無い、ただ大きいだけの声になってしまう危険がある、と聞いたことがあります。そして、コントロール不能に陥り、リズムと音程に影響を与えてしまう…というような感じを受けてしまいました。ぜひ今後の練習時に気にしていただけたら幸いです。

今田 央(ギタリスト)[G]

磯谷徳志
トラディショナルなソレアで今更ケチのつけようがない程の王道のファルセータばかりでしたね。数多のギタリストが弾いたであろうこの手のソレアは、余程の個性とテクニックがないとなかなか人に振り向いてもらえません。
1コンパス目の③と⑥のアクセントがかなり引っ張っていましたが、あの表現はよかったです。ただその後は割合淡々とした表現になってしまいました。1コンパス目のような意思を随所で出せれば濃密な時間を造れたと思います。
中間部のファルセータでコンパス感が曖昧な箇所がありました。技術的にはP単体の音は良いと思いますが、アルペジオ、ピカードは明瞭ではなかったようです。トレモロはキレイでした。アルサプーアは要研究ですね。せっかく最後に持ってきたのにメロディーが浮かない→リズムが出ない→テンション下がるでそれまで築き上げてきた流れを受け止めるには役不足でした。P単音とアルサプーアの両立は爪の形も含め難しいです。

大場洋平
P指によるファルセータが大部分を占めていましたが、肝心のPのタッチが弱いのかメロディーが浮いてきません。対照的にラスゲアードの部分はちょっとうるさく聞こえました。アクセントだけ急に強くなる癖も気になります。アルペジオも織り交ぜていたのでしょうがこちらも明瞭ではなかったようです。全体にファルセータは突っ込み気味ですね。いわゆる頭ノリですが冒頭のタパーダを聴く限りではコンパス感はお持ちのようです。まず技術面の問題を解決してください。

鈴木敏司
音はよかったのですが全体的に練習不足の感じを受けました。個々のファルセータがちゃんと弾ききれてないですね。単なる緊張からそうなっただけなのかもしれませんが。
このソレアには副題が付いていますが、コピー曲か自作かはわかりません。いずれにしても1曲勝負なら構成がちょっと地味ですね。同じテンションのファルセータが多く、使われているテクニックも限られています。何より、曲の終わりを殆どの方はわからなかったのではないでしょうか?
奏法でひとつ気になったのですが、プルガールを右肘全体を使って弾いているように見受けられました。文章だと説明しづらいのですが、もっと手首のスナップを使って弾くほうが速く、かつ安定した音が出せると思います。

福嶋隆児
今回奨励賞に推しました。パリージャのファルセータでまとめてきましたね。前半で不安定な個所がありましたが曲が進むにつれて心地よい疾走感を感じられました。パリージャのファルセータが持つ強力な個性に頼ることなく自分の技術と解釈でブレリアの世界を構築できていると思いました。アルペジオ、ピカード、プルガール、全てクリアでバランスがよくラスゲアードの個所も音の塊ではなくリズムが聞こえてきました。今去年のソレアを弾いたら全然違って聞こえるのでしょうね。

内山友樹
今回も自作の曲でしょうか。毎回趣向を凝らしたソロを披露されていますが、今回も受賞にはいたらず残念です。個々のテクニックは十分なものをお持ちなのですが、一言で言うと演奏の線が細いに尽きると思います。1つの原因は音ですかね。きれいなのですが輪郭が若干ぼやけています。あのリバーブの中では音が干渉しあってせっかくのファルセータがよく聞き取れなかったりします。毎回感じられるのでお使いのギターの特性かもしれませんが。
とは言えアレグリアスはギターソロでやるのは難しいです。最難関であろうピカードを最後に持って来て弾ききったのですからお見事です。

岡本倫子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【24日】
・林由美子さん:きちんと踊っていて好感が持てました。もっとご自分の個性がでてくると素敵になると思います。
・川田久美子さん:衣裳は冒険でしたね。踊り方とちぐはぐな感じを受けましたし足の捌きを研いてからまた挑戦してみてほしいと思いました。
・脇川愛さん:身体の動きがとてもすばらしかったです。タンゴになってからの表現が挑戦的になってしまいタンゴらしさが感じられなかったのが残念です。
・谷口祐子さん:バタ・デ・コーラとマントンの捌きに磨きがかかったという印象を受けました。ただ、そのせいかバタ・デ・コーラとマントンの巧みな動きにばかり目がいってしまい、谷口さん自身が見えてこないアレグリアスだったように思います。
・寺嶋いずみさん:寺嶋さんのアイレが衣裳とマッチしていてとても可愛らしいアレグリアスでした。振りのメリハリとマノの使い方をもっと身に付けるとよいと思います。
・蓮真佐江さん:スタイルとバランス感覚の良さをいかした振りになっていてとても素敵でした。
・中溝直美さん:安定感がありタンゴ系の振りの雰囲気が伝わってきました。ただ大きなステージではもう少し身体での表現を大きくすることをおすすめします。
・渡辺なおみさん:個性的で重いシギリージャ。黒い衣裳もとてもお似合いでした。ファルダの捌き方のせいか足が見えすぎるのが少し気になりました。
・川端淳子さん:雰囲気、衣裳の着こなしなどにスペインらしいエレガントさがあり素敵でした。
・沖山美環さん:容姿抜群でフラメンコ人形のようでした。踊り姿も美しいのですが、ブラソそして上体の動きをもっと使った振りを期待します。

【25日】
・牛田裕衣さん:昨年同様とてもフラメンコ性の強い存在感を放っていらっしゃいましたがブラソの動きがとても大雑把になってしまった印象を受けたのが残念でした。
・大井昌子さん:とても集中力のある踊りで引き込まれました。
・池田理恵さん:リズム感あふれる身体の動きで魅せてくれたアレグリアスでしたが、昨年同様に時間オーバーがとても悔やまれます。
・伊藤千紘さん:集中力のある切れのいい踊りがとても素敵でした。
・諸藤ふみさん:Muy Flamencaな存在感のある踊りが圧巻でした。
・灘辺佳代子さん:巧みな踊りでしたが後半のブレリア部分にもっとグァヒーラ色が出るとよかったと思います。
・青木千鶴子さん:シンプルながらゴージャス感あふれる衣裳と動きで大人のソレアを魅せていただきました。
・菊原まりさん:ペソのある見応えのあるタラントでしたが、衣裳や飾りに光りものが多すぎて踊りにそぐわない印象を受けました。
・小川千尋さん:丁寧に大切に踊り込んでいるタラントが素敵でした。
・有田ゆうきさん:最初の立ち姿に存在感がありMuy Flamencaな踊りにも貫禄が出てきたように思います。
・野上裕美さん:体幹がしっかりしているので動きの多い振りにもぶれることなく、素晴らしいソレアでした。かなり硬質で力強い印象を受けましたが、エレガントさも併せ持った踊りで感動しました。ファルダ捌きのせいかエスコビージャの際にかなり足が見えすぎていたのは唯一気になったところです。
・本多清見さん:ペソのある落ち着いたソレアで見応えがありました。
・宗形公恵さん:グラシアたっぷりの楽しいアレグリアスでした。
・岡田知子さん:安定感と集中力のあるとてもいい踊りを見せていただきました。
・齋藤朋之さん:つい見入ってしまう味のあるフラメンコでした。
・石田祐子さん:とてもキレのある踊りっぷりが素敵でしたが男性振りっぽい振付でのファルダ捌きには違和感を覚えました。

【26日】
・古迫うららさん:ペソのあるタラント。特にタンゴに入ってからは魅せてくれました。
・鶴幸子さん:スタイリッシュな振付がシンプルな衣裳と相まって、個性的で美しいティエントスになっていました。
・佐藤陽美さん:ステキ!かっこいい!という言葉がぴったり。もう少し安定感が出ると最強だと思います。
・阿部和子さん:貫禄がありグラシアにあふれた素敵で楽しいアレグリアスでした。
・稲垣栄子さん:ソレアらしいソレアで安定感ある踊りでした。
・岩丸綾子さん:振り、衣裳ともにシンプルでしたが、踊りの緩急が絶妙でとても重さを感じさせてくれるソレアでした。
・沖真悠子さん:無駄な動きが一切ない密度の濃いシギリージャで最初から最後まで見入ってしまいました。
・水町祐子さん:やはり動きに無駄がない切れのあるシギリージャで巧さに感動しましたが、衣裳、長いフレコ、大きすぎる花などの赤い色の分量が多すぎて、見た目に注意散漫になってしまったのが残念でした。
・藤本ゆかりさん:安定した動きと見事なステージ使いで存在感抜群でした。
・石田久乃さん:とても素敵なアレグリアスでした。そのまま成長してください。
・橋本佳津枝さん:動きの多い振りをシャープに巧みにこなしていらっしゃいましたが、衣裳がエレガントで女性的なので振りにそぐわない印象を受けました。
・大塚歩さん:これぞアレグリアスという踊りっぷりでした。身体の動きひとつひとつからもリズムが感じられ魅了されました。

<バイレ・群舞部門>
・斎藤克己フラメンコアカデミー札幌
皆さんの立ち姿と動きの美しさが際立っていました。
・Estudio El Patio
1人1人がしっかり踊っていて且つ群舞としての構成もよく考えられていて見応えあるものになっていました。
・島崎リノフラメンコスタジオDaiDai
7人のMuy Flamencasたちの踊りが素敵でしたが、群舞でなく1人1人で踊られるのを見たい気がしました。
・“Hermicanas”~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松
とても楽しんで踊っている姿にこちらもわくわくさせていただきました。
・Las Niñas de Belen
振りを丁寧に踊っていて好印象でしたが、それぞれの個性がもっと発揮できればよかったと思います。

片桐勝彦(ギタリスト)[G]

磯谷徳志:まさにソレアらしいソレアを聴かせてもらいました。時折強すぎると感じるタッチもあったのですが、全体的にしっかりとフラメンコの音が聞こえていました。アルペジオとピカードのコンビネーションも良かったと思いますが、細かい音使いの箇所までさらに丁寧に弾ききることを心がけてください。ソレアのコンパスのきざみ方は特に気持ちが良く、ラスゲアードやトレモロのima指の音も粒が揃っていました。テンポの上げ方も絶妙でしたが、音数が少ない部分をさらに丁寧に弾くことと、全体的にもう少し間を多く、呼吸を深くとってください。冒頭にも書いた通り典型的なソレアで良かったので、いつか全く違う切り口でオリジナルのソレアも聴いてみたいです。

大場洋平:アリーバでのブレリアを軽やかに弾ききったというのが全体の印象です。タッチも強すぎず弱すぎず、そして何箇所かのプルガール奏法では音の強弱もしっかり表現できていて良かったです。タパオから始まる曲の構成だったので、リズムも速すぎず遅すぎずでちょうど良い速さのブレリアだったのですが、高音弦でのファルセータ時にリズムの乱れが少し気になりました。しかし細かい音使いの部分でしたので、パルマが入るかソレアなどでしたら表現しやすいですね。新旧織り交ぜたブレリアのファルセータでしたが、1曲にまとまっていて良い曲構成だったと思います。親指のアポヤンドと人差し指の返しのバランスなども良かったのですが、全体的にラスゲアードの音量に比べてはメロディーが小さい印象を持ちました。後半のアルサプア、ゴルペなど技術的な面も安定していましたので、今後も楽しみにしています。

鈴木敏司:オーソドックスですが骨太で重いソレアで良かったです。強いて言えば、カポタストを使わずにアルアイレだったので、さらにフレットの高音部を使ったファルセータがあっても良かったかと思いました。アルアイレでのアリーバはEのコードが頻繁に出てくるので、ボイッシングを変えることや弾く弦を減らすなどしてモゴモゴする和音の解消法を研究してみてください。もしくは単純にカポタストを使用するのも良いと思います。曲の構成も良かったのですが、最後の終わり方をさらに工夫すると終わった感じがもっと出せたと思います。

福嶋隆児:奨励賞受賞おめでとうございます。全体的に落ち着いていて安定感のある好演奏で、自分も1票入れさせてもらいました。昨年は迫力が勝っていて、ラスゲアードの音色やゴルペの音量などが少し気になったのですが、今回は何箇所かコンパスの揺れなどがあったものの、リズム、音色、音量、技術ともに安定していて、ソロギターの風格を感じられる演奏だったと思います。足でコンパスをきざみながらの演奏は効果的な部分とそうでない部分があります。パルマなしでブレリアのコンパスを出すのは非常に難しいことですが、永遠のテーマとして追求してみてください。

内山友樹:Aメジャーのアレグリアス。出演者全員の中で一番技巧的で難しいフレーズをよく弾きこなしていました。曲の作り方も良かったので奨励賞候補として私自身最後まで迷ったほどの好演奏でしたが、全体的に音が細いのが一番気になりました。細かいフレーズが多かったので致し方ない部分もあるのですが、やはり音色は大事だと思います。途中のピカードも最後のピカードも最後まで弾ききって音が出ていたのは圧巻でした。素晴らしかったです。去年のブレリアも今年のアレグリアスも作曲・編曲ともにバッチリで、演奏技術も素晴らしかったので、音色などの細かい事だけを注意しながらこのままのやり方で突き進んでいってください。

加部 洋(プロデューサー)[G,C]

<ギター部門>
例年一定の人数とレベルを保ってきたギター部門であったが、今年は出場が5人という少なさで、寂しかった。

磯谷徳志君●ニーニョ・リカルドのスタイルを含め、伝統にしっかり乗っかったソレアで、非常に好感を持った。ラスゲアードやゴルペも良く、ノリも良かった。ただ、ピカードが回り切らないところや、細かい難しいフレーズにミスが目立ったのが惜しかった。大場洋平君●2拍で足を踏みながらのブレリア。その点には好感が持てたが、肝心の演奏では全体的にフレージングが曖昧で、リズムのノリが前に出て来なかった。モロンスタイルのフレーズは面白かった。鈴木敏司君●伝統的なソレアで、深い音が出ていた。しかし、フレーズの抜けが時々あり、気になった。ご自身が出したい音まで届かず、練習不足を感じた。福嶋隆児君●むしろレアかもしれないクラシカルなブレリア。前半は緊張のためかノリがいまいちだったが、後半はぐっと良くなり、奨励賞にふさわしい演奏になった。内山友樹君●イントロから何かを感じさせる味の良さがあった。ラスゲアードのリズムも良く、モダンなフレージングも板に付いていた。強弱・緩急も上手く、アレグリアスの魅力に溢れていた。ただ一点、タッチが弱かった。

<カンテ部門>
カンテ部門でかつてない17人という最大の出場者だった。レベルもそこそこ保っていた。ただ、飛び向けて上手い歌い手がいなかったのが残念だった。気にとまった出演者を書きます。

山田裕子さん●一瞬ニーニャ・デ・ロス・ペイネスを彷彿させるところがあった。そこが光っていた。近藤リナさん●サリーダ良し。歌い方に強弱緩急、タメもあり、シギリージャらしかった。熱唱で好感が持てた。斎藤克己さん●味のあるアレグリア。いろいろな人生経験が盛り込まれたアレグリアなのだろう。じいさんが歌っているような老成した味わいがいい。山本淳子さん●声質が魅力的だ。低い声の歌い方も上手い。力の出し入れもいい。3歌で盛り上がったが、もうひとつ決めて欲しかった。小松美保さん●節回しを忠実に取っていて好感が持てた。日本人にありがちなマラゲーニャの間延びもなく、良かった。アバンドラオになってからもうひとつ盛り上げて欲しかった。西奈津子さん●サリーダが面白い。強弱緩急もある。面白い声質を持っていて、得している。節回しの処理に良くない部分があるので、訓練で改善して欲しい。土井康子さん●ファンダンゴの起承転結の輪郭が余り見えなかった。3歌になって味が出て来た。熊谷善博さん●無伴奏の部分が良かった。熊さんの進境が著しい。いつもより高音域で歌っていたためか、迫力と緊張感があった。

鈴木敬子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
橋田佳奈さん マントンの使い方が丁寧で良かった。表情や踊りが少し硬いのでもう少し技術以外のことにも気を配ったら良くなると思う。/林由美子さん 安定した踊りでとても良かった。/脇川愛さん 強く正確なサパテアードで気持ち良かった。シャープな踊りに加え曲の構成も面白かった。また別の曲を踊っているところも観てみたい。/谷口祐子さん 身体の使い方が美しくバタ・デ・コーラのテクニックも良い。フラメンコを楽しんで踊っているのを感じた。/蓮真佐江さん 安定した技術で好感の持てる踊りだった。/中溝直美さん フラメンコ的なペソと柔らかさを持った踊り。/渡辺なおみさん 貫禄があり踊り慣れている。最後までパワーがあり観ている人を引き付けた。/鈴木旗江さん 安定感のある踊り。後半で身体がブレたりして疲れがみえた。/沖山美環さん 空間を上手く使っていた。アレグリアスを楽しんでいるのが伝わった。最後に爆発がもう1つあればもっと印象に残ると思うが、さわやかな良い感覚が残った。/牛田裕衣さん 踊り慣れている。もう少し踊りに柔らかさや抜け感が加わり表情が付けばさらに良くなると思う。アルティスタのパワーが強すぎて踊りが少し前に出れなかったように感じた。/大井昌子さん 安定感のあるダイナミックな踊り。気が前に出ていた。/池田理恵さん 踊り慣れていて安定感がある。踊りがとても上手いがアレグリアスを踊っているのでもう少し楽しんで欲しい。/伊藤千紘さん 踊りの体のライン、ブラッソ、マノが美しい。上品でとても好感が持てるバイレ。しっかり彼女らしさを出していた。/諸藤ふみさん 個性を生かしペソがありとても迫力があった。後半特に盛り上がり会場を熱くした。また是非彼女のソロを観てみたい。/灘辺佳代子さん チャーミングなグァヒーラ。楽しさが伝わった。/草野干夫さん 多少ブレ等あるが、新人公演に挑戦したことが素晴らしい。とても魅力があり人生を感じた。/青木千鶴子さん 以前よりテクニカが上がっている。安定感が出てきて今回とても良かった。/菊原まりさん ペソと安定感のある踊り。後半のタンゴからさらに良くなった。/有田ゆうきさん 全体的にパワーがあった。特に後半エネルギーがアップして会場の拍手も多かった。/野上裕美さん すみずみまで丁寧な踊り。最初から最後まで集中力が途切れず、観ている人を引き付けた。パワーが前に出ていた。/平田かつらさん 大きい踊り。サパテアードに重みがあり心地良かった。ブエルタ等でブレる時があり少し気になった。/宗形公恵さん 明るくパワーのある踊り。グラシアがあり表現力もとても良かった。清々しい気持ちにさせてくれた。/齋藤朋之さん 以前より踊りのキレが増した。努力が感じられる。姿勢とブレが気になるが、独特の個性が良い。心に響くものがあった。/古迫うららさん 踊り慣れていて安定感がある。曲の後半でパワーが上がり更に良くなった。/佐藤陽美さん 若くエネルギッシュな踊り。サパテアードの技術がある。/阿部和子さん 貫禄があり静かな個性が人生を語っているようだった。踊りの技術ではないところでとても伝わり感動した。/池野美結さん 女性らしいしなやかな動きが上手い。全体に動きすぎ感があるので、要らないものをそぎ落とし重量感を増せば更に良くなると思う。/岩丸綾子さん 無駄な動きが少なく軸がしっかりしている。サパテアードも良い。ブレリアで盛り上がりが欲しかった。/沖真悠子さん スタイルが良く恵まれている。キレが良く踊りも大きく見えた。/藤本ゆかりさん 最後まで緊張感があり観ている人を引き付けた。一つひとつのパソをじっくり考えて練習してきた成果が見えた。今回の出演者の中でも、とても印象に残った人のひとり。/石田久乃さん まだ15歳ということを聞いて驚いた。パルマやサパテアードの技術もあり、明るい雰囲気も好感が持てた。これからとても楽しみです。/大塚歩さん 安定感があり貫禄が出ていた。たくさんのパソを詰め込み過ぎな気もしたが、今回の多くの曲の最後に相応しいとても良い踊りだった。

<バイレ・群舞部門>
Estudio El Patio 同時にそれぞれが違う動きをしながらも統一感のあるバイレ構成。飽きないフォーメーション展開が良かった。とにかく踊り手たちがたくさん努力したことが伝わった。/島崎リノフラメンコスタジオ DaiDai 一人ひとりフラメンカ。エネルギッシュでとても良かった。/Hermicanas~姉妹~ 踊っている時の表情がとても良く、明るく楽しく爽やかな気分にさせてくれた。若い2人のパワーで会場の空気を変えた。今後すごく楽しみです。

鈴木英夫(ギタリスト)[G]

今回はギター部門への出場者が少なく寂しかったですが、出場された皆さんそれぞれ一生懸命頑張って聞かせてくれました。それぞれの方々に私が感じた事を書かせていただきます。

●磯谷さん
演奏が力強いのは良かったのですが、力みすぎたのか演奏が荒くなってしまいました。もう少しソレアらしい抑揚が欲しかったです。

●大場さん
ブレリアはとてもリズムが大事なヌメロですが、今一リズムが甘く歯切れ良さが欠けていた気がしましました。またいろいろとやってはいるのですが、肝心なメロディーが聞こえてきません。

●鈴木さん
オーソドックスな感じのソレアで良かったのですが、ファルセータにメリハリがなく折角のバリエーションがあまりはっきりと聞こえませんでした。

●福嶋さん
奨励賞おめでとうございます。コンパスもメロディーもとてもしっかりとしていて聞き応えのあるブレリアでした。益々の精進を期待します。

●内山さん
中々面白いアレグリアスで、テクニックはあるようですが、目一杯に感じて少し雑になってしまったようです。その技術をもう少し押さえて完璧に演奏すればずっと良くなると思います。

鈴木眞澄(舞踊家)[Bs]

45年取り組んでもまだ届かないフラメンコですが、私の大事にしている視点から 感想とアドバイスを書かせていただきます。それが少しでも皆さんのお役に立てばうれしいです。

【24日】
宮崎さん…お腹に力を入れると動きにもっと重みやスピードが出ると思います。
平川さん…よく踊り込んでいますが芯が時々揺らぐのが残念でした。
大里さん…似たパターンの動きが多いので違う味わいの部分も入れては?
橋田さん…カーニャ独特の雰囲気をもっと考えてみては?
畑中さん…空間の操り方が素晴らしいので、時々揺らぐ体の芯が気になりました。
林さん…引き込まれて拝見していたので後半の疲れが残念でした。
川田さん…素直な表現が素敵でした。大地をつかまえて腰の安定感を考えてみたら良いと思います。
脇川さん…内に込めることが多く、時には解放することがあってもいいのでは?
谷口さん…流れる優雅な振りが多かったので、時には力強さも欲しいです。
寺嶋さん…個性的でチャーミングなところが曲とマッチしていました。
持田さん…個性が光っていました。上半身をもっと使うと表現がより豊かになります。
波田さん…おおらかな表現が楽しかったです。
蓮さん…腕だけでなく身体全体を使って踊ってみてください。
中溝さん…個性的なフラメンコらしさがありました。首の芯が揺らぐのを気をつけてみてください。
渡辺さん…熱いものが感じられて素晴らしかったです。
大津さん…純真な心はそのままに技術を磨いてください。楽しみにしています。
川端さん…シンプルなことに積み重ねが見え、熱さもあって素晴らしかったです。
流石さん…お腹の芯を要に動くことを考えてみてください。
鈴木さん…小さな振りにとらわれず、空間を動かすことを忘れないでください。
沖山さん…重心を落とすと安定感が出ると思います。

【25日】
牛田さん…全体に振りをもう少しシンプルにしたらより自分が表現できるのでは?
櫻井さん…真摯に向き合ったソレアは素晴らしかったです。これからも頑張ってください。
市村さん…構成にもっとメリハリをつけたら良いかと思います。
大井さん…唄とギターをもっと心に取り込むようにしては?
池田さん…よく踊っているのに後ろとの一体感が見えないのは何故でしょう?
岡村さん…振りに流れを持たせるために上半身を使っては?
伊藤さん…踊りは上手なのに訴えてくるものがなくて残念でした。
諸藤さん…素晴らしい体格をよく使ってフラメンコらしく踊っているのにご自身の心が見えなかったのが残念でした。
灘辺さん…曲の構成がよく唄やギターとの一体感もあって素敵なグアヒーラでした。
草野さん…立ち姿に雰囲気があり、バイオリンもお似合いで感動しました!
青木さん…カンテを聴くということは、自分の感情の同じような部分を重ねるという事でしょうか?心で聴くということを考えてみてください。
山形さん…振りにもう少し流れがあったらよいと思います。
坂本さん…体の芯にもっと力を入れて、殻を破ってみてください。
菊原さん…タンゴの面白みはもっと出せる実力があると感じました。
小川さん…大地をつかまえるようなつもりで足をついてみてください。そして上半身は空間を動かすように。
森永さん…回転や振り向く時の首のキレについて考えてみてください。
佐藤直美さん…自分の表現はなさっていますが、それは唄やギターの方々と一緒でしたか?
下山さん…唄と共に踊りを考えてみてください。動きすぎのように感じました。
有田さん…唄やギターとの一体感もあり、熱いフラメンコでした。
野上さん…よく踊っていらしたのですが、唄との関わりがあまり感じられず残念でした。
伊藤さん…独自の雰囲気をお持ちなので、動きはもう少しシンプルで良いかと思います。
本多さん…体はよく動かれているので、メリハリをつけたら良いのでは?
平田さん…ご自分をさらけ出す勇気を持ってください。
川口さん…曲想が変わっても気持ちが伴っていないように感じました。
宗形さん…芯があると小気味よい表現もより生かされます。楽しそうでしたが媚びすぎているように感じました。
細川さん…唄から受け取るものがもっと欲しかったです。
岡田さん…表現力があるのでもう一息の熱さが欲しかったです。
齋藤さん…小手先の振りではなく独自の個性だけで勝負して欲しかったです。
石田祐子さん…冷たい感じがするのはどうしてかな?と思いました。
後藤さん…曲想や踊りと衣裳が合ってないように思いました。着たいものか似合うものか、衣裳の選択は難しいですね。どんな風に踊りたいのかが見えず残念でした。

【26日】
桒村さん…今の踊る事の楽しさを忘れずに、体の使い方をより学んでください。
古迫さん…踊りのうまさを生かしながら、ガン!って精一杯の部分が欲しかったです。
鶴さん…きれいに踊る事の殻を破ってみたらいかがでしょうか?
森さん…同じテンションの振りが多いように感じたので、メリハリを持たせたらより魅せられます。
佐藤陽美さん…心があまり見えてこなかったのが残念でした。
藪内さん…腕だけでなく上半身全体を使ったらより表現が豊かになると思います。
小野さん…フラメンコの動きは曲に合わせて踊るのではなく、痛めつけられて耐えてそれを爆発させるような感じがするのですが。
阿部さん…唄とギターとともにご自分の踊りを踊っていらして、ためもあって素晴らしかったです。
池野さん…後半に見えた強さが嬉しかったです。首のぶれに気をつけて。
稲垣さん…感情がこもっているのに後ろとの一体感が感じられないのは何故でしょう?音に合わせて動いているという感じがして残念でした。
岩丸さん…唄い手が痛みを持って唄っている時にただ歩いていたのが残念でなりませんでした。
稲沢さん…マントンを使うことがご自分の表現したかった事かを考えてみてください。
小山さん…唄やギターとマッチした振りでよかったです。芯がぶれるのが残念でした。
沖さん…フラメンコらしい動きだったのに心に響いてこないのは何故でしょう?
水町さん…力の入れ方に強弱をつけたら良いと思います。
藤本さん…全体の構成はよかったのですが一体感が欲しかったです。
石田久乃さん…楽しむ事を忘れずに体の使い方を学んでいってくれたら嬉しいです。
清水さん…真摯に向かう姿勢と熱さがありました。
橋本さん…一体感があって素敵でした。
大塚さん…作り込んであるのにそれを自然に踊り、こちらの心も踊りました。

最後に、3日間拝見して感じたのは、心がこもっていると技術の未熟さはあまり目立たない。唄やギターとの一体感は何がそうさせるのか?曲に合わせてでもなく、数合わせでもなく、これはフラメンコにおいて大きな課題だと思います。これからも一緒に考えていきたいです。

曽我辺靖子(舞踊家)[Bs,Bg]

【24日】
畑中美里さん:バックとの一体感を保ちながら曲を謳歌していました。
林由美子さん:リズム感良くサパテアードもリンピオ。気持ちの入ったソレアでした。
脇川愛さん:メリハリのある動きの中に緩急のあるサパテアード。とても印象に残りました。
谷口祐子さん:バタデコーラとマントンのさばきが見事でした。表現力が加わるとさらに魅力が増すでしょう。
寺嶋いずみさん:個性的な衣装に熱さが感じられました。ラストがとても印象的でした。
蓮真佐江さん:丁寧に踊っています。重心の安定と心の強さを望みます。
中溝直美さん:素敵なティエント。タンゴから益々ノリが加わりました。
渡辺なおみさん:カンテを深く理解した表現力と強さのあるサパテアードとのコントラストに引き込まれました。
川端淳子さん:心の流れの一貫性を感じました。
流石泰美さん:体が良く動く長所を生かしながらセーブする力を意識するとさらに良いでしょう。

斎藤克己フラメンコアカデミー札幌:一筋の中からの動き出し、一人一人の鮮明な動きに魅了されました。
Estudio El Patio:見事な構成力に息もぴったり合い一体感のある作品でした。
島崎リノフラメンコスタジオDai Dai:それぞれの衣装と共に各自の輝きが感じられました。ソロであったらうまく対応できるものでも群舞だと難しいですね。
“Hermicanas”~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松:タンギージョの陽気な曲調が若さ溢れるお2人にピッタリでした。
Las Niñas de Belen:4人の頑張りが熱のこもったソレアに生きていました。

【25日】
櫻井美砂子さん:踊り続けることも才能だと思います。ラストまで途切れることなく踊り切った姿に感激です。
大井昌子さん:無音の始まりからラストまで空気を感じたシギリージャ。足音もリンピオでした。
池田理恵さん:パソのつなぎが滑らかで切り替えが上手。グラシアがあり引きつけられたアレグリアスでしたが、タイム内で表現するのも大切なこと。昨年に続きとても残念です。
伊藤千紘さん:ラストまで途切れることなく続くパワーは見事でした。
諸藤ふみさん:表現力豊かな彼女に、昨年の群舞に引き続き今年もオレ!
青木千鶴子さん:技術面の進歩を感じます。表現力をさらにもう一歩。
山形志穂さん:足が強くブラッソも綺麗です。上半身の使い方に一工夫を。
佐藤直美さん:メリハリ良く華のあるアレグリアスでした。
有田ゆうきさん:昨年より数段上達しましたね。感じる心と安定感。楽しみな人です。
野上裕美さん:体がよく動き表現力も素晴らしい。バックを引っ張っていくパワーに拍手。
伊藤真由美さん:てらわないシンプルなソレアが印象的でした。
平田かつらさん:重く深みのあるシギリージャでした。カンテの表現も良くグラデーションのように流れる足音が心に残りました。芯の弱さが少々気になりました。
宗形公恵さん:茶目っ気たっぷりな雰囲気のアレグリアスでした。
齋藤朋之さん:好感度良く特にラストはおしゃれでした。

【26日】
鶴幸子さん:印象的な始まりのティエントでした。個性的で実力のある人だけにもっと心の爆発を観せて欲しかったです。
佐藤陽美さん:リズム感のある男性的なサパテアードが途切れることなくラストまで素晴らしかった。
阿部和子さん:個性的な味に加え、バックと織りなすハーモニーに魅了されました。
岩丸綾子さん:重心深く一貫性のあるソレアでした。
沖真悠子さん:ベソがありスケールの大きさとメリハリを感じました。三位一体感も素晴らしい。
藤本ゆかりさん:無音からの空気感…ドラマを感じ客席を引きつけましたね。バックとの一体感が抜群!
石田久乃さん:丁寧に踊っている姿に将来が期待されます。
清水和美さん:周りに流されず一生懸命踊っている姿に微笑ましさを感じました。
大塚歩さん:パワー溢れるアレグリアスを惜しみなく披露してくれました。お見事!

高橋英子(舞踊家)[Bg,G,C]

<バイレ・群舞部門>
G‐1:袖先がラメでキラキラ光る黒の衣装、エレガントな5ムヘーレスが織りなす神秘的な世界。出だしやラストの静寂に鈴の微音が効果的。音楽的には地味でしたが、「ソロンゴ」の妖艶なムードの中で舞踊手一人一人を浮き出す振付、演出など舞踊構成の繊細さが感じられたのは良かったと思います。
G‐2:出だしやラストに鍛治場のマルティージョでコンパスを刻むことにより一層シギリージャの荘厳な世界を引き立て、6ムヘーレスは青いマンティージャをまとったお揃いの黒衣装で締まったイメージ。群舞ならではのダイナミックさと唄振りで見せた各人の細かい感情表現など、意気込みや息吹が伝わってきました。
G‐3:純白の塊がコンパスに乗って渦巻くようなゴージャスなサリーダ。気が付くと白ではなく藤色に変わって赤いバラがフラメンカに浮き上がる効果的な照明、独創的な色彩。7ムヘーレスがリズミカルな音楽の中でハレアールする、トレアールするという演出などで連帯感が湧き出る。曲風に合った躍動感ある群舞でした。
G‐4:赤青調の花柄?に黄色のフリルが華やかな衣装に粋なソンブレロ。短いセリフで始まる軽やかなリズムに乗った小さな姉妹の織りなすタンギージョの世界は何をとってもただただ「可愛い」の一言に尽きる。しっとりとした場面も加え、後半でパニュエロを振り回したりの演出、音楽も考えられた飽きない構成で楽しめました。
G‐5:胸元に青を使ってアクセントを付けた黒い衣装の4ムヘーレス。それなりの群舞的な動きや照明が生かされたまとまった構成で、レベル的に各人とも似通っていたのが小迫力を出していたと思います。それぞれがソレアの世界に没入していて、フラメンコの魅力がダイレクトに伝わってきました。

<ギター部門>
磯谷徳志さんのソレアは雰囲気ありましたが、ちょっと粗い感じがしました。テクニック的に不十分さを感じつつも何かを期待させましたが、時間切れとなったので残念でした。
大場洋平さんはさりげなく白地に大きめの赤い水玉模様のシャツで登場。ほのかな意気込みを感じました。音作りの工夫で雰囲気を出している感じはありましたが、心躍らせる何かブレリアらしいノリや展開がもう少しあったら良かったと思いました。
鈴木敏司さんはまだ楽譜に倣って弾いているようなイメージの演奏ですが、丁寧に弾かれていて好感が持てました。気のせいか?かなり短かったように思います。
福嶋隆児さんは、安定したテクニックと地味ではありますがフラメンコ的なアイレを持ち、ブレリアを弾くための正統的な流れを掴んで無難にまとめ、その演奏は自然に聞こえてきました。もう少しブレリアらしい火花的なノリがあると映えました。
内山友樹さんの弾き方はもろ現代風で軽やか。細く流れるように展開するアレグリアス。テクニックもあり、音楽性もあってそれなりに良かったのですが、どうも音に芯がないというか、耳に響き、心に刻まれるようなコンパス感を感じられなかったのがちょっと残念でした。(出演順)

<カンテ部門>
山田裕子さんのアレグリアス。ちょっと甲高い声が不思議なムードを作りだしました。ポピュラーな歌詞を明るく元気に歌われていました。くちゅくちゅっと早口になるところとかがあって面白い、愛嬌でしょうか。
渡橋美穂さんのグラナイーナ。出だしの歌詞がステキに響きました。正統的なアイレを大切にしながら綺麗に、そして丁寧に歌いあげました。技術的な甘さを今後改善していくともっと良くなる可能性があると思います。
近藤リナさんのシギリージャ。細かな技術をちゃんと勉強なさっているのが窺われました。なにかデンとした芯のある強さは感じませんでしたが、頑張りが利いて、感情が籠る歌いっぷりはとても好感が持てました。
斎藤克己さんのアレグリアス。変わった歌詞で始まり、興味を引きました。細い声で全体的に華奢な感じの歌い方。一つ一つ見栄を切りながら決めて、それなりのアイレを求めている雰囲気が頼もしかったです。
渡辺都美さんのソレア。この方はシブい!淡々とつぶやくように、アイレを内に発しての演唱はとても印象的、心に残りました。カンテの幅広く、奥深い世界に改めて引き込まれます。
小林カルメンさんのアレグリアス。なかなかキレのいいリンダな高い声が愛くるしい。まだ青くささも感じましたが、後半の歌いっぷりは流石にサングレを感じさせるノリとなり、将来が楽しみです。
山本淳子さんのアレグリアス。流暢にそつなく歌っていて、違和感なくすんなり耳に入って来ました。愛嬌あるポーズを見せ、そんな余裕もフラメンカでよかったです。
松岡恭子さんのカーニャ。ちょっとか細い声で生気がない感じでしたが、頑張って歌ってらっしゃいました。曲のアイレが失われないように力の配分も考えながら、更なる練習を期待します。頑張ってください。
竹内恵理子さんのシギリージャ。何か無理があったように思いました。全体を覆うか弱さからか、突っ切れた感じで余韻が残りませんでした。女らしい綺麗な声が、深く重厚なシギリージャには合わないのかとも思いましたがそんなことはないと思います。とにかく、もう少し歌唱力を付け、豊かな表現を目指して頑張ってください。
小松美保さんのマラゲーニャ。歌詞の雰囲気を壊さず、味わい深く歌われていてよかったです。歌唱力も有り、抵抗なくすんなり耳に入ってきました。いい感じで始まったアバンドラーオでしたが、後半の表現がちょっと今一難しかったのかもしれません。
西奈津子さんのタランタとカルタヘネーラ。しっかり声は出ていましたが、流されてしまい、感情の籠め方などで物足りなさを感じました。ちょっと残念、もう少し歌い込んで頑張ってください。
永井正由美さんのシギリージャ。どちらかというと細い感じの声だったと思いますし、小柄?でも、どこからあんな力強さが出て来るのかと思うくらいスカッとするバリエンテな演技でよかったです。特に後半は力の入った盛り上がりをみせ、凄かったですね。
土井康子さんのファンダンゴ。立っているとPaqueraのようでムードありますね。声はしっかり出ていてパワフル、ちょっと聞き取りにくいファンダンゴでしたが、堂々と歌われまして好感が持てました。頑張ってください。
大西保孝さんのファンダンゴ。この方は惜しい!声もしっかり出ていて男らしく、大らかで朗々と流れるような演唱は気持ちよく響きますが、ちょっと薄味のファンダンゴで、説得力に乏しいように思いました。何か一つフラメンコなアイレが加わればもっと頼もしく聞こえてきそうです。
熊谷義博さんのマルティネーテとシギリージャ。きっとこの方はかなり研究なさっていると思います。歌詞もスタイルもちょっと一般的に耳にするものとは違っていて、興味深いです。歌い方は少し一本調子に聞こえてしまう感がありますが、さりげない歌いっぷりで異色です。
占部智恵さんのファンダンゴ。最初のサリーダからして典型的なファンダンゴの響きで印象的。出だしの歌詞もプーロ。素直に歌い、歌のエッセンスを失わないアイレを掴んでいてとても良かったです。ですから最後の表現にもっと大胆さがあってもよかったかなと思いました。
白鳥光良さんのカーニャ。よく練習なさっています。正統的アイレで丁寧にきちっと歌うように努めているのが窺われ好感が持てました。今後に期待したいと思います。(出演順)

手塚真智子(舞踊家)[Bs]

●林由美子さん:前々回に比べて格段の進歩でした。
●牛田裕衣さん:良い構成でしたが、動きすぎの感じを受けました。
●櫻井美砂子さん:もっと表情を豊かに。
●大井昌子さん:目力が出て、踊り切った!シージョが綺麗でした。
●岡村志帆さん:引っ込みのブエルタの芯がずれたのが残念でした。
●伊藤千紘さん:身のこなしが軽やかで、コンパス感が良かった。
●諸藤ふみさん:迫力あるソレアでしたが、ご自身らしさを出すと良いと思います。
●灘辺佳代子さん:曲調をよく捉えて素敵でした。
●草野干夫さん:フラメンコに対する尊敬の念を感じるファルーカでした。
●青木千鶴子さん:毎年挑戦する姿勢とその上達に感服です。
●菊原まりさん:安定感のあるタラント。ブラッソの使い方の研究を!
●佐藤直美さん:解放感を感じるよいアレグリアスでした。
●野上裕美さん:気迫のソレア!
●伊藤真由美さん:パソの詰め込み過ぎなのか、表現したいことが見えませんでした。
●本多清美さん:本当に丁寧な踊り。
●宗形公恵さん:笑顔が魅力的。
●桒村洋子さん:長いブラッソを活かすと良い。
●古迫うららさん:時々重心のブレが気になったが、身体をよく使えていた。
●佐藤陽美さん:力み過ぎでしたが、オーレ!
●阿部和子さん:ファルダの持ち方が綺麗で、パニュエロでの引っ込み素敵でした。
●岩丸綾子さん:メリハリの利いた力強いソレアでした。
●沖真悠子さん:ブラッソが綺麗でした。
●清水和美さん:心がこもったソレアでした。顔の表情、目を開けてほしかった。
●大塚歩さん:瞬発力があり最後まで気持ちが途切れずに踊りきった姿がオーレ!

花岡陽子(舞踊家)[Bs,Bg]

新人公演おつかれさまでした。出演者の方全員に心からの拍手を送ります。

<バイレ・ソロ部門>
【24日】
宮崎さん/しなやかに踊っていますが、もっと踊り込んでください。
平川さん/将来性を感じる素晴らしいバイレでした。
大里さん/アレグリアスらしく明るく、テニクニックもあります。
橋田さん/マントンさばきステキです。パソが少し多いかも。
畑中さん/魅力いっぱいのパソ。これからが楽しみです。
林さん/フラメンコアイレを感じます。ギター、カンテと一体となっていました。
川田さん/表現豊かです。衣裳も工夫があり、面白味があります。
脇川さん/体全体にバランスが取れていてみとれました。
谷口さん/コーラのさばきも美しく、マントンも美しくさばいていました。
寺嶋さん/これからもたくさん踊ってまた挑戦してください。
持田さん/美しく踊っていましたが、強さが欲しいです。
波田さん/表情が良かったです。踊り続けてください。
蓮さん/ブラソもエスコビージャもよく踊っています。
中溝さん/パソの中に重厚感があります。
渡辺さん/ムイフラメンコを見せてくれました。
大津さん/初々しいです。これから肉付けしていってください。
川端さん/ソレアの物哀しさがよく表れています。
流石さん/ティエンポが正確です。少しバランスがくずれます。
鈴木さん/気持ちが入ったソレア。足も強いです。
沖山さん/大柄の体を生かした美しいフラメンコでした。

【25日】
牛田さん/曲想によく乗っています。ヒターナフラメンコを楽しみました。
櫻井さん/パソが少し単調かも。たくさん踊ってください。
市村さん/表現力があります。サパテアードお見事。
大井さん/恵まれたお身体で伸び伸びと踊っています。
池田さん/オリジナリティがあり、舞踊性もあります。
岡村さん/ボリュームのある踊り。カンテもギターもボリュームです。
伊藤さん/アイレもコンパスも良く、ご自分のフラメンコにしています。
諸藤さん/フラメンコが身体に入って、まさに踊りたい!が表れています。
灘辺さん/グアヒーラの華やかさ、明るさがよく出ています。
草野さん/ご自分の人生がファルーカに乗せて、味わいがあります。
青木さん/なめらかで美しいソレアを踊り切りました。
山形さん/テアトロフラメンコでした。ステキなソレアでした。
坂本さん/静と動が見事に表現されていました。
菊原さん/ねばり、ため込み、よく表現されています。
小川さん/ブラソが美しいです。いつもの力が出なかったかも。
森永さん/グラジオラスのような優雅さです。力強さが欲しい。
佐藤さん/ステージをよく使い、気持ちよく拝見しました。
下山さん/寂しさ、つらさの表現、難しいですが頑張って!
有田さん/あふれるばかりのエネルギッシュ、良かったです。
野上さん/上半身、下半身よくきたえて、力強く美しいです。
伊藤さん/どうぞ更に上をめざして頑張って!貴女には出来ます。
本多さん/ねばり強く、カンテによく乗って良かったです。
平田さん/ひとつひとつのパソが見事でした。
川口さん/笑顔が素敵。舞台をよく使って、楽しませてくれました。
宗形さん/軽妙さが出て、サパテアードが見事です。
細川さん/細いお体で力強さが出ていました。
岡田さん/女性らしい大人っぽい動きが印象的です。
齋藤さん/重厚感があり、練習の成果ですね。鈴が素敵!
石田さん/ティエンポ素晴らしいです。ブラソを少し研究して。
後藤さん/全体に欠点はありません。あともう少しです。

【26日】
桒村さん/楽しく踊られています。たくさん踊っていってください。
古迫さん/後半に素晴らしく、踊っています。時々乱れました。
鶴さん/味のあるおしゃれなティエント。長年の成果ですね。
森さん/曲によく乗っています。パソにもう少し工夫を。
佐藤さん/強い足で気持ちよく踊っていました。再度挑戦しましたね!
藪内さん/難しいフラメンコにこれからも踊り続けてください。
小野さん/ソロンゴの物哀しさがもう少し欲しいです。
阿部さん/重厚感のあるアレグリアス。よかったです。
池野さん/強弱をきちんと出して、練習の成果ですね。
稲垣さん/内面からの情熱をよく表していました。
岩丸さん/多種多様なサパテアード、素晴らしいです。
稲沢さん/ご自分のソレアにしています。将来が楽しみです。
小山さん/踊り込んでいらっしゃる、欠点がありません。
沖さん/アイレを感じます。全体にバランスが良いです。
水町さん/小柄な体にエネルギッシュな動き、よかったです。
藤本さん/オリジナル性があり、観客に語りかけ、心が燃えていました。
石田さん/未来への可能性、期待の星。
清水さん/これから勉強していってください。頑張って!
橋本さん/あなたの人柄が踊りに出て、後半が良いです。
大塚さん/指の先、足先まで行き届いた素敵なアレグリアス。

<バイレ・群舞部門>
斎藤克己フラメンコ アカデミー札幌/5人がフォーメーションを変えて面白いエンティングでした。
Estudio El Patio/6人のエネルギッシュな動き、サパテアードが心地よく、全体的に心地良いです。
島崎リノ フラメンコスタジオ DaiDai/華やかな7人がブレリア。オレーフィエスタ!
“Hermicanas”~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松/可愛らしいタンギージョ。ジュニアの方たちに人気が出たのでは。
Las Niñas de Belen/4人の群舞。迫力があります。息がよく合っていて素敵です。

本間牧子(舞踊家)[Bs]

この度ほど決められた人数を選出するということの難しさを感じたことはありません。受賞された方々以外に、私的に奨励賞をさしあげたかった方、心に残った方々を書かせていただきました。

24-6 林由美子さん…軸がしっかりして安定感があり媚びずに振りを大切に踊られていました。自己コントロールされたクエルポ、ブラソ、マノ、体の隅々まで伝わっていく間合いが素晴らしかったです。
24-8脇川愛さん…安定感と力強さメリハリがあり構成も良く、ブラソ、マノが美しく絶妙な間とスピード感がすごかったです!
24-9谷口祐子さん…コーラ、マントンそしてクエルポとの一体感のある踊り、しなやかなブラソとアイレと華!輝いていました。
25-13諸藤ふみさん…理屈抜きでドカーンと来ました。言葉はいりませんね!素晴らしい直球フラメンコ、しっかり受けとりました。
25-24有田ゆうきさん…重々しさと気迫!間合いの作り方、歌との会話感、メリハリのつけ方に引き寄せられました。
25-33齋藤朋之さん…ひとつひとつの事を大切にする思い、立ち方、歩き方、すべてに心のこもった踊り、フラメンコに真摯に向き合う姿に感動しました。
26-20鶴幸子さん…弧を描き、うねりエネルギーを発するブラソ。まるで海の底から渦をまき、沸き上がる波のよう!美しいです。構成も素晴らしく物語を感じさせてくれました。
26-32水町祐子さん…気合いと隙のなさ、レマーテも良かったです。魂の怒りとも思えるアイレを感じました。

他にも素晴らしい方々がいらっしゃいました!あとひと息、あと一息…それは何なのか。自分の踊りに迷いが生じた時、わからなくなった時…フラメンコの原点に返ると何かがきっと見えてきます。昔私もある人にそう言われて気がついた事がありました。技術の面で自分の得意なところは何か、好きなところはどこか、どのように踊りたいのか。誰かと競べるのではなく自分を信じ、体、五感、すべてを研ぎ澄まし集中させる…自ずとするべき事が見つかるのではないでしょうか。強い意志を持つことが大切です。強い意志と自信を持って自分の感じたフラメンコを踊ることです!「心の隙、迷いは体にもすぐ現れる」「しっかり大地に立つ」「力みは大敵」。私の大切にしている事です。

渡邊 薫(舞踊家)[Bs,Bg]

第27回新人公演、各部門出演者の皆様、本当に熱く充実した舞台をありがとう。そしてお疲れ様でした。稀にみる厳暑の中、本番当日にベストなコンディションで臨むのは大変だったと思います。

<バイレ・ソロ部門>
今回奨励賞として推したのは以下7名の方達です。(敬称略)
蓮真佐江:アセントもしっかりあり、切れも良く全体的にバランスの取れた踊り。
伊藤千紘:鍛えられた身体。振りを自分のものとし、サパテアードもリンピオでよくコントロールされた踊り。
古迫うらら:特にタラントパートが、内に秘めた思いを感じた。タンゴもメリハリがあり良かった。
佐藤陽美:ブレリアからシギリージャへの転換が上手く、構成も良かった。リンピオな踊り。
沖真悠子:前回より大きく上達。溜めもありすごく良かった。
藤本ゆかり:ギター無し!カンテ・パルマ・カホンで構成されたシギリージャ。この大胆な(!?)構成をこなし生かされた振付を踊り切った。
大塚歩:自然な流れの踊りで、サパテアードもリンピオ。コケティッシュさも加わり、観ていて気持ち良く引き込まれました。

次点でどうしても推したかったのが以下の方です。準奨励賞おめでとう!
阿部和子:以前にも増して、フラメンコのアイレたっぷりに自分のアレグリアスを踊っていたのが素晴らしい!また来年に期待しています。

【24日】
平川亜紀:独自のアイレがある。止まる時など重心の位置に注意。
脇川愛:準奨励賞おめでとう!良くコントロールされた踊りですが、あなたが何を伝えたいかもっと明確になると前進出来るのでは…。
谷口祐子:バタ・デ・コーラとマントンの扱いが美しい。ベジスコ不足が惜しい。
沖山美環:長身を生かしたのびやかな踊り。自分の中にあるものをもっと見つめ出してください。さらなる挑戦に期待!

【25日】
平田かつら:最後までテンションを保ち、静かな炎が感じられた。
川口美郁菜:踊り手としての資質豊かなので、それを生かし、ヌメロ(今回グアヒーラ)の持つ特徴をもっと表現して。
岡田知子:抑えの効いたフラメンカな踊り。
齋藤朋之:この1年のめざましい成長、上達を観させてもらった。立ち方、ブラソなどへの注意を。
牛田裕衣:丁寧な踊り、上体の固さ、身のふりが気になった。
大井昌子:無音での動きが印象的。2唄のレマーテが私にはちょっと不自然で流れを止めた様に感じた。
諸藤ふみ:フラメンコ大好きが伝わってきた。サパテアードもリンピオ。
草野干夫:キャリアを感じる踊り。マルカーヘの安定、ジャマーダに入る時の間をもっと大切に!
青木千鶴子:マルカーヘが素晴らしい。たゆまぬフラメンコへのレスペートを感じた。今回が今まで観た中で1番良かった。来年期待しています!

【26日】
石田久乃:素直な踊りで魅力的。体幹をもっと意識して。来年楽しみにしています。

<バイレ・群舞部門>
5組各々が異なった趣向、方向性で選考するのが難しかった。
斎藤克己フラメンコ アカデミー札幌:ソロンゴ・ヒターノからソレアへ。全体の構成は良かった。6人が各々、内にあるエネルギー、想いをもっと発して欲しかった。
Estudio El Patio:工夫がみられた構成、奨励賞おめでとう!踊り手のレベルが揃っていてバランスが取れた群舞。全員の気持ちの一体感があり良かった。
島崎リノフラメンコスタジオDaiDai:出だしに勢いがあり期待しました。フラメンカな振付を踊り手達が感じて踊っていた。後半ためらって踊っていたのが残念(カンテが長かった!?)。
“Hermicanas”~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松:若い時にしか持っていない清々しさ!テニクニック的にも、しっかりして良い雰囲気。パニュエロを使った振りは、私には懐かしかった。今ではかえって新鮮で最後まで大いに楽しませてもらいました。
Las Niñas de Belen:群舞としてのレベルは揃っていて高かった。フォーメーションにもう一工夫すれば、もっと良い作品になると。再挑戦してください!

今回全体の舞台(特にバイレ・ソロ)を観て感じたこと。
・全体のテクニック的レベルが高くなっているのは、ここ数年以上間違いない事です。私が大事に思っている事、心がけている事は、全体のバランスです。カンテを感じながらのマルカーヘ、リンピオなエスコビージャ、そしてリズム・テンポの転換、最後までテンションをキープする事です。これらの事を考えると、本当にフラメンコは奥深く、大変なことですね。
・今回かなりの出演者に、首の前傾、いわゆる「ストレートネック」「スマホ首」の方が多いのに驚きでした。それは今の流行なのでしょうか?
・ヌメロ、振付に合った衣裳選びをして、ファルダの扱い、マントンなど小物の使い方にもっと細心の注意をはらって欲しいと思いました。
・数年前から地方の出演者が増えてきました。彼ら達はカンテ、ギターとの合わせ等、色々大変だと思いますが、来年も期待しています。

市川惠子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
全体的なレベルは上がっていると思うが、技術、表現力、個性においても突出した方が少なくなかなか感動するまでには至らなかった。ある程度上手な方が多く、いいなと思う方は15人位いらしたので絞り込むのがとても難しかった。色々と考えた末に次の7人を選出した。

私が奨励賞に推薦したのは、
★渡辺なおみ:唄振りは静かで良いのだがもっと感じられるはず。アセントをもっと掴んで。エスコビージャからのテンション、マッチョの気迫は凄く良い。内から発するものに思わず引き込まれ目が離せなかった。
★野上裕美:奇をてらうところもなく、自然体の中で重みも気迫も感じられた。足もリンピオでマノも綺麗。込める力もうねりもあるフラメンコらしい良い踊り。思わずずっと見入っていた。素晴らしい成長に感動。
★岡田知子:身体もコンパスもしっかりしている。さり気ないが芯がある。抜けも素晴らしい。力んでいないがフラメンカ!スカッとしていて自然体だが上手い!バランスの取れた質感の良い踊り。
★佐藤陽美:身体は締まっていて足は凄い。繊細でモダンな難しい振りを良く踊り込んでいる。もう少し上体やブラソ、マノにうねり含みがあるともっと深みが増す。自然体の踊りからスカッとした大人の踊りに大変身。
★沖真悠子:登場から凄い!空気が一時もたるまない!2つ目の唄の始まりとても面白かった。女性としてのしなやかさもあり、込める力もある。足もリンピオ。洗練されて切れ味も良い素晴らしい踊り。
★藤本ゆかり:重みも増しアイレもあるが、足の時に上体が動くのが気になる。無音の振りも存在感で見せ、唄も静かに動かず凄く良い。長く挑戦し続けてきたその気迫に圧倒され、胸が詰まった。
★大塚歩:凄く上手い!振付がすっかり自分のものになっていて、全てがこなれている完成度の高い踊り。会場がどよめく存在感。ノリがよく、アイレもあり魅力的。終始目が離せなかった。

次点として推薦したのは、
★脇川愛:始まりからピシッと決まって印象的。切れ味も良く、パワフルで足もリンピオ。切り替えも良く、リズムも心地良い。タパオも素敵。全体的に表情もあって魅力的。最後も洒落ている。

時間オーバーで惜しかったのは、
※池田理恵:少し複雑だが素敵な振付を即興的に自由自在に踊りこなしている。上体も素晴らしく目が離せない。凄く上手いのだから、時間内でおさめて。

特に印象に残った方々は、
☆林由美子:意志を感じる表現力のある凛とした踊り。間合い、次への展開も良い。切れ味もあり空気感もある。少し押さえ気味のところも良く、最後も綺麗。
☆牛田裕衣:今までと違う印象、とてもしなやかで女性らしく美しい。いつもパワフル大なだけに少し物足りなくも感じたがピエもクリアでテンションも良く、タンゴからラストにかけて本領発揮で魅力的。
☆諸藤ふみ:凄く頑張っている。気迫に満ちたその踊りに目を見張った。オレ!個性を活かしていてとても良い。どこまで自分のものに出来るのか今後が楽しみ。
☆宗形公恵:こなれていて余裕がある踊り。面白い個性で見ていて楽しい。パワーも感じられ、コンパスも足もしっかりしているのだが、どこかピリッとした良い緊張感も欲しい。
☆古迫うらら:押さえ気味だがノリがあり、重みのあるアイレもある。身体も締まっていて込める力もコンパスの締めもあって良い踊りなのだが、今回は少しインパクトに欠けた。
☆鶴幸子:モダンでエレガンテで作品的な印象。奏でて始まる足も素敵。繊細だが切れ味も込める力もあり魅力的。引き込まれる。止めは強く。
☆稲垣栄子:思わず見てしまう良い踊りで好感が持てる。表情良く、唄ぶりもソレアらしく心に沁みた。勢いまかせでなく自然な流れで良かった。
☆岩丸綾子:良い唄に応えていた。込めた力がある。メリハリがあり、足の音もリンピオ、エスコビージャ後半にかけて特に良かった。少し肩に力が入っていたのか。でも熱いものを感じずっと見てしまう。
☆水町祐子:小柄な身体から発する全身から溢れるエネルギー、パワーが凄い!ピリッとした踊りで気合気迫を感じる。激しい思いは伝わるが、どこか溜めて。

次に印象に残った方々は、
◎畑中美里:個性的で不思議な魅力がある、時々面白い表現で印象に残る。動かない良さもありジャマーダは良いのだが足の音が聞こえにくく残念。
◎川田久美子:個性的な出で立ちで印象的だが始まりで膝が丸見えになるのが気になった。足も奏でていて切り替えも小気味良い。切れ味の良い、意志を感じられる踊り。
◎蓮真佐江:パワフルな始まり。肢体を活かした、テンションの高い踊り。身体は出来ている。エスコビージャが印象的だが抜けの表情も欲しい。
◎中溝直美:不思議なブラソで個性的。小柄だが存在感、気合も込める力もある。表情が険し過ぎるのが気になったがタンゴに何か良い味がある。
◎川端淳子:プーロな素敵な振り。女性らしく重みのある踊りで感じが良い。ギターと足の音もよく合っていたがブレリアの抜けをもっと強く。
◎沖山美環:シンプルな振りをクラシカルな衣裳で踊り好印象。少し単調に感じるのでもっとメリハリをつけて。ジャマーダは強く。今後に期待。
◎大井昌子:上手い。振りも良く、無音の印象的な始まりから唄も良い。マノも綺麗。身体も利いてアセントもある。足を打つ時肘を上げて。
◎伊藤千紘:切れ味あり空気が一時も揺るまない。マノブラソもゆったり、凄く良いのだがずっと同じ印象なのでもっと緩急をつけて。
◎青木千鶴子:年々フラメンコらしくなってきた。味も空気感も出てきた。美しいがソレアとしてのもう少し重みが欲しい。
◎菊原まり:身体も出来ていて込める力もある。始まりの足も強く、唄も良いし上手い。タンゴにうねりもあって良いのだが、足が多過ぎ。
◎有田ゆうき:ピリッとした緊張感と気合、熱さもあって上手い。身体が出来ていて振付も良い。音の取り方も良いが行きつくところが欲しい。
◎本多清見:静けさの中に込めた力があり、何か魅力的。唄の締めに足が入るのが気になった。ブレリアのマルカールが流れている。
◎平田かつら:品があり凛としたところのある踊り。整っていて、重量感もあるが後半バテたのか、マッチョにもっと惹き付ける何か頑張りがいる。
◎川口美郁菜:身体はよく利き力強い。バイオリンで作りこんであって可愛いく良い感じ。ブレリアに抜けるテクニック好き。
◎石田祐子:足は凄い。フラメンコとしての気迫もあって良いが、ブラソ、マノをもっと使って。足を打つ前に身体を整えて。上半身でも魅せて。
◎後藤悦子:モダンでフォルマの振りを良く踊っていて雰囲気もあるが、少し構成考えすぎでは?フラメンコとして惹き付けるもっと何かがいる。
◎阿部和子:コンパス力があり味がある。面白く楽しい。タパオから良い。アイレもあるが調子が一緒。止まりはもっと強く!でも応援したくなる。
◎石田久乃:素直で気持ちの良いアレグリアス、華がある。姿勢も良く足もリンピオ。子供ながら自分の意志で踊っている。抜けも良く素晴らしい。
◎橋本佳津枝:新人らしく、伸びやかで華やか。スカッと感じの良い踊り。優雅だが、足多過ぎるので静かなところも欲しい。もっとアセント捉えて。

今後に期待したい方々は、
●平川亜紀:アイレもありリズムも良く好感が持てる。ちゃんと踊っているが少し弱い。もっとメリハリを付けて。さり気ないところがあると良い。
●大里尚子:印象的な始まり。アレグリアスらしい雰囲気で明るく笑顔がかわいい。2つ目の唄はもっとパワフルに。エスコビージャにもう一工夫。
●谷口祐子:リブレの時のバタ、マントンは綺麗で良い。軽やかだが、バタを手で扱う所が多いのが気になる。本来のバタさばきをもっと見せて。
●持田賀津子:一生懸命さが伝わり、年々良くなって来た。立ち姿は綺麗で始まりも素敵。上体が動き過ぎで、タコンの音を出せるよう頑張って。
●大津絵里香:新人らしくかわいらしい。派手で艶やかな振付を楽しそうに伸びやかに踊るが大きく動き過ぎ。バタはもっと腰を入れて。肘も注意。
●鈴木旗江:とてもシックでエレガンテで全体的に良いのだが、身体を使いきれてないように感じる。最後は背中を使ってもっとそった方が良い。
●市村美穂:激しくて良い振りだが踊りこなすには難しそう。唄はもっと重みを。肘、足を打つ時の姿を意識して。ブレリアの入口の足は良かった。
●岡村志帆:印象的な始まり。2つ目の唄は応える気持ちと身体がいる。頑張っているが、どこか心に響くどーんとしたところがいる。絞りも大切。
●灘辺佳代子:絵画のような始まり。グアヒーラらしく明るくてにぎやか元気一杯で楽しそう。もう少し胸を上げて。
●山形志穂:よく頑張っているが振りが大げさで動き過ぎ。足はしっかり打っているが硬い踊り。もっと緩急をつけ強さが出せるように。
●坂本恵美:ちゃんと踊っているがもっと感情表現が必要。カーニャらしさとはをもっと考えて。唄も感じてラストをしっとりと。どこかに強さも。
●森永泉美:良く頑張って踊っていたが、全体的に寂しい感じ。振りの意味を考えて唄の終わりは締めて、アセントをしっかり、抜けも大切に。
●佐藤直美:メリハリのある振りを自分の意志で踊っている。楽しそうで晴れやか。初々しいアレグリアスらしい踊りで良かった。
●下山明子:バックととてもよく合っていて大人らしいソレアで良かった。身体の軸をしっかり、体重がどちらに乗っているのかを常に考えて。
●伊藤真由美:振りが懲りすぎ。もっと削ぎ落として。足はよく動いているのでぶれない上体を意識して。フラメンコとしての身体作りを頑張って。
●細川由香:しっかり踊っているがまだ身体の強さが足りず、軽く見える。唄は頑張っているが硬さもあり、気持ちを伝え切れていなくて残念。
●齋藤朋之:何か心に感じるものがある。味もあって個性的で面白いが、今回は動き過ぎ。肘が抜けている、足元も注意。姿勢ももっと意識して。
●池野美結:ブラソはやわらかくて良いが、振りが自分のものになっていない感が。作り過ぎで勢いがない。タンゴからは表情も出てきて良かった。
●稲沢静:一生懸命さは伝わるが全体の流れがつながっていない。肩に力が入り過ぎ。マントンはまだ拙い。肘と身体使いに注意。感情表現は大切。
●小山理絵:姿勢が気になったがしんみりとした良さもある。身体の芯がまだ出来ていない。盛り上がりに欠けるのでどこかに強さが欲しい。

今後の課題を頑張って欲しい方々は、
○宮崎美香:動かないのならそれなりの何かがいる。色々頑張っているのだが、バックとの一体感もしたいことが伝わってこなくて残念。
○橋田佳奈:必死なのは伝わるが、慌しく見え、マントン振りは色々しているが、感情が伝えられるようもっと唄を感じて。足の時の姿勢に注意。
○寺嶋いずみ:可愛いのでホッとする面も。唄を良く聴き、腰を入れて踊り、作り過ぎず流れをもっとわかりやすくすると良いのでは。
○波田多真紀:多少のずれも気にせずとても楽しそう。バイオリン付きのメロディをもっと感じて。エスコビージャの出だしは大切。
○流石泰美:フォルマの振りの形は感じるがもっと自分の意思が大切。色々がんばっているが、下を向いていると気弱に見え損。自分が楽しんで。
○櫻井美砂子:静かに踊るが、唄ぶり、抜けも良い。姿勢も良くむしろまじめ過ぎるので、もっと流れを感じて。訴えかけるものが何かいる。
○草野干夫:フラメンコとして大切にしているものを何か感じた。雰囲気がある。上の手をもっと高くあげて。今後は表現する為の身体作りを。
○小川千尋:気合は感じるが身体が上下しないよう腰を据えて。軸をしっかり。胸にも力を入れて、ブラソマノも使って。上体にねじりが欲しい。
○桒村洋子:一生懸命だが全てが流れて見える。姿勢に気をつけて。ブエルタは目線をつけ全ての振りにコンパスを感じ、マノもブラソも頑張って。
○森加寿子:ちゃんと踊っているが硬く見えるのでうねりねばりが欲しい。マノもブエルタも頑張っているがジャマーダは強く、足はしっかりと。
○藪内恵利子:優雅さもあるが不確か。色々な振りをしているが、マルカールが流れ気味。説得力に欠けるので身体作りを。ブラソマノを使って。
○小野栄子:最後はスカッとしていたが振りが多すぎて効果的でない。唄も足もアセントを掴んで。マルカールはノリが大切。ブラソは頑張って。
○清水和美:時々良い表情をする。何か味はあるが、まだ身体が全然使えていない。マノブラソ肘が抜けているが、抜けに気合があった。

<バイレ・群舞部門>
それぞれのグループに個性を感じ、一丸となって取り組んできた気持ちが凄く伝わったが、これという決め手に欠けたので奨励賞の選出を控えました。

●斎藤克己フラメンコ・アカデミー札幌:女性ならではの美しさを知った上での振付。何とも品があってドラマチックで最後も美しい。綺麗に揃っていたが、1人ずつのところがあまり効果的ではなかった。
●Estudio El Patio:椅子の上での振りもシンプルで良かった。素晴らしく揃っていて、1人ずつのところも面白く見ていて飽きなかったが、もう少し重みうねりが欲しい。
●島崎リノフラメンコスタジオDaiDai:1人1人がフラメンカ。表情も良く、熱いものが伝わってきて、見ていて面白かった。途中、唄でバラバラとなってしまったのは、本当に残念!
●Hermicanas~姉妹~:元気いっぱいで子供らしさ全開のパワーで、表情も踊りもとても可愛く好感が持てたが、マノ、ブラソも頑張って欲しい。
●Las Niñas de Belen:振りも良くソレアらしい踊り。少し懲り過ぎ動き過ぎだが構成も凄い。踊りはまだ拙いところもあるが皆の気持ちが一丸となって何か伝わってきた。(期待を込め次点として推薦した)

本当に人を感動させるのは難しい。年々振りも複雑になってきているが思いを伝える為にもフラメンコとしての身体作りは重要。やはり自分の感情を一番大切に。もっとフラメンコとして迫ってくるもの、心に響く感じさせるもの、何か熱いものをもっと見せて欲しい。そして女性らしい情感を大切に。マノブラソの美しさをもっと表現して欲しい、と今年も思った。フラメンコに近道はありません。時間の掛かるもの。自分の信じるフラメンコといつも真摯な気持ちで向き合い自分だけの踊りを見つけていってください。

EL・POKA岡崎(舞踊家)[Bs,Bg]

今年も一生懸命観させて頂きました。皆さん、お疲れ様!

藤本ゆかりさん、見事でした。坂本恵美さん、バックとの一体感が素晴らしかった。沖真悠子さん、全てを身につけている、身体能力の高い人。谷口祐子さん、踊りを自分の物にして、楽しんでいるところに惹かれました。川口美郁菜さん、クラシックが体に入っていて、その上、フラメンコを楽しんでいるところ、好きです。山形志穂さん、流石に隙無し、楽しく鑑賞しました。鈴木旗江さん、実力を身につけていて、自分の踊りにしていました。すごい!野上裕美さん、キレがあり、気力もあり、バックとも融合していました。牛田裕衣さん、ブエルタの切れが気になりましたが、この次を楽しみに待っています。脇川愛さん、しっかりと勉強していて、度胸もあり、気迫も充分、唄とのからみも良く、シンギターラを楽しんでいる姿にも、心を打たれました。ありがとう!細川由香さん、リズム感もよく、臆することなく、ソレアになっていました。拍手!佐藤陽美さん、度胸があり、動から静、急止等うまく踊っていましたね!岩丸綾子さん、全体的にバランス良く勉強されている、楽しみな方です。水町祐子さん、リズム感もあり、気力も充分!身体作りにも努力してください。楽しみに待っています。石田祐子さん、出が少し軽すぎたかな?リズム感も抜群だし、また能力に合わせた振付がとても気持ちよく感じました。

中溝直美さん、菊原まりさん、有田ゆうきさん、齋藤朋之さん、諸藤ふみさん、皆さんに共通して感じることは、フラメンコを深く愛し、楽しんでいる大人の踊り、サパテもしっかりしているし、気力も充分!バックともかみ合っていて、観ていて気分が良かった。

最後に灘辺佳代子さん、持田賀津子さん、君達は確実に成長しています。道は近くて遠いけど、必ず登り切って、幸せを掴みきってください!待っています!

追伸:ここに掲載出来なかった出場者の方々の資料も残してあるので、もし少しでもお役に立つのなら、遠慮なくお知らせください!必ず返信致します。

東仲一矩(舞踊家)[Bs,C]

<バイレ・ソロ部門>
出演者の皆様、御苦労様でした。奨励賞を受賞された方から順に私見を記します。

「渡辺なおみ」さん
完成度の高い踊りで、それでもなお踊り込んでいると思われ、何より安定感が素晴らしいものでした。
「野上裕美」さん
素晴らしいソレアでした。テクニックもしかり、舞曲の中に肉体を同調させながら自己の色、においをかもしだされていました。
「佐藤陽美」さん
シギリージャをブレリア取りする傾向がある中で、その違いを表現されました。
「沖真悠子」さん
完成度高く、ピエのペソ、ブラソ等を通して自己の踊りにしてなおかつ、この舞曲の内面までを表現されていたと思います。
「藤本ゆかり」さん
創作作品として完成されたものでした。テクニックと身体表現のアンサンブルは見事でした。
「大塚歩」さん
素晴らしいアレグリアスでした。自身に裏付けされた感じを久々にもらえました。舞曲の持つ意味を自分のものとして表現されていました。

残念ながら賞にもれた方々で私の気になった人を列記します。
「谷口祐子」さん、「沖山美環」さん、「古迫うらら」さん、「鶴幸子」さん、「阿部和子」さん、「諸藤ふみ」さん、以上の方々に感動をいただけました。

<カンテ部門>
「小林カルメン」さん
ネイティブなスペイン語で自然に聞こえました。
「占部智恵」さん
ファンダンゴは私は一番難しいものと思っています。心地良く聞けました。

惜しくも入選されなかった方の中で頑張ってほしい方は、「渡橋美穂」さん、「近藤リナ」さん、「永井正由美」さん、「大西保孝」さん。今後に期待しています。

ロシオ・ロメロ(舞踊家)[C]

今年は何人かの出演者に驚かされました。かなり進歩していたし、とてもよく勉強を積んでいるのが明らかだったからです。私がいつも言いつづけていることですが、カンテを深く知っている良い師を選ぶことが大切です。奨励賞は出ませんでしたが、準奨励賞を受賞された方々を祝福したいと思います。渡辺都美さんのソレア・デ・トリアーナ/アルファレーラ/アポラーには本当に驚かされました。そして小林カルメンさんは、そのアレグリアスのアイレでホールをいっぱいにしました。彼女には大いなる未来があります。皆さんのアフィシオンに心から感謝します。

ディエゴ・ゴメス(カンタオール)[C]

今年も「フラメンコ・ルネサンス21」全参加者の皆さんに、ありがとうと言いたいです。受賞された小林カルメンさん、占部智恵さん、おめでとう。その他3人の方(渡辺都美さん、斎藤克己さん、山本淳子さん)はすばらしいレベルに達していました。本当に満足です!自分にとっても1か月にわたる大仕事でした。でもとても楽しく、実りある日々でした。改めてもう一度、皆さんにありがとう!

菊地裕子(評論ライター)[Bs,Bg]

今年の新人公演のバイレ部門も、多彩な出場者それぞれの全力投球が心地よかった。初めての方のフレッシュな踊り、何度も挑戦している方の練り込んだ踊り、キャリアを積んだ方の芯の通った踊りなどを見るにつけ、日本のフラメンコの進化・深化も感じられ、大変な酷暑の中だったにも関わらず、いつにも増して実に楽しく拝見できた。
個々の講評には書いていないが、全体で気になったことを2つ。スマホ首なのか、頭を前に落として踊る人が目についたことと、ファルダの扱いが雑な人が多かったこと。頭を前に落とした姿勢は美しく見えないし、振付の説得性を削いでしまう。特にブエルタの場面はマイナスになる。また、どんなに美しく踊っても、ファルダの扱い方が汚いと興ざめだ。踊り手として損になる。どちらも努力で直せるので、ぜひとも気に留めていただきたいと思う。
ともあれ、一つひとつのステージに各自の精進のあとが感じられ、渾身の踊りには沢山の感動と勇気をいただいた。フラメンコって凄い!好きになるって凄い!と、あらためて思わされたステージも多数あった。さらに言えば、私自身、バイレが大好きなんだと再発見した3日間でもあった。伴奏者も含め、出場された全ての方々に感謝です。
以下は、いつものように印象に残った出場者のメモから。
(◎=高評価、○=評価、△=今後に期待/★=奨励賞に推薦)

<バイレ・ソロ部門>
【24日】
△宮崎美香/シギリージャ。ブラソが美しく、身体の使い方が上手い。しなやかさは良いけれども、ギュッと凝縮されたものが感じられない。足音をもっと聞かせられるように精進して。
○平川亜紀/バンベーラ。エネルギーの持って行き方がとてもフラメンカ。湧き出る感じがして、心地よい。ただ全体に一本調子になり過ぎた。今のあなたで、違う曲種を見てみたい。
○大里尚子/アレグリアス。唄振りがなかなかユニークで興味をひかれた。単なるニコニコアレグリアスとは全然違う。ただ、独自性を追求するなら、そこをもっともっと!と、私は勝手に思います。
△畑中美里/ソレア。序盤はとても良かった。けれども、何が間違っているわけでもなく、中だるみしてしまった感。体力的なことか、構成の甘さか。頑張れ!
○林由美子/ソレア。佳い感じ。自分の中にソレアのイメージがくっきりとあると思わせる。惜しむらくは、ペソが足りない。あともう少し。どしっと動かない感覚。いや、動けない感覚をぜひ。
△川田久美子/アレグリアス。見せ方は上手で、達者な踊りに見えるのに、中だるみしてしまった。
中だるみの原因は色々あるだろうが、とにかく深く呼吸して、あなたの中から出るものを大事に踊ることを推奨します。踊るってことは舞台で生きるってことだからね。
○脇川愛/タンゴ・デ・マラガ。コンパス感が良い感じ。良い踊り手だということはわかる。でも何だろう、踊りが記号化しているみたいで、心が騒がないのだ。あなたの感情は動いていますか?
○谷口祐子/アレグリアス。マントンの扱い方は優雅に映ったけれども、バタ・デ・コーラのさばきに今ひとつ品がない。上手い踊り手だと思っているが故に残念。精進しかない!
○中溝直美/ティエント。全部フラメンコの美味しいところでできている踊り。カンテとの一体感、あふれ出るアフィシオン。ああ大好き!しかし、あにはからんや、素晴らしい緊張感は7分半保たなかった!実に残念。体力つけて、また出るべし。私はあなたを待っています!
○渡辺なおみ/シギリージャ。身体がとても良く動く人で、技術もあるし、表現力もあるけど、いかんせん、シギリージャに見えない。カンテを受け止めていたら、そんなふうに踊れるかな。高度な要求ではありますが、私はこれはフラメンコの根幹に関わる問題だと思っているので。「踊り難きを踊る」という心の向きが大事ではないかな。ご一考願います。
◎鈴木旗江/ソレア。自身の中が充実している感じが凄く良い。シンプルな振付ではあるけれども、どれだけ自分のものになっているかが良くわかる。身体を良くコントロールできていて緩急もあり、人と違う自分が表現できていた。でもあと一歩、あなたをガシッと刻印する何かを、私は求めたい。舞台に立つ人の勝負はここからです。
△沖山美環/アレグリアス。最初は固かったが、途中から天真爛漫な持ち味(?)が出て、心地よい踊りに。まだ踊り全体を自身でコントロールできていない感はあるが、素地の良さが踊りに出るのは買い。もっと大きな踊りができるはず。

【25日】
◎牛田裕衣/タラント。サリーダから華やかで、舞踊度がとても高い。目を引く踊り。ただ、タラントって、踊りの技術を見せるために選ばれる可能性が高いのか、皆、詰め込みすぎる感がある。思うに何の曲種だろうと、全てのパソは自身の中から湧き出てこなくては意味がない。なぜそう踊るのか、そう動くのか、動けない時もあるでしょうに、それも踊りでしょうに、と。
△市村美穂/ソレア。破綻なく一通り踊れているけれど、まだ不安定。唄振りは影のよう。エスコビージャの時には生き生きしているのに、カホンで足音が聞えないという謎。もっと踊り込んで、自身が何を踊りたいか深掘りを。
◎大井昌子★/シギリージャ。とてもスタイリッシュなパソを高いレベルでこなしていた。機械的になりそうなところも血が通っている感じで、私は好きでした。あとはもっとあなたを見せることかな。お馬鹿なところも黒いところも全部開いて、えいっ!と踊ってほしい。
◎池田理恵/アレグリアス。時間オーバーで奨励賞対象にはならなかったけど、伸びやかで表現力に富んだアレグリアスだった。身体のコントロールも利いていて、感性も良い踊り手だと思うが、作品としては破綻が無さ過ぎて面白みに欠ける。受け身に終始しているせいか。勇気を!
△岡村志帆/ソレア。パソのアセント感が半端ない。フラメンコをこのように理解していますというように踊るので、本当に面白い。ただ全体として繋がっておらず、雑なことろも散見されるので、そこは精進しつつ、芯のところはこのまんま成長していただきたい。
◎伊藤千紘★/ソレア・ポル・ブレリア。もうびっくり!非の打ち所がないとはこのことだという、ソレア・ポル・ブレリア。火の玉のようであるかと思えば、エレガントな面を見せたり、そしてすこぶる楽しいコンパス感。それら全てに無理が感じられず、素直で美しい。フラメンコ娘じゃ!あとはあなたの印が出てくれば鬼に金棒でしょう。いや〜奨励賞取らなくて良かった、また見られる!と、密かに思ったよ、ごめん。
○諸藤ふみ/ソレア。ふくよかな身体を生かして、自分の好きなフラメンコをやっています!という意気は買い。さらに、技術的にもレベルが高い。問題は表現のありようだ。自分で感じている以上のことをやっている。いや、感じる前にやってしまっている。客は敏感だ。段取りはすぐにばれる。動きの密度を上げていかないと、予定調和の大げさな踊りと客が感じたら終わりです。感性を磨いて、何をやって良いかいけないか、その感性に聞くこと。期待しています!
○灘辺佳代子/グアヒーラ。うーん素敵!今まで見たこともないような素直で爽やかなグアヒーラに、心底驚いた。自分の世界を貫いて、最後まで美しかったが、展開にあと少し意外性が欲しかった。また出てー!
○青木千鶴子/ソレア。出るたびに上手くなっている人だが、今回は格段にレベルアップした。あとはコラへをもっと。丁寧に踊っていても、全体にそつのない踊りと見えてしまう。頑張れ。
○坂本恵美/カーニャ。小気味良いマントンさばき。振付を自分のものにしている感じで、非常にあでやか。あと一歩、これでもかというこだわりを見せてくれれば。
△菊原まり/タラント。そこそこ上手に踊れているが、全体に同じトーンで続いてメリハリがない。踊りの輪郭がぼやけた感じになっている。ここぞというところをぜひ。
△佐藤直美/アレグリアス。踊る喜びを身体いっぱいで表現して、思い切りも良いが、まだ踊りが全体に流れてしまう。マルカール、コンパス感、所作をもっとブラッシュアップすること。
△有田ゆうき/ソレア。良く踊れていて、気合いも○。でも、まだ踊りに厳しさが足りない。もっと足音を磨き、動きの緩急も研究して。
○野上裕美/ソレア。密度のある大きな踊りで非常に良い。だが、全体に同じように力が入っていて、焦点がぼやけた。何を感じて、何を伝えたいのか、ここからの深掘りを。
○本多清見/ソレア。抑えの利いた踊り。手数こそ少ないものの、表現は鋭く、鮮やかな印象があって、非常に良い。欲を言えば、もっとペソを。そしてあなたらしいインパクトを。
△平田かつら/シギリージャ。ゴージャスな雰囲気があり、よく踊れている。でもエスコビージャがまだまだ。そこを精査しないと、シギリージャの魅力は伝わらないのでは。
△川口美郁菜/グアヒーラ。雰囲気はあるものの、全体に一本調子で、漫然と踊っている感じ。グアヒーラの魅力は何?どこが好き?そこをきっちり踊りで彫っていって。
○宗形公恵/アレグリアス。キュッとして面白い個性。唄振りはややコミカルに、シレンシオは優雅にと、その落差が良かった。このやり方なら、さらに技術を磨いて欲しい。深い踊りも見たい。
◎岡田知子/ソレア・ポル・ブレリア。堂々と落ち着いた踊りで好印象。エスコビージャの足音が美しい。ただ全体におとなしい印象で終わったのが残念。持ち味を際立たせる工夫を。
△石田祐子/シギリージャ。フラメンコを自分なりにしっかり捉えていて、パソにも凄みは感じられるが、まだ身体に時折ゆるみが見えるのが気になる。頑張れ頑張れ!
○後藤悦子/バンベーラ。身体もできていて、技術も高いし、表現力もある。上手い踊り手だと思うのに、衣装が踊りや本人に全くのミスマッチで、踊りの内容に集中できなかった。残念。

【26日】
△鶴幸子/ティエント。モダンな振付を自分のものとして踊っているが、全体に彫りが甘い。もっと鋭さが欲しい。あと、もっと深い集中力を身につけて。
◎佐藤陽美★/ブレリア・イ・シギリージャ。幕開きのスポットの中でのブレリアは目が醒めるようだった。身体のコントロールが利いていて、スタイリッシュな振付が全て美しい。オレ!
◎阿部和子★/アレグリアス。私の希望の星が、すこぶる腕を上げて登場。何というグラシア。アイレたっぷりで、大好きな振付を心から楽しんで踊っている印象。「見させられている」感が全くない、フラメンコらしいフラメンコ。毎日見たい!
△池野美結/タラント。かなり表現力を必要とする振付だが、まだこなしている段階なのか、全体にエネルギーが小さく、クエルポの表現もエスコビージャも説得力に欠けた。色々頑張れー!
◎稲垣栄子/ソレア。良くコントロールされた演目で、素晴らしい安定感だった。佳き踊り手なり。問題は展開に目新しさがないところか。フラメンコにはドキドキわくわくも必要かと。
○岩丸綾子/ソレア。唄と良く呼応した踊りで、前半はとても良かった。しかし体力がもたなかったのか、中だるみして、ブレリアではエネルギーが不足気味となった。才能は感じるので、まず体力を養って欲しい!
△小山理絵/ティエント。唄振りはまずまず良かったが、エスコビージャの見せ方が地味。観客が飽きてはいけない。あと、もっと身体の中から動きが湧き出るようにして欲しい。ペソ!
◎沖真悠子★/シギリージャ。大きな劇場だというのに、空間の支配力が凄い。身体のコントロールが良く効いていて、訴えかける力が半端ない。劇場が良く似合う、ザ・踊り手だ。楽しみ!
△水町祐子/シギリージャ。小柄だが、強さも鋭さもペソもある。良い感じだったが、後半、集中力に欠けた。フィギュアスケートで後半に4回転が入ると拍手喝采になるのと同じで、最後のあと一踏ん張りも観客は見たいのです。
◎藤本ゆかり★/マルティネーテ。何度も出場してきたあなたの今回の成長ぶりは本当に凄かった。大作を思わせる構成に果敢に挑戦し、魅せることができたことは賞讃に値する。心からオレ!
△石田久乃/アレグリアス。技術的にはまだこれからだけど、とても伸びやかで無理がない。オーソドックスな振付が逆に新鮮に見え、多くの可能性を感じさせた。まだ10代だとか。期待大!
◎大塚歩★/アレグリアス。良く動く身体にコンパスが息づいていて、なんと楽しいこと!難しいことを軽々とこなしているように見せるハイレベルな踊りで、思わずニヤニヤしてしまった。3日間の大トリに最高のアレグリアスをありがとう!

<バイレ・群舞部門>
○斎藤克己フラメンコアカデミー札幌/グラナダ狂詩曲~Rhapsody~。幕開きの美しさは今回の群舞で随一。その後も飽きさせないフォーメーション展開の素晴らしさ、ステージングの見事さには唸った。ただ舞踊のフラメンコ性が足りないため、私には美しい以上の感興が湧かない。群舞としてのフラメンコというところを、もっとやって欲しい。
◎Estudio El Patio/シギリージャ。非常に厳しさに満ちた、真摯な群舞。惜しむらくは、よくよく練習されたフォーメーション展開が、いかんせん印象としては平板で、予想を裏切るものがなかったこと。これ、大事なことだと思うので、書いておきます。舞台を海に浮かぶ平らな氷山に例えると、全体に均等の重さがあって初めて平衡が保たれるが、それは個々が等間隔に同じようなエネルギーで立つことだけを意味しない。上手と下手(客席から見て舞台の右側と左側)に、例えば2対4で立ったとしても、2により強いエネルギーがあれば、見る側の印象として氷山は平衡を保つし、また、時には平衡が崩れそうになることも観客の心をひくという側面がある。ステージングは、単にバランスだけでなく、そういうエネルギーの動きや変化をベースに考えると、もっと伝えたいことが伝わるはず。期待しています!
○島崎リノフラメンコスタジオDaiDai/ロマンセ。沢山の村娘が、皆、生き生きと踊っている感じで、非常に好感度大のステージ。ただただ楽しんで見ていられると思ったら、カンテとのズレが出て、流れが一瞬止まった。残念なことではあったが、スペイン人カンタオールの場合はありがちなことなので、こういう時にどうするかを今後の課題として取り組むのも有りかと。劇場型の群舞だと、おおかたはきっちり決めていくが(照明のきっかけもあるからね)、多少の即興性を盛り込むことが出来たら、そっちの方が格好良いなと、私なんかは思います。
○Hermicanas~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松/タンギージョ・デ・カイ。10代の姉妹らしいが、何とも息ぴったりで愛らしい。懐かしい振付が、こんなにも素直に生き生きと踊られることに嬉しくなった。カディス好きにはたまりません。これからの期待も大!
◎Las Niñas de Belen★/ソレア。曲調を良く捉えたフォーメーション展開が素晴らしく、また、4人の身体にそれがよく染み付いていることが一体感となって伝わってきた。今回も群舞は、様々な方向性の作品があって、正直、点数など付け難いのだけど、このソレアは今回の群舞部門で最もフラメンコ性を感じ、劇場型の群舞としても成功していると思った。奨励賞は惜しくも逃したが、ベレンの皆さんには、またぜひ出場していただきたいな。

瀬田 彰(ギタリスト)[G]

今回私は奨励賞に福嶋さんを推しました。以下、出演順に印象を述べます。(敬称略)

1番・磯谷(ソレア):
伝統的なスタイルのソレア。安定感がある演奏で良かった。但し、右手のタッチが強すぎてノイズ的な音になった箇所が随所にあり残念。一般論だがソロ曲を弾く場合、テクニック面で見るとアルペジオ、プルガール、トレモロなど音量の平均化が出来ることが必須条件。その上でコンパスなりのアクセントを適度に乗せることが良い演奏。過度にアクセントを優先させると凸凹の演奏になってしまう。

2番・大場(ブレリア):
E/Fのブレリア。初頭部分はソレアのファルセータをそのままブレリアのコンパスに移し替えたもの。アイデアは良いがあまりにも長く使いすぎるとフラストレーションが貯まり、ブレリア風では無くなってしまう。ポル・アリーバの雰囲気は良いが、演奏面での音の粒立ちが悪かった。

3番・鈴木(ソレア):
伝統的なスタイルのソレア。丁寧な演奏だが不完全燃焼的な演奏に聞こえた。ソレアの演奏で核となるプルガール奏法の音の通りが悪い。もっとリンピオ(鮮明)な音を求めて欲しい。

4番・福嶋(ブレリア):
伝統的スタイルのブレリア。シギリージャ風なアイレを持った前奏に始まり、最後までブレリアの緊張感を持続させた演奏が良かった。曲中、古風なヘレス風のファルセータも織り交ぜとても良い雰囲気を出していた。

5番・内山(アレグリアス):
リブレで始まるA調のアレグリアス。とても綺麗でテンションがあり心地よい曲作りだが、アルペジオのファルセータなどに音斑があり、はっきり聞こえなかったのが残念。

池田瑞臣(現代舞踊協会)[Bg]

群舞は5作品、私なりの直感的感想をのべさせて頂きます。

①斎藤克己フラメンコ アカデミー札幌「グラナダ狂詩曲」
優雅な作品。幽遠な叙情詩に触れたようで魅かれたが、ともすると起伏か単調。どこか瞬間的でも、心の叫びのような変容が飛び出していたらと思いました。

②Estudio El Patio「シギリージャ」
椅子に並ぶ6名の意気込み。まさに威力的な総力が見える。この力関係を最後までどう持ち堪えられるかとの危惧があったが、動きや構成配分の流れが生かされ、内容が盛り上げられていた。

③島崎リノ フラメンコスタジオ DaiDai「ロマンセ」
純粋な存在感にほほ笑みを感じた。各々の発言の交流も自然体のようで好感だったが、ふと呼吸の乱れの場面があった。かすかだったが動きの戸惑いが、踊りをせばめた感覚を感じた。残念です。

④“Hermicanas”~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松「タンギージョ デ カディス」
華やかで楽しい。舞台を自由闊達に振り舞う明るさ。積極的な表現だったがもっと深さが欲しい。「間」の面白さにも挑戦してみてはと期待しています。

⑤Las Niñas de Belen「ソレア」
変化の続く舞踊構成は、いつの間にか舞台空間を広げて見せていた。踊るそれぞれの目線にも心に通じる語りがあって作品を大きくしていた。快い余韻を受けた。

川上茂信(東京フラメンコクラブ)[C]

今回、東京フラメンコ倶楽部のメンバーとして選考に参加させていただきました。アフィシオナードとしての発言が期待されていると理解して、書きます。印象論的で具体性に欠けるところが多くなるかと思いますが、素人の感想ですのでご容赦ください。
まず、ほとんどの人について、ここを直せばもっと良くなると思ったのがスペイン語の発音です。残念ながら、歌詞が聞き取りにくい人が大勢いました(私が知っている歌詞だと気づくのに2行かかったり)。最低限、個々の音、u や rr をきちんと出すことは心がけましょう(u について言えば、tú は案外難しいですし、特に cuando とか muerte のように後に母音が続くときに怠けないようにしましょう)。もちろん発音を良くしようと思ったら、これで終わりということはないですし、完璧(ネイティブ)な発音を身につけなければいけないわけでもありませんが、カンテが歌である限りは歌詞があり、歌詞には意味があるので、それを表現する努力はして欲しいと思います。そして、テレモートのように何言っているのか分からないけど凄い、というカンタオールはいますが、それは別のレベルの話です。

発音に関して、もう1つだけ言っておきます。それは、単語あるいはフレーズのアクセントに気をつけて欲しいということです。これも、多くの人ができていない点です。アクセントは、コンパスの強拍に当たるとは限りませんし、長く高く歌われるわけでもありません。むしろ、その複雑な関係が面白いのですが、言葉のアクセントがつかないと、のっぺらぼうなカンテになってしまいます。そこに無理に表情をつけようとすると日本語的な、あるいは演歌的な踏ん張りが出て来てしまう。仲間内で歌うのなら、それも個性として面白く聞けるのでしょうが、大ホールで聞くには、やはり居心地が良くありません。ちなみに、スペインのプロのカンタオール・カンタオーラが歌っても、言葉のアクセントがずれることは皆無ではないようですが、これもレベルの違う話です。

以前と比べると、ポップス的な声は減った印象で、不思議なメロディーも少なかったと思います。フラメンコ的な音運びを身に付けるためには、やはり沢山のカンテを聞いてシステムに慣れることが重要です。自由に歌ってしかも通るべき音を外さないというレベルを目指して精進を続けてください。

ところで、歌い始める前のギター部分が随分短い例が散見されました。制限時間内に収めるための苦渋の選択だったのかもしれませんが、良い効果は得られませんでした。ギターが上手くお膳立てをしてくれれば歌い手は随分楽になるでしょうし、聞く側にとっても、そのカンテの世界に入るための準備が欲しいところです。また、歌い手の力量が足りない場合は致し方ないのかもしれませんが、ファルセータが主役のように感じられた例が1・2ありました。これは伴奏の失敗と言って良いでしょう。

全体的な印象はこんなところですが、占部智恵さんのファンダンゴが自然な声と全体の構成感の点で良かったと思います。ファンダンゴは語り物の要素が強いですから、言葉が生きてくると更に良くなるでしょう。また、ギターのファルセータが終わって一呼吸入れてから歌い始める「1拍休み」感がワンパターンなので、その辺りは研究の余地があります。もう1人、小松美保さんのマラゲーニャは、メジーソでもチャコンでもなく、トリーニのスタイルをきちんと歌おうとしていた点が良かったです。トリーニのマラゲーニャは最近取り上げられる機会が増えているようですが、じっくり取り組む価値のあるスタイルですから、ぜひ深めていって下さい。声は多少震えるところがありましたが、自然に出ていたと思います。小林カルメンさんのアレグリアスは、当然とは言えネイティブな響きで、技術的にも安定していたと思いますが、何と言ったらいいか、カンテが流れ気味で、フレージングに違和感を覚える部分が少しありました。敢えて推薦しませんでしたが、これから伸びる余地がまだまだあると感じました。


第26回新人公演「フラメンコ・ルネサンス21」

2017.09.25

選考委員(名前から各講評へリンク)

濱田滋郎(評論家・会長)[G,C]

まずは、第26回新人公演も、なんらの支障も起こらずに無事終了したことを心より喜び、すべての関係者の方がたに厚く御礼申し上げたいと存じます。3日間会場におりますと、フラメンコを愛する大勢の方がたとお会いでき、晴れやかなお顔、お姿、お心に触れて、生き返らせて頂くような感覚を味わいます。「ANIFもこうしてお役に立っているのだな」と実感できるのは、とても嬉しいことです。

全体の「まとめ役」を頂いているので、バイレソロの選考には私は加わっておりませんが、特に数多かった出演者の中から7名の「奨励賞」受賞者が出たことにお慶びを申し上げます。一挙手一投足で観衆の心を奪ってしまうような飛びぬけた人材には今年も出会えませんでしたが、皆さんそれぞれ個性を発揮して、よく踊られたことに疑いありません。賞を得られなかった出場者の中にも、印象に残った人たちはずいぶんいます。ぜひ、更なるご研鑽を、と願っております。また群舞も、8組それぞれのアイディア、振付と技量で、よく奮闘されました。群舞は当公演の華ですから、今後も出場数が減ったりせぬよう、お願いしておきたいと思います。

私が選考委員として加わったギターとカンテに関しては、まず、選考委員の大半が票を投じた森谷忍さんのギターによる「シギリージャ」が圧巻でした。一昨年、その味わいの深さで「話題賞」を贈られたベテランの森谷さんですが、今回は更に腕を磨かれたようです。メルチョール・デ・マルチェーナ流の旧スタイルによる演奏ですが、一面では完全に「自分のもの」として表現されており、ファルセータそれぞれの仕上がり、そして、ひとつのファルセータから次に移る一瞬の呼吸の佳さなど、「これぞフラメンコ!」と、聴きながら胸の内で叫ばずにはいられません。「21世紀のフラメンコ・ギター」の観点を重んじるならば、たとえばやはり「シギリージャ」を弾かれた鈴木一義さん、「ロンデーニャ」を弾かれた池川史洋さんのほうが上位に置かれるでしょう(事実、お二方の演奏はとても聴き甲斐がありました)。しかし、森谷さんには、すべてを超越した、フラメンコの“永遠の真実”が宿っており、それが選考委員たちの心に響いたのです。

カンテの方がたも、それぞれに熱唱されました。往年に比べたら、この部門も全体的水準は格段に上がっています。ただし、まだ「フラメンコとしての声の質」を自分のものにしていられない方、「カナ書き的」な発音に甘んじておいでの方なども散見します。その中で、すこぶる立派だったのは奨励賞に浴された松橋早苗さん。ほかに私が高い点をつけたのは、同じく「シギリージャ」を歌われた齊藤綾子さん。ずいぶん舞台にも立っておられる方で、かねがね思っていたのは「声が美しすぎる」ということでしたが、今回はよく声の「甘味」をおさえ、フラメンコの味に徹しきった感がありました。「ペテネーラ」を歌われたダニエル・リコさんも、この一両年、カンタオールとしての確かな進歩をうかがえました。カンテこそはフラメンコ!今後ともアフィシオナード各位のご研鑽を楽しみにしています。

小島章司(舞踊家・理事長)[Bs,Bg,G,C]

今年のフラメンコ・ルネサンス21はとても充実していた。内容も濃密な作品が多く見られ、とても喜ばしい3日間を過ごすことが出来ました。

バイレ、カンテ、ギターは勿論のこと、一番感動させられたのは群舞部門でした。作品数は多くはなかったが、8作品共にとても異なった視点を持ちながら作品に向き合って創り上げて来た努力が散見され、時に目頭を熱くさせる作品もあった。全出演者の継続し続けてこられた多大な努力と自己犠牲に敬意を表すと共に、更なる発展と前進を祈って私の言葉と致します。以下の文は全作品に触れたものではなく私の視点でとらえた幾つかの作品への私見を述べさせて戴きました。(出演者の敬称は略させていただきました。)

【18日】
<バイレ・群舞部門>
群1奥野裕貴子・SIROCOフラメンコ教室:差別と被差別へのまなざしが色濃く炙り出され、また“母”という言葉の聖性が美を産み出し、ドラマ性を高めた。
群3カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」:美しい夏の日の思い出、胸に大事にしまっていたinfanciaの情景を価値有るものとした。舞踊家となり母となったあなたの慈愛を感じました。
群5Armonía:Lorca-スペイン内戦3人の女たち。不条理と抑圧の下に生きる。その内なる力を熱をはらんで演じ切った。戦さのさ中にも闘い生き抜く強い力を表明する熱気が見えた佳品。
群7La Puerta Abierta:溢れんばかりの白いマントンの波。カラフルな衣裳に包まれた群舞。1960~70年代のヒッピーの時代にコスタ・ブラバやバレアレス諸島で見たフラメンコ・ショーのイメージを思い出させてくれた。

<バイレ・ソロ部門>
和泉冴英香:身体から放たれるエネルギーが一旦濾過されて“ぬけ”感がほしいとこ。
片桐あみん:回転軸をしっかり身につけて。
本多清見:多彩なCádizの空気感が身につくと良い。
橋田佳奈:身体の軌軸の使い方をもっと深く感じながら表現してみて。
谷口祐子:bata de colaやMantónの扱い方とても軽やか。その中にもう少しの重みも加えたい。
庄子裕子:“いたずらっ気”があり自己セールスの能力あり。
佐藤直美:自分の出している速度に抗いながら自在さを謳歌する姿が良い。
池田理恵:“全神経”が最初からフィナルまで張りつめられ、よくmatizarされていた。踊り終わった後¡Muy bien!と叫びました。
牛田裕衣:フラメンコの“間(ま)”が絶妙。肉体から放たれるオーラが尋常ではなく強烈な叫びが聞こえてきた。
平田かつら:劇場の大きさに拮抗する力量を持っていた。熟成という言葉を体感させてくれた。最後はカンテに身を委ねて行く心の大きさも魅力。
大岩奈青:“継続した美の連なり”を創出したのは称賛に価する。深い精神性から伝わって来るものを私たちに伝えてくれた。
平川亜紀:“とてもフラメンコ的なるもの”を胎内に宿しているようなバイレ。ディエゴのカンテにぐっと身心を寄り添わせていたのも魅力が増幅された所。

【19日】
<ギター部門>
森谷忍:非の打ちどころの無いような演奏スタイルを確立され、究極の演奏に到達している。深く心に染み入った名演奏。
鈴木一義:コード進行の豊かさと共にスピードに乗り、一気に走り過ぎる爽快感があった。

<バイレ・ソロ部門>
小島智子:ゆったりたゆたう身体と心の推移が心地良く、身体のラインの美しさをより強調させる結果となった。
鈴木真衣:時折音がビシッと入らない時もあったが、後半のマーチョになってモイの声と共に心の内が震えるのが見てとれた。
瀧野晴美:身体目一杯使っての全力投球、いつも爆発しているような趣。
服部亜希子:足音がとても美しく奏でられたことが大きな魅力の根源となっていた。全体の調和が美をもたらした。
近藤朔:再びこの舞台に戻って来て、フラメンコの深い洞察力と美しさを表現。少しずつ結実して行く姿を見せてもらった。
藤本ゆかり:速いテンポの中でハイテンションを維持しながら続いて行く。その持続性の中の精神力の太さを讃えたい。
川口真理子:“音”に導かれて動いて行く身体の微妙さがもう少し出てくると良いのに…と思った。
西山依里:ボディコントロールが抜群。身体全体のシンクロニサシオンがマッチし所狭しと舞台を闊歩する姿が頼もしかった。
菊池麻由美:ボディラインの流れの美しさを持続し、舞台空間を大きく使いこなし、スペイン民族が培ってきた伝統芸能の様々な様式美までも取り込み、スケールの大きさを示した。
平山奈穂:日本人の中では珍しく、ペソの威力を持続し続けて踊り切った力量は中々なもの。ぶれない軸を操り多彩に踊る姿に拍手。
内田好美:繊細で、表現豊かに溢れ出るよう。時には強烈さも加味すると……。
鈴木雪花:変化に富んだ作品構築。心の豊かさと舞踊への思いの深さが相乗効果で良い展開となった。
山本由紀:パリージョスの響きが冴え亘る。メリハリ良く展開する中で美しい“小宇宙”を創り出していた。
小河由里子:舞踊が大きく見えた。“そこにスペインがあった”そんな雰囲気を醸し出していた。後半過剰なコマーシャリズムが所見されたが、少し控え目の方が余韻が残るのでは。
寺嶋いずみ:後半タンゴスに入ってから冴え冴えとした所作が随所に散りばめられ、楽しいシーンを創り出した。
竹村歩:もう少し“ため”の感覚を身に付けられればフラメンコの奥深いものlo jondo が染み入って来るのでは。
黒木珠美:身体の隅々までよくコントロール出来ていた。舞台空間をバランスよく使いこなす力量を感じさせた。
田中実華江:“間”の取り方が絶妙。ギリギリまで耐えて次のパソに移行することで生まれる所作と足音のソニケーテの連鎖が美を生む。
岡田麻里:起承転結を良く考えた構成となっていた。
富永央子:愛嬌を沢山振りまいて踊る所が、今はやりの言葉“かわいい”を醸し出しチャーミングな一曲とした。

【20日】
<カンテ部門>
松橋早苗:ペペ・マジャのギターと共振しシギリージャの奥深い味わいを出していた。

<バイレ・ソロ部門>
佐渡靖子:事の始まりは美を極めることから。マントンの動きがスタティックさを強調。最初から最後の瞬間まで気を張り詰めた所作の連続にもゆるぎなく、称賛に値する作舞。
齋藤朋之:独特なcolocaciónがユニークさを際立たせ、特別な“間”を創り出すことに成功。
堅正はるか:熟考され尽くした作舞となっていた。カンテやギターとのコミュニケーションも抜群でmuy profundoな踊りでした。
河合浩子:はじける気持ちが楽しさに向かって突き進み、何か“次の予感”をさせてくれるものが生まれ、スピード感も程良かった。
佐藤陽美:エネルギーに満ち、予期せぬようなシーンが生まれるのでは……と期待してしまう踊りっぷりでした。
津田可奈:嘆きがテーマなのでしょうか。速さの妙を身体中で表現し濃密な空間を創り出した。肉体的鍛錬も素晴らしいものだった。
久保田晴菜:舞台からはみ出しそうな位の意気込みを感じさせた。1つ抜け出した感を抱かせるバイレだった。
津幡友紀:ロマンセはロマンセ・ヒターノとも言われているが、とてもアイレ・ヒターノに近づこうとしている思いが伝わって来たが、その中に少しの抑制をきかせるともっと良くなるのでは。

歴代受賞者のエキシビションとなった最終出場者、カンテの山田あかりの磨かれた声の響きに納得させられた。バイレの正路あすかのどんと腰の据わったソレアに「近代から現代」へと移って来た証しが見てとれた。

山田恵子(舞踊家)[Bs,Bg]

今年は暑いだけではなく、地震や水害等で苦しんでいる方々が世界中に多勢いらっしゃいます。その中で幸いにも支障なく舞台に専念出来た皆様に接し、ほっと致しました。毎年この総評を書く度に思うことは、参加された皆様全員に何らかの賞を差し上げられたらという思いがあります。この気持ちをどうぞお察しください。

さて、御受賞の皆様おめでとうございます。感じたことを書かせて頂きますが、甲乙つけがたい踊りに大変苦労致しました。まずシギリージャを踊られた服部亜希子さん、この曲を踊りこなすのはとても難しいです。イメージをしっかりとらえた貴女の踊りは、味わい深いものでした。平山奈穂さんのソレアはカンテと貴女の奥深い嘆きがすばらしかったです。黒木珠美さんのソレアは踊りの流れが見事で、特にブエルタからの次のパソに移る瞬間が美しく、静と動のハーモニーと共に空間に花が咲きました。佐渡靖子さんのシギリージャは、何てカンテを大事に踊るのかと心を打たれました。特にサリーダです。色々なスタイルがあると思いますが、ギター・カンテと始まり踊りが入ってくるその瞬間を、私は大切に拝見します。ここで決まると言っても過言ではありません。カンテを静かに聞き入る、そして思いのたけを踊り出す、これぞ本来のフラメンコの姿で、三位一体だと思うのです。カンテのすばらしさをサパテアードで邪魔をしてはいけないと私は教えられました。堅正はるかさんのタラントは、とても個性あふれる重厚な踊りでタラントの持つ独特な味わいが表現されていました。津田可奈さんのシギリージャは、自分の心をすべて出し切った極限の世界を踊り、踊りの強弱と間の取り方がすばらしかったです。久保田晴菜さんのソレアは、体とリズムが戯れているように見え、また最後のポーズがなかなか良い感じで振付の妙味でした。皆さん、出と入りを大切にしましょう。

わずかな差で準奨励賞の佐藤陽美さんは、スペイン人のような雰囲気があり、好感度大。あと少しの努力です。

群舞ですが、私は毎年同じことを申し上げています。それは群舞のすばらしさはソロでは表現できないことを人数で表現すること(同じ振付を多勢で踊らないで)。ダンサーがお互いの個性を認め合い、テーマをはっきり意識して創作する、個々の動きがいつの間にか1つになっていく、そのプロセスの面白さを考えましょう。構成・振付・センスが大切で、もしユニゾンで踊るなら、ボリショイバレエのように、背丈・体重・体形等あらゆる条件を満たし、一糸乱れず踊って表現できるならOKです。今回私はカンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」を選びました。子供達のテクニックはまだ未熟な部分が多々ありますが、難しいリズムを身につけてのびのび踊っていて感動致しました。ご指導なさった先生、センスが良いです。拍手です。これからが楽しみですね。

受賞されたArmoníaは3人の踊りがそれぞれすばらしい、個性豊かなダンサーなので、ユニゾン的に踊ると少々つまらなくなります。もっと色々なパートを考えて遊んでみたら面白かったのにと思いました。構成でがらっと変わりますし、更に良くなります。

同じことがグアヒーラにも言えます。男性2人の対話でしょうか?話が聞こえてくるようで面白いのですが、やはり2人がほとんど同じ振りを踊りましたが、達者な2人ですからやはり構成を考えたらいかがでしょう。私は群舞の創作が大好きです。

以上ですが、他に心に残った方々は、有田ゆうきさん、大井昌子さん、久貝輝代さん、小宮山葉子さんです。来年また更に良い踊りを期待しております。お疲れ様でした。

三澤勝弘(ギタリスト)[G]

<ギター部門>
今回も、出演された方たちの水準が高く、嬉しく思いました。
1)塩谷氏:冒頭部はしっかりと聴こえ、印象が良かった。ただ、親指での表現が平坦かと。また中心となるべき部分の印象も弱く、その骨太さが望まれます。
2)森谷氏:主張が以前にも増して明確になっておりました。しかし、曲の性格上、より微妙な動き、空間、音色などの扱いを今後の課題として下されば、と思います。
3)池川氏:とても進化されたというのが第一印象。弱い音での音の出や表現に一層の磨きが必要かと。立ち上がりや輪郭など…。
4)福嶋氏:冒頭部はとても印象に残りました。中盤に入りフラメンコ感に安定さを欠いたかと。全体に表現に厚みが望まれるかと。
5)和田氏:輪郭が弱く細い印象でした。演奏(表現)が前方へと向かってくる気配がないと感じました。技術の更なる向上と“情”の置き方や音楽的表現、更にその奥に在る“心”の部分を探求されることを望みます。
6)鈴木氏:しばしば現れるラスゲアードが少し指先に力が入り過ぎているのでは、と感じました。親指を①弦開放音(人差指)との響きに緊密さが欠けたか。中盤は集中感があり好印象でしたが、ポイントを絞っての大きな表現のところがあっても、と思いました。
7)内山氏:とても音楽性があると思いましたが、冒頭部を除くと、独奏(ギタリストひとりでの演奏)の表現をとしては、中味がはっきりせず、外観の雰囲気だけが印象に残ってしまいました。

全ての方も素晴らしく、将来性を持ち合わせておられましたが、参考とされたもの、あるいは作・編曲にあたって、パルマも含めて他との重奏などの要素を持ち込んではおられなかったのか。独奏としては食い足りない演奏が目立ちました。

小林伴子(舞踊家)[Bs,Bg]

毎年の事ですが、今回も101組の皆さんの熱い思いとエネルギーに圧倒されました!フラメンコ自体の技術の進歩にともなって、新人公演のレベルも毎年上がってきているのは当然のことなのでしょう。奨励賞を目指す人、新人公演を発表の場として挑戦する人、目的は様々だと思いますが、何度かの出演を重ねている方たちが、確実に進化している姿を見るのは嬉しいものです。
以下は私の個人的感想を出演順に記述します。

<バイレ・ソロ部門>
18-8池田理恵さん:ドッシリと堂々としたシギリージャは群を抜いて素晴らしかったのに、時間オーバーで失格になってしまったのが惜しまれます。
18-20平川亜紀さん:ノリの良いソレア・ポル・ブレリアが気持ち良かった。
19-13服部亜希子さん:ブラッソとマノの動きがサパテアードや体の動きを増幅させ表現力豊か。
19-23平山奈穂さん:ドッシリした体格を活かした迫力のイントロでした。
20-18佐渡靖子さん:今年はバタ・デ・コーラやマントンでの出演がとても多かった様に思います。多くの方がバタやマントンを巧みにさばく事が目的になってしまっている様に見えましたが、佐渡さんはバタやマントンを自己の感情表現のツールとして使っていて素晴らしかった。
20-30津田可奈さん:巧みな構成を活かした技術と感情表現でドラマを感じました。
20-32久保田晴菜さん:堂々と品格のあるソレアでした。

<バイレ・群舞部門>
群舞で私が票を投じたのは、18-9奥野裕貴子・SIROCOフラメンコ教室です。出演者の個性を活かした発想と構成、それを熱演した踊り手達、素晴らしいと思いました。準奨励賞のカンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」の小さい皆さんもすばらしかったし、LAMA y SONACAYのduoも見せ場たっぷりでさすがでした。
今年の群舞部門は多種多様なアプローチを見る事が出来、とても見応えのある回となりました。それ故に評価の基準も難しく、悩ましい事と成りましたが、選考する側にも、様々な価値観がある事でバランスが取れているとも思いました。熱い3日間の101組の皆さんへ心より大きな拍手!です。

飯ヶ谷守康(ギタリスト)[G,C]

<ギター部門>
2番目に演奏された森谷忍さんが奨励賞を受賞されました。ギターの部は7名の出場でしたが、その中では森谷さんの演奏が最も優れていたことは紛れもない事実でしょう。
確かに伝統的過ぎる?スタイル、難しいテクニックの不使用、地味、そして、えっ?…なんで?…というところも、あるにはあったのですが、ウソ、ハッタリが無く、ひとつひとつの音を“噛みしめる”ような気遣いのこもった弾き方に好感を持ったというのが奨励賞に値する、という判断に至った最大の理由です。
他の出場者に共通して感じたこと、それは細部の不完全さがちょっと多過ぎた、というところでしょう。例えば、1本調子なラスゲアードと親指の使い方、ファルセータやリズムの抑揚感の不足、更にメカの切れ目や左手のポジション移動時での最後の音がハッキリと出ていないことが多く、これでは説得力が大幅に減少してしまいます。最大限に気を付けて欲しいところです。なお、コンパスの理解で、えっ?あれっ!…という感じがあったのも残念なところです。
そんな中、グァヒーラスを演奏してくれた和田健さん、とても素晴らしいセンスの持ち主ではないか、と感じました。ただ残念なことに音が弱く感じられてしまいました。緊張からのことなのでしょうか…!?これからに期待しています。頑張って欲しいと思います。

<カンテ部門>
6番目に唄ってくれた松橋早苗さんが奨励賞を受賞されました。ちなみに、昨年も出場されていたのですが、いくつかの残念だったことのほとんどを、今回は修正できていたようです。わざとらしい発声や演技をしている感が無い、そして無理せずストレートに勝負している感じが気持ち良いですね。また、息の使い方がとても丁寧なこと、子音の発音が素早く、母音で唄おうという気遣いが感じられるところ、更に大きな声を出しても煩く感じられないことも魅力です。
なお、私の好みを言わせていただけるとすれば、マラゲーニャを唄ってくださった深谷恵子さん、とても良い感じだと思いました。ただ、イントネーションでの息の使い方がもう少し、と感じました。今後に期待してしまいます。
いずれにしても、真正面から自分の持っている技術の最高レベルを、細心の注意と大きな度胸でぶつかる…昔から言う“繊細且つ大胆”ということが、最終的には不可欠なようです。

今田央(ギタリスト)[G]

今回は今までになく迷いました。新人公演の意味とか、作曲力とかも評価すれば別の選択もありました。ただ予選も課題曲もなく、自作である縛りもない新人公演では当日の演奏だけで評価すべきという立場で森谷さんを奨励賞に推しました。自作曲で臨んでいただいた方にはそこを汲めず忸怩たる思いです。

塩谷経
イントロは良い感じではじまりましたが、コンパスを刻むあたりからちょっと緊張感がなくなったように思いました。D#のキーによるブレリアは音を重ねやすいので普通にアルペジオだけでも広がりのあるフレーズが作りやすいのですが低音成分が響きすぎタッチがしっかりしてないとぼやけたフレーズになります。途中P指によるフレーズが続いたあたりはコンパスも感じられなくなりました。全体に言えるのはリズムの安定感が弱く、かなり前のめりですね。アクセントをもっと引っ張り気味に感じましょう。ゴルペの音がちょっと耳障りなのも気になりました。

森谷忍
やはり先人の作ったファルセータは神だと確信しました。少ない音とコード展開ながらシギリージャの世界を構築しています。もちろんそれを表現できる森谷さんの力量があってのことですが。ギターの音色、間とも今回抜きん出てたと思いますし、フラメンコってこういう音楽だったんだと改めて納得させる力がありました。

池川史洋
曲の展開、コンパスの安定感、さすがの演奏でした。前半、pianissimoのフレーズやアルペジオが埋もれることもありました。PAとの相性もあるのでしょうがアルペジオはもっとクリアで硬い音が欲しかったです。トレモロも含め全体に高音弦側が弱いと思いました。後半の安定感は実戦で培った賜ですね。自然なグルーブが出てたと思います。

福嶋隆児
最初のファルセータ(パリージャ?)は音、間ともに素晴らしかったです。イントロのラスゲアードは踊り伴奏っぽくそぐわないかなと思いましたが。
その後はちょっと弾き急いでしまいましたね。トラディショナルなファルセータでまとめて好感の持てる構成ですがアルペジオは音が分離してないですし、アクセント毎のゴルペ音も気になりました。PAのせいもあるのでしょうが破裂音に近かったです。ゴルペやラスゲアード等音量でアクセントを表現してはいけません。あとP指のタッチをもう少し研究してみてください。現状でも音は良いのですが太さに欠けますし早いフレーズに追いついてない感じです。

和田健
ちょっと単調な演奏になってしまいました。自作曲ということですがあまりコードやリズムの展開もなく奏法のバリエーションのみで展開していくから踊り伴のファルセータみたいです。グアヒーラにはそういう面があるのかもしれませんが今一つフラメンコ的熱を感じられませんでした。タッチが弱いせいもありますね。コーダのラスゲアードからはブレリアの感じ方がまだ甘いように見受けられます。ブレリアのリズムをもう少し研究してみてください。

鈴木一義
テンション高いイントロで期待が高まりましたが気持ちを制御しきれなかったようです。自作、コピーを良いバランスで混在させ構成はとても良かったです。後半転調してからの畳み込みは日本人としては異例の創作だと思いますが、余りにも前のめりすぎてフレーズが聴き取れません。左手が右手に追いついてない感じですね。ツッコミ気味に弾くと低音部のスラーがつまっています。
技術的には素晴らしいものをお持ちです。この曲、温めて行ってください。

内山友樹
作曲力もさることながら時折織り交ぜるピカードの正確さ、かなりのテクニシャンですね。中段のファルセータは個人的には単品で賞を差し上げたいくらいです。ただファルセータの部分は良いのですがコンパスを刻む段になると頭ノリの余裕のないリズムになります。突っ込むという程ではありませんがアクセントを音量で捉えているのか大音量のゴルペも重なるので音楽に集中できません。踊りや唄の伴奏を通じてブレリアの刻みを磨いてください。このままでは惜しいです。

大塚千津子(舞踊家)[Bs,Bg]

新人公演出演者の皆様、大変お疲れ様でした。今年も拝見させて頂き皆さんのバイレに感動と刺激etcと沢山の思い感じた3日間。有難うございました。
ソロ・群舞奨励賞受賞の皆様、心よりおめでとうございます。日々精進を重ねた成果の受賞が今後の新たなエネルギーとなり益々飛躍への一途となり邁進されることを願いご活躍お祈りしてます。
ソロ受賞の皆様に感じた事、諦めずに挑戦し続けたお一人お一人から今年こそという最後の執念?と思える渾身のバイレでした。その募った思いを燃え立たせた気迫さが満ち溢れ圧巻!完成度高いバイレに優秀の美を感じました。素晴らしい変貌遂げしバイレに賞賛!
群舞で奨励賞を受賞された「Armonía」。実力あるお一人お一人のフォルマと個性が融合とぶつかり合ったコラッヘ!とても見応えあり個人的にも好きでした!
ソロ準奨励賞の佐藤陽美さん。若さはち切れたバイレ、フラメンカな気質に成長楽しみです!頑張って下さい!!
群舞準奨励賞受賞・カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」。お子様達の群舞はとにかく理屈抜きでゆるむ心はばからず楽しく拝見しました。結構難しいフォーメーションをほんとに良く動いて一生懸命バイランド。ピュアな表現にも心和みました。ご指導大変だったと思いながら、子供達の希望列車“たからもの号”の未来を見つめながら元気に走り続けて欲しいです。

受賞されずとも印象に残った皆様。期待込めてのエールを送らせて頂きます。主観にてご容赦下さい!
【18日】
和泉冴英香さん・時折足元のぶれに残念、身体の求心力強化を!
片桐あみんさん・基本をしっかり踊られた10代等身大のバイレ、将来楽しみ!
谷口裕子さん・華やかな持ち味備えエレガンテ! 緩急に表現力を。
庄子裕子さん・内外に発するフェルサ足りず、コラッヘが欲しい!
牛田裕衣さん・ダイナミックで安定感あるバイレ。タンゴ惜しい~!
平田かつらさん・コラッヘと存在感あっただけにタンゴ盛り上がらず残念!
大岩奈青さん・表現力おありなのでテクニックの研磨を。
平川亜紀さん・持ち味を出し切れずとても残念、更にテクニック研磨を。

【19日】
藤本ゆかりさん・特に溜めと抜きでしょうか。
西山依里さん・柔軟なコンパスがグルーブ、逆に全体が流れてしまったのか!緩急を。
菊池麻由美さん・モダンでダイナミック、素敵な個性を感じました。
有田ゆうきさん・とても残念、期待大!
鈴木雪花さん・テクニックにコンパス感おありなのでアイレを、身体とのバランスからマントン大き過ぎた感あり。
岡田麻里さん・テクニック全般のレベルアップを。
富永央子さん・アイレそして内なる映えをもっと放って!
佐野裕子さん・とても雰囲気あってバイレを楽しまれてる様に好感を持ちました。

【20日】
津幡友紀さん・泥臭いアイレでのコンパス感、特異なセンティードにも目が離せなかった!フォンドなバイレを是非。
山内佳代子さん・歌振り流れてしまった感有、ペソをもっと下に。

今回はバタ・デ・コーラが多くてびっくり!マントンにバリージョ等とテクニック配分難しいバイレに挑戦された皆さん、その心意気に拍手!!そして男性皆様へは、更なる精進を重ねそれぞれのバイレとステージアップを目指してください!近藤朔さん、進化なさり嬉しく思いました。お元気に邁進なさって下さい。

総評及び雑感…ソロにつきましてはレベルも高くなり選考結果が割れたように思えました。群舞はそれぞれの良さもあり何をもっての選考か、でした。他群舞につきましては前年度等を思い起こすと、群集の迫力での醍醐味に欠けていたように感じました。群舞の難しさは痛感しております。
「LOS TARANTOS京都」はドラマチックで主軸となられた方に魅入りとても楽しく印象深い楽しい作品でした。「デ プエルト ア プエルト」では最初にバタで少し踊られた方がムイ フラメンカ!他皆様のレベル向上目指して下さい。
衣装については、より洗礼されたデザインやノスタルジー感漂うスタイルを取り入れたり、また曲調での色使いに拘る方等とバリエーションとても豊かでした。同じヌメロ続くのは歪めない新人公演ですから、衣装もほんとに大事です。今年も賞に限りなく近い方、可能性を感じる皆さん、是非諦めずに挑戦を。最後に、今回も照明で皆さんのバイレが事の他際立ち映えていました。益々凝ってきているような!新人公演の醍醐味!!

岡本倫子(舞踊家)[Bs,Bg]

久々に選考委員として3日間に渡ってバイレソロ、バイレ群舞のすべてを拝見させていただきました。近年バイレの技術的なレベルが確実に上がっていることを痛感し、とても感心いたしました。出演した半数以上の方々には技術的レベルでは甲乙つけがたく奨励賞候補として投票することは困難を極めました。ここで印象に残った方々への感想を一言ずつですが述べさせていただきます。

<バイレ・群舞部門>
・カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」
小さなフラメンコスたちに「オーレ!」です。
・Armonía
気迫に満ちたマルティネーテ イ シギリージャでした。3人の動きが速いテンポの中でもピタリと揃っているのは圧巻でした。
・LAMAySONACAY
プロ中のプロお2人のグァヒーラには奨励賞はそぐわないでしょう。とても楽しいものを見せていただきました。ありがとうございます。

<バイレ・ソロ部門>
【18日】
・和泉冴英香さん トップバッターで登場というプレッシャーの中、ペソのある落ち着いたタラントでした。タンゴになってからも力が抜けなかったのは残念です。
・片桐あみんさん シギリージャの難しいリズムを確実に踊っていてこれからが楽しみです。
・谷口祐子さん バタ・デ・コーラとマントンの捌きはすばらしいと思いましたがバタとマントンの動きの中にアレグリアスのコンパスが感じられるものが欲しかったと思います。
・庄子裕子さん 柔軟なからだの動きで魅せてくれました。タンゴに入ってから顔の表情でタンゴらしさを表現する感じになってしまったのが残念です。
・佐藤直美さん 恵まれた身体をいかした振りでしたがブラソをもっと大きく使うと存在感が増してくると思います。
・池田理恵さん 振りに追われることのないとても感動的なシギリージャでした。時間オーバーでの奨励賞候補失格が大変残念でなりません。
・牛田裕衣さん とてもフラメンコ性を感じましたが動きが多い振りにはボリュームがありすぎる衣裳と髪飾りの多さは一考の余地があると思います。
・平田かつらさん 全体的に安定感のあるとてもしっかりした踊りでしたが時として重心が上にいきすぎて身体がぶれるのが気になりました。
・松下ひろみさん 長い手足を十分に生かした振りでとてもペソを感じさせてくれるシギリージャでした。
・大岩奈青さん ペソのあるシギリージャでした。ブラソにフェルサが増すと完璧です。
・平川亜紀さん 絵に描いたようなムイフラメンカな衣裳と小気味良い踊りっぷりがぴったりでした。

【19日】
・服部亜希子さん 凝縮された集中力と硬質な個性で踊った見事なシギリージャでした。
・藤本ゆかりさん 安定感がある振りでとても魅せてくれました。
・西山依里さん とてもフラメンコ性を感じさせてくれるタラントでした。
・菊池麻由美さん 恵まれた身体を生かした動きで舞台での存在感が抜群でした。肩が上がって首がなく見えてしまう衣裳の襟元が残念でした。
・有田ゆうきさん 安定感のあるソレアでした。
・平山奈穂さん 恵まれた身体から繰り出されるフラメンコは風格さえ感じさせてくれて圧倒されました。
・鈴木雪花さん 自身の見せ方を知った動きとステージ使いがとてもよかったと思います。
・小河由里子さん シンプルな振りながら十分魅せてくれました。
・竹村歩さん 小気味良い踊りっぷりがよく似合う衣裳とマッチしてとても素敵でした。
・大井昌子さん 足の強さが素晴らしくしっかりした印象でした。
・黒木珠美さん 安定感のある動きと華のある存在感で魅せてくれましたが後半の動きと表情の多さが多少気になりました。
・田中実華江さん とてもいいタンゴを見せていただきました。
・岡田麻里さん とても密度の濃いソレアでした。
・佐野裕子さん 大人のソレアを見せていただきました。

【20日】
・相田良子さん とても印象に残るソレアでしたがブレリアに入ってから焦り気味になってしまったのが残念でした。
・野上裕美さん 踊りは巧いと思いましたが常に客席に向かって投げ掛けられる視線が気になりました。
・菅家寿幹さん 進歩のあとがみられます。前傾姿勢からくる体幹の弱さが後半のぐらつきに繋がったと思います。
・伊藤千紘さん 小柄ながら身体全体に凝縮されたパワーで安定した大きい存在感を放っていました。
・佐渡靖子さん スケールの大きいフラメンコの世界に感動しました。
・齋藤朋之さん とても味のある踊りを見せていただきました。下半身のバランスの取り方を安定させるとより存在感が増すのではないでしょうか。
・堅正はるかさん 媚びが一切ないフラメンコ。安定した動きとステージ使いが見事です。
・久貝輝代さん バタ・デ・コーラがとてもお似合いの身体と雰囲気をお持ちです。マントンとバタ・デ・コーラの一層の鍛練を期待します。
・河合浩子さん アンティーク調の衣裳は素敵でしたが切れの良い踊りには合わない印象を受けました。
・佐藤陽美さん 安定した足捌きと切れの良い動きが素敵でした。 
・久保田晴菜さん とてもペソのある美しい身体使いのソレアでしたが常に微笑ん見える表情に多少違和感を覚えました。
・津田可奈さん 動きの多い振りを抜群の安定感とリズム感でこなして見事なシギリージャでしたが衣裳の襟元の長いフレコと光りすぎの髪飾りが観る側からするとかなり邪魔になっていたように思います。
・小宮山葉子さん 個性的な衣裳で踊ったソレア・ポル・ブレリアは安定感もありとても素敵でした。
・津幡友紀さん ペソがありムイフラメンカなステージを堪能させていただきました。

片桐勝彦(ギタリスト)[G]

皆さん、新人公演お疲れさまでした。音色や奏法上の点で気が付いたことを、一言ずつ述べさせていただきます。

塩谷経:変則チューニングの難しいブレリア。テクニック的には一番難しい曲だったと思います。レの音に下げた6弦の音が両用のギターからよく響いていました。この速いテンポをパルマなしでキープ出来たのも、塩谷さんの技術の高さがうかがわれます。ただ逆を言うと、もう少しテンポを落として更にコンパスが浮き上がるような演奏になれば、もっと良かったと思います。和音からメロディーに移る部分やピカードからプルガールへの切り替え部分などで、若干のリズムの乱れがありました。その他、速いパッセージの後や休符時に少し走ってしまったのが惜しかったです。しかしこの難曲がゆえの乱れなので、良く弾けていたことには間違いありません。前回のソレアや前々回のブレリアもすべてが難曲でした。一度テクニック的なことから離れて、呼吸や音色に集中して感情移入のできる曲作りを考えてみてください。

森谷忍:奨励賞受賞おめでとうございます。前奏のラスゲアードの後のグラネアードの音色、それに続くアルペジオのキレの良さ、ビブラートのニュアンスなど、出だしから魅了されました。前回の話題賞の選考理由である「豊かで美しい音色」は、このシギリージャの澄み切った一音一音でも感じられました。右手に無駄な力が一切入っていないことと、前回も書きましたが自然なゴルペの音量バランスなどが全体の音色を決定づけています。最近のフラメンコ奏法ではあまり聞かれなくなった右手のつま弾きによるファルセータも、絶妙な呼吸や間と相まって、シギリージャの特徴を醸し出していました。そして印象的なエンディング。演奏の最後は迫力のある音で派手に終わらせることが多いですが、最後の素朴な単音ラの音が印象的です。森谷さんの無心で、そして集中して最後まで弾ききった今回のシギリージャを聴いて、間や呼吸や音色の大切さを強く感じました。

池川史洋:昨年のブレリア同様、太い音色と絶妙な強弱や緩急で安定した演奏でした。6弦のD音も両用ギターの音色を引き立てていました。池川さんの弾くピカードやラスゲアード、アルペジオなどの奏法はどれも曲の中に溶け合っていて、自然に聞こえてきます。つまり良い意味でのプロの演奏とでも言いましょうか。そして後半のリズムになった箇所も安定していて、コンパスもしっかり聞こえてきました。強いて言うならば、1弦のトレモロが少し速すぎて聞こえにくかったことです。トレモロ時のp指は理想的でしたので、ima指が速くならないように気を付けてみてください。奨励賞に値しても良いほどの好演奏でした。

福嶋隆児:迫力のある演奏でした。ピカードとプルガールのコンビネーションも良かったです。全体を通して気になったのは、ラスゲアードの音色です。力を入れすぎて時折、音が割れてしまってました。手首を使うアバニコ奏法時に腕が少し大振り傾向にあるのと、チョルリターソ時などは ami指のタイミングが少し速すぎて音が分離していない時もありました。それと、ゴルペの量が多くて音が大きすぎるので、少し減らしてみては如何でしょうか。

和田健:毎回楽しませて頂いてる和田さんのオリジナル曲。今回のグアヒーラも所々好きな感じのフレーズがありました。途中ミストーンも多少ありましたが、そのことよりもずっと下を向いての演奏が気になりました。高音部のメロディーなどギター全体のポジションを使った曲作りは良かったのですが、ローポジション時では顔を上げることによって、音もさらに前に出てくると思います。しっかりとしたタッチで弾ききった前回のソレア・ポル・ブレリアに比べると、ちょっとおとなしく感じられたのも、顔の位置や弾く姿勢などにも関係してくるのかもしれませんね。そしてまた今回もエンディングのピカードが上手くきまってました。

鈴木一義:全体的に力が入ってしまって、音がつぶれてしまってました。ラスゲアード時に指が伸びきってしまっているのも原因の一つです。楽器や指にもかなりの負担がかかってしまうので、乱暴な弾き方にならないよう注意が必要です。オクターブ奏法時に高音部の音がプチプチと切れてしまうのは、左手の移動が速すぎるからです。ギリギリまで押さえてからポジション移動をしてみてください。そして、細かい音や速いフレーズほど丁寧に弾くように心がけてください。特にカバーレスの部分が気になりました。以前弾いた変則チューニングのブレリアからは今回180度違うタイプの曲でよく頑張ったと思います。次回も期待しています。

内山友樹:Dbのブレリア。高い演奏技術もさることながら、作曲も編曲も一流でした。 ami 指のアポヤンド奏法はビセンテ・アミーゴのような音色と力強さで、ラスゲアードやプルガール奏法とのコンビネーションも良かったです。ゴルペの音量が少し大きすぎる部分もありましたが、その分迫力がある演奏でした。ポジション移動の際も指板を見ずに弾けるのは、それだけギターに慣れている証拠ですね。そして自分の音をしっかり聞いて演奏しているのも印象に残りました。いつかリブレの曲も聞いてみたいです。

加部 洋(プロデューサー)[G,C]

<ギター部門>
ひと昔前に比べれば、世代交代がなされ、若くなり、演奏スタイルもモダンなものになってきた。そのレベルも一定の高さを保っている。気にとまった出演者を書きます。

森谷忍君●とにかく驚いた。一昨年のタランタより更に磨きをかけたシギリージャだった。年配者は衰え行くものの真逆で、進化していた。微妙な音色変化が素晴らしかった。池川史洋君●好んで弾かれる変則チューニング。その深い低音の響きのメリットを十分に生かし、ドラマティックに構成した演奏だった。ちょっと気になったのは高音域のパッセージとトレモノの高音の不鮮明だった。福嶋隆児君●踊り伴奏で鍛えた演奏のキレが大変良かった。高音域のフレーズの歌わせ方が素晴らしかった。ちょっと気になったのは、バランス的にゴルペの音が大きかったことと、3連符のラスゲアードのキレだった。和田健君●毎年出場の和田君。何度かの出場中、今回が一番良い出来だった。自身作曲のグアヒーラはメロディラインが自然で美しかった。グアヒーラらしかった。ミスタッチが惜しい。鈴木一義君●独特の思い入れに基づいたシギリージャ。演奏も高度で、一つの世界観を表現していた。しかしどうしても理解できない部分があった。

<カンテ部門>
毎年楽しみにしているカンテ部門。今年も多士済々の出演者でたっぷり楽しませて頂いた。カンテはなかなか上手くならないものだが、努力のあとが見られる出場者が何人もいた。気にとまった出演者を書きます。

深谷恵子さん●サリーダも良く、気持ちを込めて細かいところまで丁寧に歌っているところに好感が持てた。全く正統な歌い方だった。今までで一番良かったと思う。努力すれば上手くなるということの好例。山田裕子さん●情感、思いの丈を目いっぱい振り絞って歌っているところが普段の山田さんではなかった。これは凄かったという意味。声がかすれるほどの熱唱だった。カバルになって更に山田さんらしくなった。中山えみ子さん●素晴らしいサリーダから始まった。デリケートな節回しを克明に正しく辿っていて、言うことなし。音程も乱れなかった。明らかに上手くなっていた。一票を投じました。ダニエル・リコ君●いつも楽しみにしているが、今回はいつものダニエル君の良さが無かった。音程が不安定で、節回しもスムーズでなかった。残念。田中敏郎君●田中君も今までになく良かった。ダンゴに移る当たりからノリノリで楽しめた。はっきりと成長のあと。齊藤綾子●上手いし、声量もあり熱唱なのだが、どこか平板に感じてしまうところがある。強弱緩急をつけてドラマティックにして欲しい。

鈴木敬子(舞踊家)[Bs]

【18日】
和泉冴英香さん/トップバッターのプレッシャーを感じさせない力強い踊りでした。片桐あみんさん/わずか10歳でどうどうと大きな舞台でソロを踊るのは大変なことです。身体がブレるところなどありますがこれからが楽しみです。谷口祐子さん/上手く綺麗に踊れている。マントンやバタ・デ・コーラのテクニックに追われ身体がブレてしまいがち。余裕が出るまで踊り込んでいって欲しい。庄子裕子さん/ブラッソの使い方が綺麗。体の軸がしっかりしていて安定していた。池田理恵さん/フラメンコ的なペソがありとても安定していて良かった。バックのアルティスタと良い感じで盛り上がり、特に曲の後半テンションも上がり観ていて引き付けられた。タイムオーバーで選考外となってしまったことが本当に残念だ。牛田裕衣さん/力強くテンションの高い踊り。これからは一定の強さだけではない様々な表現が加わればもっと良くなると思います。平田かつらさん/安定した冷静な踊り。丁寧に練習を重ねてきたのが見えた。松下ひろみさん/キレがありブレない身体でとても良かった。山形志穂さん/正確なパリージョ。パリージョを持っていてもブラッソまでしなやかな女性らしい美しい踊りでとても良かった。

【19日】
小島智子さん/滑らかなブラッソとクエルポの使い方が美しかった。もう少し踊りに重さが加われば更に良くなると思う。鈴木真衣さん/ブエルタのキレが良かった。最後バックに頼りすぎたように感じた。服部亜希子さん/安定した力強い踊りでとても良かった。サパテアードのレベルも高く、曲の後半が特に盛り上がり観客を引き付けた。近藤朔さん/味わいのある踊り。前回もそうでしたが、今回も記憶に残りました。髙野正子さん/マルカールの時のブラッソがしなやかで美しかった。表情から踊ることを楽しんでいることが伝わった。藤本ゆかりさん/力強く安定した踊りでとても良かった。観ている方も引き込まれ会場が沸いた。川口真理子さん/立ち姿が美しい魅力のある踊り。もう少し力強い部分や踊りを崩す部分が見えると更に良くなると思う。西山依里さん/毎回印象に残る人。軸がしっかりしていてとてもブラッソの使い方が上手い。年々安定して良くなってきているので今後が楽しみです。佐藤幸子さん/毎回挑戦して努力が見えているのが素晴らしい。以前より表情がすごく良くなった。有田ゆうきさん/さらっと自然な動きが良い感じを与えた。バックと合っていて曲の後半盛り上がり会場も沸いた。平山奈穂さん/迫力のある大きいバイレ。熱くエネルギッシュな中にも冷静に安定した踊りでとても良かった。内田好美さん/スタイルが良く美しい。線が細いけれど安定した踊りでした。身体を叩くパソなどの手に重さが欲しい。鈴木雪花さん/スタイルが良く立ち姿が美しい。サパテアードの強弱がはっきり使い分けられ気持ちよかった。山本由紀さん/踊りの身体が出来ていてしなやか。パリージョがとても上手かった。またぜひ挑戦して欲しい。竹村歩さん/力強くメリハリのある踊りだった。感じの良いバイレで、また彼女の踊りを観てみたいと感じた。黒木珠美さん/力強いサパテアード、メリハリもありとても良かった。もう少し力を抜いたところも観たい。田中実華江さん/ペソがありフラメンコな踊りだった。特に曲の後半タンゴを楽しんでいるのが伝わってこっちも嬉しくなった。岡田麻里さん/とても安定してパワーのある良い踊りだった。

【20日】
伊藤千紘さん/曲の後半特に集中力が増しテンションが上がり引き付けられた。佐渡靖子さん/新人公演に何度も挑戦して努力を重ね、強い精神力とブレない身体に成長した。技術も高く踊りに貫禄まで感じ、曲が終わっても余韻が残った。今回の新人公演の中で一番印象に残った人です。おめでとうございます!山中純子さん/いろんなものを使った難しい振付を頑張って踊っていた。別のシンプルな曲での彼女も観てみたい。齋藤朋之さん/重みのある味わい深い踊り。とても引き付けられた。またぜひ挑戦して欲しい。加藤美佳さん/明るく表情がとても良く観ている方も和んだ。もっと丁寧に踊ることを心掛けると更に良くなると思う。堅正はるかさん/以前より力強さとキレの良さが踊りに加わり、とても良く変わった。久貝輝代さん/踊りが美しく品が良い。後半もっと踊りにメリハリが欲しかった。佐藤陽美さん/フラメンコ的な熱いキレの良い踊り。強いサパテアードと、はっとする動きで会場を沸かせた。津田可奈さん/毎年のように新人公演に挑戦する度、確実に力を増してきた。安定した踊りで、後半には曲も盛り上がった。久保田晴菜さん/踊る身体が出来ていて安定している。ブラッソや足のさばき方が美しい。昨年までの踊りからとても変化してフラメンコ度が増していた。津幡友紀さん/テンションが高くパワーが感じられた。ゆったり滑らかな表現も加えてこれから更に表現豊かなバイレを目指して欲しい。そして、歴代受賞者によるバイレ・ソロで踊った正路あすかさん/さすが大きな安定した踊り。常に彼女は前向きにいろんなことに意欲的に取り込んでいることが見える良い踊りでした。今年の新人公演の大勢の参加者の最後に、さわやかな余韻を残して終わりました。ありがとうございます!

鈴木英夫(ギタリスト)[G]

久しぶりに新人公演ギターの部の選考委員をやらせて頂きましたが、全体的に見てかなりのレベルの向上が見られとても喜ばしく思いました。それぞれの皆さんの演奏を聞いて感じた事を少しだけ書かせて頂きます。

①塩谷経さん(ブレリア)
音響のせいもあったようですが、フレーズが低音の使い過ぎで少し単調に感じられました。

②森谷忍さん(シギリージャ)
奨励賞おめでとうございます。とても良い雰囲気のシギリージャらしいシギリージャを聞かせていただきました。益々の精進を期待しています。

③池川史洋さん(ロンデーニャ)
全体的に淡々とし過ぎてもう少しメリハリがあればより良くなるでしょう。とくにトレモロのメロディーが聞こえにくく感じました。

④福嶋隆児さん(ソレア)
とても力強いのは良いのですが、全体的に荒っぽさが目立っていました。

⑤和田健さん(グアヒーラ)
きれいなメロディーの組み立てで上手くまとめていますが、もう少し丁寧に弾かれたらより良かったと思います。

⑥鈴木一義さん(シギリージャ)
力強く迫力があり他の追従を許さない音と伴奏で培ったリズム感が心地よく感じられました。

⑦内山友樹さん(ブレリア)
とてもテクニックはあるように思えます。ただ全体的に線が細くもう少しブレリアのリズム感と迫力が欲しかったです。

皆さんそれぞれ甲乙つけがたい演奏でこれからのギター界がとても楽しみです。頑張って下さい。

鈴木眞澄(舞踊家)[Bs]

「新人公演に感じたままに」

ギター、カンテ、バイレすべての部門にご出演くださいました皆様、それぞれの誠心誠意、心を込めたフラメンコをご披露いただきありがとうございました。
人生の大切な一時期を練習に励み、時には悩んだり迷ったりしながらもこの舞台を目指してがんばりぬいた皆様のフラメンコはすべて心に響くものでした。
なぜフラメンコなのか?と自分自身にも問いかけながら拝見しました。迫害の中から生まれ育まれてきたその生い立ちと遠い日本でフラメンコに関わることと、やはり何かの縁が繋げたことなのでしょう。そんな素晴らしいものをたくさん感じさせていただきました。特に心に残った方々をここに記します。

和泉冴英香さん…熱い気持ちを感じました。片桐あみんちゃん…幼いながらも確固たる意思が見えて頼もしかったです。本多清見さん…アレグリアスらしさが嬉しかったです。池田理恵さん…情熱を感じました。平田かつらさん…心が一緒に踊りました。平川亜紀さん…安定感が心地よかったです。近藤朔さん…時々心まで届く何かを感じ不思議でした。それが何なのかを私も探していきたいと思います。髙野正子さん…ご自分の生き方を実感できるフラメンコでした。藤本ゆかりさん…フラメンコらしい振りはすばらしかったのですがもっと振りを少なくして心で踊る時間をふやしてはいかがでしょうか?佐渡靖子さん…マントンとバタ・デ・コーラによって表現が広がりすばらしかったです。ずっと拝見していて今年は心からおめでとうございます!齋藤朋之さん…真摯に向かう姿勢が素敵でした。加藤美佳さん…アレグリアスを楽しんでいらして素敵でした。堅正はるかさん…心から発信されるものをうれしく受けとめました。久貝輝代さん…見ていて楽しくなりました。久保田晴菜さん…表現力がすばらしかったです。
フラメンコで共有すること…歌う、踊る、奏でる、手を叩いてリズムの輪を作る、かけ声をかける、心の中で同じ気持ちになる。これからも皆さんといろんな共有が出来ることを楽しみにしております。

曽我辺靖子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【18日】
和泉冴英香さん:成長がみられました。もう少し力を抜くことを覚えるとさらに良くなるでしょう。少々緊張していたかしら?
片桐あみんさん:踊り心を感じます。今後が楽しみですね。
谷口祐子さん:バタ・デ・コーラとマントンさばきの流れは美しかったです。サパテアードをもう少し頑張って。
庄子裕子さん:タンゴからのノリが印象的でした。
池田理恵さん:サパテアードが心地よく響き、吸い込まれていく迫力がありました。
牛田裕衣さん:情熱を秘めたタラントに引き込まれました。緩急をつけると更に良くなると思います。
平田かつらさん:堂々と空気を包み込むタメのある踊りに拍手。タンゴの入りも良かったです。
大岩奈青さん:心を感じたシギリージャ。印象的なラストでした。
平川亜紀さん:足音強く、全体的にパワーを感じましたが、表現力を増すとさらに良くなるでしょう。
山形志穂さん:繊細な雰囲気を漂わせながらも心の響きが伝わってきました。まだまだ伸びしろを感じます。

【19日】
小島智子さん:心地よいサパテアードの響きと、タンゴからの変化に魅了されました。もっとはち切れてもよいのでは?と思います。
横畠由美子さん:きちんと練習された成果が見受けられました。ラストまで、ファルーカの持ち味である凛とした雰囲気が持続できていて良かったです。これからも続けてくださいね。
鈴木真衣さん:カンテを良く聞きその表現力も伝わってきました。
服部亜希子さん:コンパス感がありサパテアードも強く、ラストまで途切れることなく安定感がありました。
近藤朔さん:フラメンコと真摯に向き合っている姿に頭が下がります。
藤本ゆかりさん:強いサパテアード、芯のある動きが魅力的でした。
菊池麻由美さん:印象深い始まり。恵まれた容姿から爆発する貴女を観たいです。
有田ゆうきさん:強くメリハリのあるソレアでした。情感をもう少し。
平山奈穂さん:全身から湧き出るフラメンコ性に魅了されました。もう一度じっくり観たいソレアでした。
鈴木雪花さん:レトラの表現は良かったです。
山本由紀さん:体幹もあり体もよく動きパリージョの音色にも心を感じました。曲の重さを意識するともっと良くなるはずです。
小河由里子さん:いかなるものにも動じない自分の世界観を感じました。
黒木珠美さん:この日を待っていたかのようなソレア。メンタル面の強さも増し、貴女の本来の実力が開花したのでしょう。カンテを良く聞き重心も安定していました。ゆっくり入るサパテアードの難しさも上手にクリアでき、波に乗れましたね。
田中実華江さん:なかなか良い味を出していました。ファルセータのゴルぺの音が若干気になりました。

【20日】
野上裕美さん:上体が美しく足の強さもあるが、タメが欲しいです。
伊藤千紘さん:動きも良くマノがきれい。
佐渡靖子さん:素晴らしい情感に圧倒されました。昨年のソレアも良かったですが今回のシギリージャはそれを超えることが出来ました。バタとマントンが体の一部のように表現できた貴女の底力に拍手です。
持田賀津子さん:サパテアードの理解が深まりました。今後タメを感じて踊ることを期待します。
堅正はるかさん:足音強くメリハリあり芯がぶれない。その上あの広い舞台空間を自分のものにしてしまう素晴らしさ。
佐藤陽美さん:華を感じる踊り手さん。緩急を意識して踊ると更に良くなるでしょう。これからも観たい人です。
津田可奈さん:取り憑かれたような流れのあるシギリージャでした。
久保田晴菜さん:体幹のある体の柔らかさ、しなやかなブラッソ、踊りが大好きという心の叫びが聞こえてきました。
東田美智江さん:シレンショの音の取り方を工夫すると更に良くなるでしょう。

<バイレ・群舞部門>
奥野裕貴子・SIROCOフラメンコ教室LOS TARANTOS京都:心に響いた作品でした。最後まで引き込まれました。
鈴木敬子フラメンコスタジオ カデーナ フラメンカ:気持ちの統一性があり一生懸命さが伝わってきました。
カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」:フラメンコのリズムにのり楽しんで踊っている子供たちの真剣な表情が忘れられません。松彩果さんの指導にオレ!
Armonía:実力ぞろいの力量をみせてくれましたね。三人三様でありながら統一性がありました。
LAMA y SONACAY:タイプの異なる2人の掛け合いをとても楽しみました。

改めて感じたことですが、小物を使用することの難しさ、何か不具合が生じた時に踊りよりそちらに目が向いてしまうので、相当な練習と覚悟が必要かと思われました。多種多彩の群舞…見応えがありました。

高橋英子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
一番たくさんの方が挑戦するバイレ・ソロ部門。いつも思うのですが、参加者の皆さんにはもっと沢山のパロ(曲種)に目を向けていただきたいです。参加者の踊る曲種がもっとバラエティに富んでいてそれも堪能できる新人公演であったら理想です。1曲しか踊れないので、奨励賞獲得を願うためなのか、踊る曲がソレア、アレグリアス、シギリージャなどの特定な数曲に偏る傾向にあるのは頷けないことではありません。でも今や日本の皆さんのテクニックはとてもレベルアップし、どんな曲でも感動的に踊る準備はできてきていると思います。そうでなくても、ステキな曲がいっぱいあるのがフラメンコです。さて、今年も皆さんのパッションとパワーの渦の中に巻き込まれフラメンコ漬となりました。受賞者の方々の演技は本当に素晴らしかったです。また受賞者以外でもよかった方々が沢山いらっしゃいましたので、そういう方々から順に書いていきます。

【18日】
池田理恵さんのシギリージャは、凄味のあるムードの中でなにか内に込めた想いがひしひし伝わってくる迫真の演技、時間オーバーがとても残念でした。牛田裕衣さんのタラント、芯あり、軸ありで、なかなか個性的なアイレの持ち主、楽しめました。庄子裕子さんのタラント、派手な衣装の色使い、パチッとした大きな目がチャーミングで印象的、技術的にも安心して見られるレベルで目立ちました。大岩奈青さんのシギリージャ、なかなかフラメンコなシーンを作りだす表現力を感じました。谷口祐子さんのアレグリアスは、出だしから印象的。マントンやバタの豪快な捌きにスリルがある振付をよく熟し、ブラッソも綺麗で楽しめる演技でした。

その他、山形志穂さんのシギリージャはパリ―ジョで心を込めて踊られて、上体の動きも綺麗でした。本多清見さん、アレグリアスの振りに身体が馴染み、その明るさを思いっきり表現していました。森加寿子さんはシンプルなティエントの歌振りを落ち着いて表現し、平田かつらさんはタラントでシンプルな歌振りをじっくり踊り込んでいましたが、2人ともタンゴになってからの身のこなしにしなやかさがあったらもっと良かったです。佐藤直美さんも凝った振付のシギリージャをよく熟していました。平川亜紀さんもリズムに乗り楽しそうに踊られていましたし、和泉冴英香さんはしっかりしたサパテアードで練習成果が感じられますが、ペソのあるタラントのアイレが出しきれていない感じがしました。松下ひろみさんは効果を狙った振付に見合う上体の粘りのある表現が足りないような、そんな感じでした。堅田幸子さんのシギリージャの音楽構成は素敵で、出だしのパリ―ジョもよかったですが後半ちょっと乱れた感がありました。福田峰子さん、白い衣装が印象的なティエント、ちょっと身体がリズムに乗っていない感じで、これからもっと総合的な技術を付けて欲しいです。橋田佳奈さん、アレグリアスをバックスペインアーティストのアイレに乗って丁寧に踊りこんでいましたが、これからもっと技術も磨けると思います。片桐あみんさん、よく頑張りました。これからが楽しみです。

【19日】
藤本ゆかりさん、気迫がこもるソレア・ポル・ブレリアで本人の持ち味を出しきっていてよかったです。今回は惜しかったです。岡田麻里さんのソレア、エレガントでフラメンカ、なかなか雰囲気がありました。シンプルな振りで強さをうまく表現、なかなか迫力ある演技で印象に残りました。田中実華江さんのティエントは効果を狙う振付。なかなか太い踊りで、いいです。タンゴもよかったです。鈴木雪花さん、そこはかとなく感情が込められたシギリージャで好感が持て、技術的にも優れていました。山本由紀さん、ペテネーラを巧みなパリ―ジョで熱演、盛り上がり楽しめました。いつも色んな曲に挑戦していて頼もしい存在です。

その他、西山依里さん、タラントを踊りましたがリズミカルな動きは独創的で面白いです。もう少ししゃんとしたところがあればいいような。内田好美さん、竹村歩さん、大井昌子さんたちは、スペインアーティストの本場のアイレに浸り、現代タッチのソレア・ポル・ブレリアをはつらつと踊られていました。健闘しました。小河由里子さん、ソレアを落ち着いたフラメンカな雰囲気で踊られました。もう一押しのコラッヘがあればと感じました。青木千鶴子さんは赤いバタとマントンで華やかなアレグリアス、そのさばきも綺麗でした。チャーミングな笑顔でエレガント。小島智子さんのティエント、その踊りにはしっかりした方向性があり、前半はよかったのですが、タンゴになった途端に踊りが軽くなりちょっと残念でした。小野栄子さんのソレア、アカデミックできちんとした踊りを、丁寧に踊られていたという感じでした。瀧野晴美さんのソレア・ポル・ブレリア、バックの歌が冴え、うまく振付られた踊りをしっかり踊られました。近藤朔さん、シギリージャ。茶色のスーツで決め込み、とにかく確実なマルカールで踊っている真摯な姿が好感持てました。髙野正子さん、ソレア・ポル・ブレリア、綺麗なブラッソでしっかりした踊り。自分で踊ることの歓びを味わっている感じが好印象でした。川口真理子さん、スラッとした身体で、か弱いイメージが漂っていますが、品格あるシギリージャでした。菊池麻由美さん、やはりスラッとした身体を活かしたモダンなシギリージャ。語りかけるような表現力を加味できたら、と思いました。有田ゆうきさんは出だしから激しい気迫を込めたソレア、見えを切りながら良く踊っていらっしゃいました。寺嶋いずみさん、ティエント。前半は美しい動きでよかったですが、タンゴにもっと重量感あったらよかったように思いました。瀬﨑慶太さん、青いスーツに白い靴、しゃきっと踊ったカンティーニャは演出もあって楽しめました。富永央子さんのソレア・ポル・ブレリア、チャーミング。今風の踊りをコンパスに乗って楽しそうに踊られていました。佐野裕子さん、シンプルでしっとりしたソレアは大人のムードで迫っていました。佐藤幸子さん、アレグリアス。とにかくきちんと踊られているのが好印象でした。横畠由美子さんのファルーカ、バイオリンを使った音楽構成は良かったですが、やはり練習、踊り込みが足りなかったような感じに見えました。鈴木真衣さんのシギリージャ。スペイン人アーティストの本格的アイレでの雰囲気づくりは良かったです。これからもっと技術も磨けると思います。北中昭子さん、Trianaのしっとりしたソレアでムードありました。後半は息切れしたように見えましたので、これからはスタミナもつけて頑張ってください。

【20日】
今回準奨励賞だったのが惜しかった佐藤陽美さん。ソレア・ポル・ブレリア、ソレアを入れ込んだステキな構成。若く荒削りな感じがフレッシュで、その力強い足も見応えがあり、なかなかフラメンカでした。津幡友紀さんのロマンセ、ちょっと力み過ぎの感もあるテンションの高い踊り、はちきれるテンペラメントが圧巻でした。小宮山葉子さんのソレア、ステキな衣装で、足さばきも綺麗で品があり印象的でした。伊藤千紘さんのシギリージャはしっかりした足で始まる力強いジャマーダなど効果的な内容で熱のこもった演技でした。山中純子さんのカラコーレスは、扇とパリ―ジョを同時に持つ難度の高い踊りをキュートな感じでステキに踊りました。もう少し派手でもいいと思います。

その他、この日はアレグリアスを踊られた方が多く、皆さんそれぞれの振付と個性で壮観でした。河合浩子さん、テクニックもあり、振付も凝っていて面白く楽しめました。久貝輝代さん、マントンとバタをステキにさばいていてブラッソも綺麗、粋な振付で魅せました。新谷のどかさん、白いバタで、笑顔がステキ、いい感じでした。山内佳代子さん、元気たっぷり、楽しさ明るさを追求した振付で楽しめました。ブレリアの動きが軽快でちょっと浮いてしまった感はありました。東田美智江さん、ブラッソ、上体はしなやかでよかったですが、もう少し落ち着きのある優雅さが欲しかったです。加藤美佳さん、堂々としていて華やかなアレグリアス。上体のノリもよく、しっかり踊られていました。渡辺亜矢子さん、スラッとした容姿が綺麗で、落ち着いたムード。終わりごろにドラマチックなアイレを盛り込んだアレグリアスで健闘しました。

さて、ソレアを踊られた相田良子さん、落ち着いてしっかり踊りましたが、ブレリアになってから少し体が浮いてしまった感じでした。野上裕美さんもソレア。バックアーティストのプーロな歌の世界に浸り、集中し、踊り込んでいました。齋藤朋之さん、タラント。淡々とリズムにのり、マルカールしながらパソを進行させ、タンゴになってからも淀みなくしっかり踊られていました。菅家寿幹さん、シギリージャ。地味ですが、誠実さを感じる踊り。今後もっと力を付けて頑張っていただきたいと思いました。阪上のり子さんのタラント、前半は雰囲気ありましたが、タンゴになってからせっかくの曲が残念な結果になった感がありました。持田賀津子さんのカンティーニャ。ステキに踊っていましたが、身体のバランスが取れず、マルカールが浮いてしまうなどで技術的な改善が必要だと思いました。池本真希子さん、アカデミックですがラメ入りの衣装がステキで、バックに支えられたいい雰囲気のソレアでした。長岡聖子さん、ソレア。舞台を大きく使ってよく動き、一生懸命踊られていました。飛びが多く、それが気になりました。

<バイレ・群舞部門>
複数の参加者が合同で1つの作品を踊る群舞ですが、純粋に舞踊の範疇での芸術性を追求するものの他に、ドラマ性を加えてより人々に訴えようとするものがあります。作品の良しあしは、構成、演出、振付などの他に、踊る人達の舞踊レベルでも変わって来ると思います。ですので、バイレ・ソロで、以前奨励賞に輝いているプロの方々が、2人とか3人のグループで参加なさると踊り自体はとても目立ちます。今年はあらゆるタイプの群舞があって、内容的に優れた作品が多く、一作品だけを選考するのは至難の業でした。

[群1]は演出、舞台効果をよく考え、ドラマチックな観客アプローチもあり、更に主役的存在のような小太りの踊り手さんの演技がなかなか楽しめ、全体的に見応えあるステキな作品に仕上がっていたと思います。
[群2]典型的な群舞のスタイル。群舞ならではの位置交換での連帯性などを考え、無理なく作られた作品を研究生の皆さんがきちんと演技し、好感が持てました。
[群3]出だしと終わりの鈴の音?が、夏の風物詩、まさに真夏の祭典にマッチしてほのぼのとした作品でした。また次の世代を担う子ども達の演技も粋でいっちょ前、可愛かったです。
[群4]クラシックな音楽構成がやはり心をひき、赤いリボン紐のようなものがおしゃれな雰囲気でした。ただ、群舞ならではの迫力ある押し出しがもう少しあると、見応えがあったのではと思いました。
[群5]緑、ピンク、紫のショッキングカラーで登場した女性3人。女の強さを感じさせ惹きつけられる作品でした。その意気込み、演技も高度で見応えありました。
[群6]男性2人のちょっとパロディ風なアクションを入れ込んだ作品。踊る方が楽しんでいる感じでした。
[群7]典型的な群舞のスタイル。細部でもう少し工夫があったらよかった、という感はありましたが、マントンを使ったカーニャの振付をステキに踊られていました。
[群8]アバンドラーオで粋な音楽作り、赤いバタの女性陣にブーツを履いた旅人風の男性が印象的。アンダルシアの風景が目に浮かぶ作品で楽しめました。

手塚真智子(舞踊家)[Bs]

【18日】
18-1 和泉冴英香さん:幕開けがインパクトがある力強い踊りでした。
18-2 片桐あみんさん:緊張が伝わりましたが、一生懸命踊り切った姿に安心し、嬉しく思いました。今回の経験を活かして成長を期待します。
18-4 橋田佳奈さん:スタイルの良さ、柔軟性を活かした踊りで、ブラッソも綺麗でした。
18-8 池田理恵さん:ため、瞬発力、感情表現そして気迫がありオーレ!でしたのに、残念です。
18-13 牛田裕衣さん:力強さを感じ良いタラントでした。
18-15 福田峰子さん:顔の表情とともに表現力を身に着けると良いと思います。
18-16 平田かつらさん:タラントの重みをよく表現しながらタンゴの軽妙さとのバランスが良かった。
18-18 大岩奈青さん:出だしで祈りのようなものを感じましたが、全体的にメリハリに欠けたようで残念でした。
18-19 堅田幸子さん:挑戦の意気込み!
18-20 平川亜紀さん:特にエスコビージャの時の重心移動が自然で綺麗でした。

【19日】
19-9 小野栄子さん:振付を丁寧に踊っている様子でしたが、時折止まりのブラッソの遅れが気になり、上半身のしなやかさがあると良いと思います。
19-11 鈴木真衣さん:タメのある力強い踊りでした。
19-12 瀧野晴美さん:はじける!感じが好印象でした。
19-13 服部亜希子さん:熱に引き込まれました。
19-18 西山依里さん:タンゴのコンパス感がとても良い印象でした。
19-20 菊池麻由美さん:奇を衒うことなどなく、好印象の踊りでした。
19-21 佐藤幸子さん:しなやかさとご自身らしさが見たいです。
19-23 平山奈穂さん:内に秘めたものを爆発させる力にオーレ!
19-24 内田好美さん:好感度の高い印象です。もう少しペソ?があったらと思いました。
19-27 小河由里子さん:もったいないなぁと思ってしまいました。とてもフラメンコを感じましたが、ペソ、タメ、重心、呼吸などを考えたらよいかと思います。
19-30 大井昌子さん:若さ、エネルギー、笑顔に好感を持ちました。
19-32 田中実華江さん:どっしりとした安定感のある良いティエントでした。
19-33 青木千鶴子さん:良く練習を重ねて、今までの中で一番楽しそうに踊っている印象を受けました。
19-37 佐野裕子さん:しっとりとした大人の味のソレアでした。

【20日】
20-15 野上裕美さん:マルカールなどの歩き方が自然でした。
20-17 伊藤千紘さん:足音がしっかりとし、ブラッソも綺麗でした。
20-18 佐渡靖子さん:渾身のシギリージャにオーレ!
20-20 山中純子さん:笑顔が素敵で、華やかなカラコレスでした。
20-22 齋藤朋之さん:豊かな感情表現。しなやかさが出ると良いなと思います。
20-23 加藤美佳さん:元気で良いアレグリアス!
20-25 渡辺亜矢子さん:長身を活かしてこれからが楽しみです。
20-26 久貝輝代さん:のびやかさ、しなやかさがありポーズが綺麗でした。引っ込みの粋さも素敵でした。
20-29 佐藤陽美さん:“con coraje”でこれから益々期待してます。ため、ねばりなどが出ると良いです。
20-31 池本真希子さん:広い舞台をよく使っていました。
20-32 久保田晴菜さん:よく踊り込んで、顔の表情も良かったです。
20-33 小宮山葉子さん:きちんと踊り、コントラ、ティエンポも綺麗に聞こえました。足の割合を減らしてしっとりさを出せたら良かったのでは?
20-36 山内佳代子さん:笑顔に引き込まれました。

花岡陽子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【18日】
和泉さん/タラントらしくきちんと踊ってます。もう少しです。
片桐さん/今後の成長が楽しみです。
本多さん/楽しそうで美しいアレグリアスでした。
橋田さん/ブラソと身体のバランスが少し物足りないです。
谷口さん/マントンさばきお見事。何の踊りも上手そう。
庄子さん/全体に良かったです。表現力があって。
佐藤さん/重厚感があって今後が楽しみです。
池田さん/魅力的。フラメンコ舞踊性抜群。
牛田さん/恵まれた体型でたくさん踊っていってください。
森さん/構成を見直してみて。少し単調かも。
福田さん/たくさん踊って勉強していって。今後に期待。
平田さん/よく踊ってます。別に欠点はないのですが。
松下さん/音楽に乗って、動きが美しいです。
大岩さん/踊り込んでいます。よく練習しましたね。
堅田さん/難しいフラメンコです。勉強していって。
平川さん/サパティアード正確。お見事でした。
山形さん/将来きっとすばらしいバイラオーラになるでしょう。

【19日】
小島さん/ブラソの研究もう少し。のびのび踊ってます。
小野さん/上半身をもう少し研究して。よくなります。
横畠さん/気持ちよく踊れますよう、頑張って。
鈴木さん/個性的。サパティアードもいいし、今後に期待。
瀧野さん/踊り込んでいます。ご自分自身のバイレを研究して。
服部さん/ギター、カンテとよくとけ込み、観客の心に染み渡りました。
近藤さん/フラメンコに出会って明るい人生が開けますように。
髙野さん/欠点は少ないのですが、また挑戦してください。
藤本さん/アイレがあります。エネルギーが伝わってきます。
川口さん/細いお身体でも力強さは出ます。頑張って!
西山さん/ヒターナ・フラメンコですね。少し荒けずりになります。
北中さん/まとめ方はよかったです。もう少しです。
菊池さん/舞踊性があり、流れるように楽しかったです。
佐藤さん/佑子先生の伝統的なフラメンコを拝見しました。
有田さん/ここまで踊るため、練習を重ねたことでしょう。
平山さん/肉感的。フラメンコを踊るために生まれてきたのですね。
内田さん/疲れないフラメンコ。美しいです。気持ちよく拝見しました。
鈴木さん/欠点が少なく、別のヌメロも拝見したいです。
山本さん/パリージョも美しく、難解な技術をすばらしい!
小河さん/ティエンポ正確。大きなお身体で圧巻でした。
寺嶋さん/きっと練習はもっと力が入っていたでしょう。ちょっと残念。
竹村さん/体幹がきちんとしています。もう少しです。
大井さん/サパティアードが細やか。少しの努力を望みます。
黒木さん/ボリュームがあって、足が強くて速くて一番素敵でした。
田中さん/身体がしなやか。力強く踊ってます。
青木さん/マントンとコーラ、よく踊りました。華やかでした。
岡田さん/ブラソが美しいです。絵のようでした。
瀬﨑さん/何気なくさらりのフラメンコ。好感が持てました。
富永さん/舞台いっぱいにさわやかに。サパティアードもいいです。
佐野さん/美しかったです。構成をもう少し工夫して。

【20日】
相田さん/踊りの要素をきちんと織り込んでいます。
野上さん/美しいです。基本もしっかり勉強してます。
菅家さん/コンパスもいいです。少し踊りに広がりが欲しい。
伊藤さん/練習の成果が舞台で発揮できました。
佐渡さん/マントンのさばきお見事。叫びが伝わります。
阪上さん/気持ちが入っている時と荒けずりの部分と。
山中さん/アイレがあります。頑張りが伝わります。
持田さん/たくさん踊ってもっと上達してください。
齋藤さん/身体からわき出る重厚感で、もっと頑張って。
加藤さん/フラメンコが楽しいわぁ、と踊ってます。
堅正さん/柔軟な体に芯のある踊り。将来性があります。
渡辺さん/細くきれいなお身体で、強さが入ったら。
久貝さん/ティエンポよく、アレグリアスを充分に踊ってます。
河合さん/さわやかに初々しく、可愛らしく踊ってます。
新谷さん/おしゃれなフラメンコでした。また参加してください。
佐藤さん/全体にバランスよく、気持ちよく拝見しました。
津田さん/メリハリがあり、舞台をよく使ってました。
池本さん/ステージをたくさん経験してください。
久保田さん/表現力のある美しいフラメンコでした。
小宮山さん/ブレリアのティエンポに気持ちよく心地よかったです。
津幡さん/ヒターナの味わい深い個性豊かな踊りでした。
東田さん/バラのようにひまわりのようにステキでした。
山内さん/チャーミングでした。細い身体に一生懸命でした。
長岡さん/よく踊ってくれました。お疲れ様でした。

<バイレ・群舞部門>
奥野裕貴子・SIROCOフラメンコ教室/ドラマになさってました。少し難解でした。
鈴木敬子フラメンコスタジオ/息が合ってアンサンブルを重視した作品でした。
カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」/ブレリアを工夫して創作し、面白いです。衣裳も工夫しました。
フラメンコスタジオマグダレーナ/リボンは新しい試みでした。もう少しです。
Armonía/3人とも実力者で魅力的でした。バストンもなかなかです。
LAMA y SONACAY/グアヒーラを面白く、男っぽいパレハでした。
La Puerta Abierta/美しかったです。少し単調かも。
斎藤克己フラメンコアカデミー札幌/赤いマントンが美しい群舞。去年の方が良かったかしら。

本間牧子(舞踊家)[Bs]

18-1 和泉冴英香…安定感としなやかさがあり、マノがきれいでした。静止の部分流れないように意識してみましょう。
18-2 片桐あみん… 最後までしっかり踊りきった集中力、素晴らしかったです!これからが楽しみです。
18-5 谷口祐子…マントン、コーラ使いが素晴らしく、くずれない軸とブエルタ、すべてが一体となり美しく躍動感のあるアレグリアスでした。
18-8 池田理恵…メリハリと重厚さ、構成も良く、魅力的でした。時間オーバー残念です。
18-16 平田かつら…存在感があり振りから振りへの間がとても良かったです。決めの時の静止がぶれないと、もっと間が生きてくると思います。
19-13 服部亜希子…歌との一体感が素晴らしかったです。メリハリ、重心移動の間も良くアイレが伝わってきました。
19-14 近藤朔…立ち姿が美しく、ひとつひとつの振りを大切に踊られていて思いが伝わってきました。
19-16 藤本ゆかり…安定感と伝わってくる気迫!抜けが良かったです。アイレを感じさせてくれました。
19-20 菊池麻由美…ブラソ、重心移動の軌道がエネルギーを発し、深い海の底から唸り出て来るようなすごみがありました。
19-22 有田ゆうき…重さと力強さメリハリがしっかりつけられ、抜け、決めの部分の静止、とても良かったです。
19-23 平山奈穂…安定感と切れ味、内からあふれでてくる心を感じました。
19-31 黒木珠美…強い!!迫力があり、一歩たりとも引かないまっすぐに向かってくるソレア。鳥肌がたちました!
20-18 佐渡靖子…構成も良く内面性が伝わってきてドラマを感じさせてくれたシギリージャ、素晴らしかったです。
20-22 齋藤朋之…基本にしっかり向き合ってブラソもしなやか!心を込めた踊りに感動いたしました。
20-24 堅正はるか…からだ使いがとても良かったです。振りのひとつひとつから気持ちが伝わってきました。
20-29 佐藤陽美…力強さと小気味良さを感じました。振りと振りの繋ぎの間を大切に!
20-30 津田可奈…構成も良く、すべてに安定感と気迫がみなぎり、後半マチョへの盛り上がりが素晴らしく感動しました。
20-32 久保田晴菜…丁寧なブラソと踊りに強さ、重さがあり、特に出のジャマーダ、印象的で良かったです。

群舞、ギターの選考委員ではありませんが…カンデーラの皆さんのまっすぐなフラメンコのパワーに、森谷忍さんの澄んだ音色に心ときめき、忘れそうになる大切なことを思い出させてもらった気がいたしました。出演者の皆さま、お疲れさまでした。これからさらなる目標に躍進していかれますように…。

渡邊 薫(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・群舞部門>
1.奥野裕貴子・SIROCOフラメンコ教室
独特のアイレで展開された群舞。今回はコンセプトが明確であった。
2.鈴木敬子フラメンコスタジオ
久々にユニゾンの美しさを見せてもらいました。10人が各人しっかりと振付をこなし、清々しささえ感じた。
3.カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」
始めの情景からぱっと正面を向き踊り始めた時、空気の変わり方がすごかったです。年令に関係なくフラメンコのアイレたっぷりの7人の踊りに「ole!」でした。
4.フラメンコスタジオ マグダレーナ
「Café de Chinitas」で始まり、10人で踊り継がれた「Zorongo」は心が1つになっていて大きな求心力になっていた。
5. Armonía
実力ある3人による群舞、見ごたえがありました。
6. LAMA y SONACAY
ソロ受賞者2名による「Guajira」。とにかく楽しませて頂きました。
7. La Puerta Abierta
緊張のせいか始め固さがあったが、後半に向けて良くなった。バタ、マントンとともに、練習の成果がみえた。
8. 斎藤克己フラメンコアカデミー札幌
デュオ→ソロ→9人と構成されておもしろかった。この一年の成長がみられました。

<バイレ・ソロ部門>
◎奨励賞に選出
【18日】
和泉冴英香:抑え目のタンゴ、溜があり良かった。レマーテからの抜けに注意。
片桐あみん:シギリージャへの挑戦がすばらしい。何気なく振りをこなしているが、もっとこだわりを!
谷口祐子:慣れたバタさばき、マントンの扱い美しい。
庄子裕子:カンテへのコンテスタシオン不足。腰の浮きが気になったが、タンゴは良かった。
◎佐藤直美:奨励賞に選出しました。よく踊り込まれていて、マルティネーテへの切り換えも良かった。来年に期待しています。
平田かつら:足さばきもきれいで安定した踊り。
松下ひろみ:止めをしっかりと!
◎大岩奈青:存在感があり、足もリンピオ。彼女自身がしっかりと表現された踊り。
山形志穂:テクニカメンテは良い。もっと自分が何を伝えたいかを明確に意識して。

【19日】
鈴木真衣:身体をよく使い踊っているが、コントラが少し不安定。来年も見せてください!
瀧野晴美:メリハリがあり、全身を使い踊っていて好ましい!
服部亜希子:受賞おめでとう!カンテへのコンテスタシオンが素晴らしい。首の切れ、マルカーヘも良かった。
近藤朔:確実に一歩ずつ前進している。止めが不安定。
◎藤本ゆかり:自分をしっかりと持ち、表現された踊り。足は良く動いていた。上体の引き上げを!
◎菊池麻由美:コントロールされた入り方、難しい足を良くこなしていた。
佐藤幸子:全体的に力みが少なくなり、足も安定してきた。
有田ゆうき:雰囲気のある踊り手。溜め、切れもあった。
平山奈穂:おめでとう!安定した腰、リンピオな足。
鈴木雪花:よく踊っていたが、自分の内に向かって何を表現したいかの問いかけを!
◎黒木珠美:おめでとう!すごい成長ぶりです。溜め、Peso有り、バックのムシコスとちゃんと会話していた!
青木千鶴子:魅力ある踊り、ダイナミックなマントンさばき。前回より楽しんでいる感あり!
瀬﨑慶太:リズムのコントロールが良くなった。Vueltaで体幹の弱さを感じた。難しいですが頑張ってください!
富永央子:動き過ぎて止まりの時揺らいでいる。
佐野裕子:彼女によく合った振付です。もっと自分のものにしてください。

【20日】
相田良子:抑えのきいた踊りで、リズムの切り換えが上手い。
伊藤千紘:丁寧な踊り。得意なVueltaを活かしていた。首の前傾が気になった。
佐渡靖子:おめでとう!ダイナミックで大人の踊り。バックのムシスコも良かった。
山中純子:とてもエレガンテ。パリージョも上手く使っている。前回よりはるかに自分の踊りを表現した。
齋藤朋之:この一年の成果が見られました。また新しい一面も見せてくれましたね!
◎堅正はるか:おめでとう!溜め、メリハリがあり抜けも素晴らしい。足もムイ・リンピオ。良くコントロールされた踊り。
渡辺亜矢子:ブラソ表情豊か。長身ゆえ(!?)猫背気味が気になった。
久貝輝代:緊張のせいか表情が硬かった。もっと自分を前に出して表現を!
佐藤陽美:上体の固さ、Vueltaに注意。ゆっくりのマルカーヘを大事に!
津田可奈:おめでとう!しっかりとして足もリンピオ。マチョへの入りが良かった!
◎久保田晴菜:おめでとう!表情豊かなブラソ、足をしている時にも身体(上体)が良くついて踊っていた。
小宮山葉子:魅力的な踊り手。体幹をしっかりと訓練して来年も出演してください!
津幡友紀:モイのカンテに寄り添った踊り。少しせわしい感じはあったが。

市川惠子(舞踊家)[Bs,Bg]

今回賞を獲られた方々は、何度も出演されている方が多く、それだけの年数、経験を重ねられており、またフラメンコとしての身体も出来上がっていて、技術的にも優れ、その上でフラメンコを高いレベルで理解し、そして素晴らしい振りをしっかりと自分のものにして踊っている。さらにフラメンコとして大切なノリやアイレ、気迫や心意気などで、十分に皆さんの心に届く踊りを出来た方々なのだと思います。遂にはここまできた姿に胸が詰まる思いでした。

<バイレ・ソロ部門>
私が奨励賞に推薦したのは、
★牛田裕衣:どしっとした重みに、うねり、絞りも出てきた。存在感のある踊り。足もしっかりしていて、コンパス感もある。フラメンコ性も高く、熱い気迫の踊り。
★服部亜希子:フラメンカな上にドラマチック。一時も緩まない空気感。自分の強い意志で踊っている。その気迫、込める力、うねり、絞りもあり、素晴らしい。すべて良かった。内から発するものに胸打たれ、渾身の踊りに感動!オレ!
★平山奈穂:フラメンコとしてのノリはダントツ。印象的な振りが自分のものになっていて表情も豊かでアイレもありすごく魅力的。ずしっと重みを感じる、腰が据わった踊りに目が離せない。
★黒木珠美: 凄みすら感じる、張り詰めた空気感。最初からずっと惹き込まれた。しなやかさと力強さをあわせ持った、緩急があり完成度が高い。腰の据わった芯のある素晴らしい踊りに感動。その激情に心打たれ涙。
★佐渡靖子:重ねてきた年輪を感じる素晴らしい踊り。ここまできたのかと感動。その激しさに心揺さぶられ本当に見入ってしまった。マノも身体も綺麗。マントンもバタも素晴らしい。
★堅正はるか:印象的な始まり。上手い。身体もすきっとしていて無駄のない質感の良い踊り。スカッとしていて良い。込める力もうねりもあって、間合いも表情も良い。
★佐藤陽美:身体しまっていて足もリンピオ。軸がしっかりしていて自然体で気持ちの良い踊り。表情の良さに魅力を感じた。好感度大。打ち出しの強さが出てくると尚良い。

本来ならば、奨励賞に推薦したかった。時間オーバーで失格になられて本当に残念です。
☆池田理恵:テンションの高いノリもアイレもあり表情も良い、とても素晴らしい踊りに思わず惹き込まれた。ここまで完成させるとは凄い。オレ!

特に印象に残った方々は、
☆藤本ゆかり: 切れもあり気迫に満ちた激しい踊り。重みもあって良いが中盤がごちゃつきすぎ。ラストもそのまま帰っていった方が活きる。
☆菊池麻由美:静かだが込める力がある。独特の雰囲気でモダンだが熱く、存在感もある。とても恵まれた肢体。手が遅れるのが気になるがしなやかで強い。
☆津田可奈:上手い。身体が出来ている。ブエルタも良い。込める力もある。凝った振りをよく踊りこなしていて素晴らしいが、激しい踊りなのにどこかに冷たさを感じる。
☆久保田晴菜:身体能力に優れ、しなやかで大胆なその踊りに惹きつけられ、強い思いを何か感じた。フラメンコとしての感情表現について、さらに追求して欲しい。
☆津幡友紀:重みもアイレもありその熱さについ見てしまうが、前半から凄い気迫で迫ってくるので、少し疲れてしまう。もう少し起承転結を付けさりげないところがある方が、そのパワフルさも活きる。

次に印象に残った方々は、
●谷口祐子:マントンは良い。ずっと同じ笑顔が気になったがアレグリアスらしく晴れやか。面白い振りを良く踊っているがマノがバレエ的。
●庄子裕子:足もしっかり、マノ、ブラソも良い。自分の個性を大切に意志を持って踊っている。タンゴの入口が好き。スタイル抜群。表情豊かで魅力的。
●平田かつら:しなやかで凛とした静けさの中に重厚さも激しさも加わりすごく良くなっているが、どこかまだ硬い。もっと動かない方があなたの美しさが活きる。
●大岩奈青:独特のスタイルで味がある。すごく良くなっているのに後半動き過ぎでばててしまって残念。自分の個性は大切に。体力をつけて。
●鈴木真衣:溜めも込める力もあって、上手い。プーロな雰囲気が何かあるのだが、決め手に欠ける。
●西山依里:個性的で面白い。コンパス感も抜群で上手いのだが、わかりずらい。もっと全体にすきっとしたところがいるのでは。
●有田ゆうき:自分の意志を強く感じる。足もしっかりしていてアイレもあり空気感も良いのだが、もう少し内に込めた何かが欲しい。
●内田好美:足の音も綺麗で踊りもしなやかで上手いのだが、全体に少し軽く感じた。以前のような野性味、熱さが感じられず残念。
●鈴木雪花:ずいぶん上手くなってびっくり。素敵でした。激しさに惹きつけられたが、どこかまだ硬い。姿勢に気をつけて。
●山本由紀:パリージョも素晴らしくクエルポも綺麗。しなやかで凛とした雰囲気は良いがもっと情感と力強さが欲しい。
●竹村歩:激しさもあって、抜けも良い。気持ちは伝わるがどこか力を抜くところがいる。
●岡田麻里:軸がしっかりしていてぶれない足。良く踊っていて何か伝わってくるものがある。気迫もあるのだが、しなやかさも欲しい。
●野上裕美:足からの始まりが素晴らしく印象的。上手いのだが見せ所が見せきれていなくて残念。
●久貝輝代:頑張っていて良いが、踊り込みが出来ていないのか、余裕がない。アレグリアスの活気、楽しさが伝わってこない。
●東田美智江:表情が豊かでアレグリアスらしい華やかさがある。ブラソ、マノも良くなった。ジャマーダはもっと強く。どこかに強烈な打ち出しを。

今後に期待したい方々は、
○片桐あみん:子供なのにシギリージャ、と、びっくり。しっかり抜けも良く、雰囲気もある。特に後半が良く意志を感じた。
○松下ひろみ:ブラソもマノも良い。パワフルで綺麗だが、まだ身体の芯が出来ていない。深さや重みがほしい。
○平川亜紀:個性的でパワフル。込めた力はあるが一本調子に見える。切れ味のあるピエも良いが少しハイテンション過ぎ?肩の力を抜いて。
○山形志穂:パリージョも上手く美しいが、重みと強さがほしい。少しバレエ的。
○小島智子:足はしっかりしているが、唄をもっと感じて。ティエントはもう少し重みが欲しい。タンゴにノリを。
○近藤朔:この人ならではのなんとも言えない味がある。少しモダンダンスみたいだが、フラメンコが好きな気持ちが伝わってくる。
○小河由里子:プーロな素直な振りをちゃんと踊っている。身体もしまり、甘さも取れた。どこかに凄い気迫を見せて欲しい。
○寺嶋いずみ:良い振りをちゃんと踊っているのだが、長く感じた。内から発するものがいる。
○大井昌子:足は強いのだが何かがぴりっとしない。頑張っているが少し踊りが荒い。
○田中実華江:スタートのタンゴが面白い。動き過ぎだが、力強く個性もあって良い。
○青木千鶴子:ポーズは美しいが、マントンもバタも踊り込みが必要。上半身のねじりも大切。
○瀬﨑慶太:だいぶ踊りも身体もすきっとしてきたが、もっとこちらに届くような気迫が欲しい。
○富永央子:激しいが少し慌しく見える。いいものはあるのだが、ずっと同じ調子なのが気になる。
○佐野裕子:落ち着いた、安定感のある美しい踊り。上品で自然体のアイレもあり、好感が持てる。どこかにどーんとしたフラメンコとしての強さが欲しい。
○相田良子:ちゃんと踊っているが唄をもっと感じて。肩が上がるのが気になる。どこかにぐっと強い打ち出しを。
○菅家寿幹:このままずっと伸びて欲しいが、どこかにダイナミックさを。
○伊藤千紘:小さいながらよく動く身体。足は凄く印象に残った。
○山中純子:身体をもっとひねって。美しいが何かフラメンコとして訴えかけるものが欲しい。
○齋藤朋之:男性としての歩き方、胸の上げ方が良い。踊りはまだまだだが何か込めたものが伝わってきて目が離せない。
○渡辺亜矢子:マントンを扱うときもっと肘を意識して。女性の美しさを見せてくれたドラマチックな振り。上品で美しい。足を打つときにもう少し外股だと良いのでは。どこかにフラメンコとしての気迫が欲しい。
○河合浩子:ブレリアからのノリは良かったが、上半身、ブラソとマノに女性としての丸みが欲しい。

<バイレ・群舞部門>
今年の群舞はバラエティに富んだ個性豊かなグループが多く、とっても楽しませていただきました。
私が奨励賞に推薦したのは、
★Armonía:実力派3人がそれぞれの個性を活かし、気迫で迫ってきた。溜めの知念さん、込める力の漆畑さん、発するパワーの石川さん。3人の対比が活かされ、面白い構成でわくわくしながら見入ってしまった。
☆カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」:素晴らしい気迫に満ちた子供たちに惹かれ、準奨励賞へと提案。松さんの母のような温かさに包まれた中、子供ながらにフラメンコの心意気を見せてくれた。自分の意志でちゃんと踊っているところが凄い。オレ!しっかりとした身体作りを。
●マグダレーナ:皆、一生懸命でとても良かった。まとまりがあり、構成もしっかり。赤のリボンが効いていた。
●LAMA y SONACAY:揃い踏みが多かったのが残念。フラメンコ性の高い個性の違う2人がどうやり取りするのかと期待していたので、唄の部分をそれぞれが感じた振りを違うレマーテをかけながら踊るとか。もっと熱い気持ちになりたかった。なぜグアヒーラなの?
●斎藤克己フラメンコアカデミー札幌:ソロを踊られた方、アイレ十分でとても魅力的。素敵な踊りに惹きつけられた。次はソロで出演してほしい。克己先生の登場は美学を感じた。群舞の方たちはちゃんとフラメンコを学んでいるのがわかり、女性としてのスッとした美しさに好感が持てた。
○La Puerta Abierta:まじめに取り組んだ群舞。もう少し憂いや含みがあるといいのでは。
○LOS TARANTOS京都:よく揃っていて構成は面白いが、パターンが見えてしまったので・・・。個性的などーんとした踊りの彼女は、ソロで出演されてはいかがですか?他の方たちだけの群舞が見てみたい。
○カデーナ フラメンカ:マノが綺麗できちっと踊っているが、シギリージャとしての熱さや気迫が欲しい。

フラメンコの基礎をきちんと学び一歩ずつ前進しながらフラメンコらしさとは、その曲らしさとは、といつも意識して自分に無理のない振りを、自分の意志で踊れるようになることが大切。身体能力にそんなに優れていなくても良いフラメンコを踊ることは十分に出来るのです。もっと他にも色々な大切なものがフラメンコにはあるのですから。それに気づいて欲しい。気迫ももちろん大切ですが、そればかりでは・・・。本当にそこまで行き着く必然性がいる訳で、どうしたら見栄えがするのか盛り上がるのかばかりを考えていると、大切な何かを見落としていくような気がします。やはり振りが自分のものになっている人は、同じ振りを踊っても伝わってくるものが違います。振りを練習するばかりでなく自分が何を表現したいのかもっと考えて欲しい。それが伴わないと、ややこしい振りを慌しく踊っているように見えたり、物足りない一本調子な踊りになってしまうのではないでしょうか。何もないところ、さりげないところ、ふとした間合いなども大切。ウルトラCの連続ばかりでなく、それは本当に気持ちが行き着いてからにして、もっと自然体の女性としての美しさ、優雅さも欲しいと思うのです。女性は女性ならではのブラソ、マノ(フラメンコ独特の手法)をもっと使って欲しい。男性は男性らしく。自分の個性と感情を大切に自分ならではの踊りを見つけていってください。

EL・POKA岡崎(舞踊家)[Bs,Bg]

フラメンコと遭遇してから56年と半年が過ぎた今も、毎年新人公演に参加することができ、健康に感謝しております。年々レベルアップしているフラメンコに果敢に挑戦している若者の姿を観ることができ、私自身の勉強にもなり、心からフラメンコに出会えたことに感謝しながら、今年も楽しく過ごさせてもらえた3日間でした。

今年一番心を打たれたのが群舞です。群舞とは大勢群がって舞い踊ることです。これが根本!レベルの高い仲間達が数名で踊っている姿もそれなりに素敵でしたが、カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」はフラメンコ大好きな仲間達が大勢群がって、まさに蝶がフラメンコと言うお花畑で舞っている、なんとすばらしい、なんと素敵な群。フラメンコ野郎達なのだろうと感心しました。指導する人も大人になった人も、子達も、皆んなが一丸となっていて、すばらしい作品になっていると感心しました。ありがとう!皆さん!お疲れ様でした。

私が今回強く印象に残った方々を数名だけ挙げてみました。始めに、池田理恵さん、この一年間頑張って、晴れの舞台に立てたのに、時間オーバー失格!が何とも残念です。バックとの噛み合いが少し気になってはいたのですが…まさか!中身は堂々としていてすごく良かったですよ!来年も期待して、待っています。
次に津田可奈さん。私個人としての意見は、すでに4年前最強のメンバーに恵まれ、完全にフラメンコの世界に入っていて、最高の得点でした。ひとまずはお疲れ様でした。これからも前進し続けてください!期待しています!
佐藤陽美さん、ますます上手になられていたのにびっくり!すっかりベテランの味がしみ出ていました。舞台なれした技術と音感!唄も自分の物にして踊っていたと思いました。
久保田晴菜さん、昨年に続き増々上手に、サパテアードも味がついて来て、堂々と自分を押し出して来ましたね。貫禄有る重さや、雰囲気さえも感じられました。今回の一押しです!
平山奈穂さん、すごいバックに支えられ、臆することなく堂々と踊っている姿が頼もしかったし、気持ちよかった。これからもこの調子で頑張ってください。
渡辺亜矢子さん、久しぶりにほのぼのと温かいフラメンコ愛好家の仲間達の広げる、明るく素敵なレベルの整ったフラメンコを観せて頂きました。ありがとう!

ロシオ・ロメロ(舞踊家)[C]

カンテはバイレやギターより難しいことはわかっていますが、まだ参加者の方々は知識が不足しているように思います。CDで勉強するのではなく、経験や知識が豊富なマエストロに習うべきです。
女性の参加者が多く見られたこと、そして、みなさんがフラメンコへの愛を見せてくれたことを、私はとても喜ばしく思います。どうぞこれからも、学び続けてください。がんばって!

ディエゴ・ゴメス(カンタオール)[C]

今年もまた、ANIF主催のフラメンコ・ルネサンス21が終了しました。厳しくも希望とエネルギーに満ち、何よりも成長し続けようとする意欲と我々にこの“flamenco”というアルテを共有しようとする気持ちに溢れた3日間でした。
毎年、皆さんのこのイベントに参加する決意、努力、強い意志の力に、個人的にとても驚かされます。出演者(バイレ、カンテ、ギター)が演ずる数分間には、それまでの長い時間と努力があります。すべての参加者に対して、この新人公演が今後も日本で最も重要なイベントであり続けるよう、応援し続けます。
レベルは毎年上がり、厳しいものになってきています。フラメンコが真の世界遺産であること、また心と魂を込めたものは、国境、人種、国籍をも越える。そのことを目の当たりにできることを誇りに思います。
参加されたすべての皆さん、またこのイベントの実施に関わられた皆様、ありがとうございます。そして、ANIFのこのアルテに対する活動とそれに関わる全ての皆様、ありがとうございました!

菊地裕子(評論ライター)[Bs,Bg]

昨年、奨励賞の選考委員をはずれ、ずいぶん久しぶりに新人公演を一観客として見た。そのおかげで、フラメンコ舞踊の多様性を楽しみ、個々の出場者の努力に感じ入るという、かつて純粋に新人公演ファンであった頃の感覚が蘇った。正直いって舞台は水もので、どんなに素晴らしいアーティストでも、日によって出来不出来はある。たった一度の本番で、出場者の真価がわかるわけではない。けれども、多くの観客にとって、出会いはその一度だけ。一期一会の舞台で、余すところなく自分自身を刻印していただきたいとの思いで拝見している。今年の新人公演も、そういう意味で非常に面白かった。中でも私が感動したのは、何度も出場している方々の成長ぶりで、そのうちの何人かの説得力のあるステージには迷わず高評価を付けた。また、歴代受賞者である山田あかり(カンテソロ)、正路あすか(バイレソロ)両名によるエキシビジョンも、3日間のエンディングにふさわしい、見応えのあるものだったことが非常に嬉しかった。
実はここ数年、必死の努力を重ねて舞台に上がった人々に、選考委員という立場からもの申すことが苦痛になっていたのだが、今回はいつにも増して、新人公演の奨励賞というものが、出場者の長年の努力と成果にしっかりと応える形で与えられるのだと感じた。とすれば、自分がそこにわずかでも携われたことはいかにも幸せなことだ。

フラメンコ舞踊を大きな山に例えれば、頂上に向かう登山道はひとつだけではない、と以前どこかで書いた。けれど今は、フラメンコ舞踊は多くの山々から成る連山のようなものかもしれないと思う。フラメンコを志す人々が個々の山を目指し、あるいは自身の山を築きながら、努力を続け、ひとつずつ小さな成果を挙げている姿に、私は非常に感銘を受ける。新人公演に出場した全ての人々に拍手を贈りたい。

以下は、印象に残った出場者についてのメモから。
(◎=高評価、○=評価、△=今後に期待/★=奨励賞に推薦、☆=特別賞)

<バイレ・ソロ部門>
【18日】
○谷口祐子/バタ・デ・コーラとマントンのアレグリアス。マントン使いが優雅で美しい。リズムの楽しさもあって、ワクワクさせた。しかし、今年は同じような演目が多く、ソロにはもっと突出した個性が必要と感じた。上手に使えるという以上の何かが。
○佐藤直美/シギリージャ。気持いいコンパス。メリハリもあってgood! あとは大舞台でやる場合の大きさ。大きく動くという意味ではなく、中のエネルギーを膨らますという意味で。
○池田理恵/シギリージャ。佳い踊り手。メリハリがあって舞踊的に上手いが、あともう少し深みがほしかった。
△牛田裕衣/タラント。よくよく踊り込んだのか、達者な踊り。しかし前半、ちょっと頑張り過ぎか。緩急がほしい。タンゴになってから、自由な感じがよく出ていた。
○松下ひろみ/シギリージャ。コントロールがきいていて佳い踊り手。しかし、曲としては盛り上がりに欠けた。体力的なことも含めて、力配分の工夫を。
◎大岩奈青★/シギリージャ。ムイ・フラメンコ!この日いちばん、ゾクゾクした。コンパス感が心地よい。惜しむらくは、ブエルタのキレが今ひとつと見えてしまうこと。体の使い方にさらに工夫をこらし、このままフラメンコの恰好よさをずんずん求めていって!
○平川亜紀/ソレア・ポル・ブレリア。小柄だが踊りのセンスが良く、なかなか魅力的。だが、全般的に中のエネルギーが小さい。特に後半はもっと膨らませてほしかった。
△山形志穂/パリージョのシギリージャ。踊り込んでいる感じはあるが、無難な印象。振りに自発性が乏しい。もっと自分の踊りにしてください。

【19日】
○小島智子/ティエント。よく踊れている。ブラソが美しい。ただし、まだ振付をなぞっている感が否めない。もっと自発的に踊れるように頑張って。
△瀧野晴美/ソレア・ポル・ブレリア。よく鍛えられた身体。だが、発するエネルギーが小さいせいか、踊りというより、運動のように見える。表現力を養って。
○服部亜希子/シギリージャ。キレがあって非常に上手い。ただし、求心力に難。もっと惹き付ける工夫がないと、客は置いていかれてしまうのです。
◎藤本ゆかり★/ソレア・ポル・ブレリア。別人かと思うほど迫力と表現力に富んでいた。ステージの使い方にも進歩のあと。踊り全般に非常にコントロールがきいていて、素晴らしい踊り手に成長した。平板になりがちなソレア・ポル・ブレリアが、これほど感動的なものになったのは驚きだ。お見事!
◎西山依里/タラント。しなやかさが際だつ踊り。自分らしさがあって、非常に佳い踊り手。しかし、なかなか突出するところまでいかない。もっとフラメンコのセンティードを深掘りしてみては?あなたなら出来る!
○菊池麻由美/シギリージャ。長くて雄弁なブラソが印象的。美しい踊り。しかし後半、息切れの感。惜しい。
△有田ゆうき/ソレア。なかなかフラメンカ。全般的に好印象だが、これぞ!と光るものが感じられない。好きなことを徹底的に突き詰めてみてほしい。
◎平山奈緒/ソレア。佳きフラメンカ。身体も良く使えているが、ブエルタが今ひとつで損な感じ。苦手は克服するに越したことはないが、見せ方を工夫するのもひとつのやり方。そして自分のやりたいところをさらに磨いてほしい。
△内田好美/ソレア・ポル・ブレリア。あれっ?と思ってしまった。上手い人だけに期待していたが、今回は厚みに欠けた。存在感、個性は有している。頑張れ!
○鈴木雪花/シギリージャ。果敢なる挑戦と見えた。今のところ、まだ荒削りの感はあるが、大きな踊りが踊れる人だと思う。エネルギーのタメをもっと。下半身に安定感をもっと。芯を太くして。
△竹村歩/ソレア・ポル・ブレリア。なかなかのフラメンカ。良く踊れているけれど、自分を出していくには、リズム感も身体も表現力ももっと磨くべし。衣装が踊りをどう印象づけるかも意識して。
△大井昌子/ソレア・ポル・ブレリア。面白い才能の持ち主だが、やや雑な印象。後半は少し単調になった。丁寧に、息切れしないよう、精進して。
◎黒木珠美★/ソレア。長いこと、「踊り巧者」だけど決め手に欠けると書いてきたが、今年は化けた!開き直ったかのように個性がにじみ出て、ソレアという演目を良く消化していて、非常に見応えがあった。ここまで精進してきた方が大輪の花を咲かせるのを目の当たりにするのは、心から嬉しい!
△田中実華江/ティエント。ツボを押さえて、フラメンカな踊り。あと一歩、自分の魅力を押し出す勇気がほしい。自分だけのものを。
△青木千鶴子/バタ・デ・コーラとマントンのアレグリアス。バタ使いが上達して優雅だった。しかし、今回は同じような振付の演目が多く、技術は当然ながら、それ以上の表現力があるかないかが評価の分かれ目となった。さらに頑張れー!
△岡田麻里/ソレア。悪くない。フラメンコのセオリー通りではあるけれど、新味や個性が感じられず、新人公演では埋もれてしまう。もっと自分の踊りを目指して。そのために何が必要か考えて。

【20日】
△野上裕美/ソレア。良くコントロールされ、中が充実している感じで、踊り手としての質の佳さを思わせた。ただオーソドックスな振付が、素直ではあったが、見せる決め手に欠けた。これから!
◎佐渡靖子★/バタ・デ・コーラとマントンのシギリージャ。うぅーーー!何と充実した踊りだったろう!マントンとバタでこれほど内実を感じさせるとは!本当に佳いものを見させてもらいました。Muy bien!!
◎堅正はるか/タラント。身体は出来ているし、踊りも上手いし、見せ方の工夫もあった。あと一歩のところをどう突破するかといえば、フラメンコを深掘りすることかと。
△久貝輝代/バタ・デ・コーラとマントンのアレグリアス。踊りは上手くなった。だが、まだ振付をこなしているところに留まっている感。あと、エスコビージャがパルマの音で聞えないのは損です。
○河合浩子/アレグリアス。小柄だが非常にエネルギッシュで、舞台を大きく使えたのが良かった。ただし足はマイクの前でやってほしかった。楽しさは客も共有したいのです。
△佐藤陽美/ソレア・ポル・ブレリア。気持ちの良いノリ。それを感じさせるだけでも凄いことだが、新人公演で7分30秒ソロで踊るためには、もう少し内側からの表現力を磨く必要があるかも。
◎津田可奈★/シギリージャ。精進しましたねえ。非常にコントロールのきいた、緊張感のある演目で、見応えがあった。舞踊度高し!
◎久保田晴菜★/ソレア。うわぁ、本当にびっくりした。今までのあれやこれやを全部払拭し、見どころ満載な上に、非常にコントロールのきいた素晴らしいソレア!最後まで惹き付けられた。Ole!
◎津幡友紀★/ロマンセ。小さなヒターナの圧倒的なエナジー!ばんざーい!!
△東田美智江/アレグリアス。踊れる人のようだが、唄振りが忙しく感じるのは、振りに追われているから?せっかくのアレグリアス、リズムの面白さをもう少し感じさせてほしい。
△山内佳代子/アレグリアス。まずまず個性的。エスコビージャが楽しい。しかしクエルポがまだ。表現力のある身体を作って、自分の好きなことを追求してほしい。

<バイレ・群舞部門>
○カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」☆/「すばらしい!」としかメモがない。小さな子供達が、群舞とは思えないほど生き生きとした踊りを見せ、それがいかにもフラメンコに見えたことに感動した。個人的には群舞で最も楽しめた演目。だから、この組が結果として奨励賞でも準奨励賞でも異論はないのだが、私の当初の採点欄には「特別賞」とあった。つまり、奨励賞対象としての採点を留保したのだ。なぜ留保したのか。それは、子供達の生き生きした踊りが、果たして彼らの自発性に基づいているか、私は驚き以上の感動を認めたかという、いくつかの躊躇があったためだ。もちろん、繰り返しになるが、演目としてはこの上なく楽しかった。今後、カンデーラがまた、私の躊躇など吹き飛ばすほどの群舞作品を携えて出場してくれることを心から願っている。
○Armonía/よく踊れる3人による厳しいマルティネーテ イ シギリージャ。踊りは見事だったが、何故だろう、私としては胸に迫るほどの感動には至らなかった。そこが群舞の難しさか。迫力はあったが、全体に色が均一になり過ぎた感がある。せっかく踊れる人々がやるのだから、もう少し自由な部分があっても良かったと個人的には思った。
◎LAMA y SONACAY★/かつて新宿にあったエル・フラメンコでメインの踊り手だったスペイン人のバイラオールに、あなたはそんなにフラメンコが好きなのに、どうしてステージではバイラリンみたいな構成にするの?というような質問をしたことがある。彼は、日本人はファルーコ(祖父のほう)とかカルメン・アマジャとかが好きだけど、決してヒターノにはなれないだろ?僕だって同じだから、作り込んで踊るんだよ、みたいに答えた。暗い顔して。日本のプロの踊り手も、長いこと同じようなことを言っていた気がする。だから、今回のように、フラメンコだけで大舞台で遊んでみせ、観客を楽しませることができることを証明してくれた2人のバイラオーレスが、私には眩しくて仕方なかった。完成度はともかく、私は彼らの勇気と日々の精進に感嘆した。ほら、日本のフラメンコもやっとここまで来たよと、私はあの日の自分に言いたい。日本人による群舞(というかパレハだけど)の新しい可能性が見えてきたステージ。ありがとう、LAMA y SONACAY!

瀬田 彰(ギタリスト)[G]

1番・塩谷(ブレリア):
⑥②①弦を変則に下げたReオープンチューニングのモデルノ曲。
テクニックも良く曲想も良かったが・・・各レマーテの追い込み部がややはしるのが残念。

2番・森谷(シギリージャ):
渋い伝統的スタイルのシギリージャ。
プルガール(親指)で歌わせるテクニックも良く感情を良く表現した演奏だったが、ファルセータ中にコンパス感があまい部分が何箇所か有り気になった。

3番・池川(ロンデーニャ):
前半はゆったりしたリブレなロンデーニャ+後半はリズミックなロンデーニャ。
情感をしっかりとギターの音で表現して良い演奏だった。さらに最後のピカードが決まればもっと良かった。

4番・福嶋(ソレア):
しっかりした演奏だがソレアのコンパスのアクセントが大げさに聞こえすぎる。
それと楽器の関係か音潰れが多かったのが残念。

5番・和田(グァヒーラ):
自作のグァヒーラ。曲のもつメローな感じは出ているが演奏がソフトすぎる。
フラメンコなのだからもっと快活なキレがあると良かった。

6番・鈴木(シギリージャ):   
伝統的な響きのシギリージャ。
演奏は独自のタメを作り良かったが、後半のカバール部はテンポ設定が速かったのか音もれが多かった。

7番・内山(ブレリア):
ロンデーニャ調弦の自作ブレリア。
曲は良かったが…ラスゲアードの音量とファルセータ(指弾き)の音量の差が大きすぎて肝心の旋律が聞き取りづらかった。

北井一郎(現代舞踊協会)[Bs,Bg]

入賞も決まりましたが、小生の印象の強かった踊り手を紹介させて頂きます。

18日庄子裕子:自分の踊りになりきっている
19日瀧野晴美:踊りを自分にこなしている
19日服部亜希子:重厚感がありサパテアードの強弱の使い分けがうまい
19日平山奈穂:長いドレスで情感をうまく表現
19日黒木珠美:黒の衣裳が映え、サパテアードが見る人の心にひびく
20日堅正はるか:踊りの切れ味抜群、動きの間が良く充分楽しませた
20日佐藤陽美:激しいサパテアードが印象的
20日津田可奈:力が入り過ぎる。柔らかい表現を取り入れたら
20日小宮山葉子:エネルギッシュな踊りだが、顔の無表情が気になる
全体に踊り手のレベルが上がって今回は水準が高かった。群舞は気に入った作品がなかったのが残念でした。

小倉泉弥(専門誌編集長)[Bs,Bg,G,C]

今年も全ての方の舞台を拝見しました。例年の長丁場ですが、こちらも慣れてきたのか集中力を切らさずに乗り切れたので、よかったです。

まずはギター部門から。僕が票を入れたのは森谷忍さんです。それは見事なシギリージャでした。一番感激したのはご自身の音色をお持ちだということです。よく枯れた愛器から響く音色は一朝一夕に得られるものではないでしょう。気力も真っ直ぐに演奏に現れ、迫力十分。リズムも安定している上に、メロディとハーモニーがくっきりとしてわかりやすい。安心して聴ける名演でした。その裏には、弾けるものと弾けないものを厳密に見極める姿勢と、ファルセータをどう弾くかといった研究の日々があったのではないかとお察しします。ぜひまた、拝聴の機会を熱望します。また、池川史洋さんのロンデーニャ、福嶋隆児さんのソレアも甲乙つけがたく、奨励賞を受賞されても遜色のない出来栄えだったと僕は思います。お二人とも過去の新人公演で拝聴していますが、今年が一番よかったです。

次にカンテ部門です。カンテを聴くにあたり、メロディのアクセントこそがカンテの醍醐味だと思いを新たにしています。そこには音程、発声・発音、リズムなども渾然一体となってくる。……ところがどうしたことか、そんなことはすっかり忘れて、結局のところ「あぁいいなあ」と思うかどうかという、素朴な気持ちで票を投じました。それで今年も熊谷善博さんに入れました。熊谷さんの歌は、カンテを丸ごと呑みこんでいるような感じがしたのです。その歌に不思議とピュアなものを覚え、ほだされました。

続いて、バイレ・群舞部門を。なんらかの感性が欠落しているのか、幼い子が踊ろうと老年の方が踊ろうと、舞台である以上は、「子どもが踊るとかわいい」「ご老体なのにすごい」という人情を僕は勘案しないようにしている気がします。なぜなら、舞台だからです。舞台を見る以上は、一定の技術を求めます。これは数ある物の見方のわずか一つに過ぎません。さておき、僕はカンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」に投票しました。先生を除く7人が小学生くらいの子どもたちの群舞です。一見矛盾するでしょうか?僕は彼らをカッコいいと思いました。伴奏の繰り出す音に対して、素晴らしい反射神経でバシッと踊りを決める姿は、優れたアーティストでした。正直なところ前後の演劇的なシーンはなんともわからなかったのですが、中核を成すフラメンコでいい踊りをしており、感激しました。また、奨励賞を得たArmoníaですが、2011年にバイレソロで受賞した知念響さんが非常に印象的でした。あれから6年が経ち、久々に踊りを拝見しましたが、さらに上手くなっている!びっくりしました。鍛錬を怠ることなく日々を過ごしてきたのだと思うと頭が下がります。なお、カホンを叩いた朱雀はるなさんや、ホセ・コロンのプレイもさすがプロだと感心してしまいました。余談ですが、伴奏を楽しむのも新人公演の見所です。

最後にバイレ・ソロ部門です。票を入れた方は、牛田裕衣さん、藤本ゆかりさん、平山奈穂さん、黒木珠美さん、久保田晴菜さん、竹村歩さん、伊藤千紘さんです。
牛田さんはごく普通にタブラオで踊っていそうな雰囲気を感じました。リズムに香りがあるというか。地力があると思うので、花が咲く日は近かろうと期待しています。藤本さんは、動作がキビキビしており、軸は真っ直ぐ、横のラインもキレイで、ズシッとした佇まい。堂々としていて、昨年からいいレベルアップをしていると感じました。受賞されてもおかしくなかったと思います。平山さんは面目躍如でしょう。CAFコンクールで優勝し、勢いそのままに行きましたね。縦横に舞台を広く使い、気合いも入っている上に、それでいて踊りが上品。あれだけ動きながら、端正に踊りをまとめるセンスは素晴らしいです。自分がよく見えているのでしょう。黒木さんは烈火な感じでよかったです。気合いが漲っていて豪快、でもリズムはきっちりハマリ、そして客席に向かって踊るところが好印象でした。
久保田晴菜さんの魅力はなんといっても大きな踊りでしょう。広い可動域を活かしたブラソは大変見栄えがよく、記憶に残ります。これまでも良かったのですが、今年受賞したのは、曲種を変えたから?去年はアレグリアス、今年はソレア。2014・15年はタラント、2011年はロメーラ。うまく説明できないのですが、徐々に良くなってきているのは感じていました。それが一定のところまで達したということだと思います。竹村さんは後半ブレリアになってからよくなりました。舞台を広く動きながらも、身体は一定の美しさを保ち、いい熱を帯びていました。ソレアからこの質だとなお良かったです。
伊藤さんは足も身体も腕もリズムも、それぞれに一定の水準に達していたのではないでしょうか。特にリズムによい雰囲気があったと感じました。

最後に、池田理恵さんはもったいなかったです!入れようかと考えていましたが、時間オーバーということで泣く泣く外しています。切れ味鋭く、よく攻めた踊りでした。では、来年も会場でお目にかかります。


第25回新人公演「フラメンコ・ルネサンス21」

2016.07.22

選考委員(名前から各講評へリンク)

濱田滋郎(評論家・会長)[G,C]

第25回、すなわち「四半世紀続いてきた」ことを証明する今回の新人公演「フラメンコ・ルネサンス21」も、幸いなことに、盛況のもと成果を挙げながら、つつがなく終えることができました。統括責任者としてはホッとすると同時に、出演者、関係者、観衆の方がた、すべての裏方さんたちが熱意を込めて公演を成功に導かれたことに対し、深い感謝を捧げたいと存じます。

私はバイレに関しては選考委員ではありませんが、今年もすべての出場者を拝見し、それぞれに示される渾身の演技に打たれるところ少なくありませんでした。奨励賞を贈られた方々の踊りはいずれも何らかの意味で印象深いものがあり、ご受賞には心よりの「おめでとう」をお伝えしたいと思います。また、当然ながら、「ラ・ウニオン行き」を目指された方々(かつての奨励賞受賞者)のアルテには格別なものがあると感じさせられました。中で、推薦に浴された屋良有子さんには、ぜひかの地で素晴らしい成果を挙げられるものと期待が高まります。

ギター部門の出演者は6名と少なく、また、飛び抜けた感じを残す人は居なかったというのが実感ですが、中で奨励賞の宇田川卓俊さんは、明るく魅力的な音色と“乗り”の良さをもって、高い技量を示されました。カンテ部門はそれに対して16名という多さ、しかも全体的な水準は、往年に比してみれば、確かに上がったと思わせるものがありました。たとえば不用意な“日本的”節回しの混入など、聴き手に「あれ?」と思わせるようなところが本当に少なくなり、この一時からも、日本のカンテを志す人びとが、日頃まじめに、正しい道を歩んでいるのだということが伝わってきました。4対12という男女の比率は、バイレの世界の“日本的特徴”がカンテの畑にも及んだかのようで釈然とはしませんが、男性の中でもダニエル・リコさんはこれまで彼を聴いた内では最もフラメンコ的に歌っていましたし、定直慎一郎さんも、まじめに筋を通した納得のゆく歌でした。ただ、これは彼らにだけではなく全般的に言えることですが、もうひとつ自在かつ自発的に、言い替えればカンテの内に深くはいり込んで歌う境地を、ぜひ身につけて欲しいと感じます。奨励賞の許有廷さんは、準奨励賞を与えられた4年前に比べると、1回りも、2回りも芸境に磨きをかけ、安定した見事な歌唱を披露していました。残念ながら(ギターの宇田川さんともども)「ラ・ウニオン行き」への選出は成りませんでしたが、奥の深いカンテの世界を更に究める楽しみができたと思って精進されますよう。

何はともあれ、「6月開催」という異例の事態にもしっかりと対応され、実りを示されたすべての方がたに、重ねて御礼を申し上げ筆を置きます。

小島章司(舞踊家・理事長)[Bs,Bg,G,C]

私達に真剣勝負の舞台を見せてくれた3日間、暑くて熱い3日間でした。皆様お疲れ様でした。例年のように少しだけ私の所見を述べます。(敬称は略させていただきます)

【17日(金)】
1・長嶺晴香:最初の出から強い印象を与える。踊りの運びも強力さと前に気を出す踊りが目を引いた。
10・齋藤朋之:落着き払ったSoleá。楽しみと苦しみが一つになった感を抱かされてうれしかった。
18・沖真悠子:上半身のしなりと柔らかさがfemineidadに繋がり、Diegoの抑えた唄い出しに導かれcanteと共に有った良い踊りとなった。
21・牛田裕衣:Moraのような瞳の輝きを見せる時compásは輝きを増し、心深くにまで射込んで来る気迫が感じられた。

【18日(土)】
12・長本真由:熱気と強力さで踊り切った所が魅力。最後まで勢いを失することなく踊り切る。生成りの魅力と言えるだろうか。
14・黒須信江:バックミュージシャンを上手くとらえ、出演者全員で一つのナンバーを完成させようとの大きな目論見が見え、スケールの大きな舞台となった。
15・佐渡靖子:とてもスタイリッシュな舞台。衣裳の黒、mantonのオフホワイトとの対比が美を生む。長身としなる上体、colaの捌きも見事。marcarの時の指、手、腕の繊細さが印象深い。
17・岩丸綾子:Fandango₋Siguiriya₋Fandangoという輪環形式美を強い意志の力で創り出そうとしたことが結果として美の創造に繋がった。
21・漆畑志乃ぶ:graciaに溢れた作品。こぼれるような愛嬌、舞台を明るくさせて、無上の喜びを観客に伝えた。mantonとcolaの使い手としても完璧でした。当夜の白眉となる踊りでした。
22・藤本ゆかり:迫りくるものを感じさせた。シギリージャの持つ5角形を想わせるコンパス感がManuelのカンテとの絡みも深さを増した。
23・和泉冴英香:compás感がとても優れていた。統率力に充ちた全体像の創出に於いても、緩急の流れがより増幅された。
25・池田理恵:他の誰とも違ったリズム感を宿している。身体から放出するオーラが立体的に放たれ、始原のエネルギーを胎内に宿しているのだろうか。
31・阿部和子:graciaに満ちた踊りでした。どの部分も力みのないAlegrías、余韻の有る〆の部分まで愛嬌たっぷりで素晴らしかった。
34・斎藤克己:今回どのような心意気で舞台に臨んだのだろうか。長い時節を乗り越えて来たフラメンコのesenciaに積め込まれた感情表出が感動へと導かれたのだろう。

【19日(日)】
19・阪上のり子:雰囲気づくりが抜群。共演仲間との協働の楽しさを充分伝えることに成功。
20・末松三和:身体の関節を存分に拡げた舞踊表現が見事である。少しだけバックのミュージシャンとの音のズレを感じた瞬間があった。
23・西山依里:溢れんばかりの心の内を吐露し、心理描写を巧みに表現し、スケールの大きなTarantoであった。
27・大野 環:瞬間美しい間が紡がれ神が降臨するような感覚にsiguiriyaの深淵を見た。
30・渡辺なおみ:軽妙な身のこなし方、美質な間の持たせ方、喜怒哀楽の感情の発露が良い方向に向かい、華やかな舞となった。
31・柴崎沙里:一刻一刻微妙な彩が変化をもたらし曲が構築されていく時間の流れが良かったと思う。モノトーンの中色鮮やかに煌めく一刻を表出できればより華やぐのでは……。
35・近藤綾香:身体の解放が良く出来ているのが良い。緩急自在にサパテオとブラソスの有機性が生み出されるのも作舞に顕われている。とてもユニークな感性に期待したい。
37・稲垣栄子:2人の華やかなカンタオーレスの声に励まされ思い切り良く踊れた。ギターとカンテとの対話の妙味にもう一歩踏み込んで見たらもう一歩先が見えてくるのでは……。

<第2回・日本カンテ・デ・ラス・ミナス音楽祭 出演者の作品>
【17日(金)】
2・屋良有子:7分間の作品としての構築力の冴えが光った。「舞台を制する」と言う難題が25回目を迎えたFLAMENCO RENAISSANCE21で私は初めて出会えた気がした。La Unionへの招待も多くの人たちの推薦を頂き決定され、愛の祝福を捧げます。
9・本田恵美:起承転結どの部分をとっても隙はなく、踊り込み、深みが増した入魂の1曲となりました。とても嬉しく思います。
【18日(土)】
32・永田 健:たえず前に進もうと努力されている姿、頼もしく感じています。bastónの扱いはとても難しいですが、もっと練習を積み重ねられます事を願っています。
【19日(日)】
29・松彩果:対比の妙味と調和の美が刻印された踊りでした。身体の深くから発せられる光彩は万感の激情を創出しました。
34・重盛薫子:ゆったりしたテンポにTarantoの深いletraが身体中に沁み込んで行く姿を感じ取ることが出来ました。Tangosもゆっくりと洒脱で小粋さを盛り込んだ踊りが心地良かったです。

山田恵子(舞踊家)[Bs,Bg]

皆様お疲れ様でした。例年より2ヵ月早い今回の公演でしたが、全出演者の熱い思いが客席に伝わり盛会でした。

3日間の選考で感じたことを書きます。まず群舞ですが、今年は3団体のみの出演でしたので、選考に苦労致しました。群舞の大切なポイントは振付者の意図及びテーマがどれだけダンサーに理解されているか、そしてダンサー全員の気持ちが1つになり、乱れることなく観客を魅了しうるかどうかを拝見しました。テクニックだけでは成り立たない作品としての深みがあるかどうか、とても大事なことです。あと構成力も必要ですし、音楽と振付がマッチしているかも観ます。

石井智子さんの作品は構成も良くダンサー達の若さにあふれた踊りは好感を持ちましたが、足りなかったのが深みです。斎藤克己さんの作品は昔バルセロナで観たダリのオブジェのような世界でしたが、ダンサー達の情感とパワーが欲しかったです。ベニートさんの作品はフラメンコの香り豊かな表現でダンサー達それぞれが個性的でしたが、更にその個性が1つになったらすごかったと思います。3作者共良いものを持っているので数多く創ってみてください。答えが出てくるでしょう。

バイレ・ソロに入ります。今年は圧倒的にソレアの踊りが多く、また衣裳はほとんどが黒でしたので、皆同じように見えました。踊りのパターンも何故か同じようで人とは違う自分の踊りを踊って欲しいと思いました。舞台では踊り始める初めの瞬間で決まります。あの何秒かで自分が何を踊りたいのかを主張、全員同じではないはずです。相変わらずカンテを無視したサパテアードからの入り方にはうんざりしました。

ソレアの歌には恋の歌、神への祈り、家族愛、心の苦しみ等たくさんあります。ソレアの詩を踊りましょう。そうすれば衣裳の色も変わるし、自分が何を踊りたいのかを主張すれば、他の人と同じような踊りにはならないはずです。ソレアの踊りでは、津田可奈、黒木珠美、山本純子、末松三和、新井ゆふ子、柴崎沙里さんが心に残りました。

アレグリアスに関しては森里子、久保田晴菜さんが生命力にあふれハッピーになりました。タンゴ・デ・マラガの斎藤克己さんの踊りはしばらくぶりに泣けました。彼はテクニックだけではない深い深い心からほとばしる生へののぞみを踊り、観る人の心を打ちました。これぞフラメンコ!です。グアヒーラの小西みとさんはマハのようでしたし、シギリージャの加藤誠子、岩丸綾子さんは自己主張がはっきりしそれぞれ個性的です。

また対象外としての屋良有子、本田恵美、松彩果、重盛薫子、永田健さん達はさすがにしたたかな踊りで重みを感じます。受賞後の精神と持久力のすばらしさに拍手を送ります。益々のご活躍を祈っております。

最後に屋良さん、世界に通用するダンサーになってください。

三澤勝弘(ギタリスト)[G]

<ギター部門>
まずは、誌面に限りがあり、言葉がぶっきらぼうになることをお許しください。
大場さん:音の発する瞬間の内側から来るべき力に乏しいと感じた。リズムにもいまひとつの躍動感を、そしてその上での骨太の主張が求められるかと。
池川さん:冒頭部でのいわゆるグリサンド奏法、これがとてつもなく難しい。序盤から中盤へ、叙景の方へ傾き過ぎた感も。それでも、その中で見え隠れする奏者の“情”が望まれる。終盤はリズム演奏に頼り過ぎたかと。
伏見さん:全体に渡る表現の均整が美しい。音の出を更に研究し、またいまひとつの大胆さ(ある種のデフォルメ)があれば女流としての魅力がより発揮できるかと。
宇田川さん:参加された中で、最も音の輪郭が確かだった。やや荒削り(決して弱点ではない…)の演奏だったが、とても良さが際立ちました。フラメンコギターの中での中核をなす曲、今回とは異なった趣きのある世界、閉じ込めては飛び出す“小悪魔(いたずらっ子)”の情をいつか聴かせていただきたい。
関根さん:大変音楽的力量のある方と感じた。しかし、全体にその立体感・生命感に欠けるものがあったかと。フラメンコは、その美しさのみではなく、音楽性のみでもなく、ある種の孤立した世界観を秘めることによってのみ他の分野(音楽のみでなく…)と同じ場に立てるもの、と私は思っております。
島田さん:演奏がその場限りで統一さに欠けた、と言えば悪いことのようだが、実は近視眼的ではあったが内へ向かおうとする精神力は感じた。しかし“情”の距離が近く、あるいは狭く、それぞれを打ち消してしまった。次回も参加されるのなら、またソレアで、ほとんどソレアでしか表現し得ない薫り立つ気品を探ってみるのも。

小林伴子(舞踊家)[Bs,Bg]

今回の新人公演はバイレ・ソロ部門に70人、カンテ部門に16人と例年より多くの出演があり、大変ボリュームの有る3日間となりました。出演する方々のレベルも年々アップしていると同時に、カンテ・デ・ラス・ミナス音楽祭を目指す過去に奨励賞を受賞している5人の方々も加わり、大変見応え聞きごたえのある会となりました。

奨励賞の選考は、出演組数の1割を基準にしています。毎年の反省を踏まえてより良い方法が検討されますので毎回少しずつ変わっています。今年私が参加したバイレ・ソロ部門は奨励賞に推薦したい方7名とそれに続く方1名を記名投票して、奨励賞推薦の多い方から順に7名の方々が奨励賞に選考されました。結果だけみると、準奨励賞や努力賞が無いすっきりとした形になってしまいましたが、実際は実力伯仲で残念な方が多数いた様に思います。

奨励賞以外の方で私の印象に残った方、17日、長嶺晴香さん、気迫充分乗り乗りでした。林由美子さん、大人の空気感が心地良かった。沖真悠子さん、伸びやかで爽やかなアレグリアスでチャーミング。牛田裕衣さん、内に秘めた強さを感じさせる魅力的なソレアだった。

18日、千葉真優美さん大人の女性の踊りとそれを引き立てる渋い素敵な衣装。古迫うららさん、堂々とした気迫を感じた。佐渡靖子さん巧みなコーラやマントンさばきで、ドラマチックな表現でした。佐藤哲平さん荒削りな部分もありますが魅力的なファルーカでした。

群舞部門 、ベニートガルシア・フラメンコスタジオのタラントは5人の個性を生かしながら全員で作品を紡いでいる。素敵なタラントでした。

カンテ・デ・ラス・ミナス音楽祭にエントリーした方々5名は、奨励賞受賞後の充実した、時の積み重ねを感じさせる素晴らしい演技を見せてくれました。新人公演に関わる私達にとって、新人公演を経た方達があきらかにその先に進化している姿を見せてもらえるのは、大変嬉しい事です。新人公演をめざす皆さんにもその先に想いをめぐらすよい刺激になる事でしょう。皆さんの今後を期待します。

飯ヶ谷守康(ギタリスト)[G,C]

<ギター部門>
今年は6名の参加、皆さん異様な緊張?の中での精一杯の演奏を披露してくれました。やはり、昨年同様P.A.のせいか、あるいは演奏者の技量(本番での精神性を含む)のせいなのか…とにかくラスゲアードの音しか聞こえて来なかった。
主に前腕の動きだけで“ウリャ~!!”という感じにしか見えないし、聞こえて来ない。ラスゲアードにも“表情”があるはずだ、と思うのだが、私の感性が古いのだろうか!?また、音はブツブツと途切れ途切れで、とても“切れ味”にこだわっているとは思いづらい、と感じてしまった。特にスラーの音が、弱過ぎと感じた。フラメンコギターの絶対基本の一つです。

“音は出すものではなく響かせるもの”と教えられた私の耳には、あまりフラメンコの音には感じられなかった。楽屋で聴けば違っているのかもしれないが…。な~んて書いてしまうと、たぶん嫌われてしまうと思うが、正直な“個人的な感想”ということでご容赦いただきたい。
ギターでフラメンコをするということなら、フラメンコだけでなく、ギターについても少しだけ勉強して欲しいと思ってしまった。気持ち良く弾くことと同時に、もう少しギターと格闘しても良いのではないか、とも感じてしまった。
あえて個人名を挙げさせていただくが、関根彰良さん、たぶんフラメンコ以外のジャンルからの移民?とお見受けしたが、ギター的センスはとても良い感覚を持っていらっしゃると思います。ただ、フラメンコとしての色合いがやや薄いと感じられました。そのあたりのことを身に付けられれば、とても期待の持てる方ではないか、と感じました。精進を期待しています。

<カンテ部門>
今回の出場者数は16名、ギターの6名と比べると、驚くほかはない。今回の出場者に、ある程度共通していたのが“宝塚”的な発声をする、ということだった。喉の内側を緊張させて、胸から思い切り声を出す…といっても、本人は腹から声を出しているつもりかもしれない。そして、声の大きさで勝負を賭ける…というように印象を強く感じてしまった。存在感のある強い声と、大声を出すことは違う気もしないではないが、どんなものだろうか…!?
そんな中、ある出場者に個人的に好感を持てる人がいた(あえて個人名は控えさせていただきます)。私のフラメンコ心を、少しだけ揺さぶりました。まず、母音でリズムを感じようとしていたし、息の使い方に配慮が感じられていて、スペインを感じさせてくれました。さらに、詩の行末、つまり“キメ”の持って行き方が本格的なものを目指していた、と感じられました。それに、声を張り上げても煩く感じなかったのが好印象、だった。ただ非常に残念だったことが音程の不安定さだ。しかし、音程の不安定さは比較的簡単に修正できるので、ぜひそのあたりの訓練をして、再度挑戦していただけたら、と思う。

今田央(ギタリスト)[G]

大場洋平
今回のブレリアの中では一番モデルノです。難しいファルセータをよく弾きこなしていますが、ちょっとコンパス感があまいです。コンパスを刻むとき頭(⑫)のアクセントばかり強くて、特にiのコントラは回数も多いしちょっとうるさいですね。アクセントを点で捉えてる感じです。また締めのラスゲアードもよく聴こえてきません。モデルノのトーケはよりシビアなコンパス感が求められます。各ファルセータの一音一音がコンパスのなかにどう位置づけられているのかをもう少し分析してみてください。

池川史洋
Bのキーでのブレリアですね。イントロからブレリアの導入部(パコっぽい)は良い流れでした。ただその後の展開はPによるファルセータとラスゲアードが多かったなと思いました。ギター的にはおいしいキーなのでアルペジオ等含めてもっと音楽的に作ってほしいところですが。ただ個人的にはBはEmの属性が強すぎて扱いが難しいです。カンシオンっぽくなってしまうんですね。あとはやはりコンパスの頭のアクセントがちょっとうるさいです。

伏見かるな
シギリージャで出演はなかなかの勇気ですがちょっと弾き急いだ感じです。最初のフレーズでスラーが先走って雰囲気を作れなかったですね。Pの音そのものは良かったので左手の訓練次第です。緊張すると左指先走りますよね。
その後も上ずった感から抜けられなかったのは残念ですがラスゲアードは良かったです。転調も含め曲の構成は良かったです。今回のために考えたのなら十分な収穫だと思いますが。

宇田川卓俊
毎回確実に進歩している宇田川さんですが今回は今までの線の細さがなくなって化けた感じでした。曲も適度に様々なテクニックを用いトレモロまで出てくる凝りようで良い構成だった思います。
今後演奏面で気を付けるのはやはり前のめりなコンパス感ですね。今回は最後まで破綻することなくその勢いが持続したのでそれが良いほうに評価されたのだと思いますが走っていることには変わりませんので。

関根彰良
2回転調する意欲作でした。音もきれいですし、技術的にもフラメンコのテクニックはほぼ全て網羅して今回の出演者中一番かもしれません。奨励賞に何が足りなかったのかはわかりませんが今回は私には宇田川さんのほうが訴えるものがありました。このテンポのアレグリアス(ソレア・ポル・ブレリアも含めて)はパルマやパーカッションなしでテンションを上げていくのは難しいのだと思いますし、心地よいコードでのアルペジオが普通のギターミュージックっぽく聴こえてしまうのかもしれません。前回のソレアよりは完成度は高くなっていますので是非再挑戦してください。

島田武
古典的なソレアで好感の持てる選曲ですがこちらも弾き急ぎすぎました。コンパスの中の③や⑥といったアクセントが走り気味で落ち着きがありません。この感じはカンテからしか得られないので伴奏を勉強すると変わってきますよ。
トレモロは粒の揃った良い音でしたがアルペジオは浮いてきませんね。ラスゲアードの部分もほとんどなかったようですがこれももう少し加えるべきだと思います。あと他の人にも言えるのですがPと同時のゴルペがやたらと大音量なのは音響のせいなのでしょうか。

大塚千津子(舞踊家)[Bs,Bg]

この度受賞された皆さん、心からおめでとうございます。今後益々とご活躍されますようお祈りしております。そして古くからフラメンコ道でご活躍されています斎藤克己氏のバイレには良き時代のノスタルジィ溢れた世界が彷彿と蘇り回帰な喜びが胸に染み入りました。心よりおめでとうございます。今後、皆さんが新たな扉を開き邁進されますよう心からエールをお送ります。
下記の方にはアドバイスとし心の片隅において頂ければ幸いです。

<バイレ・ソロ部門>
【17日(金)】
長嶺晴香さん、粗削りながらもパワー全開、フェルサあるバイレに気質を感じました。足と体幹の強化を!期待してます。原舞さん、マノがとても綺麗です。全体に緩急を!内田好美さん、テクニックはおありなので特にクェルポをもっと使いこなしての表現力を。林由美子さん、全体にダイナミックさを。タンゴは切り替えノリ感を!久保田晴菜さん、切れを取り入れ緩急を、持ち味がもっと生かされるかと思います。本多清見さん、テクニックバランスとても良かったと思います。舞台エリアの使い方を研究なさって下さい。大塚歩さん、ダイナミックで表現力も兼ね備えたバイレ、今後に期待大!!加藤誠子さん、深い心の映えとコラヘを、マッチョが上がりきらずとても残念でした。松本千晶さん、アイレに表現力の追及を!個性も武器に!期待しています。牛田裕衣さん、ムイフラメンカなバイレに魅了Olé!しいて言えばもう少し破けても良かったのか。センティードを大切に突き進んで頂きたいです。是非再挑戦を!

<バイレ・群舞部門>
Golondrinas
正に燕のごとくスピード感に躍動感溢れた振付構成、瞬間瞬間に目を見張りドキッ! 余韻感じる間なく目まぐるしく変わり続けるユニゾン群舞。フォーメンションはユニゾンのみに留まらずもう少しバリエーションがあればと感じました。それにはお1人お1人のレベルアップが必要かと思います。是非皆さん更なるレベルアップを目指してください。
斎藤克己フラメンコ・アカデミー札幌
先生率いる群舞、ある意味幻想的世界を感じ魅入りましたがやはり群舞としてのフォーメンション転換も欲しかったと思いました。でもそこはあえて意図的に削ぎ落としたとも感じた群舞でした。
ベニートガルシア・フラメンコスタジオ
お1人お1人のテクニックにばらつきを感じまた群舞としての迫力に欠けてたように感じました。それぞれが表現力も養いレベルアップを目指し頑張って頂きたいです。

【18日(土)】
小西みとさん、持ち前の華やかさとセンスの良さに魅せられ印象に残りました。全体に流れてしまったのか…欲を言えばメリハリを!期待しています。長本真由さん、全力疾走でパワーあるはじけたバイレ、今後に期待!頑張って下さい。岩丸綾子さん、全体のレベルバランスはとても良かったと思いますがパワーを出し切れず残念に思いました。蜂須夕子さん、伸びしろをすごく感じました、足の強化頑張って下さい。藤本ゆかりさん、内なる強さとダイナミックに!体幹の強化とペソを下に。和泉冴英香さん、資質に将来性を感じました。期待大!!池田理恵さん、恵まれた身体を生かし切れずバイレがこじんまりまとまった感が。舞台での見せ方研究なさって下さい。黒木珠美さん、裏切りの衣装?のグリーンがとても印象強く残りました。緩急がもっとあれば持ち味が生かされるかと。舞台奥行も使い舞台空間の掴み方を研究なさっては。期待!佐藤哲平さん、エリアをもっと使ってダイナミックに。クエルポでコラヘを感じ直立スタイルから打破!期待!津田可奈さん、テクニックは高いと思いましたが緩急が足りず。ブレリアは気持ち変えノリ感を捉える。期待しています。阿部和子さん、フラメンコを心から楽しんでいらしてとてもチャーミングなバイレでした。

【19日(日)】
西山依里さん、フラメンコ性にテクニックもあり魅入りました。あと一息かと!表現力も養い内なるコラヘを。期待しています。流石泰美さん、常に正面向きのスタイルで無く舞台動線の研究を。後半からスタミナ切れも感じ残念! 期待しています。瀬﨑慶太さん、とても清々しいバイレで伸びしろ感じます。決めポーズがパターン化の感あり、もっと流動的な間合いにマルカールでコンパス感を!今後に期待しています。新井ゆふ子さん、テクニック素晴らしかった!課題はアイレに表現力でしょうか、頑張って下さい!渡辺なおみさん、フラメンコ性をとても感じ魅入りました。是非是非頑張って頂きたいです。期待大!青木千鶴子さん、内心の映えそして曲の深さを!クエルポもっと使って下さい。近藤綾香さん、個性溢れ迫力あるバイレに魅入りました。 テクニック抜群の潔さ!独得のフォルマでの瞬発力!これからの進化に期待大。

<ウニオン対象の皆様>
挑戦出演されました5名の皆様素晴らしいバイレを堪能させて頂き有難うございました。今後益々のご活躍をして下さい。今回入賞されました屋良有子さん、おめでとうございます。現地に於いて本領発揮されますよう健闘を心より祈っております。

片桐勝彦(ギタリスト)[G]

大場洋平:ポル・メディオのブレリアらしい曲作りで、AメジャーやAマイナーにも転調して、聴いていて飽きなかったです。タパオ後すぐの冒頭フレーズのコンパスが乱れてしまって残念でしたが、後半に行くにつれて安定してきました。全体を通じて右手のタッチも強く良かったのですが、i指の強さに比べて他の指が弱いことが気になりました。音色が少し硬く感じるのは、ブリッジの近くで弾いている割にはラスゲアード以外の奏法(プルガールやアルペジオ)が弱いからだと思います。右手の奏法は概ね出来ているので、それらのコンビネーションを正確に出来ると更に良いですね。

池川史洋:出演者全員の中で一番音色も太くきれいで、安定した演奏だったと思います。6弦をBに下げてのグラナイーナでのブレリアは、オリジナリティーにも富んでいて、素晴らしい曲でした。強弱や呼吸も絶妙でコンパス感もバッチリだったので、ラスゲアードの部分が多くても気にならなかったです。奨励賞に値する好演奏で曲の完成度も高かったのですが、ピカードやアルサプーアの長いフレーズなど、テクニックを見せる部分を敢えて作ってもらうと選考には良かったかもしれません。

伏見かるな:シギリージャの間や呼吸・音色など、先人のフラメンコギターの名手たちの演奏のようでした。カバーレスにかわった後、最後に1コンパスだけのジャマーダで終わらせたのには感動しました。これはよっぽどの愛好家やフラメンコ通でないとなかなか理解されず、もっと派手なアレンジを考えてしまうところですが、最高に良かったです。強いて言うならば、右手と左手のタイミングが合わないために音が潰れてしまったり、勢いのあまりにリズムが少しあまくなってしまった箇所があったのが残念でした。

宇田川卓俊:奨励賞おめでとうございます。今年の宇田川さんの演奏は迫力があって、良い意味で派手な演奏でした。ポル・アリーバのブレリアはそもすると古い雰囲気に陥りがちですが、伝統的なフレーズとラスゲアードやトレモロなどを用いた新しい奏法も散りばめられていて、スリリングでドライブ感のある演奏だったと思います。アルサプーアはアポヤンドとの組み合わせのバランスが良く、撥ねたリズムに聞こえました。アルペジオからピカード・ラスゲアードのコンビネーションもうまくこなせていて、安定感がありました。今後の活躍も期待しています。

関根彰良:全体的に精度が高い好演奏でした。途中マイナースケールを経過しながらのE→C→Aそれぞれのトノでの曲作りは、景色の移り変わりを感じました。冒頭のタパオは若干走り気味なのが気になりましたが、それ以外は落ち着いて丁寧に弾いているのが印象的です。Eメジャー部分のピカードは特に見事でしたが、Aメジャーの部分の最後が少し惜しかったです。アルサプーアなども走らずにしっかり弾けていて安定した技術を持っていると思います。次回はシギリージャなど特に呼吸の大切な曲種の演奏も聴いてみたいです。

島田武:これぞソレアという伝統的な曲作りで良かったです。ソレアはゆっくりのテンポですが決して一定のリズムで演奏する曲種ではありません。しかしフレーズの塊の中にはシビアなリズムが隠されています。島田さんもよく表現されていましたが、細かいフレーズの中のリズムを正確に弾けると更に良くなると思います。ミスはほとんど無かったのですが、音の抜けやかすりを更に無くすよう頑張ってください。トレモロは粒もそろっていて、P指アポヤンドとの音量バランスも良かったです。アルサプーアも良く弾けていましたが、同じテンポでもアポヤンドの音符の長さを伸ばしてアルサプーアだけ瞬発力を増せば、更に良くなると思います。

加部洋(プロデューサー)[G,C]

<ギター部門>
今年は出場者は少なかったけれどレベルは高かったと思う。その高さの中身は、それぞれが、誰かのコピーではなく、自分の表現で弾いていたこと。気にとまった出演者を書きます。

池川史洋君●変則チューニングのブレリア。たっぷりした安定感あるイントロから入り、パコ・デ・ルシアのアルモライマを上手く編曲して取り入れたり、モロン・スタイルが出てきたり、楽しめた。深い音色が印象に残った。変則チューニングの効果を存分に生かし、演奏も編曲も成功していた。伏見かるなさん●堂々たるフラメンコな音色。女性とは思えない強いタッチに感じた。選んたファルセータも正統そのもので、その点で何の異論もなかった。ただただ惜しまれるのが、時々現れるミスタッチだ。何とかこれを克服してほしい。宇田川卓俊君●ポル・アリーバで弾かれるブレリアはあるようで余りない。その点でも面白かった。極めて伝統的で正統な演奏にもかかわらず、誰にも似ていない、つまり「自分のしるし」があった。後半の盛り上がりも素晴らしく、演奏の完成度は高かった。関根彰良君●とかく散漫な演奏になってしまいがちのモダンなアレグリアスだが、そんなことはなく、個々のテクニックといい、音色といい、メロディーといい、申し分なかったが、何か足りなかった。それは湧きあがるような躍動感なのだと思う。

<カンテ部門>
今年は、「とても聴いていられない」というカンテが1つもなかった。それだけでも大きな進歩だと思う。一方で声を張り上げることに頼る出演者も多かった。気にとまった出演者を書きます。
板本麻見さん●古酒を味わうようなひび割れた味わいが良かった。音程・節回しにもフラメンコらしさを感じた。後半が盛り上がれば、更に完成度は上がったと思う。ダニエル・リコ君●最近進境著しいダニエル君だが、節回しの難しい歌を微妙な節回しで歌った。若干部分的な乱れ、音程のフラットなどがあったが、方向性は良いと思う。遠藤郷子さん●サリーダも良く、ソレアの渋みも出ていたし、微妙な節回しも回っていた。しかし、かつてのペーニャで歌った時にみんなが認めたあの「凄味」が出てなかった。どんな曲を歌っても、それが出るようにして欲しい。岡村佳代子さん●安心して聴いていられるソレア。ただ、前半に力みを感じた。張り上げた時に現れる声質は少年のようで、魅力的だ。勝羽ユキさん●カンシオン・ポル・ブレリアは珍しい。歌って踊るフェステーラの雰囲気が出ていた。歌唱力もあった。ただ、芸を自分のものにしていた分、逆に日本的だった。定直慎一郎君●サリーダ良し、歌い出しもソレアらしく、好もしい。すごく上手くなった。生来の声質がいいので、伸びしろがかなりあると思う。川村麻利子さん●魅力あるフラメンコ向きの声質で、可愛い。ただ、歌詞とメロディの乗せ方がオモテで、フラメンコ独特の裏ノリになっていなかった。大西保孝君●サリーダが面白かった。古いタイプの趣あるアレグリアス。メリハリはあったが、節回しが今一だった。また、マックスで突き抜ける発声が欲しかった。熊谷善博君●キーを上げて、新しいクマ・カンテ・ワールドが展開した。これを更に深めて行けばいいのでは。余談ながら、伴奏ギターの表現力がハンパでなかった。許有廷●念願の奨励賞おめでとう。歌はレバンティカになって更に良くなった。これで区切りが付いたでしょうから、これからはヒターノ本命のタンゴやブレリアに力を入れて欲しい。

鈴木敬子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
長嶺晴香さん・入りから印象深く目を引いた。身体がとても良く動いていてテンションが高く力が入っていた。逆に力の抜ける部分や重さが出てくれば更に良くなると思う。/屋良有子さん・彼女独特の世界。凄い集中力から乱れない動きが生まれている。/久保田晴菜さん・踊り慣れている。サパテアードの音がきれいだった。/本田恵美さん・今回もとても楽しませてくれた。正確で高度な技術。個性のある曲のつくりは、カルメン・アマジャを連想した。/齋藤朋之さん・丁寧に踊られていて特にマノの動きが印象に残った。曲の後半とても良くなって時々みせるキレの良いところに味わいのあるフラメンコを感じた。/菊池麻由美さん・恵まれたスタイルでとても雰囲気が良かった。もう少しテンペラメントが加われば更に良くなると思う。/沖真悠子さん・踊りに強弱があり引き付けるものがあった。/小西みとさん・印象的な衣装で身体のラインやブラッソが美しく強調されていた。/佐渡靖子さん・以前より大きい踊りになっていた。マントンやバタ・デ・コーラを上手く使いとても引き付けられた。長年の経験を重ね存在感が増してきていると感じた。/藤本ゆかりさん・重みのある動きで存在感が出ていた。もう少し動きをためることとキレが加われば更に良くなると思う。/和泉冴英香さん・ブラッソの使い方がとても上手かった。これからが楽しみな人です。/佐藤哲平さん・昨年よりキレが良くなった。立ち姿が美しく透明で純粋な魅力がある。動きがまだ固いところや強い動作のあとの身体やブラッソが流れないように注意すると良くなると思う。/津田可奈さん・前回より増してメリハリが出てきた。毎回挑戦することによって努力し、その結果が出ていると思う。/阿部和子さん・味わいある踊りでとても興味深く印象に残った。観ていてリラックスさせてくれる楽しさがあった。良い雰囲気で会場を沸かせた。/永田健さん・以前より技術や力強さ存在感もパワーアップしていた。観ている人を引き付け会場からの拍手も大きかった。/斎籐克己さん・曲の構成も良く自分の魅力を充分に出していた。/末松三和さん・強い音響のハプニングが2回もあったにもかかわらず、そのハプニングに負けないくらいのレマテを見せてくれて印象に残った。曲の後半更に踊りのパワーが増し良くなった。/西山依里さん・ペソがあり迫力のある踊りだった。タンゴがとても似合っていた。止まった時に身体が少しぶれるのが気になったがこれからが楽しみだ。/佐藤幸子さん・前回より良くなっている。強い動きだけではなく重さが加わってきた。/瀬﨑慶太さん・以前より見違えるほどキレが良くなった。少し姿勢が気になるが、ぶれない集中力で舞台を熱くした。/松彩果さん・ムイフラメンコな高いテンションでメリハリのある踊りだった。さすがに慣れている。/柴崎沙里さん・強い動きとサパテアードが印象に残った。曲の後半テンションも上がり観ている人を引き付けた。/本川幹子さん・全体的にもう少し強さが欲しい。柔らかい動きが美しかった。特に最後のリブレが音に合っていた。/重盛薫子さん・存在感があった。曲の後半盛り上がった。

 

<バイレ・群舞部門>
Golondrinas・全員とても揃っていた。フォーメーションが変化しすぎて内容を感じ取りにくくなった気がする。/斎藤克己フラメンコ・アカデミー札幌・群舞の女性たちのフォーメーションの動きがあまりなかったが、作品は幻想的で踊りはとてもエレガントで美しかった。/ベニートガルシア・フラメンコスタジオ・1人ひとり別の動きをする中での統一感がみえた。今回の群舞の中ではフラメンコ性を一番感じた。

鈴木眞澄(舞踊家)[Bs,Bg]

「心と心をつなぐもの」

フラメンコってなんだろう?心と心をつなぐものかな、と思う。踊るもの、唄うもの、奏でるもの、そしてその空間に存在するすべてのものの心をつなぐもの。やっと届いた弱い糸のようなものもあれば、ギュッとわしづかみにされたような感動もあり、うれしくなったり悲しくなったり、とにかく心に届いてくる。
長い間フラメンコに関わってきてその歳その歳での見方も変わってきますが今の私が感じたことを、それが皆さんの何らかの糧になることを祈りながら書いてみます。

<バイレ・ソロ部門>
長嶺晴香さん…勢いがあってよかったのですが、ずっと力が入っていたので時には身体の芯だけおさえたまま柔らかい動きがあってもいいのではないでしょうか?森山みえさん…内面からの表現がもっと欲しかったです。久保田晴菜さん…芯がしっかりとして成長が見えのびのびと踊っていたのが嬉しかったです。齋籐朋之さん…技術は未熟ながらも真摯に向かう姿にオレーッ!高野正子さん…踊る心が見えて嬉しかったです。大塚歩さん…好感が持てる踊りでした。牛田裕衣さん…大切に踊る心が見えました。森里子さん…アレグリアスらしい踊りでしたがあまり動かないで表現する部分もあったらもっとよいと思います。千葉真優美さん…見ていて心が躍りましたが最後が弱くなってしまったのが残念でした。古迫うららさん…熱いソレアに感動しました。黒須信江さん…ずっと成長を楽しみに見てきましたが心が伝わってきて嬉しかったです。これからは振りをけずっていったらよいと思います。佐渡靖子さん…頑張りましたね~!オレーッ!加藤美佳さん…楽しむ気持ちが伝わってきました。内面からの自然な表情をもっと重視したらよいと思います。蜂須夕子さん…カンテとともにある踊りがよかったです。藤本ゆかりさん…心が込もって素敵でした。首の芯がゆるむことに注意したらよいと思います。和泉冴英香さん…メリハリがあり熱いフラメンコでした。その場の全員が一緒になっていてオレーッ!持田賀津子さん…持ち前の表現力をストレートにフラメンコにぶつけてみてはいかがでしょうか?池田理恵さん…熱い心が伝わってきました。平田かつらさん…踊る心が見えて嬉しかったです。阿部和子さん…アレグリアスの心があってとてもフラメンコですばらしかったです。オレーッ!斎藤克己さん…立ち姿だけで出てくる存在感は積み重ねたものからかと思いました。還暦を過ぎてもこうありたいです。末松三和さん…熱い心が伝わってきて嬉しかったです。杉山須美江さん…踊りの幼さの中にも熱いものがありました。西山依里さん…熱さはありましたが演じるような表情が気になりました。佐藤幸子さん…幸子さんご自身が見えてきて嬉しかったです。流石泰美さん…熱さは感じましたがジャマーダ等のフラメンコの自然な成り立ちを再度見直してはいかがでしょうか?渡辺なおみさん…心は見えたのですが動きをけずったらもっとよいのでは?柴崎沙里さん…振りと振りのつながりや流れを大事に考えてみてはいかがでしょうか?青木千鶴子さん…重心をもっと落としてみると違う感覚が見えてくると思います。幅田真沙実さん…幸せそうな気持ちが見えました。稲垣栄子さん…身体の芯を定めてみてください。楽しい気持ちは伝わってきました。

<バイレ・群舞部門>
Golondrinas…踊りが揃っている点がすばらしかったですがそれだけに終始したような感じがしました。群舞を揃える難しさを考えると心苦しいのですが1人1人の表現も見たかったです。斎藤克己フラメンコ・アカデミー札幌…人間模様が見えて楽しかったです。ベニートガルシア・フラメンコスタジオ…1人1人の表現はあったのですが全体の動きや流れが欲しかったです。

この新人公演の舞台が、これからも皆さんがより深くフラメンコと向き合う機会になりますよう願っています。

曽我辺靖子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【17日(金)】
長嶺晴香さん:キレがあり、リズム感良く、パワー溢れる踊りに引き込まれました。
森山みえさん:前回よりサパテアードの安定が見受けられ、努力の跡が感じられました。パリージョとの対話を大切に。
久保田晴菜さん:決め細かく丁寧な踊りで余裕さえ感じられました。少々表情が気になりました。
大塚歩さん:印象的な始まりでした。上半身からの動きがリズム感とマッチし、ノリの良さに繋がりましたね。
菊池麻由美さん:恵まれた手足の長さを生かした振付でした。心の流れが動きについていけなかった感があり残念です。
小島智子さん:パリージョとアバニコを良く使いこなし、雰囲気もありました。もう少しエリアを大きく捉えると深さが増すでしょう。     
松本千晶さん:後半のノリは素晴らしかったです。
牛田裕衣さん:サパテアードもリンピオで心を感じたソレアでした。

【18日(土)】
森里子さん:グラシアがあり上体からブラッソへの流れが絶妙。シレンシオの表現も良かったです。
山本由紀さん:体が良く動き自由自在にバタとマントンを使っていました。表現力が増すとなお良いでしょう。
小西みとさん:バタとアバニコを巧みにこなし曲の雰囲気をよくとらえていました。楽しみなバイラオーラですね。
古追うららさん:足音はリンピオ、地についた踊りが曲にぴったり合い、ぶれない強さが光っていました。
黒須信江さん:強いサパテアードと自信に満ちた動きに、心の深さを感じました。
佐渡靖子さん:バタさばきとマントンが一体となり、奥底から湧き上ってくるものが胸を打つ。前回より一段と磨きがかかった味わい深い踊りを見せてくれました。
岩丸綾子さん:切れ味よく強いサパテアードが印象的でした。呼吸のコントロールが出来たら更に見応えのある踊りになるでしょう。
漆畑志乃ぶさん:メリハリがあり一貫した流れの良さを感じるアレグリアスでした。これまでも小柄ながらパワー溢れる踊りをみせてくれた彼女の集大成ともいうべき踊りでしょうか?とても嬉しく思います。
藤本ゆかりさん:カンテを良く聞き、内面から湧き出る重さを感じさせるシギリージャでした。
和泉冴英香さん:しっかり踊っている姿に好感が持てました。表現力が増すと更に良いでしょう。将来性を感じる踊り手です。
持田賀津子さん:表現力はあるのですから、それを動きに繋げると共に生かされるでしょう。
黒木珠美さん:サパテアードも強く、特に後半、心の叫びを感じました。
佐藤哲平さん:努力の跡がうかがえました。今後自分の踊りを見つけることを期待します。
津田可奈さん:歌振りのタメがあり気持ちのよい抜け。ぶれることのない踊りに引けつけられました。
阿部和子さん:楽しんで踊っている姿に‘オレー’
斎藤克己さん:1つ1つの仕草に人生を感じ、思いが伝わりました。

【19日(日)】
李成喜さん:軸がぶれずサパテアードもリンピオ。素晴らしい成長ぶりでした。
末松三和さん:サパテアードの間の取り方は抜群。感覚的に一線を越えた気がします。
野上裕美さん:気持ちよく伸び伸び踊っていた姿が印象的でした。
瀬﨑慶太さん:成長の跡がうかがえます。自分の世界を持つと更に伸びるでしょう。
大野環さん:いつもながらの個性的な衣装、絶妙な三位一体、素晴らしい集中力、流れるような動き、衒いのないパリージョに粋さを感じました。
渡辺なおみさん:重心が安定していてパワー溢れる踊りに引き込まれました。
柴崎沙里さん:凄みがあり、ストーリー性とマッチした衣装、全てをのみこんだ踊りに拍手。
青木千鶴子さん:きちんと踊っている姿に好感が持てました。あと一歩踏み込んで自分の世界を見つけると良いでしょう。
稲垣栄子さん:とても楽しんで踊っている姿がほほえましく、こちらも嬉しくなりました。

<バイレ・群舞部門>
Golondrinas:体も良く動き、スピード感にあふれていました。個々の個性を打ち出せると更に良くなると思います。
斎藤克己フラメンコ・アカデミー札幌:インパクトがあり楽しめました。バタ・デ・コーラとアバニコの練習の跡がうかがえましたが、群舞の変化がほしかったです。
ベニートガルシア・フラメンコスタジオ:曲の重さを表現し、1人1人の存在感が感じられた作品でした。

高橋英子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【17日(日)】
第1日目はウニオン行きに果敢に挑戦した屋良有子さんと、本田恵美さんがその凄みを見せ、素晴らしい演技を披露してくださいました。世界に羽ばたきたいという底知れないパワーを感じました。
奨励賞を目指した方々で印象が強かったのは、先ず久保田晴菜さん。技術的に安定していて清純なイメージが好印象。アレグリアスの優美さを表現する上体の美しさがあるので、大人っぽい品格が出てくるとカテゴリーが増す感じがします。その点、大塚歩さんは大人っぽい味をほのかにチラつかせていました。現代感覚の安定したテクニックとフラメンコなアイレで楽しませていただき今後が期待される一人です。小島智子さんのグアヒーラはパリ―ジョと扇を持って難度の高い踊りを難なくこなし、バックの一風変わったノリの歌とうまく融合を果たし楽しめました。松本千晶さんはモダンでリズミカルなノリの中にペソがある。出だしから、その構成がシックで大袈裟でなく自然な流れでよかったのですが、ちょっとレマーテなどで押し出しとか凄味がもう少しあったらピリッとしていたのか?などと考えさせられるソレア・ポル・ブレリアでした。惜しい!牛田裕衣さんはとても重量感ある踊りをみせました。身体の使い方に時々コラッヘがあり、その個性が輝きました。明るい曲はどんな風に踊られるのか興味深いです。
その他、林由美子さんは表現があっさりしていて、もう少し粘りが欲しいところです。内田好美さんは上体のブラッソなどを研究して表現を豊かにし、人々に伝わる踊りを目指して欲しいと思いました。長嶺晴香さんは最後にハレオを掛ける演出らしきアクションまであって気合は入っていましたが、ちょっと踊りに荒削りなイメージが残ったのが残念でした。パリージョとバタでシギリージャを踊った森山みえさんは難しい踊りをバックのいいアイレで健闘しました。本多清見さんも演出効果を考えた振り、丁寧な踊りで健闘しました。河合浩子さんは小気味よい踊りで健闘しました。程好いテクニックを持ち、これからもっと押しが出るといい加藤誠子さん。洒落たアイレを取り入れた演出と見栄えのする容姿が印象に残った沖真悠子さん。バックのアイレを素直に受けて自分を出しきっていた伊藤明美さん。構成が地味だったのか、表現しきれていない感じで惜しかった白石紀美子さん。技術的にちょっとアマさはありましたが、よく頑張ったのが伝わった斉藤朋之さん。もっともっとこれから大きくなって行く可能性のある原舞さん、高野正子さん、菊池麻由美さん、頑張ってください。

<バイレ・群舞部門>
「ベニートガルシアフラメンコスタジオ」の群舞は、個人用の振付を複数で踊っているという印象で群舞としては地味な演出、何か一つ物足りなさを感じましたが、各人の踊りはステキでした。「斉藤克己フラメンコアカデミー札幌」の群舞も同じように大勢の生徒さんがその場で踊っているだけでしたが、先生の個人的なグアヒーラと闘牛士というこだわりの世界が楽しめて面白かったと思います。Golondrinasは複数のツバメたちが軽やかに、またある時は攻めるように位置換えして、衣装は皆同じでもファッショナブルでエレガント、群舞らしい群舞で楽しめました。ただ、表現したいことが見えてこないもどかしさを少し感じました。

【18日(土)】
2日目はウニオン行きに挑戦した永田健さんが物凄い足とバストンの妙技で圧倒しました。この日は男性陣が活躍し、他に佐藤哲平さんが、今までのイメージを覆し、逞しく野性的になって登場。今後が期待されます。また奨励賞の斉藤克己さんは長年のフラメンコへの愛情が顕著に表れた心温まる演技でとても好感が持てました。
この日の女性陣は皆さん粒ぞろいっていうのでしょうか、いい演技が続き熱戦でした。その中で、無音に静々と出てきた小西みとさんの踊りはバタの捌きも綺麗に決まり、効果的な舞台演出に沿う存在感、しゃれた大人のムードがとても魅力的でした。佐渡靖子さんはブランカ・デ・レイを彷彿とさせるエレガンシア、上体がとても美しいです。今回のマントンとバタのソレアには気合が入り、心が籠っていました。そのままいいところを伸ばして更に大きくなって欲しいところです。奨励賞の黒須信江さん、振りの心を掴み、うまく表現できていて良かったです。古迫うららさんは大きい舞台をフルに使い存在感に満ちていました。正統的なアイレで無理ない演技の中にフラメンコ性が窺われとても後味のよい演技でした。津田可奈さんの演技は上体のうねりとかがないモダンでシャープな踊りですが、強い個人のカラーを押し出ていて魅力的でした。岩丸綾子さんのファンダンゴから始まりファンダンゴで終わる特殊な構成と、その力強く説得力ある演技、それを支える真摯な姿勢が見受け印象深いものがありました。また、黒木珠美さんは見栄えのする容姿で、キレのある演技が舞台に映え、何か不思議に大人っぽくフラメンコな世界を作りだしていてステキでした。
なんだか皆さん凄いですね!まだまだ続きます。長本真由さんはとても迫力あるモダンなノリの踊り。まだ荒削りですが決めがうまいので、同じようにパターン化したレマーテなどをもっと工夫すると良くなると思いました。漆畑志乃ぶさんはとても好印象の誠実な踊りで奨励賞。藤本ゆかりさんの今年の演技はしっとりしていた感じです。何故かここと言うところの動きに生気が不足していたような、そんなイメージがありました。山中純子さんのマントンを使った振付は洒落ていて素敵でした。か弱いイメージがつきまといますが、上品な感じでもあり、音楽構成も考えていて楽しめました。阿部和子さん、モダンな振りをしっとりアイロッソに踊って、好印象。フラメンコのそれらしいノリをよくつかんでものにしているのは立派でした。蜂須夕子さんはもう少し迫力が欲しかったですが、大きくどっしりした上体でシンプルに踊り込み良かったです。山本純子さんも心を籠めてよく踊り込まれているのが伝わりました。
さて、小野栄子さんは所謂ロルカもので日本でもお馴染みのスペイン古謡を踊り、音楽的にも楽しめましたが、ちょっと衣装やヘアーにもう少し工夫があったらよかったと思います。フラメンコ曲は全くコンセプトを変えてのモダンな振付でない限り、全体的に伝統的なイメージを崩さない方がいいように思います。カーニャを踊った山本由紀さん、踊り自体は悪くなく後半はそれなりのアイレでステキでしたが、マントンや衣装がもっとトラディショナルだったらもっと映えたのではないかと思いました。持田賀津子さんのシギリージャは無理な演出、劇的表現がちょっと気になりました。佐野裕子さんは気が入っていてどっしり感が良かったです。浅野直子さんはモダンな振りをうまく熟せるまでもうちょっと練習を重ねてまた挑戦して欲しいです。池田理恵さんは迫力がありそうで出しきれてない感じが残りました。頑張ってください。平田かつらさんはバックの熱唱を受けて堂々と踊っていました。その他、和泉冴英香さん、森里子さん、千葉真優美さん、加藤美佳さん達もこれからの飛躍を期待します。

【19日(日)】
3日目は、やはり何と言っても際だったのが松彩果さん。感じるままの踊り、フラメンコな身の熟しで魅せました。同じようにウニオン行きに挑戦した重盛薫子さんもキラッとするものを見せながら健闘なさっていました。このようにすでに奨励賞を受賞している方々がところどころで出てくると、雰囲気が引き締まる感じもします。 
さて、奨励賞に輝いた末松三和さん、李成喜さん、大野環さん、柴崎沙里さんの演技はそれぞれに良かったと思います。残念だったのは高度なテクニックでモダンなアレグリアスを踊った渡辺なおみさん、難度がある振付で頑張った瀬崎慶太さんなどでした。今後が大いに期待されます。近藤綾香さんは凄いテクニックと自分の世界を持っている異色の踊り手さんだと思います。ただ白?いメディアは賛否両論別れる要素でした。同じようにとても個性的なのが西山依里さん。天性の持ち味が時々ぞくっとフラメンコなカンジなのは不思議です。身体の使い方がいいような悪いような、何ともイレギュラーな世界があるように思いました。杉山須美江さんも綺麗なブラッソでしっかりした軸があり、肝心なところもきちっと締まる、筋のいい踊りでとても好印象、良かったです。
佐藤直美さん、表現したい気持ちが表情に表れ過ぎ、技術が伴わない不自然さがありちょっと残念だと思いました。バタとアバニコで登場した阪上のり子さんは特殊な振付のグアヒーラで健闘しました。 野上裕美さんは技術的にしっかりしているので、まだこれから伸びて行くと思います。佐藤幸子さんは自分の持つプーロ路線をしっかり維持した堅実な踊りでした。流石泰美さんはちょっと地味ですけど安定していたと思います。新井ゆふ子さんはコルテなどをうまく決めて健闘していました。青木千鶴子さんのソレアは唄振りで終わって行くシブい構成がステキでした。本川幹子さんのバンベーラは後半の唄が効果的で良かったです。上体ブラッソなどいろいろまだまだ改善できる要素があります。同じく幅田真沙実さんも丁寧に綺麗に踊っていて好感持てました。稲垣栄子さんは本当に元気よく楽しそうに踊っていましたね!

手塚真智子(舞踊家)[Bs]

長嶺晴香さん:最初からパワー全開でフラメンコへの熱情を感じました。力の配分を考えてメリハリを作るとブレリアに抜ける時や終わりにもっと爆発力が備わると思います。
原舞さん:体幹を作っていかれると良いと思います。
内田好美さん:情感が豊かと感じました。
林由美子さん:ペソを感じませんでしたが、タンゴに入ってからの踊りは素敵でした。
久保田晴菜さん:ひとつひとつのポーズがきれいでした。流れが見えなかったのが残念です。
齋藤朋之さん:ソレアに対する真摯な姿が印象に残っています。
本多清見さん:振りと振りの繋がりがぎくしゃくしているように見えましたが、バックの皆さんの力がそれをスムーズにしているように感じました。
大塚歩さん:小気味良いアレグリアスでした。
沖真悠子さん:引っ込みの歩き方が気になりました。歩き方は曲調によって考えさせられます。
松本千晶さん:マルカールで良い所を感じました。
牛田裕衣さん:タメもありブレリアから引っ込みole!でした。
森里子さん:元気が良く、指使いがきれいでした。
小西みとさん:表情が豊かでポーズがきれいでした。
古迫うららさん:良いソレアでした!ペソがあり、抜ける時の空気感はole!です。
長本真由さん:ペジスコを感じ、カンテとマルカールが良い調和でした。
佐渡靖子さん:「引っ込みまで踊り切る!」とても良いソレアでした。
岩丸綾子さん:抑えた情感がより深く心に伝わりました。
浅野直子さん:振りをつめ込み過ぎのように感じました。背中の使い方を考えていかれるとブラッソがもっと自由にのびやかに見えるのでは?
漆畑志乃ぶさん:良い表情でした。止まりの時ブラッソが少し遅く見えたように感じました。
和泉冴英香さん:良いソレアで、責任のとり方がカッコ良かったです。
山本純子さん:振りを自分のものにすると表情も出てくるのでは?
津田可奈さん:迫力と目力がありました。
山中純子さん:バラエティーにとんだマントン捌きが美しかった。
斎藤克己さん:ole!です。
阪上のり子さん:表情豊かで楽しいグアヒーラでした。
末松三和さん:成長が見え、安定感のあるソレアでした。
西山依里さん:動き過ぎの感はあるが、情感豊かで気迫が伝わって来ました。
流石泰美さん:精一杯に踊っている姿に好感を持ちました。
大野環さん:感動しました。
新井ゆふ子さん:出の歩き方が堂々として良かった。
青木千鶴子さん:前年より成長を感じました。
幅田真沙実さん:楽しそうにタンゴを踊っているのが好印象でした。
稲垣栄子さん:笑顔がステキでした。

花岡陽子(舞踊家)[Bs,Bg]

「火花」「花火」の3日間に寄せて

生きた、踊った、唄った、弾いた…彼ら全員に心からの拍手を送りたい。

<バイレ・ソロ部門>
【17日(金)】
長嶺さん:力が入ってアイレのあるフラメンコでした。
屋良さん:ご自分のソレアを立派に踊っています。
原さん:サパティアード良いです。少し変化が欲しい。
内田さん:シレンシオの部分がきれいです。
河合さん:サパティアードに工夫があるのですが…
林さん:情感、品性を感じました。
森山さん:また挑戦してください。踊り込んでください。
久保田さん:溢れるばかりの表現、感動しました。
本田さん:パフォーマンス性があり、新しい工夫いいです。
齋藤さん:貴方の人間性が踊りに現れています。
本多さん:重厚感あります。またの挑戦を!
高野さん:欠点は少ないです。魅せる工夫をして。
大塚さん:踊ることが楽しい、という、とてもきれいでした。
菊池さん:手足の長い恵まれた体形でお得です。
小島さん:パリージョ、アバニコ、若々しくて美しいです。
加藤さん:しっかり体幹を保ち、コンパスも正確です。
伊藤さん:形から入っているのが少し。また挑戦して。
沖さん:恵まれた容姿、カンテに工夫があっていいです。
白石さん:舞踊性が欲しいかしら。タラントの振りに工夫。
松本さん:全体的に問題がないのですが。
牛田さん:コンパス正確。舞台に映えて素晴らしい!

<バイレ・群舞部門>
Golondrinas:気持ちよく、よく揃い、ただただ楽しめました。
斎藤克己フラメンコ・アカデミー札幌:舞踊性を感じます。グアヒーラの暗いのも新しいです。
ベニート・ガルシアフラメンコスタジオ:情感のあるフラメンコ。ひとりひとりが輝いていました。

【18日(土)】
森さん:若々しくピチピチ。技術的に素晴らしい。
千葉さん:体の中に情感を秘めて、心に伝わります。
山本さん:レースのマントンがステキ。重厚感が欲しい。
小西さん:とても美しいです。マントンのさばきもいいです。
古迫さん:強さが内面から出ていてご自分のソレアでした。
長本さん:エネルギッシュなフラメンコ。少し抜いたところが欲しい。
佐野さん:ご自分のソレアにしています。少し振りが多いかも。
黒須さん:バランスのよい、強弱があり感動しました。
佐渡さん:カンテの思いにとてもよく乗って良かったです。
加藤さん:フラメンコが楽しくて好き!がよく出ています。
岩丸さん:表現力があり、きれいにまとめています。
小野さん:ソロンゴに挑戦。舞踊性が欲しいです。
蜂須さん:長い手足を全身でよく、あと少しです。
浅野さん:きれいにまとめています。高いレベルのサパテアードです。
漆畑さん:楽しそう、可愛らしい。はちきれんばかりのアレグリアス。
藤本さん:力強さが伝わります。カンテに負けていません。
和泉さん:豊かなお身体からアイレがあふれています。
持田さん:マントン、帽子を椅子の上に、思いをこめていいです。
池田さん:ボリュームのあるお身体からアイレがしっかり出ています。
黒木さん:大人の女性を感じました。マイナス面は少ないです。
平田さん:長身を十分に出して、将来性あります貴女!
山本さん:まろやかさがあって、まとまりも良いです。
佐藤くん:前回より成長を感じました。あと少しです。
津田さん:上半身が美しく、うっとり、ステキでした。
阿部さん:女性カンテ2人と雰囲気がとても良いです。
永田くん:身体の中に針金が入っているように鋭い。
山中さん:マントンの使い方良いです。もうひと工夫。
斎藤くん:マイケルジャクソンのように。貴方のバイレ、哀感あります。

【19日(日)】
李さん:美しくて強くて。バランス良し、感動。
佐藤さん:思いが伝わってきます。もっと良くなります。
阪上さん:ステキな衣裳、また挑戦してください。
末松さん:清々しいフラメンコ。サパティアードもいいです。
杉山さん:表現をもう少し考えてください。
野上さん:若々しく元気です。少し固くなったかしら。
西山さん:あふれるエネルギー。少し大味になります。
佐藤さん:非常に個性、大事に自分のものにして。
流石さん:盛り上がりはとても上手。ラスト少し疲れたかも。
瀬﨑くん:自分のカーニャにしています。がんばって!
大野さん:パリージョがここまでになるのは大変、立派です。
新井さん:長身のスタイル抜群。きれいでした。
松さん:頭の先から指の先まで行き届き、会場から魅了の拍手が。
渡辺さん:よくまとまった明るく楽しいアレグリアス。
柴崎さん:身体能力に優れ、舞踊性あります。感動!
青木さん:力が入っています。もの哀しさも表現されて。
本川さん:基本も出来ていて気持ちよく拝見しました。
重盛さん:苦悩、悲しみの表現が出ています。
近藤さん:軽やかなパーツが新しい工夫でした。
幅田さん:また挑戦して。フラメンコが楽しくなりますから。
稲垣さん:しなやかです。明るい動きがステキです。

本間牧子(舞踊家)[Bs]

17―1長嶺晴香…しなやかなブラソとマノ、アイレと力強い踊り、良かったです。パワーが力みにならないように脱力とコントロールを意識してみてください。
17―8久保田晴菜…ブラソ、表情、良かったと思います。間を大事にメリハリをしっかりつけましょう。
17―10齋藤朋之…フラメンコに真摯に向き合う踊りに感動いたしました。
17―13大塚歩…表情も豊か、クエルポ、ブラソ使い、アイレ、とても良かったです。振りに止め、メリハリをしっかりつけてみましょう
18―10小西みと…クエルポからブラソ、アバニコへの一体感のある表情、アイレ、品もあり素敵でした。おもいきりはじけるパワーを感じたかったです。
18―11古迫うらら…力強さと重さ、安定感のある踊りから伝わるアイレ、良かったです。エネルギーを集約コントロールし、表現にどう繋げるかです。
18―14黒須信江…メリハリがあり、小気味良いアイレを感じ、良かったです。
18―22藤本ゆかり…クエルポからブラソ、マノに繋がる間、ため、良い感じでした。あとひといき、何かを感じさせてください。
18―29佐藤哲平…体使いにひねりや、間 、安定感、重さがあるとサパテアードとダイナミックな踊りがよりいきてくると思います。
18―30津田可奈…安定感とエネルギッシュな踊り、アイレ、抜けの止め、とても良かったです。
18―31阿部和子…心を込めた踊りに温かな空気間とアイレを感じ、感動しました。
18―34斎藤克己…構成も素晴らしく、そこに存在するだけで大きなエネルギーを発する。引き込まれていき、とても感動しました。
19―21杉山須美江…重さと安定感、アイレもあり良かったです。強さ、メリハリがほしいです。
19―23 西山依里…元気いっぱいが良かったです。力まかせにならないようにパワーをコントロールし、ひとつひとつの振りを丁寧に踊ってみることです。
19―25流石泰美…ブレのない軸、落着きと安定感のある踊り、良かったです。エネルギッシュな力強さをあと少しほしいです。
19―26瀬﨑慶太…ポジション、形、良かったです。首使い、体の使いにメリハリ柔軟さがあると表現が豊かになります。
19―30渡辺なおみ…溢れ出る躍動感とアイレに感動しました。
19―31柴崎沙里…抜群の安定感とみなぎるパワー、しなやかなブラソと間が素晴しかったです。

(自分に迷いが出た時…)原点にかえってみましょう。何かをきっと発見できると思います…。基礎、基本大事です。そして、感性を大切にして下さい。

渡邊薫(舞踊家)[Bs,Bg]

6月開催にもかかわらず、やはり「新人公演は熱かった!暑かった!」

今年はバイレソロ(奨励賞対象)65名と「カンテ・デ・ラス・ミナス」エキシビジョン選考対象(歴代奨励賞受賞者)5名で3日間70名のバイレを観させて頂きました。

この25年間での出演者のテクニックの向上は著しいものです。それには各人が留学をし研鑽を重ね、その後もたゆまぬ努力をしてきた賜物だと思います。近年は日本で数多くのスペイン人クルシージョも催され、多くのテクニックを学ぶ機会に恵まれている事にも機縁していると感じています。

今回、バイラオーラの立場から踊りと衣裳のことに関して意見を述べさせて頂きます。自分の踊り、動き、ヌメロをきちんと考えて衣裳を選ばれたのでしょうか?ファルダの懸回(けまわ)しの広さとか意識してエスコビージャの時などファルダの扱い方を気を付けて欲しいと思いました。パソを見せる事に専念しすぎてファルダの扱いが雑になり、残念だなと感じた出演者が何名か見受けられました。

◎心に響いた方達  ○来年に期待しています
<バイレ・ソロ部門>
【17日(金)】
○長嶺晴香:身体の前傾が気になりましたが、パソをもう少し抑えて気持ちとのバランスを整えて踊ったらと。
○久保田晴菜:恵まれた身体をいかした踊り、上達のあとが見られます。自分の中でフラメンコのアイレの構築を深めて。
○小島智子:今回はマイク有でパリージョが鮮明に聞こえました。とてもエレガンシアですが、ペソ不足でした。
○加藤誠子:安定感のある大人の踊り、もっとカンテを感じて!
○沖真悠子:印象的な出だしで雰囲気がある踊り。もっとカンテ・ギターと対話して踊れたら。
◎松本千晶:自信にあふれた踊り、リズムの切り換えが上手。少し振りに追われた感がありましたが。

【18日(土)】
○小西みと:華のある踊り手、バタの扱いも良かったがもっと自分というのを表に出して欲しかった。
◎黒須信江:格段の上達、後半のソロ・デ・パソからの流れも良かった。リズムのコントロールが出来ればもっと完成されるのでは。
○岩丸綾子:惜しい!すごくコントロールされた踊りなのですが。振りを追うだけでないあなたのアイレを感じたいです。
○蜂須夕子:独特のアイレ、抑揚の効いた踊り、時々棒立ちになってしまうのが気になりました。
◎漆畑志乃ぶ:バタの扱いがとても綺麗。小柄ですが身体をよく使いこなし、素晴らしかった!コケタでもあったし。
○藤本ゆかり:全体的に良くまとまって、サパテアードもリンピオでした。が、こちら側に伝わってくるものが弱かった。
○山本純子:メリハリがあり、抑えた唄振りが好ましかった。首の前傾と最後の入りまで大切です。
○佐藤哲平:数段の上達ぶり。上体の引き上げに気をつけて。来年楽しみにしています。高みを目指してください!
○阿部和子:前回のソレアとはまた異なり、ゆったりとしたアイレたっぷりのアレグリアス。iSra. muy bien!とても会場を和ませてくれました。
◎斎藤克己:空間を一瞬にして「克己ワールド」に変えてしまった!常に挑戦する姿勢がすばらしい。キャリアを重ねた、ただテクニックだけに頼らない男の色気を兼ねそなえた踊りでした。後輩のバイラオールに伝えて欲しいフラメンコ黄金期の雰囲気がある。

【19日(日)】
◎李成喜:カンテとよく対話し落ち着いたマルカーヘ。昨年から比べるとペソを感じた。ブエルタの美しさも評価。
◎末松三和:踊りを自分のものにしている。大人の踊り。エスコビージャのリズムが良くコントロールされ流れを上手く作っていった。
○瀬﨑慶太:体幹がしっかりしてきてこの一年の精進の成果あり。ただ抜ける時が少し軽すぎる様に感じた。
◎大野環:しっかりと自分の世界を持ち、フラメンコに立ち向かっている姿勢を感じた。今回はパリージョに挑戦、以前はマントン等、何も道具を使わない踊りも観たいです。
○渡辺なおみ:しっかりと踊っていましたが、衣裳の懸回(けまわ)しが狭いのでエスコビージャの時にファルダの扱いが雑に見えて残念でした。

<バイレ・群舞部門>
3組それぞれが異なった傾向の作品で評価をするのが難しかった。
・Golondrinas:8人がよくまとまって踊られていた。構成の展開がありおもしろかったが、もうひとつ「ほとばしり」が欲しかった。来年もぜひ出演してください!
・斎藤克己フラメンコ・アカデミー札幌:独特のオープニングから、6人のグアヒーラへ。各人アバニコの扱い方が美しかった。アニフェリア出演時より皆んなの気持ちがよりまとまっている感じがした。
・ベニートガルシア・フラメンコスタジオ:フラメンコな構成・振付で、踊り手それぞれをより上手く見せることが出来ていた。

市川惠子(舞踊家)[Bs,Bs]

<バイレ・ソロ部門>
フラメンコは難しい。解っているからといってすぐ体現できるわけではなく、ただ皆さんに高い目標を持って頑張っていただきたいのです。何故こういう振りを踊っているのか。何故ここにこのレマーテ、ジャマーダがあるのか。自分としての心はあるのか。自分の意志でその振りを踊らなければ何も伝えられないのではないでしょうか。すぐに手にすることが出来なくても、ずっと意識し学んでいけば、きっと少しずつ手にすることが出来るのだと私は信じているのです。

私が奨励賞に推薦したのは、
★大塚歩:上手い。フラメンコを良く知っている。身体もきいて切れも良く、強さもある。抜けの感じもタパオも良い。軸はあるが姿勢は気になる。ギターと唄で作りこみ過ぎだが、アレグリアスらしく、自分のものになっていてとても良い。
★松本千晶:今年もまたしっかり腰の据わった存在感。静と動の使い分けも見事で、粋なしっとりとした大人の踊り。込める力が好き。上質な踊りに引き込まれた。毎年色々な面を見せてくれる。もっと強烈に訴えかけることも必要。
★牛田裕衣:気迫も重みもあるフラメンコ性の高い踊り。大げさな振りだが自分のものになっている。若いのにどーんとした存在感で迫ってきた。凄みすら感じる。切れ味も良く見入ってしまう。熱いものを感じたがどこかしっとりとしたうねりしぼりも見てみたい。
★古迫うらら:すごく良い!素直なフラメンコらしさに引き込まれた。足もリンピオ、振付けも良い。顔の切れ、抜けも良い。もっと出来るのかと思ってしまう。期待大。含み、絞りみたいなものが出てくるともっと良いのでは。
★黒須信江:フラメンコ性があり素晴らしい。唄もファルセータもブレリアも隙がない。完成度が高くしなやかで深さもあり抜けも良い。足の音が小さかったが気にならない位、表現力が凄い。
★山本純子:抑え目だが良い緊張感。内に込める思いが伝わってきて何か心に沁みた。ブラソとマノを丁寧に、唄にもっと深い表現を。止まりの時の軸に注意。抜けも良く、ブレリアが好き。良いものを持っているので今後に期待。頑張って欲しい。
★末松三和:込めた力の素晴らしさ。一時も緩まない空気感。腰のどしっと据わった安定感ある踊り。ピエもリンピオ、軸もぶれない。余計なものはそぎ落とされ、どーんと心に届いたソレア。もう自分の世界を確立している実力派。渾身の踊りに今年も感動。

次点で推薦したのは、
☆久保田晴菜:身体能力に優れ、のびのびとした気持ちの良い踊り。アレグリアスらしい若さ溢れるハツラツとした踊りに惹かれた。ピエも正確で安定感も良い。舞踊的にはバツグンに上手いのだが、フラメンコとして迫ってくるものがいる。綺麗過ぎるのが難点。

次に、特に印象に残った方々は、
●長嶺晴香:パワフルで個性的。ここまで頑張るかという勢いで迫ってきた。ずっと全開。荒いが面白い。動き過ぎ、もっとさり気ないところが欲しいが、すごいインパクトで深く印象に残った。
●沖真悠子:コンパスの〆を感じる落ち着きもあってとても良い踊り。ダイナミックで華やかだが、動きが多いのでもっとゆったりしたところがあっても良いのでは。
●佐野裕子:ソレアらしくて良い。静かだが込めた力がある。肩に力が入り過ぎだが自分を信じる力に惹きつけられ見てしまう。迫る程の強さはないが、伝わるものがあった。
●佐渡靖子:マントンもバタも技術的には素晴らしい。ダイナミックな力強さと気迫を感じた。少し動きすぎだがその意気込みに胸が詰まった。情感が出て来るとなお良い。
●漆畑志乃ぶ:バタのさばきが素晴らしい、コンパスにはめてバタが落ちる。マントンも一瞬ヒヤッとしたが上手い。足音も心地良い。とてもキュートなアレグリアス。どこかグッとくるところが欲しかった。
●和泉冴英香:唄は良いがマノをもっと使って、しぼるところが欲しい。好感度大。パルマに消され足の音があまり聞こえず、ジャマーダが弱く感じた。上手いのだがもっと身体を締めて。
●池田理恵:個性的。細かい表情が出てきた。ノリもアイレもある。上手いが盛り上がってこないのが残念。凝った振りだがアセントもっとしっかり取ると活きる。
●李成喜:静かで良いがマノしぼりがもっと欲しい。熱さもあり感情表現も深いのだが何かフラメンコとして引っかかるものがある。バックが作り過ぎで盛り上がりに欠けた。
●西山依里:パワフルフラメンカ。独特な彼女のスタイル、味、泥臭さが魅力。込める力もありレマーテも強いが全ての表現が大振りで少し過剰に感じた。マノももっと使って。
●瀬﨑慶太:よくここまで踊れるようになったと感動、素晴らしい。気持ちが伝わってきて目が離せなかった。ブレリアから動き過ぎ。今後が本当に楽しみ。このまま頑張って。
●大野環:後ろ姿にも存在感。荒さが取れてしなやかに。カスタネットがまだこなれていない。エスコビージャの足が床を掴んでいない。もっとシギリージャの強さが欲しい。
●渡辺なおみ:気迫もありパワフルでノリも良いが動きすぎ。首が突き出ているのが気になる。抜けやマルカールは良いが、全体にきつ過ぎてアレグリアスらしさが伝わりにくい。
●柴崎沙里:独創的な振付で素晴らしく、身体能力に優れ、踊りこなしているが、見せるフラメンコという印象。緩急はあるがもっと静かに込めるところが欲しい。

次に印象に残った方々は、
◎菊池麻由美:静けさが良く独特の雰囲気があって魅力的。身体も出来ているが少し硬い。マノをもっと使って後半は自分で盛り上げる力が必要。
◎小島智子:カスタネットは素晴らしいが、アバニコの印象が薄い。足は奏でている。良くなっているが行き着くところが欲しい。止まりは決めて。
◎加藤誠子:全体的にバランス良く、気迫もあり静けさも良い。身体も出来ている。どこかもっと強いものが欲しい。後半の盛り上がりは良い。
◎小西みと:キュートで初々しいが熱さもある。よく踊っているが、顔と身体が一緒に動くのが気になる。マノをもっとよく使って。
◎長本真由:パワフルな踊り。よく動く身体に切れ味の良い足。ブラソもマノもまだ荒いが自分のものになっていて面白い。
◎蜂須夕子:上品にまとまっているが、もっと動かない方が素敵。少し中途半端に感じた。トレロの振りはもっと限界まで我慢して。ブレリアの抜けは良い。
◎藤本ゆかり:気迫と重みと存在感はあるが首でリズムをとるのが気になった。エスコビージャが動き過ぎ。ブエルタの切れがない。
◎黒木珠美:雰囲気があり何か伝わってくるのに、何か物足りない。出始めもっと唄を感じて。エスコビージャ後半から彼女らしさを感じた。抜けも良い。
◎平田かつら:ソレアらしい静けさと力強さ。切り替えの間が良い。ジャマーダは強く。エスコビージャからラストにかけて少し硬い。
◎佐藤哲平:昨年より断然上手くなり、上半身も力強くなったが、まだ硬い。足さばきもずいぶん頑張っている。今後が楽しみ。
◎津田可奈:切れ味も良く力強い。バックとの一体感があったが訴えかけるものが足りない。表情がずっと同じなのが気になった。
◎斎藤克己:何かこの人の人生を感じた。独特の世界観。

今後に期待したい方々は、
○内田好美:昨年より印象が薄い。上手いのだがもっとはっきりした振りの方が合う。
○齋藤朋之:振付も良くまだまだだが良いものを持っている。気持ちが伝わり心に残った。
○森里子:華やかでアイレがある。マノ、ブラソも綺麗。動きすぎだがハツラツとして良い。
○千葉真優美:振付も良く気迫はあるが、もっと唄を感じて。ブレリアへの抜けは深く。
○山本由紀:華やかで綺麗だが、ポーズを決めすぎで上半身にフラメンコの強さがない。
○岩丸綾子:幻想的なスタートが印象的。身体はきいて足も強いがぐっと来るものがいる。
○阿部和子:ノリがある。足は良いが身体にしまりがない。楽しそうなフラメンカ。
○佐藤直美:必死な思いは伝わるが緊張感がない。後半のノリは良い。もっと重みがいる。
○流石泰美:始まりは素敵、凝った良い振りだがこなれていない。自力で盛り上げて。
○新井ゆふ子:唄は感じて、シンプルな振りを込めて踊っていて良いが、足の印象は薄い。
○青木千鶴子:込める力も出て来て、立ち姿も良くなった。ブレリアの入り口が残念。
○近藤綾香:足強く、レマーテも凄い。タラントとしての含みが欲しい。スカート注意。

奨励賞対象外の5名の方の踊りには、その意気込みに圧倒された。
私が日本カンテ・デ・ラス・ミナス音楽祭に推薦したのは、
★永田健:何から何まで凄い。こんなに力強くなるとは。あの速さでバストンと足をよく踏めるものだと感心、感動。お見事。
●屋良有子:印象的な始まり。身体に芯がありぶれない。ブエルタも目にも留まらぬ速さで。素晴らしいコンパス感、見事なピエ。ずっと引き込まれる独創的な踊り。
●本田恵美:圧巻。詰まった感じがするが独特の個性。作品的な仕上げで、アレグリアスらしくはなかったが、有無を言わせない踊りで完成度が高い。凄い。
●松彩果:踊りが深くドスンとした重みを感じる。身体に芯があってぶれない。フラメンコ性が高く内から発せられる強いものに引き込まれた。
●重盛薫子:前回のソレポルの印象に比べ、タラントの部分は弱く感じたが、ピエは良い、切れ味バツグン。タンゴから本領発揮、すごく良くなった。

<バイレ・群舞部門>
それぞれのグループの個性の違い、見せ方も違いそれぞれに魅力があり、面白かった。
群舞で奨励賞に推薦したのは、
★ベニートガルシア・フラメンコスタジオ:フラメンコ的な心に残る素敵な振付。群舞だが個々を感じる。皆のレベルが揃ってないと出来ない振り。タラントらしく思いが伝わった。

印象に残ったのは、
●Golondrinas:全体に素敵な群舞だったが、フォーメーションが変わり過ぎて踊りがわかりづらかった。これだけの構成を考える先生も覚える生徒さん達も大変だったのではと感心した。

今後に期待したいのは
◎斎藤克己フラメンコ・アカデミー札幌:中央の背の高い方が引っ張って見せていた。皆の力のまとまりも感じたが、先生の振りとのつながりが良くわからなかった。

本当にいつもの事ながら言葉にするのはとても難しい。私はフラメンコらしく感情を込めて自らの内から溢れてくるものを大切に、踊って欲しいのです。
フラメンコをどう感じ、どう踊りたいのか、自分の意思が最も重要!フラメンコの独特の動きを大切にし、テクニックの追求よりフラメンコの本質について、もっと考えて欲しい。あくまでもテクニックはその表現手段に過ぎないのだから。
その上で、フラメンコを感じ、その曲らしさを感じ、「振り」の意味と流れを理解する。コンパスが全てを支えていることを忘れないで欲しい。(唄もエスコビージャもアセントが大切。コンパスの〆は重要!)これは時間を掛けて奥深く探っていくもの。
その人だけの独自性、その人だけの味、自身の思いを伝えるために、強くて深い生きる上での全ての感情を、自分の身体を駆使しどこまで表現できるのか。それぞれが感動を追い求め、自分だけの道を探していって欲しい。誰かのようにではなく、自分だけの道を。

EL・POKA岡崎(舞踊家)[Bs,Bg]

我が道を信じて猛進する時、一度は通り抜けなければならない、暗くて長いトンネルを抜け出し、新しい光を浴びる喜びを味わうことの出来た柴崎沙里さん、大野環さん、李成喜さん、黒須信江さん、漆畑志乃ぶさん、末松三和さんおめでとうございます。特出すべくは、斎藤克己さん、貴殿の生き様を舞踊の中からみせつけられた時、涙が出る程引きつけられました。私の心が洗われました。私の目標がみえました。ありがとう…。
次に続けとばかりに私の心を揺さぶった方達。久保田晴菜さん、相変わらずベテランの味を持つ上手なサパテアードだと思いましたが、もう少し自分に向かって踊ってほしい感がありましたので、ちょっと残念に思いました。牛田裕衣さん、堂々とした態度の中に将来性を感じました。佐渡靖子さん、貴女も大胆でいてかつ丁寧に踊っていましたね。また会える事を楽しみにしています。また、カンテ・デ・ラス・ミナスにバイレソロ部門で優勝された屋良有子さん、節々に努力の技が見え隠れする凄い作品でした。本田恵美さん、個人的には貴女に仰天しました。三位一体とはこの事なのだ、日本人もここまで来たか、全員の意気が1つになり、スペインの匂いがしました。凄いものをみせてもらえてありがとう。

バイレ群舞部門だって、3曲とも私は好きだった!群舞1のGolondrinas、次から次へとすばやく変化する、初夏のつばめ達!群舞だからこそ出来る素敵な踊りでした。まるで万華鏡を覗いている様な、すばやく次々に表れる素敵な変化、出演の皆さん良くがんばったね!凄かったよ、私の中では奨励賞です。
毎年思うのです。ここに出演してくるつわもの達は、いつの日か必ず輝く光を浴びる日がやってくる!と。その日が来ることを信じて、お互いに頑張りましょう!また、お会いします。

東仲一矩(舞踊家)[Bs,C]

<バイレ・ソロ部門>
「黒須信江」さん、テクニックに裏付けされた力量を感じました。インテンポのソレア・ポル・ブレリアで個の色を出されていました。
「漆畑志乃ぶ」さん、何度もの参加、ついに念願がかないました。私自身頭の下がる思いです。マントンとバタ・デ・コーラの使い方が一体化してすがすがしい踊りでした。
「斎藤克己」さん、シンプルな切り口でイナダイズムを表現されていました。立ち姿が美しい。自分がどんな風に観られるかをしたたかに計算された作品でした。
「李成喜」さん、テクニックに裏付けされた踊りで作品の完成度も非常に高いものでした。体格にも恵まれていて非常にスケールの大きな踊りを感じました。
「末松三和」さん、ソレアレスを自分のものにして表現されていました。足の技術は見事なものでした。
「大野環」さん、非常に完成度の高い作品でした。ピエの強さ、上半身の使い方、シギリージャの持つ黒い色を観させてもらいました。
「柴崎沙里」さん、サリーダからの空気の切り方、導入部から最後まで、気を抜かない構成。そのソレアの中に“起承転結”が感じられました。素晴らしい作品でした。

受賞者以外で私が感じた舞踊家を列記いたします。
「林由美子」さん、「大塚歩」さん、「菊池麻由美」さん、「佐渡靖子」さん、「西山依里」さん、「蜂須夕子」さん、「藤本ゆかり」さん、「平田かつら」さん、以上の方々が私の中で印象に残った出演者です。

<カンテ部門>
「許有廷」さん、何度も挑戦してやっと手にしましたね。「タランタ・イ・レバンティーカ」私は気持ちよく聞くことが出来ました。後は身体が楽器であるという事を認識されるともっと良くなると思います。
「奥本めぐみ」さん、日本人が特に陥りやすい下降音の部分がきっちりとスペイン音程で安定していました。今後はアレグリアスとソレアが聞きたく思います。

他に気になった人々を記します。「ダニエル・リコ」さん、すごく良くなった。「占部智恵」さん、「松橋早苗」さん、以上の方々です。カンテは本当に難しいものです。言葉といい、非常にダイレクトに感じさせるもので舞踊以上に大変なものと私は思っています。

ロシオ・ロメロ(舞踊家)[C]

カンテの選考委員として私をお招きくださったことに対し、ANIFに感謝の念をお伝えいたします。また、出場されたすべての歌い手の方々も、カンテに寄せられる興味と献身に対し、感謝を捧げるものです。
しかし、総体的に言って、出場者の皆さんには、まだまだ学ばなければならぬところが多いと思いました。重要なのは賞を得ることではなく、カンテをよく知り抜いて、それを歌に表すことです。カンテは、あるディスクをコピーしただけで歌えるものではありません。できるだけ多くのカンテを聴き、つねに研究を深めることです。発音を正しくすること、レトラの意味を知ることも必要です。自分の言っていることの意味が分からなくて、どうして歌を歌えるでしょうか。
このように言って、私は誰をも落胆させようとは思いません。逆に、すべての出場者たちがこれからも日夜学びつづけ、挑みつづけられますよう応援いたします。カンテはとても難しい…でも、それがフラメンコなのです。難しい故にこそ美しい。ガンバッテ!!

ディエゴ・ゴメス(カンタオール)[C]

まずすべての参加者に言いたいのは、バイレであれギターであれカンテであれ、この新人公演のために重ねてきた努力に対して、祝福を申し上げたいということです。きっと皆さん、今回参加するために何ヵ月も頑張ってきたに違いないのですから。
私はカンテという難しいアルテを知る者として、カンテを競い合う場には敬意を表します。フラメンコを歌うには多くの要素が求められてきます。ただCDを手に入れてアーティストの真似をすれば済むというわけにはいきません。情熱も必要だし、心も上達したいと願う気持ちも必要です。カンテを習得することの難しさは私にも分かります。でも、だからこそ参加者や愛好家の皆さんを励ましたいし学び続けていって欲しいのです。フラメンコを歌うためには多くのことが必要です。コンパス、呼吸、知識、レトラの発音…などなど。
今年はカンテ部門への参加者が多い年でした。だから私はとても満足しています。それはつまり、愛好熱が実を結んできたことを意味するからです。ですがそれでも、私は言いたい。まだ、努力を続けていかねばならないと。日本のバイレが達しているのと同じレベルまで上がっていかねばならないと。バイレやギターのレベルは本当に高く、カンテにも他の練習生の皆さんと同じところまでいって欲しいと願います!おつかれさまでした!ガンバルンバ!

西脇美絵子(評論ライター)[Bs,Bg]

今年もバイレ・ソロ部門のレベルは一段と高くなっていた。ただ、高くなったとはいっても突出していた人は少なく、底上げ的レベルアップがまた一歩進んだ感じだ。つまり、僅差の中で例年にも増して大勢の人がひしめき合っている超混戦だった。

私は、選考にあたって、自分なりの基準で行う採点と、演技から感じたことをすべてメモる、という方法で臨んでいる。基本的に採点した点数で決めていき、メモを参考にして決める。
ちなみに、今年は迷いなくなく奨励賞!の点(7.5以上)をつけた人は5人。奨励賞のボーダー上(7点)にいた人は17人、あと一歩で奨励賞のボーダーライン上(6.5)という人が18人。ここまでで全出場者の6割強を占める。この後に続く人たちだって、かなりうまい。

そうした中、私が奨励賞に推したのは、以下の7人。
高い集中力でスケールの大きいソレアを踊った柴崎沙里。豊かな身体性、しっかりと叩き込まれたフラメンコと舞踊の技術力とがひとつになって完成度の高い演技だった。格段の成長ぶりを見せ、はつらつとコンパスを体で表現した漆畑志乃ぶ。安定感さえ感じさせる実力を身に着け、今回はパリージョで挑戦してきた大野環、あっぱれ。華のある存在感、しなやかでありながら芯を感じさせる芸風に将来性を見た津田可奈。昨年に続いてのバタにマントンで臨んだた佐渡靖子も格段の成長ぶり。バタに振り回されない身体、生き生きとしたマントンの動き。生命力とコンパス感あふれたエレガンシアを堪能した。胆の据わった重厚なソレアを踊った山本純子。フラメンコ舞踊の基本たるコンパス感を体で感じさせてくれた大塚歩。

続けて以下に、「奨励賞のボーダー上」と採点した中で、特に印象に残った人について記したい。
初日の1番バッター長嶺晴香、幕開けの緊張をもろともせず溌剌と踊った。まっすぐに内向する意識が胸を打った菊池真由美。丁寧に、ドラマティックにシギリージャを踊った加藤誠子。美しいフォルム、落ちついた大人の色香を感じさせた牛田裕衣、あと線の太さがほしい。バタの先まで生き生きしていた山本由紀。清冽でエレガンシァ、香り立つようなグアヒーラを踊った小西みと。地味ながらしっかりしたフラメンコのテクニックを身に着けた黒須信江。重さあり。キレもあり、内側へ向かうエネルギーが充実していた古迫うらら。パワーあり体がよく動いていた長本真由、力抜きどころを覚えて!まだ粗削りではあるがコラヘを感じた岩丸綾子、緩急と間合いをもっと大切に。安定して高い実力を持っているのに、そこを突き抜けてくるものが今年は薄かった黒木珠実。問題は技術ではないと思う。落ち着いて大人のソレアを踊った李成喜、終盤への盛り上げが良かった。しっかりとした技術力と集中力が光った末松三和、歌を踊っていた。重いマルカールと圧のあるブラソが印象的だった杉山須美江、爆発力のあるタラントを踊った西山依里。密度の濃い、深いマルカールが効いていた新井ゆふ子。

あと印象的だったということで言えば、ベテラン中のベテラン斎藤克己の渾身のタンゴ・デ・マラガをやはり上げなくてはならない。この人の舞台はたびたび見てきたがこの日彼は、彼史上最高の踊りっぷりだった。心からのオレ!だ。しかし、彼は舞台のなんたるかを知るプロ中のプロであると私は認識している。新人公演への挑戦、その心意気は素晴らしいと思うが、私にはどうしてもほかの新人たちと同一線上で選考することができなかった。彼は見事に受賞を果たしたが、それに異を唱えるものではない。あくまでこの講評では、私の選考方法を明らかにするのみである。

さて、カンテ・ラス・ラミナス音楽祭への出場者枠ヘは、屋良有子に1票を投じた。こちらへの挑戦者たちは、当然ながら実力者揃い。特に会場の空気を制圧して踊った永田健、挑戦する心意気に満ち、創意あふれるアレグリアス(この人の挑戦はいつもそうだ!)を踊った本田恵美の3人で少し迷ったが、総合力で屋良を押した。

そして最後に群舞部門。今年は3組のみの出場で、奨励賞も準奨励賞もなしという残念な結果となった。私は準奨励賞にベニートガルシア・フラメンコスタジオを推した。フォーメーションの展開力と溌剌とした空気感で魅了したGolondrinasとは同一線上のレベルと感じたが、出演者個人個人の技量と個性、地味だがそのフラメンコ性において勝っていたと感じた。

瀬田 彰(ギタリスト)[G]

今回の私の採点順位は1位・宇田川さん、2位・池川さん、3位・関根さんでした。
以下、出演順に印象を述べます。(敬称略)

1番・大場(ブレリア ):
2拍3連音などを上手く使ったモデルノ系のブレリア。
しかし残念なのはファルセータ内の音の音量にばらつきが多いので、表現したいものが上手く伝わってこなかった。

2番・池川(ブレリア):
変速調弦プラスB♮調のブレリア。
リブレのグラナイーナをイントロに付けたオリジナル曲で、パコ風であったりヘレス風であったり新旧取り混ぜていて面白かった。
ラスゲアード以外のファルセータでもっと強い音圧を感じられるような演奏ならもっと良かった。

3番・伏見(シギリージャ):
ヘレス風のシギリージャ・イ・カバール。
前半はテンポが焦り気味だったのか?曲の持つ重厚さがあまり感じられず残念だった。
しかし中盤以降の演奏はとても良かった。

4番・宇田川(ブレリア ):
ポルアリーバ調のブレリア。
勇壮な中にも繊細さを織り交ぜた曲構成。
演奏もダイナミックでコンパス感もあり、この日一番良かった。

5番・関根(アレグリアス ):
端正なモデルノ系のアレグリアスで、EとAの調性の2つのアレグリアスを合体した曲。
上手い構成だが、明るさや繊細さの上にもう少しパワー感が出ればよかった。

6番・島田(ソレア):
リカルド風の伝統的なスタイルのソレア。
ギターから音を絞りだすような演奏は良かったが、全体的にタッチの粗さが目立ったのが残念。

池田瑞臣(現代舞踊協会)[Bs,Bg]

今回の新人公演は楽しかった…。その一言です。「バイレ」のプログラムも演題が多種で、表現の方向性、デザイン・色彩の豊富な衣裳、華やかなものでしたが、何より踊る方の真摯な努力が伝わり好感度大の舞台でした。
テクニックの上昇は多くの方々で拮抗の状況ですが、それなりに印象が異なっていて私なりに評価してみます。つまり、瞬間的にもその存在感を強く見せてくれた方々の連記です。
長嶺晴香、菊池麻由美、山本由紀、黒須信江、浅野直子、漆畑志乃ぶ、斎藤克己、李成喜、末松三和、大野環、柴崎沙里の諸氏。でもその他の方も差がなく続きます。次回がんばって欲しいものです。

「バイレ・群舞」部門は3作品のみで残念。にぎやかになって欲しいと願っています。

さて最後に付け加えます。それは男性齋藤朋之「ソレア」の孤高的(ここうてき)な貫禄美に打たれた事です。

小倉泉弥(専門誌編集長)[Bs,Bg,G,C]

今年はラ・ウニオン招待枠を競う公演でもありました。ウニオン出演を狙う出演者はさすがに舞台慣れしており、一線を画する迫力がありました。もちろん、いずれも奨励賞受賞者。この姿が受賞した人たちの未来像です。では、以下に僕が奨励賞に推した方を紹介します。

バイレソロから。小島智子さん。カスタネットの音色をよくぞここまで練り上げました。確かな個性でしょう。また女性の中に凛とした男らしさが見えて、魅力を増しました。
牛田裕衣さん。〝フラメンコが上手い〟と感じました。その場で反応しているように見えたから。また、歌とサパテアードがバッティングせず、ギターもエスコビージャで盛り上げるときに高音弦側を中心に掻き鳴らすなど、全体的にスッキリと聴き心地が良かったです。
小西みとさんはアバニコが上手いと思いました。マントンにしてもそうですが、道具を持ったブラソからちゃんと綺麗だと見栄えが良いです。またライヴの場数を踏んでいるという雰囲気を受け取りました。
黒須信江さんは、リズムを自分から生み出せる人だと思いました。踊りがしっかり身についていて、それが余裕につながっているのかもしれません。
浅野直子さんもよく踊り慣れている感じで、舞台度胸の良さを感じました。一定の力量を備えているのではないでしょうか。
李成喜さんは満を持しての受賞でしょう。そろそろ抜け出てくるかなという頃合でした。舞台を前後左右に広く使い、ブエルタも綺麗に決まる。終盤に向かって徐々に熱を帯びてくる感じも良かったです。
柴崎沙里さんは、強かったです。目が覚めました。シンプルかつあふれ出る情感。ラストは激情が走りました。じっくり抑制を効かせた出だしからの大胆なクレッシェンドで、メリハリのある曲想の舞踊でした。
次点の大野環さんは、技術と情緒がしっかりかみ合っていると感じました。山﨑まさしさんの素晴らしいギターと相まって、いい世界観が出来上がっていました。
ウニオンには屋良有子さんを推しました。技術、内容ともに、圧倒的にプロフェッショナル!それに尽きます。今回、日本代表を背負えるのは屋良さんだと思います。
他、記憶に刻まれたのは、久保田晴菜さん、本田恵美さん、漆畑志乃ぶさん、藤本ゆかりさん、津田可奈さん、斎藤克己さん、松彩果さん。

群舞はGolondrinasに入れました。今年の群舞はレベルが至っていないという理由で奨励賞は見送られましたが、僕は面白かったです。基本の振付がありそれを展開させていくのが、主題と変奏のように見えたからです。

続いてカンテ。奨励賞に入れたのは奥本めぐみさん。元々ジャズシンガーとして活動されていた方で、歌がうまい。こういう人がフラメンコの発声を身につけ、ご本人の中のジャズ:フラメンコの比率が近似したとき(あるいは引っくり返ったとき)、面白いものになるんじゃないかと期待しました。準奨励賞に推したのは許有廷さん。前回の出演よりも良くなっていると思いました。声の内側に、なにやら渦巻くものが見えた気がします。

最後に、大好きなギター部門を。関根彰良さんのアレグリアスに入れました。アルペジオ、ラスゲアド、アルサプア、ピカードなど、各技術がバランスよく習得され、また曲の安定感、安心感もありました。僕はフラメンコをリズムの芸術だと思っているので、コンパスを大事にしているととても嬉しいです。一方で見せ所のピカードの音量が下がったのは、気になりました。ここに激情を込めて、ガツンとやってくれたら最高です。技術に感情を叩き込んだ演奏が見たいなあ!


第24回新人公演「フラメンコ・ルネサンス21」

2015.10.01

選考委員(名前から各講評へリンク)

濱田滋郎(評論家・会長)[G,C]

第24回の「新人公演」も、まずは支障なく、成果を伴って終わることができました。出演者の皆さん、客席を埋められた方がた、選考委員の方がた、今回も親切を頂いた会場関係者の方がた、そしてあらゆる「裏方」の方がたに、統括責任者として深く感謝申し上げます。

今回も、幸いなことに高いレベルを保った3日間を、駆けつけられた参会者の皆様に観聴きして頂けたと思います。私は統括的な役目を果たす関係上バイレ部門の選考にはたずさわっておりませんが、終始、つぶさに見守ることができました。奨励賞を贈られた方がたをはじめ見ごたえのある踊りが多く嬉しく思いましたが、また、同時に次のような感想を抱いたのも事実です。今回に限らずここ数年を通じてなのですが、出場者たちの踊りはどこか小ぢんまりとまとまりすぎてはいないでしょうか。教わった振付けを、破綻なくソツなくこなし、的確な踊りを見せることに専念する、そういう人がほとんどのように思えるのです。もっと大胆に、時には奔放に、“自分らしさ”を打ち出してこそ、フラメンコなのではないでしょうか。もしかして、出場者たちのあいだに、ひとつの誤解があるのかもしれません。もしも大胆に個性を発揮した踊りをして、どこか破綻が生じたなら、それが減点となり、奨励賞の対象から外されてしまうのではないか、と。そんなことはない、と私ははっきり申します。フラメンコらしさで選考委員たちに深い印象を与え得たなら、たとえ多少のほころびがあったとて、その踊りは必ず奨励賞の対象となるでしょう。なぜなら、そうした真の個性の持主をこそ、私たちは待ち望んでいるからです。ぜひ、上のことをご一考ください。何はともあれ、今回立派なステージで奨励賞を贈られたバイレ・ソロの6名の方がた、そして群舞のひと組に、改めて拍手を贈ります。

ギター部門は8名とやや少なめでしたが、いずれ劣らぬ演奏で聴き甲斐がありました。奨励賞の木村尭さんはテクニックの高さに加えて曲想を見事に組立て、起承転結のある快適なソロを披露していましたから、受賞は当然と思います。ただ、私個人が最も感銘を受けたのは、最初に弾かれた森谷忍さんの演奏でした。年配の方ですが、さすがは年季というか、ギターから引き出す音色になんとも言えぬ味があり、後段のトレモロの美しさに聴かれたように、テクニックもしっかりと身についています。けっして当世流ではありませんが、自分の好きな、自分のめざすフラメンコをしっかりとつかんで、充分に、弦に心を乗せていました。選考委員、他の理事たちからも森谷さんの「味わい」に賛同の意を表する者が多く「話題賞」となりましたが、敢えて言わせて頂けば、森谷さんには「会長特別賞」を特例として贈りたい、という気がしています。

カンテ部門は15名と多く、それぞれに気を吐いていましたが、結局、奨励賞を見送りとなり、1名の方(山田ナオリさん)が準奨励賞を得るにとどまりました。皆さんよく精進され熱意をこめて歌われたことは分かるのですが、例年言われるとおり、どうしてもスペイン語をよく身につけてレトラ(歌詞)を“語る”境地にまでは至らない人がほとんどなのです。言葉なくして歌は成立たないのですから、カンテを志すならば、どうか日夜、スペイン語(アンダルシア語)を血肉とする修業に励んでください。ハードルを高く設けるようですが、ぜひこれを越えて頂きたいと思います。

小島章司(舞踊家・理事長)[Bs,Bg,G,C]

第24回Flamenco Renaissance21、真夏の濃密な3日間が過ぎゆき、安堵すると共に名残惜しい念にかられてもいます。今後増々研究を重ねて下さるよう祈念いたします。
以下、出演者の真摯に立ち向かった舞台についての所見を述べてみます。(出演者の敬称は略させて頂きました。)

【21日(金)】
2.近藤綾香:前半ゆっくりしたテンポのレトラに踊りの速さが耐え切れていないようでした。ZAPATEOも、もう少しパワーアップしたら一段階進めると思いました。
3.佐藤哲平:上半身の動きが美しさを放っていました。ピルエットやブエルタの時、もう少し筋肉を持ち上げる力を身につけるともっと良くなると思います。
7.福島沙弓:官能を揺さぶる舞踊でした。ダンスの変化と多様性が表現出来ていました。
9.大野 環:前半マントンとの一体感がもう少し深まればと感じました。スピード感溢れる秀逸なバイレでした。
10.内田好美:身体能力の高さが発揮され、伸縮の自在さが美を生み出していました。
13.佐渡靖子:振付全体のバランスが優れていました。マントン、バータの扱いが上手くシンクロして、最後の静止が美しかった。
19.屋良有子フラメンコ教室:最初から最後まで良く熟考されたmontaje、観客の目をくぎ付けにするダンスの豊潤さを感じさせました。

【22日(土)】
1.森谷 忍:澄んだ一音一音が輝きを放ち、人間の創造力の奥深さが伝わりました。
8.木村 尭:常套的手法だとは思いましたが、〈確かさ〉が魅力を増幅し、全体のバランスを良くしていました。
10.牛田裕衣:落ち着きと安定感が素晴らしい。時にpellizcarする瞬間が光ります。
11.山中純子:演出力が光り、練習の軌跡が見出せました。Palillosの響きがギターやパルマスの音にかき消される時が有り少し残念でした。引込みの最後の1コンパスの静寂は心に響きました。
12.土井わかな:豊かな雰囲気を漂わせるバイレでした。どっしり感と安定感を醸しだして魅力が増幅。
13.小林成江:上半身と下半身の動きがバランス良くシンクロし、踊りを成功へと導いていた。抜群の安定感が光りました。
15.渡辺なおみ:舞台を目一杯使い切る…と言うことではなく、動きを〈ためる〉、とか〈集約する〉力がフラメンコを高めるのでは…。Tangosの入りは絶妙でとても魅力的でした。
18.西山依里:体全体に漲るエネルギーを感じました。Graciaが個性を光らせていました。
21.小河由里子:踊り込んでいることは伝わって来ましたが、客席に思いを届かせる力がもう少し出て来ると良いと思います。
25.川松冬花:悲痛さは立ち現れなかったが、足音を含めた身体能力の高さが抜群でした。足音の正確さは価値ある存在感を示しました。
30.菊池麻由美:肉体の造型力が際立っていました。美しさの中に悲劇性が立ち現われ大きなドラマが生まれました。
31.新海玲子:ゆっくりしたテンポをキープする力強さ、よく考えられた構成、緩急自在な力量は頼もしく思いました。

【23日(日)】
7.金沢賢二:現代感覚のカンテ。音程の良さが心地良かった。
14.ダニエル・リコ:正攻法の歌い方に成長の跡が見えたのが頼もしい。
15.山田ナオリ:素晴らしい声に恵まれていますが、母音の発音とイントネーションを良く研究してください。
19.佐藤理恵:とても濃密な空間形成で、緊張感溢れるバイレでした。ほんの少し〈緩む〉瞬間があっても良いのでは…。
23.柴田千穂:上半身の動きがとてもチャーミング。最後の終わり方に美しさが宿りました。
26.岩泉美帆:バイレをdominarする強い意志、人を引き付ける力があり、しなやかで強靭。美しい世界を構築していました。
27.土方憲人:スピード感に乗り、7分間のバイレを〈疾走した感〉がありました。強いだけではなく柔らかさも加味され観客を魅了しました。
28.久保田晴菜:身体全体の動きがとても有機的になって来たことはとても喜ばしい。踊りを通して深い思考力を養ってください。
31.黒木珠美:重いもの、黒いものを表出することが出来ました。“激情”が一瞬立ち現われました。
32.近藤 朔:長い間の人生の中で培われて来た沢山のものが立ち現れ、ユニークで深い心の襞が見て取れたsoleáでした。
33.相田良子:前半はカンテの奥深い力に捻じ伏せられている感じだったが、後半だんだんと情感が豊かに湧き出て来ました。

私たちの存在はいつも死に脅かされて、いのちはいつか絶えてしまいます。辿り着けないと解っていながら目指し続ける〈フラメンコ〉、心より深い所まで求めて生きる姿勢そのものに価値が宿ることを伝えたいと思います。

山田恵子(舞踊家)[Bs,Bg]

猛暑に咲いた花

<バイレ・ソロ部門>
猛暑の中での新人公演に参加された皆様お疲れ様でした。その中から受賞された6人におめでとうを申し上げます。

今年もまた激戦でしたが、まず総評から入ります。個人的にはテクニック、リズム感など甲乙つけがたいのですが、全体像を拝見すると、まとまり過ぎてあの大きな舞台を自分のものに出来ない方々がいらっしゃいました。つまり、舞台の幅、奥行、高さをキャッチ出来ずに踊っている。そして踊りに入っていく瞬間をどう創るか、それがとても大切な事だと思います。板付、ポーズ、上手、下手からの出、ダンサー個人の思いがそこに凝縮されます。今年はソレア、シギリージャが大変多く、踊りのパターンが同じようで残念に思いました。もっと舞台構成を考えて、大劇場を生かした振付を考えましょう。

今回受賞された6人は、これらの条件を満たしてプラス表情が豊かで心と体が一体となり、爪の先まで踊っていましたし、静から動へ、動から静へ移る瞬間の間(ま)の取り方が上手で見事でした。

また、土井わかなさん、森里子さん、渡辺なおみさん、平尾華子さん、久貝輝代さん、久保田晴菜さん、小坂みはれさん、内田好美さんも心に残りました。なお、もう一方、お年を超越し、フラメンコに情熱をもって挑戦していらっしゃる近藤朔さんに拍手を贈ります。

<バイレ・群舞部門>
群舞ですが、稲田さんはまとめるのが大変でしたね!大勢出れば群舞と思っている人もいますが、群舞は構成、振付、選曲、ダンサー全てが大切でセンスも要求されます。これらの条件を満たし、リズム感にあふれ洗練されていましたが、欲をいうならば、どこかでほっとする瞬間があっても良かったかなと思いました。

三澤勝弘(ギタリスト)[G]

<ギター部門>
今回参加された方々、皆様技術的にはある水準に達せられていたと感じております。しかしながら、フラメンコのギターの発するそれは、技巧による時間芸術のひとつ。その為、その中には“美”も含まれねば。さらにそれを生み出す感覚、さらに感性。それらを追求する努力がもっと望まれると思います。その中において森谷さんと木村さんにはその一端をうかがい知ることができました。聴く私にとっては大変な喜びでした。次に出演順に-。

・森谷さん:中間部にとても美しいところがありました。しかし、例えばトレモロの後半部、情の変わり目に変化が乏しく感じました。破綻のない流れの中で平坦さが全体に渡ってしまった。良質の演奏ではあったが、それに骨太さが加味されれば、と思います。
・和田さん:やはり平坦さを感じてしまいました。中間部、ギター1本では物足りなさを覚えた。パルマなどを想定した編曲かと思いました。
・内山さん:音に力強さを求めたい。雰囲気もさることながら、実(じつ)のある演奏を望みたいと思いました。技術には目を見張るものがありました。ひと言-足音が大き過ぎ(独りでの演奏ですので…私にも経験があり)。
・藤嶋さん:ギター1本での演奏としては少し物足りなさを感じました。技術それぞれが内包している意味・可能性などを吟味して演奏に当たられては、と思いました。期待しております。
・福嶋さん:音の発する瞬間をもっと印象深く、また全体をある程度予見させる始まりを望みたいと思いました。音の大小ではなく“芯”のある音を望みたい。線の細さを感じてしまいました。
・宇田川さん:冒頭部には、もう少し明確な意志が欲しいと思いました。余談ながら、ニーニョ・リカルドはこのような部分を“アラブの太鼓”(出陣の?)と表現しておりました。もっともその必然性のことは解かりませんが…。
・塩谷さん:弾き始めの印象が弱い。覚悟の音が欲しいと感じました。やはり節目節目で動き(心情)が弱く、平坦に流れてしまった印象がありました。人柄の良さは見てとれるが、それを活用して、より深い領域へと踏み込んでくれることを願っております。
・木村さん:中間あたり、とても美しく聞こえました。しかし、全体として演奏に込める“想い”が解かりづらく思いました。

今回は対照的なお2人の演奏。森谷さんは古風な佇まいであり、良質な愛好家的演奏。無理な表現はなく、ある意味では、やや淡々と。一方の木村さんはまったく職能的とも言える才能を内在されておる方。森谷さんには、私見ではあるが、もう少し“生きもの”の顔が覗くことを期待したいのですが…。木村さんには、少しややこしいかもしれませんが、以下のこと。時間芸術、時間のその経過の中で“何か”を表現する。例えば不条理なものへの反抗、悲しみなどを、感性のフィルターで濾してはまた繰り返すことで、フィルターをより細かく、そして感覚へと。縦糸という時間に横糸を織り込んでゆくその“何か”を考えていただきたいと願っております。そしてさらに、職能プラス芸術へと。他の方たちも、ほんの少しのことで大きく変わることのできる領域にあることを信じて、またお会いしましょう。

飯ヶ谷守康(ギタリスト)[G,C]

フラメンコを唄い、踊り、そしてギターを弾く側も、そして聞く側も“人それぞれ”ということを、まずお断りした上で、今回の新人公演についての、あくまでも私的な感想を述べさせていただくことにします。

<ギター部門>
今回の出演者全員に言えることですが、音の芯というか核がハッキリとしていないことでしょう。明らかに弾ききっていない、弾弦の思い切りの良さが足りない、と感じました。自分の部屋で弾いている時には、ちょっとでも弦から指が離れれば自分の耳には聞こえるので弾けていると錯覚を起こすことは良くあることです。しかし、それでは残念ながら“弾いている”ということにはなりません。特に、音数が多い“今風のフラメンコ”を好み、そして弾く場合には基本練習が絶対不可欠なのです。特に、アルアイレが不明瞭だった人が多かったように思います。右手はアルアイレ、左手はスラーが最重要なメカです。これだけはしっかりと身に付けて欲しいところです。そうすれば、軽く弾いても音の芯・核がハッキリと感じられるようになるでしょう。
今回の出場者の中では、木村尭さんが、音が聞き取りやすかったという点で頭ひとつ抜きん出ていたように感じました。たた、エンディングのリズム群の一本調子な感じが、ちょっと惜しかったような気がします。ごく個人的な好みでは、ブレリアスを弾いてくれた内山さん、気持ちは伝わってきました。感じたままに指が動くようになるために、更なる精進を期待しています。

<カンテ部門>
フラメンコの魂とかアイレとかの前に、声と発音と息遣いで勝負しなくてはならないのがカンテです。ということは、まず発音に充分な注意と訓練が必要になります。スペイン語が話せても話せなくても“それっぽい”きちんとした発音で唄うことを目指して欲しいところです。要は母音の発音の仕方でしょう。母音でリズムを取り、母音で唄う…これが基本、ということを理解して欲しいですね。また、出場者の多くが、音程に不安を抱えているように感じました。自分の出した声に責任を持って、その声の行く末をしっかりと見守る、という丁寧さ・繊細さを持っていただけたら、と思います。そのためにも基本のひとつでもあるロングトーンの練習、ぜひやっていただきたいと思います。音程の不安定さも軽減されるでしょう。
更に、歌詞の行末のキメ感が必要になります。これも息遣いに関連することですが、ダラ~ッとしてしまい、キメ感が弱いように感じました。フラメンコのお作法のひとつです。そのあたりの基本的な知識を先生から教えてもらうか、自分で研究してください。

ということで、今回は奨励賞は推薦者無し、という結果になってしまいました。ただ、私の好みを言わせていただけるとすれば、グラナイーナスを唄ってくださった占部智恵さん、良い感じを持っていらっしゃるように感じました。もし、人前で唄う事を目的としていらっしゃるとしたら、基本練習を積み重ねていただきたいと思います。

今田央(ギタリスト)[G]

今回は皆さんレベルが高く、それぞれのパロが持つ特性を生かしきった素晴らしい演奏でした。音響が以前よりタイトに聞こえたせいか細かいフレーズも聞き取りやすかったです。その分生音が弱いとフレーズが出てこない訳で、今回賞を逃した方は皆さんそこが課題だったと思いました。

●森谷 忍
古式ゆかしい演奏で音、間の取り方ともに素晴らしい演奏でした。トレモロの美しさは特筆ですね。Pの音も今ではなかなか聴けない芯のある音でした。今回はより多くの技巧を駆使した木村さんを奨励賞に推しましたが、演奏自体の完成度は全く引けをとらないと思いました。
強いて言えばトレモロの途中でピカードのフレーズが入る箇所。トレモロが終わって、フレーズにいくまで一瞬流れが消えてしまうように思えました。コンパスのある曲も聴きたいです。是非また挑戦してください。

●和田 健
自作ということですが優れた作曲力ですね。ソレア・ポル・ブレリアなのにリブレの中間部がある珍しい構成です。単調になりがちなこのパロですが、起承転結がうまく盛り込まれています。技術的にも申し分ありません。ただ、ノリがソロ重視のギタリスト的なのでバイレやカンテに寄り添うコンパス感を身につければさらなる発展が望めそうです。

●内山 友樹
最後までコンパスがぶれることなく弾ききりました。ファルセータを弾く技量は素晴らしいのですが、ブレリアの刻みがちょっとせわしなく、アクセントを音量で捉えてる感じです。あの足音の刻みだとビセンテの感覚には合わないですね。あとは音質でしょうか。高音部が低音に負けているのでぼやけた印象です。

●藤嶋 良博
これは自作でしょうか?今風の爽やかなアレグリアスでした。途中のファルセータは某カンタオールの歌メロですよね。緊張のせいかちょっと速すぎたのではないかと思いました。最初のアルペジオのフレーズで既に音が抜けていたようです。コンパスとフレーズのアクセント毎の溜めがないため、落ち着きのない演奏になってしまいましたが、破綻することなくよく弾ききりました。ラスゲアードやゴルペの音量バランスを考えるとより音楽的になると思います。

●福嶋 隆児
こちらも疾走感のある演奏で、パルマもなく最後までテンシヨンを保ちつつ弾ききりました。Pによるフレーズ主体ですがその分、奇をてらった音がないのでフラメンコを感じました。惜しむらくはフレーズ毎の消音がないせいかフレーズが浮いてきません。アルペジオも高音部が弱いですね。ゴルペももう少し抑えたほうがよいです。

●宇田川 卓俊
曲の構成、間ともによく弾けていました。音楽性は前回より格段の進化を遂げているとおもいました。個々の技術、特にトレモロは良かったです。曲自体は良いのですが、ちょっと線が細い演奏なのであまり届いてきません。小さい音量で弾くのが最近の傾向でしょうがその分、立ち上がりや音量差をつけないとメリハリがでません。消音も必要ですね。翌日カンテの伴奏もされていましたが、こちらももう少し骨太であったらと思いました。もちろん選考には関係ないことですが。

●塩谷 経
私の中では今回3位の評価です。ギターソロとしてのソレアを感じました。全体の流れとか間は良かったですし、丁寧に弾いているとは思います。これだけ弾けても奨励賞を逃すのですから、昨今レベルが高いです。なぜ賞に推さなかったのかというと音の説得力ですね。最初の掴みがぼやけた印象でその後も全体的に音量差のない平坦な表現でした。もう少し硬めの音のほうがよりフラメンコらしくなりますよ。

●木村 尭
迫力のソレアでした。塩谷さんのソレアよりは踊り伴奏寄りのソロですが、音が響いてきました。ピカード、アルサプーア等もそれまでの音圧に負けず弾きこなしていましたね。森谷さんの演奏もそうですがやはり楽器はまず出音だと改めて思わされました。

片桐勝彦(ギタリスト)[G]

森谷忍:落ち着いていて間(ま)のある演奏、感動しました。粒が揃った1弦から2弦までのiami指のトレモロは、親指もまた6弦から2弦までしっかりアポヤンドが出来ていて気持ちがよかったです。話題賞の選考理由である「豊かで美しい音色」とは、しっかりとメロディーラインが聞こえてきたことと絶妙なゴルペのたたき方があげられると思います。残念ながら奨励賞は逃しましたが、他の人たちには弾くことのできない間と音色、そして力まずにミスタッチもほとんど無い好演奏でした。

和田健:ファルーカ、アレグリアスと続いて、今回はbのソレア・ポル・ブレリア。どの曲も私は最高に好きです。自由であるはずのフラメンコですが、皆ほとんど誰かの曲を弾いている現状の中、和田さんはすべてオリジナルを突き詰めていることにまず敬意を払いたいと思います。そして今回はしっかりとしたタッチで最初から最後まで弾ききっていました。スローテンポのソレア・ポル・ブレリアのコンパス感をギター1本で出せていたのと、アル・アイレのEb調で弾くことによる低音と高音の響きは、ギターの特性をふんだんに出せていたと思います。強いて言うならば、始めのリブレフレーズは更にためて弾いた方が効果的だったのと、ブレリアにカンビオ後、ちょっと走り気味でリズムが甘かったのは残念でした。期待通り前回同様エンディングにピカードを持ってきてくれたのは感動でした。また更なるオリジナル曲、楽しみにしております。

内山友樹:ビセンテ・アミーゴDbのブレリアをパルマやパーカッション無しで、よく弾ききれたと思います。全体的に強弱もついていて、足でのリズムも正確でした。このように有名な曲はついCDの演奏と比較しがちですが、それにしてもテンポといい、ビセンテの特徴であるami指のアポヤンド奏法といい、かなりニュアンスが出ていました。演奏の完成度の割に印象が薄かったのは、エッジのきいた尖った部分が欠けていた点にあると思います、更にドライブ感のある演奏を追求してみてください。

藤嶋良博:タパオからイントロ、そしてA△7から始まるテーマと、徐々に盛り上がる展開は緊張感もあって、センスの良さを感じました。タパオで出したリズムより若干走り気味のイントロは、それでいて所々遅れたリズムだったのでうまくのれませんでしたが、途中ペドロ・シエラのフレーズとも思えるモダンな音使いは、アレグリアスのセンティードを感じました。細かい点としては、アルペジオが最後の音まで出ていない箇所や、他の奏法とのコンビネーションに乱れがあったのと、ピカード時に右手首が若干反り気味になるのが気になりました。もう少しテンポを落としてアルペジオやピカードの切れの良さを出しても良かったかもしれません。A△7から始まるテーマを最後にもう一度弾くのは、印象深くなっていいですね。

福嶋隆児:ある意味リズムが同じ速さで淡々と最後まで流れていくソレア・ポル・ブレリアという曲を、ポル・メディオで弾いたにもかかわらず、最後まで飽きずに聴けました。立派なギターソロであると同時に、どのフレーズを取り出しても踊りや歌伴奏にもピッタリ合うムイ・フラメンコな演奏で、コンデ・エルマーノスの音色でした。4連のアルペジオなど右手の奏法に安定感がありましたが、左手とのバランスがしっくりこない箇所が目立ちました。高い部分のフレットセーハは難しいですが、いつでも音がしっかり鳴るように心がけてください。

宇田川卓俊:前回のアレグリアス同様、どの右手の奏法もよく弾けていました。初っ端リブレ時の左手のスラーは細かい部分まですべて音がクリアに出ていて説得力がありましたが、低音部のピカードの両手のタイミングを合わせることと、全体的にもっと間をとると更に良くなると思います。トレモロは特にすばらしかったです。北海道での活躍、期待しています。

塩谷経:決して派手とは言えませんが、正当的なソレアで好感が持てました。テクニック的には去年のブレリアよりラクな気がしましたが、エミリオのソレアはやはり難しいですね。アルペジオやピカード、アルサプーア、そしてラスギャード、どれをとってもかなり安定していましたが、ブレリアに変わった後の最後のフレーズはポジション移動が多すぎてたいへんそうでした。両用のギターをうまくあやつって低音がよく出ていたので、あとは間や呼吸などで更に良く聞かせるよう研究してみてください。

木村尭:奨励賞おめでとうございます。音量がしっかり出ていたのと強弱がしっかりついた好演奏でした。モダンな音と伝統的なフレーズをうまく混ぜながらピカード切っ掛けでのブレリアへのカンビオは圧巻でした。出演者の中で一番ギターをうまくあやつれていたと思います。粒もそろっていてダイナミクスがあったのですが、ラスギャードなど力を入れた時の音色が少しきたなかったのと、曲の終盤ラスギャードのフレーズが多すぎた感はありました。最後のアルサプーアが走ってしまってリズムがあまくなってしまったのは残念でしたが、全体的には申し分の無い演奏でした。

加部洋(プロデューサー)[G,C]

皆さん、新人公演お疲れさまでした。私なりの感想を一言ずつ述べさせていただきます。

<ギター部門>
今年は例年になくレベルの高い、更に“らしさ”がよく伝わってきたムイ・フラメンコなギター部門だった。その高いレベルの上に、年配の森谷さんと若い木村君が頭ひとつ抜け出ていた、という感じだった。これはある意味理想的な結果と言えるのではないだろうか。

森谷忍君●ひと言、誠に天晴れな演奏だった。森谷さんは60代とお察しするが、気力も体力も衰えていくなか、それに抗うかのような内に秘めた情熱が素晴らしい。スタッカートのきいたメリハリのある低音、歯切れのあるアルサプーア、美しいトレモロ―伝統の香りが横溢するタランタだった。あの大舞台で上がった風でもなく、自分のペースで弾き切ったのは見事だった。和田健君●変則チューニングのソレア・ポル・ブレリア。毎年出場の和田君はいつもオリジナル曲で勝負しているが、今回はその独創性とレベルアップした演奏が良かった。今までの数回の出場のなかで、最も良い演奏だった。そのこだわりと精進がよく分った。欲を言えば、美しすぎるメロディのためか、ソレ・ポル独特のコンパス感が足りなかったことか。内山友樹君●ビセンテ・アミーゴのブレリア。ビセンテのあの躍動感溢れるブレリアの雰囲気が出ていた。それはリズムの刻み方に起因していたと思う。その点は良いのだが、早いピカードが弾き切れていなかったことや、低音が前面に出て来なかったこと、メロディ・ラインが細かったことなどが気にかかった。藤嶋良博君●相当なテクニックを必要としたモダンなアレグリア。その雰囲気はよく出ていたが、ラスゲアードのアタック感の不足、アルサプーアの歯切れの不足、アルペジオの曖昧さなどフレーズの処理に不完全さが目立ち、演奏そのもののスケールが大きくならなかった。福嶋隆児君●いぶし銀のごとき通好みの、文字通りかっこいいソレア・ポル・ブレリア。ソレ・ポルの何たるかが分かった演奏だった。残念だったのはフレーズの抜けなどテクニック面が不完全だったことだ。宇田川卓俊君●情感豊かで、タランタをよく理解した演奏。ピカードのフレージングに曖昧なところが散見されたが、それ以外の個々のテクニックは良かった。ただ、音が前に出ていないなど、演奏そのもののスケール感が足りなかった。トレモロは絶品!塩谷経君●よく歌うソレアだった。ギターの響かせ方も良い。ただ、気になったのはフレーズの処理のモタリなどテクニック面が不完全だったこと。しかし、練習を積めば相当上手くなる可能性を持っていると感じた。木村尭君●木村君の演奏は本番の数日前に聴く機会があった。その時は若干ミスもあり、それがすこし不安材料でもあった。しかしフタを開けたらどうだろう、練習より本番のほうが良いという素晴らしい結果になった。その集中力、強心臓に驚かされた。

<カンテ部門>
今年は山田ナオリさんのカンテと、その学ぶ姿勢に感銘を受けた。つまり完全コピーの姿勢のこと。すべての芸は模倣から始まる。模倣出来なかったらその先はない。模倣の先にこそ本物がある。これを機に忠実に模倣することの重要性を見直すべきだと思う。

川浪郁美さん●声質にふっくらした豊かなものがあり、音程も良く、更にこの人独特の節回しに光るものがあった。しかし、メロディの乗せ方、つまりノリがカンテ独特の裏ノリになっていなかった。節回しが素晴らしいので惜しい。中山えみ子さん●カンテの王道を行くカンティーニャ・デ・ピニーニを含む通好みのカンティーニャ。声の質に独特の魅力があり、節回しの音程も良い。しかし前の出演者と同様に、メロディの乗せ方、つまりノリがカンテ独特の裏ノリになっていなかった。更なる挑戦を!熊谷善博君●熊さんのカンテはペーニャで聴かせてもらっているが、渋好みのアフィシオンが横溢した熱唱だった。ただ、その熱唱にしてはキーが低いのではないか。もっとキーを上げて絶叫し、ハッチャケてもらいたい。川村麻利子さん●サリーダとエンディングの「ティリティ~」ではしっかりとノリが裏になっていたけれども、1歌に入ってから、ノリが表になっていた。音程、節回しは良かったので、歌詞とメロディの乗せ方が裏になるように研究して欲しい。田中敏郎君●時々声のうわずりや音程の不安定もあったが、難しいカンテを歌い切った。一番気になったのは、ノリが裏になっていなかったこと。前の出演者と同様、歌詞とメロディの乗せ方が裏になるように研究して欲しい。松林由美さん●サリーダを聴いただけで年季・経験の豊かさが伝わってきた。音程・節回しも良く、堂々の、貫録さえある熱唱だった。タンゴになってから更に良くなった。気になったのは泣きの部分が若干日本的だったこと。金沢賢二君●泣きの部分に彼独特のものがあり、そこは大事にしてもらいたいところ。歌の隅々まで神経が行き届いた熱唱だったが、肝心なところで節が回り切らなかったところがあり、それが非常に残念。更なる挑戦を!定直慎一郎君●持って生まれた、ヒターノのような声質がムイ・フラメンコ。堂々たるシギリージャだったが、逆に力の抜きどころ、節回しの微妙さなど、テクニカルな面にも気を配って欲しい。占部智恵さん●カンテに対する深い思い、アフィシオンがよく伝わったグラナイーナだった。細かい節回しと発音、メリハリに気を付ければ、更に良くなると思う。岡村佳代子さん●唯一無二の魅力的な中音域を持つ岡村さんの更に磨きがかかったソレア。全体的にドラマティックに仕上がっており、細かいところまでコントロールされていると思った。若干節回しの乱れなどあったが、後半更に盛り上がり、高音域もよく伸びていた。進境著しい出来栄え。深谷恵子さん●展開がドラマティックなファンダンゴ・リブレに挑戦。1歌はあまりメリハリがなく、一本調子に聴こえたが、2歌のグロリアのファンダンゴで次第に良くなり、3歌はたいへんドラマティックだった。スペイン語の発音を直せば更に良くなると思う。小林ゆうこさん●カンテに対する強い思いで歌われたマラゲーニャ。しかし、フラメンコなんだからフラメンコらしく歌おうという気負いからか、固さや力みが感じられた。音程や節回しは良かったが、発音がカタカナスペイン語的なので修正が必要だと思う。山田裕子さん●ギターのイントロに合わせたパルマを聴いただけで、「できるな!」と思った。大声を出せばいいものでもないカンテの、力の抜きどころを心得たキャリアを感じる歌唱だった。ただ逆に、マックスで声を張り上げた時の突き抜ける感じが足りなかったのが惜しかった。ダニエル・リコ君●今年はスペイン語の発音が悪い人が多かったと思うが、唯一母国語であるダニエルさんの発音は、当然だが自然だった。これまでに聴いてきた彼のカンテは、何か違うな、という印象だったが、今回は違っていた。フラメンコの核心に分け入ってきたという感じで納得できた。山田ナオリさん●最初はドローレス・アグヘータが出て来たのかと思った。初めのひと節からドローレス節だった。さてこのテンションで最後まで歌い通すのかと興味津々だったが、見事にドローレスを完コピしていた。すべての芸は模倣から始まる。模倣出来なくて何でその先があろうか。山田さんの学習の姿勢は100%正しい。模倣の先にしか本物はない。すべてのカンテ愛好家はこの姿勢を見習うべきだ。

鈴木敬子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
佐藤哲平さん/もっと強さやキレが欲しいところだが、全体がさわやかな好感触。今後がとても楽しみです。福島沙弓さん/踊りが安定していて強さがあった。大野環さん/キレと強さが備わった踊り。踊りがとても安定していた。内田好美さん/スタイルが良く身体がよく動いていた。サパテアードの質が良かった。牛田裕衣さん/観ている人を引き込む強い踊り。力の抜ける部分があれば更に良くなると思います。山中純子さん/バタ・デ・コーラとカスタネットを使った凝った構成の曲。良く練習して丁寧に踊っていたのが分かった。小林成江さん/恵まれた容姿で踊りも大きく見え舞台映えしていた。渡辺なおみさん/動きにペソがあり安定している。迫力があった。表情に注意したらもっと良くなると思います。川松冬花さん/キレが良く安定していた。以前観た時よりそうとう上手くなっていた。踊りに集中力があり引き込まれた。小坂みはれさん/ぐらつかない安心感のある踊り。ブラッソの指先まで丁寧に踊っていた。佐藤理恵さん/舞台を上手く使った大きな踊り。メリハリのある動きがフラメンコだった。古郡美弥さん/サパテアードがきれいで安定していた。岩泉美帆さん/スペイン人に負けないくらいのスタイルが目を引いた。タラントに雰囲気が合っていて良かった。土方憲人さん/少し肩や姿勢が気になるが、個性的な踊りで会場を熱くした。黒木珠美さん/ブラッソが美しかった。レマテに重さが加われば更に良くなると思います。

<バイレ・群舞部門>
稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団/男性の踊り手を入れたことで活きた作品になっていた。後半にもっと工夫があれば更に良かった。

鈴木眞澄(舞踊家)[Bs,Bg]

まずはじめに特に印象に残った方々を挙げます。
・福島沙弓さん…個性的な表現がすばらしい。・大神明希さん…踊りに対する誠実な向かい方。・佐渡靖子さん…すばらしかったです!・青木千鶴子さん…上達なさっていく過程を見届けられるのはうれしいです。・丸岡みゆきさん…緊張感の中にあるまっすぐさに心が打たれました。
群舞・Estudio El Patio…真摯に向かう姿がまさにフラメンコでした。オレーッ!・Los montañeros…フラメンコへの愛情を感じて楽しくなりました。

私はギターやカンテの選考はしませんが特に心に残ったことをここに書きとめておきたいと思います。
ギター・森谷忍さん…ただただ感動しました。1つ1つの音が心に響いてきました。・土井わかなさん…心が熱くなりました。・廣木恵理さん…熱い想いが伝わってきました。・小河由里子さん…自然な動きがとても良いです。・藤本ゆかりさん…熱い想いが伝わってきました。・川松冬花さん…すばらしかったです!・新海玲子さん…フラメンコらしさを感じました。
カンテ・熊谷善博さん…フラメンコに向かう姿勢に感動しました。・金沢賢二さん、深谷恵子さん、ダニエル リコさん…真摯に取り組む姿に私も襟を正します。エンリケ坂井さんのカンテ伴奏はフラメンコの原点を見据えながらあたたかく見守っているようで感動しました。

・小坂みはれさん…踊りそのものが上手いです。・土方憲人さん…すばらしかったです!・清水千夏子さん…感動して涙がでました。・黒木珠美さん…熱い想いが伝わってきました。・近藤朔さん…たゆまぬ努力を続けいつも真摯に取り組まれている様子がうかがえて、この公演の趣旨である「私たちは常に新人の心を持って…」にふさわしい方だと感じました。是非また拝見したいです。

フラメンコだからこそ人生の積み重ねがすばらしい形で表れると思うので、もっとキャリアのある方の踊りも拝見したいと思います。きびしい状況で生まれ育ったフラメンコは魂の叫びと言われます。感情を伝えてこそフラメンコだと思うのです。
最後にこの舞台は、出演の方だけでなく、楽屋でも客席でも駆け寄ったり、抱き合ったりして旧交をあたためる場面をたくさん拝見し、皆さん一年に一度のこの日をいろいろな意味で楽しみにしている様子がうかがえました。フラメンコ界の交流の場としてもこの公演が続いていくことを心から願っています。 ありがとうございました。

曽我辺靖子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【21日(金)】
新井ゆふ子さん:大人の雰囲気もあり、ラストまで途切れることなく良く踊れていました。
近藤綾香さん:体から溢れるリズム感が伝わってきました。心から踊りを楽しんでいる感じに好感。
福島沙弓さん:センティードを感じ熱の入った踊りにオレ!
大神明希さん:しなやかさがあり、好感のもてる踊り手です。
大野環さん:芯がぶれずマントンとの一体感が良い。今までにない成長を感じました。
内田好美さん:タメがあり、曲に秘める情感を感じ引き込まれました。結末へのつなぎも良い。
鈴木雪花さん:丁寧に踊っていました。特にラストが印象深かった。
佐渡靖子さん:マントンとバタのさばきが艶やか。手足の長さを生かした踊りでした。
青木千鶴子さん:個性的な衣装。大きな成長の跡がうかがえました。

【22日(土)】
持田賀津子さん:足音も強く、流れ良く踊れていました。背中からのブラッソの動きを研究すると幅が広がるでしょう。
牛田裕衣さん:凄みがあり、自分の世界観を持っている踊り手です。
土井わかなさん:足音強くリンピオ。上体を生かせるとさらに良いでしょう。
小林成江さん:素晴らしい成長です。曲の中に入り込み1つ1つの動きに呼吸を感じました。丁寧なサパテアードも心地よく響きました。
森里子さん:華やかさがあり、足も強く最後までとぎれない!
渡辺なおみさん:熱のはいった素晴らしいタラント。味があり引き込まれました。
廣木恵理さん:自然体の感じがとても良く、ノリのある踊りでした。
山形志穂さん:女性らしい上体の柔らかさが武器です。これからを期待します。
平尾華子さん:上体がぶれず、足音も確かでした。
小河由里子さん:重さを感じ、結末のタンゴからのノリが良い。足音もしっかりしていました。
藤本ゆかりさん:カンテをよく聴き、くいついていく姿が素晴らしい。ラストがもったいないです。
川松冬花さん:ぶれないサパテアード。バランス、リズム感共によく、向かっていく姿に自信を感じました。
東田美智江さん:足音強く、マノの柔らかさが貴女の宝です。パワーを感じました。
新海玲子さん:カンテを感じながら流れ良く踊っていました。
小林浩子さん:1つ1つを丁寧に踊っていました。後半の切り替えに味がありました。
坂本恵美さん:曲の雰囲気を大切に踊った方。今後に期待!

【23日(日)】
小坂みはれさん:サパテアードの音がとても心地よく響きました。イキな踊り手です。
佐藤理恵さん:しなやかな中にもタメがあり、サパテアードもリンピオです。スケールの大きな踊り手。
李成喜さん:華やかさがあり、足もしっかりしている。
古郡美弥さん:体がよく動き元気一杯のアレグリアス。グラシアがあり将来性をとても感じました。
柴田千穂さん:バタの使い方が良く表現力のある踊り手さん。ラストが?
岩泉美帆さん:カンテをよく聴きタメがあり表現力も良い。すみずみまで神経が行き届き、手足の長さを良く生かし踊っていた。独特な個性があり輝いていました。
土方憲人さん:上体の動きが自然に足に繋がり、心地よい響きとなっていた。空間を巧みに使いこなしスケールの大きさに将来性を感じました。
久保田晴菜さん:サパテアードの強さもさることながら、表現力も身についてきました。
津島直美さん:きちんと踊っている姿に好感がもてます。
黒木珠美さん:最後までモチベーションを維持して踊りきりましたね。タメが出てきて成長が感じられました。もう一度観たい踊りです。
近藤朔さん:以前より上達が感じられ感動です。最後までサパテアードもぶれずによく踊りきりました。大拍手です。今後も続けられることを期待します。

<バイレ・群舞部門>
Estudio El Patio:よく揃って踊っていますが、もう少し1人1人の個性が発揮されると、より深みが増すと思います。
奥野裕貴子フラメンコ教室LOS TARANTOS京都:ストーリー性のある心温まる作品でした。
屋良有子フラメンコ教室:皆の体が良く動き構成も面白いです。誰もが知っている曲を使うことはとても勇気のいること。挑戦に拍手です。
稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団:各自が自分というものを持ち、自信をもって踊っている姿にパワーを感じました。もう一度観たい作品です。
Los montañeros:3人が楽しんで踊っている姿が印象的でした。

高橋英子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
今年も皆さんの思い入れが心に伝わってくる素晴らしい演技が続いた3日間でした。実力もあり、いいものを持っている踊り手さんが沢山いらっしゃることは、フラメンコのアカデミー数を世界に誇る日本の誇りかもしれません。演技の内容もフラメンコへの情熱とテクニックの向上で洗練されてきていると思いますし、より強いインパクトを求めてか、凝った振付や効果を狙った照明演出が目立つようになり、舞台芸術性も感じられるものとなっています。衣装美術も素晴らしい。いろいろな意味で日本のフラメンコ舞踊の世界には目を見張る進歩があります。それは、何よりもこのところスペイン人もたまげるような新人が発掘されていることで実証されると思います。そんな華やかな雰囲気の中で激戦を繰り広げる新人公演に、果敢に挑む皆さんがいらっしゃることは本当に頼もしいです。各人の演技を拝見していて、それぞれの価値観をもって新人公演に出場しているのが窺えました。「奨励賞に輝く」という目的だけではないと思いました。このフラメンコ界最大の祭典が、ひとつの意義ある集いの場として皆さんに愛され続けることを願います。

さて、甲乙つけがたい競り合いの中で、受賞させた方々はそれぞれに秀でたものがあったと思います。出演順に簡単な私の感想などを書きます。福島沙弓さんは白黒はっきりした存在感と気迫で観る人を圧倒するテンションの高い演技で見せました。小林成江さんは振付や演出にうまく融合する独自の表現力と美しい踊りが光りました。川松冬花さんは揺るぎないテクニックと時々見せるアルテ、その迫真的な演技で魅了しました。佐藤理恵さんは大きなうねりのある身の熟しと、シンプルな中に威圧感のある渾身の踊りで見せました。岩泉美帆さんは、スペインの名バイラオーラを彷彿とさせるクエルポのフラメンカな美しさと逞しさ、高品位な魅力が引き立ちました。土方憲人さんは、粋で洒落た上体の動きと攻めの利いた力強い下半身でフレッシュな息吹が炸裂しました。また、準奨励賞の平尾華子さんはとても惜しかったですが、リズミカルにアレグリアスの軽快で粋な世界を持ち前の華と現代的センスで表現し、輝くスター性を感じました。

それぞれが自分の世界を持ち、あとちょっと一息といったところで惜しかった方々などが沢山いらっしゃいました。目立った方々を曲目別に挙げてみます。先ず、シギリージャを踊られた山中純子さん、藤本ゆかりさん、久貝輝代さん、矢村万意子さん、菊池麻由美さん、瀬﨑慶太さん、松本千晶さん、黒木珠美さん。特に松本千晶さんや黒木珠美さんの踊りには惹かれるものがありました。また、山中純子さんのカスタネットとバタ・デ・コーラで踊るシギリージャは、昔からの伝統的スタイルを覆す現代風な凝った振付と音楽演出が印象的でした。
タラントを踊られた渡辺なおみさん、久保田晴菜さん。この2人の演技はなかなか惹きつけられる魅力がありました。ソレアを踊られた内田好美さん、新海玲子さん。新海玲子さんの正統的で自然な表情の素直な踊りには好感が持てました。アレグリアスを踊られた佐渡靖子さん、古郡美弥さん、佐藤直美さん。アレグリアス独特の優雅でエレガントなブラッソ、又はチャーミングな華やかさで魅せられました。ソレア・ポル・ブレリアを踊られた牛田裕衣さん、岩丸綾子さん、小坂みはれさんは各人堂々としていました。特に小坂みはれさんはなかなかフレッシュフラメンカで技術も有り、楽しめました。バンベーラをマントンで踊られた大野環さんの演技は選曲も良く、マントンも映えて格調高くなりました。ティエントをバタ・デ・コーラで踊られた柴田千穂さんもしっとりした品性がありました。

珍しくソロンゴを踊った方(1日目のニエベユリさん)がいらっしゃったのは嬉しかったです。昨年の講評でも、幅広く豊かなフラメンコの世界には沢山のフラメンコ曲があり、それなりの味があり、それらを皆さんの色々な個性で踊るのはステキなことだと書きました。豊かなフラメンコのパロ(曲)の世界を楽しめるような新人公演でもあって欲しい、それは引き続き思っていることです。

<バイレ・群舞部門>
群舞はやはり沢山の踊り手さんで作り上げるエネルギッシュな世界を期待してしまいます。ですから人数が少なければ少ないほど、群舞としての魅力を出すのが難しいように思いました。でも考えようによっては男女で踊るパレハの踊りなんかもあるし、数人の演技力ある踊り手さん達で現代的で斬新な世界も生み出せるかもしれないので、そういうのも今後の楽しみであります。

Estudio El Patioは1人1人の心のこもった演技はとてもよかったですが、全体の振付にもっとバリエーションがあると更によかったように思います。奥野裕貴子フラメンコ教室LOSTARANTOS京都のタラントは、アラブ風の同色彩の豪華な衣装とドラマ風の演出と音楽、照明効果など全て工夫されていてとても華やかなインパクトある力作でした。ドラマ風の展開が私にはちょっと分かり辛かったのですが、中堅の踊り手さん達の意気込みが一体となり、パワフルなシーンの連続で楽しめました。屋良有子フラメンコ教室のメンサへは舞台芸術としての世界を意識し考えられた躍動的な振付構成で、照明効果もありなかなかステキな仕上がりになっていました。受賞した稲田USUMUjeres内圧と間舞踊団は、その舞踊団名そのままのイメージが各自の踊りに感じられました。特に斬新な振付構成の展開はなかったように思いますが、全体的に男性2人と女性6人がリズミカルな音楽の中で、それとは逆のエネルギーを作り出したような、なんだか不思議なムードが漂い印象的でした。Los montañerosは1曲の中に色々なシーンを作り、また各自の個性も出したいと、あれこれ振付を工夫した努力作、とても微笑ましく拝見しました。

手塚真智子(舞踊家)[Bs]

21-1 新井ゆふ子さん ソレアの唄をしっかり聞きながら踊ったと思いました。
21-7 福島沙弓さん 貫禄があり 最後までテンションがきれずに熱いタラントでした。
21-9 大野環さん  少し動き過ぎの感がありましたが、最後の決まりが良かった。
21-10 内田好美さん 全体的に良いソレアでした。
21-13 佐渡靖子さん バタのさばきに少し気になるところがありましたが、ポーズが綺麗で、あっと言う間に終わった感じでした。
21-15 丸岡みゆきさん 緊張がこちらまで伝わってドキドキしてしまいました。
21-16 本多清見さん フエルサを感じるソレアでした。
22-10 牛田裕衣さん 迫力あるソレア・ポル・ブレリアでした。
22-12 土井わかなさん ドラマ性のある良いティエントでした。
22-13 小林成江さん 安定感が出てきてひたむきに練習してきたのだと思いました。最後の抜け感がもっと出ると良かったと思います。
22-16 廣木恵理さん 踊りたい気持ちは、良く伝わったように感じました。
22-21 小河由里子さん 大きい身体を良く使いこなせるようになったらと思います。
22-25 川松冬花さん 最後までテンションが途切れず熱い踊りでした。
22-26 久貝輝代さん 気迫がある良い踊りでした。
23-18 小坂みはれさん 躍動感を感じました。
23-20 李成喜さん 爽やかな衣装で笑顔が印象に残りました。
23-23 柴田千穂さん バタを良く使いこなしていたと思います。
23-24 松本千晶さん 心を込めた踊りと感じました。
23-26 岩泉美帆さん “オーレ”と掛け声をかけたくなりそうな箇所がありましたが、今一つだったのが残念です。
23-27 土方憲人さん ひたむきにフラメンコに向かった姿が好印象で成長を感じました。
23-28 久保田晴菜さん 全体的に安定感があり、ブラッソ、足音が綺麗でした。
23-31 黒木珠美さん ¡Baila bien! でした。
23-32 近藤朔さん ごまかしを許さない徹底したその姿が印象に残りました。

花岡陽子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【21日(金)】
新井さん:気持ち良く拝見出来、よかったです。
近藤さん:変化があり、楽しそうに踊られていました。
佐藤(哲平)さん:踊りに工夫があり、あと少しです。
石川さん:うっとり美しさに見とれてました。
下山さん:内面から出るブラソを研究してみて。
ニエベさん:舞踊性が欲しいです。
福島さん:アイレがあり、全身で表現していました。
大神さん:細身でよく踊っています。将来性があります。
大野さん:身体がしなやか。大変好ましい踊り手さん。
内田さん:足が強く、ねばりもあり、表現力もあります。
鈴木さん:明るく楽しい美しい。衣裳のセンスも。
高木さん:楽しそうでよいのですが、少し雑になったかしら。
佐渡さん:コーラで大変難しい技術をよく踊っています。
青木さん:力強さがもっとあれば。また挑戦してください。
丸岡さん:少し弱いかも。踊り続けていってください。
本多さん:全体にきれいにまとめています。

<バイレ・群舞部門>
Estudio El Patio:きちんと、そしてりんとしたフラメンコでした。
奥野裕貴子フラメンコ教室LOS TARANTOS京都:タラントがこのように振付、と面白く拝見しました。
屋良有子フラメンコ教室:つぶが揃って美しくよかったです。
稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団:技術性、舞踊性、優れていました。
Los montañeros:アレグリアスらしく、楽しくまとめていました。

<バイレ・ソロ部門>
【22日(土)】
持田さん:工夫がありましたが華やかさが欲しいかな。
牛田さん:力強くフラメンコを自分のものにしています。
山中さん:パリージョ、コーラとよく挑戦しました。重厚感が欲しい。
土井さん:成長しました、ぐっと。よかったですよ。
小林(成江)さん:全体にとても気持ちよく拝見しました。
森さん:若々しい未来を感じます。
渡辺さん:大変よかったです。好きな踊り手さん。
廣木さん:全体的によくまとまっています。
山形さん:サパティアートが面白いです。パソが多いかも。
西山さん:ボリューム感がよいです。シレンシオに工夫が。
平尾さん:舞台の使い方、舞踊性、優れた踊り手さん。
岩丸さん:きちんと踊っています。特長が欲しいかな。
小河さん:よくまとめています。ちょっとドラマ性も欲しい。
瀬﨑さん:たくさんのサパティアート、お見事でした。
石塚さん:よく踊りきりました。またステージをめざして。
藤本さん:ティエンポ、アイレ、とてもよかったです。
川松さん:ねばり、重厚感あり、表情もよいです。
久貝さん:しなやかさ、ブラソの美しさが目立ちました。
東田さん:力が少し入りすぎたかしら。でも良いのですが。
佐藤(幸子)さん:フラメンコのひとつのスタイルですね。
矢村さん:踊りが本物になってきました。いいです。
菊池さん:“静”の部分が魅力的です。
新海さん:ねばりのある、味のある踊りでした。
小林(浩子)さん:曲想に衣裳がどうでしょう。考えて。
坂本さん:コーラのアレグリアス、今ひとつです。

【23日(日)】
津田さん:強さはいいのですが、怒りのようになっては。
大家さん:今ひとつです。パソを心から表現してみてください。
小坂さん:全体にバランスがよい。美しいです。
佐藤(理恵)さん:素直に強さが出て、成長しました、ぐんと。
李さん:若々しい明るいアレグリアス。いいです。
古郡さん:おしゃれなアレグリアス。工夫もあります。
池本さん:動きとブラソのバランスを考えて。踊り込んでいって。
柴田さん:コーラの使い方が見事!よかったです。
松本さん:無理のない力強い動きでした。
佐藤(直美)さん:明るくきれい。サパティアートもいいです。
岩泉さん:舞踊性もあり、全体のバランスがよい。
土方さん:魅力のある男性バイラオール。しなやかさと強さと。
久保田さん:女らしい優美なタラント。ステキでした。
清水さん:曲想にマントンとブラソがとけ込んでくれたら。
津島さん:きれいにきちんとステキでした。衣裳もとてもステキ。
黒木さん:欠点が少ないです。きれいでした。
近藤さん:自分らしいフラメンコで立派でした。
相田さん:もうひとつ、観客にアピールの何かが…。

本間牧子(舞踊家)[Bs]

受賞された方々と惜しくも逃した方々の差はいったい何か…と考えた時、いつも同じことを思うのです。フラメンコは三位一体といわれています。が、もうひとつ、自分の中の三位一体もあるのではないでしょうか。肉体(技術)精神(集中力)感性(感情)…自分の中をひとつにできるかどうかだと思います。

【21日(金)】
3.佐藤哲平:素晴らしい資質を持っています。しなやかなブラソ、サパテアードの強さが魅力的です。
7.福島沙弓:どっしりとした存在感から強烈なエネルギーとアイレを感じさせてくれました。ブラソの間が素敵です!!
13.佐渡靖子:躍動感があり、出だし、最後、とても美しく印象に残りました。

【22日(土)】
10.牛田裕衣:舞台の空気感が変わり、無駄のない動きから生き生きとしたエネルギーを感じました。
13.小林成江:凜とした強さと存在感!!そしてブラソ、マノのしなやかさと柔らかさがかもし出す静と動、そして間の美しさに感動しました。
19.平尾華子:確かな技術、そしてエレガントさとキレ、両方が光りとても魅力的でした。
24.藤本ゆかり:重心や移動、ブラソや身体のひねり、間も良かったです。
25.川松冬花:落ち着いたなかに強さがあり、マノ、ブラソ、脇などのひねり、静止の間が素晴らしかったです。

【23日(日)】
18.小坂みはれ:決して媚びず品格のある丁寧な踊りから伝わってくるアイレ、後半の盛り上がり、とても良かったです。
19.佐藤理恵:存在感とぶれない軸、そこから生まれ出る重厚な空気感が素晴らしかったです。
26.岩泉美帆:立ち姿が素晴らしく、足元からブラソ、マノへ繋がっていく間の表現はとても素晴らしく感動いたしました。
27.土方憲人:しなやかなブラソ、まわりの空気をも取り込んでいく呼吸、そして凝縮され放出される強烈なエネルギー、静と動、見事にコントロールされ圧巻でした。

最後に22日出演、ギターの森谷忍さん、温かく透き通った音色が心に染み入りました。出演されたすべての方々、新たなスタートです。それぞれの課題を見つけ、また精進されることを願っています。

渡邊薫(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>(◎奨励賞に推薦と来年に期待する出演者)

【21日(金)】
佐藤哲平:恵まれた身体です。もっと体幹の訓練をすると表現力が広がると。ジャマダの切れを良くすると。
◎福島沙弓:彼女のアイレを感じた。タンゴの入りも良かった。
◎大野環:堂々としてバックとも上手くかみ合っていた。彼女らしさが充分に出ていた。
佐渡靖子:シンプルな振付ながら上手くバタ・デ・コーラを扱って好ましい踊りでした。
青木千鶴子:カンテへのコンテスタションが弱いが、タンゴへの入りは良かった。

【22日(土)】
牛田裕衣:安定した腰、挑みかかるような踊り。貫録さえ感じた。サパテアードもリンピオでした。
山中純子:パリージョ、バタ・デ・コーラのシギリージャ素敵でした。もう少しティエンポのメリハリが欲しかった。
土井わかな:入りのカンテソロに寄りそう踊りでした。小粋なタンゴが良かった。
◎小林成江:前回(2年前)から数段に上達されましたね。溜めも有り、踊りをしっかり自分のものにしていた。
渡辺なおみ:実力のある踊り手だが、もっとカンテを感じて。
廣木恵理:ゆったりとした唄振りなので、もう少しpesoがあったら。楽しんで踊っていたのは好ましい。
平尾華子:よく訓練された身体。重心の置き方に注意されるとよりフラメンコに。
小河由里子:上体の表現を工夫されるとより良いでしょう。
瀬﨑慶太:努力のあとが見られました。体幹に注意と首の前傾が少し気になりました。
佐藤幸子:振りが唐突なので、もう少し流れを考えてみられたら。リズムの乱れが気になりました。
矢村万意子:走り込みの出が不安定でしたが、昨年に続いてのシリギージャは落ち着いて踊っていた。カンテとのからみがあと一歩。
新海玲子:丁寧な唄振りが良かった。オーレが出る場面も。

【23日(日)】
小坂みはれ:シンプルな振付が彼女によく合っていた。溜め不足だが、後半になるにつれて良くなっていった。
李成喜:止まりをしっかりと。自然な表情が好感的。
◎古郡美弥:確かなテクニック。体幹もしっかりしている。ゆったりなエスコビージャも良い。はつらつとしていた。
柴田千穂:カホン・カンテのみでの動きが良く、ブラソ美しさが光った。
◎松本千晶:前回(ソレア・ポル・ブレリア)の時よりはるかに落ち着いてバックとも上手くからんでいた大人の踊り。
岩泉美帆:エレガンシアでメリハリのある渋い踊り。
◎土方憲人:マルカーヘがすごく良い。サパテアードがリンピオ。ブラソがとても表情豊かで粋さがあった。
久保田晴菜:高い集中度、上体使いが上達した。
黒木珠美:自分の個性を良く活かした振付。盛り上がり不足が残念。
近藤朔:たゆまぬ努力の成果が見られました。益々フラメンコに向き合っていらして下さい!

<バイレ・群舞部門>
Estudio El Patio:3人の実力が揃っていて、カンテとのからみも良かった。シンプルだがムイフラメンコな振付。もっとはじけて下さい。
奥野裕貴子フラメンコ教室LOS TARANTOS京都:少し荒けずりだが個性的な踊り手達。ドラマティックな構成だったが、こちら側に伝わるものが少し不明瞭でした。
屋良有子フラメンコ教室:始まりの無音の踊りがすばらしく美しい!曲をよく理解した振付、構成が良かった。実力のある踊り手達。
◎稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団:各人の実力が高く、構成、フォーメーションの上手さ!フラメンコの群舞としてすばらしかった。
Los montañeros:活き活きと踊られました。ソロ・デ・パソのリズムが不明確でした。何故、男性名詞のグループ名だったのでしょうか。

市川惠子(舞踊家)[Bs,Bs]

この新人公演に臨まれ、本番に向かって自分のフラメンコを見つめ直し、立ち向かい、頑張ってこられたこと自体が、必ず皆さんの成長につながっているのではないでしょうか。
今年もレベルが高く、技術や身体能力の優れた方がたくさんいらっしゃいました。また、技術的にはまだ課題があるものの、個性豊かな方、フラメンコとしての味を感じる方、心意気を見せてくれた方もいらっしゃいました。それぞれが自分の信じる道を、真摯な気持ちで、この大舞台で立派に踊りきったことが、これからのフラメンコ人生の大きな糧となることと思います。
再挑戦の方々の成長もめざましく、その努力に胸打たれたものの、フラメンコとしてもっと強烈に迫ってくるものが見たいと思いました。よりフラメンコとしての感動を追い求め、奥深いところから込み上げてくる思いを大切に、自分自身のフラメンコを見つけていかれることを願っています。

私が奨励賞に推薦した方々は、
★福島沙弓:ムイフラメンカ!昨年には感じられなかった重みとアイレが出てきた。前からパワフルで個性的だったが、そこに表現力と存在感が加わった。終始ゆるぎない空気感があった。
★牛田裕衣:個性溢れる、存在感のある印象的な踊り。唄振りがすごく良い。足もしっかりしていてコンパス感もある。気迫に満ち、アイレもある踊りに惹きつけられた。
★小林成江:身のこなしが美しく魅力的。腰も落ち着いている。静けさの中に何か伝わってくるものがある。情感がある質感の良い踊りに見入ってしまった。どこかに強烈に迫ってくるものが欲しい。
★平尾華子:切れ味バツグン。隙のない動き。魅力的でとにかく上手い!優雅でパワフルなその踊りに惹きつけられた。あとはフラメンコとして何か強烈に訴えかけてくるものがいる。
★川松冬花:良かった!一時も緩まない空気感。身体の締まった込める力のある良い踊り。重みもうねりもあり、内から発するものに胸が詰まった。思いのたけを踊っている。素晴らしいシギリージャに見入ってしまった。感動!
★松本千晶:上手い!既にベテランの風格、最後までじっと見てしまった。しっとりとした重みのあるびくともしない腰の据わった良い踊り。唄は一度締めて。上質な踊りなのだが、盛り上がりに欠けるので、もっと感情をあらわにして爆発するところを見せて。

次点で推薦した方は、
☆土方憲人:こんな男性舞踊手が出てきたのかと嬉しくなった。面白く味があり不思議な魅力がある。何か匂いがある。そして新鮮。事も無げなブエルタ、切れ味の良いピエ。瞬発力のあるレマーテ。後はどしっとした重みが出ると良いのでは。今後の成長が楽しみ。

特に印象に残った方々は、
●佐藤理恵:大きく舞台を使いこなし、唄もギターも良く感じて、ドラマチックな振りを自分のものにしている。足もパワフルでクリア。静けさ、するどさもある良い踊り。心に沁みたソレア。最後まで頑張って。
●岩泉美帆:お見事。ほとばしるエネルギーを感じた。一時も緩まない空気感、手足が長く、美しい身体を活かしたうねりと含みもある唄ぶり。切れ味の良いエスコビージャ。タンゴも素敵。緩急のある踊りに惹き込まれた。唄の最後を大切に。
●久保田晴菜:優雅でしなやか。隙のない踊り。落ち着きも出て、しっとりとした女性の魅力を感じた。技術もしっかりしていて足もクリア。舞踊的に優れていて上手いのだが、もっと唄やギターを感じてフラメンコとして迫ってくるものが欲しい。

次に印象に残った方々は、
◎大野環:ずっと頑張ってきたことが実になった。今までで一番良い。身体も締まってきたし、落ち着き、重みが出てきた。大胆なはっきりした振りが個性にマッチしていたが、目線が決まっていないのがとても気になった。
◎内田好美:気合は充分に伝わった。アイレもある。ピエもしっかりしていて印象的。身体は良く使っているが、情感を大切に。
○佐渡靖子:マントンも踊りも技術的には優れているが、バタならではの優雅さ、アレグリアスとしてのアイレが欲しかった。激しさが慌しく見えた。もっとしっとりした方があなたの美しさが映える。
○青木千鶴子:足はしっかりしていて身体も使っているが、盛り上がりに欠けたので今年は全体に弱く感じた。
○山中純子:始まりは良かった。足もしっかりしていて、コーラさばきはきれいだが、シギリージャの重みが欲しい。バックで決めすぎている。
○土井わかな:独創的で素敵だが、色々し過ぎて少し軽い。良いものを持っているので頑張って。
○森里子:晴れやかでアレグリアスらしく良いのだが色々し過ぎと、バックが作りすぎているのがマイナスでは。
◎渡辺なおみ:個性が印象的。気迫に満ちた踊りでうねりも重みもあり良かった。激しさが全面に出ているので、どこかゆったりした部分が欲しい。
○廣木恵理:荒削りだが、面白い。拙いところもあるがアイレがあり、何か味がある。どこかグッとくる程の強いものが欲しい。シンプルなプーロな踊りをする人は少ないので頑張って欲しい。
○西山依里:すごく独特だが見ていて楽しい。リズムもしっかりしていて、ずっと自然体。そんなに動かないで、どこかグッと締まったところがあると良いのでは。
○藤本ゆかり:アイレもあり訴えかけてくるものがあるが、もっと腰を据えて、情感を大切に。最後の足が残念。もっとシンプルな振りのどーんとした踊りが見てみたい。
○久貝輝代:頑張りを感じる力強い踊りだが、身体の軸がまだ甘い。肝心のジャマーダが弱いのが残念。深く心に沁みるようなところが欲しい。マノも大切に。
○東田美智江:真摯でひたむきな思いは伝わった。熱さも気迫もあるがまだ硬い。抜くことも大切。うねり・含みが振りではなく、自分の内から滲み出ることを期待したい。
○矢村万意子:足強い。粗いが迷いのない良い踊りに伝わってくるものがあった。バックと一体感があったが、ずっと必死な印象。
○菊池麻由美:個性的で不思議な魅力に惹きつけられた。見てしまう。長身を活かしたダイナミックな踊り。マノをもっと使って、最後の頑張りは大切。
○新海玲子:小さい身体で力強く無駄のない踊り。テクニックもペソもある。表情に変化がないので、感情の起伏が伝わってこない。
○津田可奈:切れがあり、足もしっかりしていて上手いのだが、腰が落ち着いてないので流れて見える。起承転結を大切に、自分でもっと音頭を取って。
◎小坂みはれ:印象的な始まり。パワフルで重みも切れ味もある。表情も豊かで、グッと上手くなったと思うが、何か物足りなさを感じた。
○古郡美弥:個性的で面白い。表情豊かで可愛く魅力的。唄振りは良かった。身体は利くが、エスコビージャの表情が真剣すぎてマイナスに。後半振りがてんこ盛り過ぎたので、慌しく感じた。
○柴田千穂:静かな重みと込めた力のある良い踊りなのだが、伝わってくるものが物足りない。素敵な振りなのだが、凝り過ぎて何か小難しく感じた。
○黒木珠美:以前の華やかさとは違う静けさの中の強さに惹かれた。雰囲気もあり何か心に沁みたが、少し腰が浮いてるように感じた。後半に少し空気がたるんだのが残念。

今後に期待したい方々は、
□近藤綾香:身体は利くが、表現が大げさすぎるのでは。面白い個性はあるが、ソレアらしさについて考えて。
□佐藤哲平:熱さとひたむきさに惹かれ好感が持てた。ブラソとマノがきれい。軸と重みを意識してこのまま精進して。
□石川雅子:雰囲気があるがジャマーダが弱く、盛り上がりに欠けた。
□鈴木雪花:印象的な始まり。アレグリアスとしての良さはあるが、締りがなく、何か物足りない。
□本多清見:良いところもあるが、一本調子に見えるので、激しいところも欲しい。
□瀬﨑慶太:真っ直ぐな気持ちが伝わった。だいぶ身体がしっかりしてきて良くなっているので基本的な力を身に付けるよう頑張って。
□石塚真理:ちゃんと踊っているがおとなしい印象なので、どこか強烈なところが欲しい。ブエルタが甘く、ジャマーダが弱い。
□坂本恵美:始まりが良かった。踊りに華があるが、少し慌しく感じた。コーラのさばきだけでなく、上半身の優雅さ、マノを大切に。
□李成喜:マントンさばきはきれい。足も奏でているが、コンパスの締め・アセントが弱いので流れて見える。伸びやかだがフラメンコとしての力が要る。
□近藤朔:技術的にはまだ拙いと思うが、年を重ねたからこその味を感じた。宙を掴む腕、一点を見つめる目。フラメンコに対する真摯な気持ちが伝わってきた。

今年の群舞はバラエティに富んでいて見ていてとても楽しませていただきました。ですが、奨励賞を選ぶのはとても難しかった。個性豊かで特色もあるが、素直なフラメンコ性について考えて欲しい。今後への期待を込め、次点としてEsudio El Patioを推薦。
☆Esudio El Patio:ソレアの空気感が出ている。3人の一体感もあり好感が持てた。まだ拙いが丁寧に踊っており、ひた向きな熱い心意気に惹かれた。

印象に残ったのは、
○LOS TARANTOS京都:新人の先生ならではの斬新な演出。ドラマチックで面白かったが、フラメンコとしてタラントとしてはどうなのか疑問が残った。
○屋良有子フラメンコ教室:美しいドラマチックな始まり。モダンダンスのような振付の場面は素晴らしく、良く踊ってはいるが、まだフラメンコとしての身体が出来ていない。
○稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団:全体に抑制されたものを感じたが、こういう振付は本当に踊り手の力が問われる。実力を持っている方が多いはずなので、もっと一人ずつの個性を活かしたほうが良かったのでは。踊りそのものよりも構成で見せられているような気がした。服部亜希子さんは表情も良くフラメンコ性を感じた。

フラメンコはじっくり踊りこんでこそ、自分のものとなりその人の味が出てくるものではないかと思います。皆さん器用すぎて深く知る前に次の曲や次の振付へと行っていませんか。それではフラメンコの奥深いところにいつまでたっても触れることが出来ないのではないでしょうか。しっかりとしたフラメンコとしての身体ができている方は良いのですが、色々し過ぎると慌しいだけで、よほど身体能力に優れていなければ、振りが詰めすぎで、あれやこれやしても、また大げさすぎても、かえって逆効果な気がします。まだ拙い方は、奇をてらうことなく、もっと普通のマルカールを素敵に踊れるようになる努力が必要かと思います。もっと一振りを大切にしなければ、じっくりと取り組んでいかなければ、頑張っているのだけれど一本調子に見えたり、何も心に残らなかったりするのでは。いくら身体を動かしても、フラメンコとして踊らなければ何も意味がありません。今年は振付も工夫が多く、よくこれだけ色々と考えられるものだと感心しますが、もっとシンプルな振りをフラメンコならではの表現で感動させてくれる方の出現を熱望しています。

EL・POKA岡崎(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
今回私が気に掛かった12人の方々。
始めに津田可奈さん、相変わらずギター、カンテ、振付が一体になっていて、お互いに会話が出来ていたので、観ていて気持ちがよかったし、すばらしかったです。大野環さん、衣裳のセンスも良く、マントン裁きも、リズムもきれいに乗って見事だったし、音の強弱さもすごくうまく感じました。土方憲人さんは場慣れした雰囲気を全体に感じたし、佐藤理恵さんからは、綿密な打ち合わせの上、舞台機構を知り尽くした上、照明まで見事に計算に入れられていましたね。踊りはもちろん素敵でした。久保田晴菜さん、衣裳のセンスも良く、清楚な雰囲気も、踊りも、私は好きでした。頑張ってください。土井わかなさん、小柄ながら大舞台に負けることなく、振付も自分のものにしていたし、音の強弱、またバックの人達とも、きれいに打ち解けていました。小林成江さんも文句無く良かった印象が残ります。岩泉美帆さん、今回は少し体調が良くなかったのかな!でも優秀な成績を残すところが流石です。小坂みはれさん、構成、演出がすばらしい中、堂々と踊りこなしている姿は立派でした。最後に森里子さん、間違いなく無くすごいスタッフ達に囲まれ、最高の条件の中で育っていると思われます。踊りも笑顔が良く、マノが途切れる事なく、きれいでした。このまま頑張ってください!楽しみにしています。

<バイレ・群舞部門>
私が思うに、群舞は第一に作者の創作力が問われること。創作に必要な事は音楽を一体化した振付、作者の意図。いつもほしいと思っているのは、なる程と思える題名!これが観る側にしてみたら一番ほしい。今回もある作品はレベルの高い踊り手達が楽しそうに踊っていましたが、こちら側まで伝わって来るものが、私にはほしかった。その点だけで言うと、フラメンコ大好きな3人が、群がって、まるで蝶がフラメンコと言うお花畑で舞っている様な姿を観せつけられた時、何故か急にほのぼのとさせられ、一見に値しました。私はいつも、群舞のどこを観て価値を決めるか、今回も悩みました。でも群舞を観るのは好きです。毎回楽しみに期待しています。今回出演の皆様、ありがとう!お疲れ様でした。

東仲一矩(舞踊家)[Bs,C]

<バイレ・ソロ部門>
まずは奨励賞を受けられた方々、おめでとうございます。
「土方憲人」さん、素晴らしい踊りでした。基本がいかに大切かという事を観せてくれました。その上に自分の表現があるという事を。
「小林成江」さん、フラメンコの持っている重さをしっかりと観せてもらいました。作品の完成度は素晴らしいものでした。
「岩泉美帆」さん、人柄が踊りの中に見えかくれして「おもしろい」構成も素晴らしいと感じました。
「川松冬花」さん、シギリージャを自己のものとして、自己の世界を創っていく方向性を感じました。
「福島沙弓」さん、肉体から発するシンフォニーを感じました。タラントを自分のものにしている表現は素晴らしいものでした。
「佐藤理恵」さん、完成度の高い作品でした。ペサがあり、個性がしっかりと出た踊りでした。
『準奨励賞』の「平尾華子」さん、アレグリアスをパンタロンで踊る方を観たのは初めてです。ピルエットのスピード感、ピエの強さを感じました。

奨励賞に選ばれなかった人で私が素敵と思った方々を連記いたします。
「大野環」「内田好美」「西山依里」「藤本ゆかり」「菊池麻由美」「柴田千穂」。彼女達には、私的意見として素敵な舞を観せてもらいました。

<カンテ部門>
「山田ナオリ」さん、ドローレスのシギリージャを忠実に唄われました。次はリズムの必要な唄を聞きたいものです。
個人的には今回の「中山えみ子」さん、マイテ・マルティンにスペインで習ったという結果が出ていました。会場に響く体勢を考えるともっと良いのかなと思います。(小柄なので)
「金沢賢二」さん、音程は良く、声ののびも良かった。スペイン語がはっきり聞こえれば。
「川村麻利子」さん、声量があって良く声が飛んでいた。
「占部智恵」さん、自分の唄にしてブレスが続いた。腹式で唄っていた。

ロシオ・ロメロ(舞踊家)[C]

カンテの会の選考というものの難しさは、バイレのそれ以上だと思います。カンテはフラメンコの中で最も難しいジャンルです。したがって、これを習得しようとする歌い手たちの要する努力は大変なものです。たんにメロディーを覚え込むだけでなく、言葉をはっきりと発音することを会得せねばならないのですから。

選考にあたり、私が評価の基準としたのは、出場者たちが、それぞれに取り上げて歌ったカンテのパロ(形式、曲種)を、各自、いかに深く識り、理解しているか、ということでした。ともかく、出場者たちが示されたカンテへの愛情に、(スペイン人として)私は感謝を捧げたいと思います。そして、彼らがこれからも日ごとに研鑽を重ねられますよう、励ましの言葉を贈ります。

※訳:濱田滋郎

菊地裕子(評論ライター)[Bs,Bg]

今年のバイレ・ソロ部門で素晴らしいと感じた人は8名。選考会ではその中から6名を推薦した。その差は大きくはなく、今回、私が文句なく奨励賞と思ったのは、 廣木恵理さんと土方憲人さんの2名で、あとはボーダーライン上にいた。廣木さんに関しては、その突出したフラメンコ性に感動し、土方さんに関しては、既にフラメンコ舞踊手として突出していることに感銘を受けたが、他の方々は「突出」ということがなく、総合的な判断が働いての選出だった。私見だが、フラメンコのバイレ・ソロが目指すのは、唯一、その人だけの印のある踊りだと思う。これで新人公演を卒業する人も、これからチャレンジする人も、そのままでは多くの舞踊手の中に埋没する可能性が多々あることを、ぜひ忘れずにいて欲しい。
しかし、いつものことながら、何年もチャレンジしている出場者が成長している姿を見るのは、何より嬉しい。今年は、バタ・デ・コーラやマントン、パリージョなどを使った演目が増えたことも喜ばしかった。受賞云々に関係なく、こうした技術が受け継がれていくことも大事なことだと思う。

群舞部門は、群舞に新たな指標を示そうとした作品や、まっすぐにひとつの指標を突き進んだグループなど、興味をそそられるものがほとんどだった。ただ奨励賞の選出ということになると、総合的にはどのグループも過去の奨励賞受賞作品に迫る作品とまでは言えず、推薦なしとしたが、正直言って、今回はどのグループも出演者の精進のあとが心地よく映り、フラメンコを踊ることの楽しさや素晴らしさを伝えてくれる作品が多く、観る者にとって大きな喜びだった。こういう作品が、新人公演にとどまらず、アニフェリアにどんどん出てくれるようにならないものかと思う。
最後に、地方からエントリーした出場者たちに声を大にしてエールを送りたい。そして出場した全ての人に、お疲れ様! ありがとう!

(推薦=奨励賞に推薦、◎=特別評価、○=高評価、△=今後に期待)

<バイレ・ソロ部門>
【21日(金)】
△新井ゆふ子/最初の唄振りは、たっぷりとした感じで好印象。安定感はあるが決め手に乏しい。もっと沢山のエネルギーで踊って、表現に緩急を。
△近藤綾香/よく踊れていたが、唄振りがやや気持ちと離れた感じで、観るほうに伝わって来ない。リズムを意識した振付の部分は、あと0.1秒速く動いて欲しい。
△下山明子/フラメンカな魂を感じた。ただ動きに硬さがあり、ノリが伝わって来ない。また、足音がカホンの音に負けて、さっぱり聞こえなかった。足を打つ立ち位置を考えて。
◎福島沙弓/メリハリの効いたタラント。見応え満載で、非常に秀逸!あとは、コレだけは誰にも負けない!という部分をもっと磨いて、あなたらしさを究めて。
△大神明希/けれん味のない、爽やかで健康的な印象。筋の良さを感じる。シレンシオが美しかった。ただし内側のエネルギーがまだ小さい。頑張れ!
◎(推薦)大野環/フラメンカなバンベーラ。見せ場を上手く配して、見飽きさせない。安定感が増し、さらに自分らしさがギュッと濃縮されていたのが非常に魅力的だった。
◎内田好美/大きな空気感を持ったソレア。エスコビージャの入り方が粋で、よく聴かせた。ただ、もう少し抑制が外れるようなポイントがあっても良かったかも。
△佐渡靖子/身体がよく動く。ラインが美しい。マントンとバタを選んだのは、あっぱれ!今年は少しバタバタした印象だったけど、ぜひ修練を重ねて再挑戦を。
△青木千鶴子/安定感があり、昨年より成長した。ただ、今年は動きが逆にチマチマして見えた。ペソをしっかり持って、どこを膨らますか、緩急をどうするか、研究を。
○本多清見/よく研究していて好感度大。けれども、自分らしさがまだどこか奥のほうに潜んでいる感じ。感じたものが出るという道筋を、自分の中で探って。

【22日(土)】
△牛田裕衣/上手いが、正面を切るパソが多すぎてニュアンスの面白みが伝わりにくい。個性的な部分はgood!足がやや走りがちなところに気をつけて。
△土井わかな/空気感がある。唄を聴いて踊ろうとしているのもgood!願わくば身体にもっと強さを。また、動きは中の深いところから出てくるものであって欲しい。
○小林成江/コンパス感がよく、フラメンコしている。大輪の花の魅力があるが、それにのみ頼らずに、もっと観る者を突き動かすような大きなエネルギーを内側に蓄えて。
○森里子/芸達者。見どころ満載で、小気味良さ、楽しさがあちこちに。あとは振付・構成にさらに工夫をして鮮烈な印象を。
△渡辺なおみ/表現力はあるが、時折、オーバーアクション。中を大事に踊らないと、客を置いてけぼりにした上に、足も動きも1本調子に映ってしまうかと。
◎(推薦)廣木恵理/Ole!これぞフラメンコ!コンパスに乗って、マルカールとジャマーダとちょこっとしたエスコビージャ以外に何かあったっけ?私には途中からアンヘリータ・バルガスが踊っているように見えた。素晴らしかった!
○平尾華子/舞踊性でいえば、今回、最も上手なレベル。緩急もあって、見せ方も上手い。けれどもコンパス感や諸々の味わいが足りない。フラメンコ的感興の研究を。
◎(推薦)藤本ゆかり/深みがあり、大変に進歩を感じたひとり。自分の印をちゃんと持って踊っていたことに、非常に感銘を受けた。派手さはないが、誠実なフラメンコ。
○川松冬花/抑制が効いてコンパス感もあるが、なぜか唄への共鳴が感じられない。一定の緊張感があり、作品としての完成度は高いが、全体に平板な印象に。観ている者を巻き込んで感性の交感をするという認識をぜひ。
△久貝輝代/自然な感じで唄と呼応している感じは良い。あとは身体に強さがもう少し。このままでは動きが単なる振付で終わって、途中から退屈に。
○矢村万意子/しっかりツボを押さえた踊りで、上手さが光る。だが沢山、色んなことがあった割には、決め手に欠けた。惜しい!
△菊池麻由美/長いブラソが雄弁に独自の魅力を見せてくれて表情豊か。あともうひとつ強さが出ると、もっと表現の幅が広がるはず。
△新海玲子/振付に新奇さはないが、バックと呼応している雰囲気が心地よい。あとは自分らしさをどう深めるか。自分の好きなパソをどう研ぎすませていくか。
○坂本恵美/バタ・デ・コーラが美しく舞い、全体にメリハリがあって楽しかった。かなりの舞踊センスを感じるが、アレグリアスなら、どうしてもコレ!という何かをぜひ。

【23日(日)】
△小坂みはれ/気合いが入っているが、全体にエネルギー出力が小さい。身体にバンバン叩き込んで、同時にフラメンコの感性をもっと磨いてください。
◎(推薦)佐藤理恵/王道の大きなソレア。フラメンコの感性に満ちた唄振り、メリハリの利いたエスコビージャ。シンプルな中にその人そのものがにじみ出てきて惹き付けた。
◎古郡美弥/バランスの取れたアレグリアス。舞踊手としてのセンスの良さを感じた。軽々と踊っているのが良い!あともう少しフラメンコ性が高めて欲しい。
△松本千晶/唄から歩き出して足に入る出だしは、かなり良かった。もうひとつ求心力が欲しい。ブエルタ頑張れ。
◎(推薦)岩泉美帆/自発的な動きが印象的。長い手が緩みもなく生きた表現をする美しさ!全体に緩急があり、すっかり自分のものとして踊っていて飽きさせなかった。
◎(推薦)土方憲人/華がある。始めから終わりまでフラメンコとして文句のつけようのない格好よさ。しかも自分のスタイルを持っていて、スター性まで感じさせる。
○久保田晴菜/よく練られたタラント。今までの彼女の踊りの中で一番良かった。しかし、もっと足にも動きにもコンパス感が欲しい。客席とその心地よさを共有できるまで。
○黒木珠美/踊り巧者。曲をよく捉えているし、見せ方も心得ている。けれども、最終的にあとひとつ心に迫らないのはなぜか。もっと痛みを抱えて踊ること。そう思う。

<バイレ・群舞部門>
○Estudio El Patio/舞踊手のレベルは突出して高いわけではないと思うが、フラメンコの感興が凄い。バイレ・ソロが自分の身体ひとつでカンテやギターと呼応しているのに対し、彼らはフォーメーションで呼応した。ソレアの骨の部分を、3人が増幅装置のように演じて胸を揺さぶった。個人的には準奨励賞!
△奥野裕貴子フラメンコ教室LOS TARANTOS京都/赤い衣装の3人と青の衣装3人が対峙するという形で始まり、いくつかの葛藤の末、和解を迎えるという筋書き。舞踊レベルはまずまずだが、その対決や葛藤のありようが演技的に今ひとつリアリティに欠け、心に迫るまでに至らなかったのが惜しい。要研究。
△屋良有子フラメンコ教室/全員が白一色の美しさといい、センスの良いステージングといい、創り手の美意識の高さを感じた作品。音楽性に特化した舞踊作品として受け止めたが、そうなると、個々の舞踊手にかなりの舞踊レベルが要求される。個々の舞踊手の身体性や舞踊レベルを生かすような方向性も探ってもらえると嬉しい。
△稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団/硬派なタンギージョ。舞踊レベルの高い人たちが、フラメンコの「内圧と間(ま)」を追求しつつ、ユニセックスなダンスを披露。奨励賞を受賞したが、私は、8名ものエネルギーが思ったほど伝わってこないもどかしさの方が大きかった。また個人的にはタンギージョらしい大人の茶目っ気が皆無だったことも不満のひとつ。ともあれ、面白いチャレンジだったことは確かで、奨励賞受賞に異議はない。

瀬田 彰(ギタリスト)[G]

今回の私の採点順位は1位・木村さん、2位・宇田川さん、3位・森谷さんでした。
以下、出演順に印象を述べます。(敬称略)

1番・森谷(タランタ):セラニート等の伝統的なファルセータで組上げたタランタを明瞭な音で演奏し、いぶし銀の様な風合いを持つ良い演奏だった。しかし後半のタラントに転じてからは単調なリズムで残念だった。

2番・和田(ソレア・ポル・ブレリア):一風変わった響きのE♭調で演奏したソレア・ポル・ブレリア。ビセンテ・アミーゴ風の雰囲気が出ていて良いのだが、最後の3連音ピカードがもっと決まれば良かった。

3番・内山(ブレリア):モデルノのコンパス感を持ったC♯調のブレリア。各ファルセータ中のメロラインの表現が弱いので全体に不明瞭な印象を与えてしまったのが残念。

4番・藤嶋(アレグリアス):
モデルノ系のアレグリアで曲のセンスは良いが、音の肌理が揃っていないので不完全燃焼な感じを抱かせてしまう。特に4連音中心のアルペジオを使ったファルセータ部分は音の綾織り感が出てこないので残念だった。

5番・福嶋(ソレア・ポル・ブレリア):
マヌエル・パリージャ風のソレア・ポル・ブレリア。モダンで且つ躍動感有る演奏で良かったが、p,i,m,a,の音量にばらつきがあり特に4連音中心の部分はコンパス感が失われて残念だった。

6番・宇田川(タランタ):
細かいミスタッチはあったが全体としての曲のまとまりやアイレなど、表現には深みがあり良かった。しかし今一つピカードの音に押しがなかったのが惜しかった。

7番・塩谷(ソレア):エミリオ・マジャのソレア。淡々とした演奏スタイルなのか各ファルセータの起承転結がはっきりしていずエネルギーを感じなかった。変奏ごとにメリハリをつけて曲の盛り上がり感を出せたら良いと思う。

8番・木村(ソレア):1/2倍速のような遅いテンポで始まった印象的なソレア。テクニックの偏りもなく、良くソレアを表現していた。曲としての躍動感も有り、当夜1番良い演奏だった。

北井一郎(現代舞踊協会)[Bs,Bg]

ゲスト選考委員として3日間の熱気あふれる舞台を拝見させて頂きました。奨励賞は発表されましたが、それとは関係なく、小生が選んだ上位の方の感想を述べさせて頂きます。

【21日(金)】
〇福島沙弓-手の動きにアクセントがあり激しい情感の表現が光る。
〇内田好美-大人の踊りだが、サパテアドが力みすぎ。硬軟おりまぜたら。
〇青木千鶴子-スタイルの良さが目につく。手の使い方があざかで光る。

【22日(土)】
〇小林成江-長身が舞台に映える。発散するテクニック、雰囲気大人の味。
〇瀬﨑慶太-黒の上下が映える、長身から放つ大人の味。サパテアド抜群。
〇菊池麻由美-腕の使い方が抜群のうまさ。

【23日(日)】
〇岩泉美帆-大人の風格のある踊り。戦後の名手、加藤よう子さんを彷彿させる。
〇土方憲人-スタイル抜群、サパテアドも群を抜くうまさ。踊りの間のとり方もプロの味。
〇佐藤理恵-黒の長衣が大人の風格をかもしコクのある演技が渋い。

皆々の健闘をたたえ、今後の大成を期待しております。

小倉泉弥(専門誌編集長)[Bs,Bg,G,C]

今回初めて選考委員を務めさせて頂きました。2010年から毎年全ての演目を拝見し、自分なりの感想を書き留めていたので、今年も普段どおりの心持ちで臨みました。

ギター部門で僕が投票したのは、塩谷経さんのソレアでした。当初僕のメモには、「賞」という文字を、森谷忍さんとひどく悩んだ末に木村尭さんに付けていました。ですが、投票のとき、どうしてもこの曲を推したいという頭の片隅の感情が湧き出ました。感激の大きさは森谷忍さんのタランタが、テクニカは木村尭さんのソレアが上だった。森谷さんのタランタ、あの音色に辿り着くのは本当に得がたいことでしょう。伝統を愛する姿勢も堪らなくステキです。木村さんのテクニカ、まさに奨励賞に相応しいと敬服します。でも塩谷さんは、きっともっとこの曲を上手に弾けるようになるはず!あの瞬間、思いがけずそんな期待を込めました。それと同時に、投票の難しさを思い知りました。

続いてカンテ部門ですが、僕が投票したのは、熊谷善博さんのソレアと、川村麻利子さんのアレグリアスです。熊谷さん、キャラクターが規格からはみ出ていて、それが芸術的で楽しかった!川村さんは、冒頭の「ティリティ……」がキレイに聴こえました。あと、田中敏郎さん、ずいぶんレベル・アップしたのではないでしょうか。その姿勢にグッと来ました。

バイレ群舞は、屋良有子フラメンコ教室と稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団で悩んだ結果、内圧と間に入れました。くさびを打ったように存在した二人の男性舞踊手が、集団を引き締めていました。

バイレソロは以下の通りです。津田可奈さんのソレア・ポル・ブレリアは、ブラソの表現もリズムに遅れることなく、また全体に緩急がついていて、踊り慣れている印象を受けました。古郡美弥さんのアレグリアスは、しっかり骨があると感じました。岩泉美帆さんのタラントは軸ブレがなく、安心して観られました。土方憲人さんのシギリージャは、息つく暇も無い面もありましたが、コンパスに乗ってビシバシ決まって面白かったです。さらなる洗練を希望します。久保田晴菜さんのタラントは、可動域の広いブラソと長い四肢を駆使した舞踊が見事でした。黒木珠美さんのシギリージャは、技術、表現がハイレベルと感じました。

微力ながら、とにもかくにもまずコンパス、次に技術と表現に加え、演者はどんなフラメンコが好きなのか、そして動機となる感情に着目したつもりです。しかしそれでも悩みました。小林成江さんのタラントが受賞して安堵したのも事実ですし、平尾華子さんのアレグリアスも奨励賞を受賞しておかしくなかったと思います。

さて、新人公演は、コンクールと呼ぶには情があり、フェスティバルと呼ぶにはストイックで、発表会と呼ぶにはレベルが高いです。奨励賞を目指す方もいれば、夏の風物詩となる方もいる。いろいろ考えましたが、やはり「新人公演とは何か」を決めるのは、出演者だという結論に達しました。選考委員として、日本のフラメンコの発展にわずかばかりでも貢献できたとしたら、幸いです。


第23回新人公演「フラメンコ・ルネサンス21」

2014.09.30

選考委員(名前から各講評へリンク)

濱田滋郎(評論家・会長)[G,C]

第23回新人公演は、本番スペイン、ラ・ウニオン・コンクールへの本選出場候補者選考を兼ねて行うという初めての試みとなりました。これについては一般から見てやや分かりにくい面もあったかと思いますが、幸いトラブルも生ずることなく、ひとまず無事に盛会裡に終わったことを、総括責任者としてたいへん嬉しく、また有難く思っています。

バイレ・ソロ部門は、私は選考委員には加わっておりませんが、今年もつぶさに観せて頂きました。奨励賞を得られた山崎愛、ヴォダルツ・クララ、横山亜弓、ブラシェ小夜音(まだ中学生とは驚きでした)、関祐三子、重盛薫子の皆さん、話題賞(準奨励賞)を与えられた漆畑志乃ぶ、末松三和、小島智子さんたち、おめでとうございます。それぞれにご自分の良さを発揮されたと思います。ただ、全体を通してなのですが、今回はどうしてもひとつ言っておきたいことがあります。申し合わせたように「ソレア」が多くを占めたことは致し方ないとして、その振付がおよそ一様に、舞台中央から激しい足使いで開始する行き方だったのには、ちょっと首をかしげました。現在の流行なのでしょうか。フラメンコの情熱、気迫を最初に印象づけようというのも分からないではないのですが、その陰で、肝腎なはずの「ソレアのアイレ」の発露が犠牲になってしまう例が多いように思えたのです。

群舞の「イハス・デ・マンサニージャ」の皆さん、カンテの大森暢子さん、ギターの大山勇実さんもそれぞれに奨励賞おめでとうございます。大山さんのシギリージャは、この日最も安定した、音楽的にも高いセンスの感じられる素晴らしいものであったと思います。惜しくもラ・ウニオンの出場者には選ばれませんでしたが、これに関しては、もう一段ヴィルトゥオジティ(名人芸)を印象付ける要素がトーケのどこかに織り込まれていたならいいと感じます。ともあれ、とても快い演奏でした。ラ・ウニオン出場者の選定は、バイレで石川慶子さん、堀越かおりさん(この方の選定については“本場の眼”ということについて改めて考えさせられました)、カンテは大森暢子さんが決まりました。ぜひ、このチャンスを生かせるよう、伸びのびとスペインの舞台を楽しんで頂ければと願っています。

なお、カンテ部門の論評は、今回は差し控えさせて頂きたいと思います。出演者全員、関係者、裏方すべての皆さんに心よりの御礼の念を、結びに記したいと存じます。有難うございました。

小島章司(舞踊家・理事長)[Bs,Bg,G,C]

盛夏の真只中での3日間のFLAMENCO RENAISSANCE21が無事終了致しました。今回が第23回目で協会が一般社団法人に移行して最初の重要イヴェント開催となりました。また同時にスペインに於いて一つの核を成しておりますフラメンココンクールの一つ、ラ・ウニオン・フラメンコ・コンクール(ムルシア地方)の要請を受け、同コンクールへ派遣する人材を選ぶ予選も兼ねたものとなりました。本来の「新人公演」と「ラ・ウニオン派遣」人材選考を併行して行うという大変気が引き締まる3日間でした。

新人公演の所見を以下に記します。(敬称は省略します。)

【22日(金)】
佐藤理恵:どっしり感が良い。落ち着きを持って表現出来ていた。
佐藤陽美:はじけた感じが出て好感が持てた。伝えようとする力も持っている。
松彩果フラメンコスタジオ・カンデーラ:発想の妙とスピード転換で目を眩ませる手法が成功。
福島沙弓:精神の発露が優れていた。
津田可奈:滋味溢れた作舞。音と舞のバランスが良かった。
鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ:変化に富んだ構成力が光る。佐藤浩希が渾身の力で創った素敵なパソ・ア・クワトロ、群舞としてのコントロールが冴えた。

【23日(土)】
大山勇実:最初のコードの印象が心に残った。
金沢賢二:自己セールスが出来ていたし、人の心をとらえる力があった。
中川浩之:まとめ上げようとする力と、エスプリが輝く瞬間とのバランスがとれるように。
山崎 愛:堅実な踊り方、好感が持てたが、瞬間のひらめきがもっと見たかった。
ヴォダルツ・クララ:繊細な表現が全体を貫いていた。エレガントな舞姿。
小杉 愛:全体に抑え気味だったが、ブレリアの最後の瞬間にキラメキを感じた。
横山亜弓:熟考された舞で力の中にも静謐さが横溢。
藤本ゆかり:後半の冴えが見てとれた。ブレリアでの気迫に思いが溢れた。
松村布美:buen soniqueteが心地良い。身体の切れが抜群。
内田好美:とてもゆっくりなsoleáに相対する力が秀逸。
ブラシェ小夜音:身体表現が冴え渡っていた。最後の引込みまで息をのむ程でした。
漆畑志乃ぶ:前半のゆったりと後半のアップテンポをよく使い分けた。身体コントロールも抜群。

【24日(日)】
濱田吾愛:声質がこのカンテによく合っていた。微妙なescalaの移行に個性が光った。
久保田晴菜:ブラソスから生み出されるロマンティシズムがもっと必要。微妙なる“音楽の間”を考えること。末松三和:ファルーカの宿しているlentitudと重味を一考して下さい。作品としては佳作。
小島智子:沢山時間を費やした経過が見てとれてうれしかった。時にpalillosを支配する為にbrazosが乱れるのが今後の課題。
杉原敦子:ライトタッチな感覚、力みのなさ、そんな感情表現が具現されていた。石塚隆充のカンテもこれにこたえていた。
関祐三子:踊りが際立つか、演出・振付が勝るかの所に立たされていたよう。少し力んだ感があるが最後まで乗り切れた。
瀬﨑慶太:身体のキレに拘った踊り。“溜め”を意識出来る呼吸法も試してみて下さい。
重盛薫子:どこにも無いような世界観が構築されたSoleá、その妙味が響いて来た。
出口知子:フラメンコの中に、フォルクリコ(民族舞踊)の要素がうまく融合されていて印象に残った。

ウニオンのコンクールには堀越かおり(バイレ)石川慶子(バイレ)大森暢子(カンテ)の3名が選出され、来年の本選に臨むことに決定しました。一年間の準備期間を通して各々がどのようなフラメンコを表現できるか、日々これ切磋琢磨があってこそ一歩先が見えるもの、との観念を胸に抱いて未来の為にしっかり向き合って下さい。いつの日か各人のフラメンコへの思いが結実致しますように希求しながら、各々のフラメンコの日々が成功に導かれて行く事を祈願しております。

山田恵子(舞踊家)[Bs,Bg]

新人公演にご出演の皆様、猛暑の中お疲れ様でした。そして受賞の方々におめでとうを申し上げます。安定したテクニック・自己主張をはっきりし、感性豊かな踊りは見事でした。感動を与えてくださってありがとう!

さて私は今回バイレ・ソロと群舞を選考させて頂きましたが、お一人ずつではなく、総合批評を申し上げます。新人公演は年毎に水準がアップし、甲乙つけがたく選ぶのに苦労致します。では何を基準に決めるのか私は次の様に拝見しております。まず自分の踊りがお客様を感動させる事が出来たか…すなわち観る人がダンサーのセンティミエントを深く感じたかということです。踊りは音楽があって成り立つものですから、カンテを邪魔するようなサパテアードだったり、ギターの音色をこわす振付で調和しない踊り…またダンサーとして体が鍛えられ、ブラソが美しく爪の先まで踊っているか…その人に合った振付がされているか等です。うまく見せるようではなく、自然に伝わることの大切さ、そして自分の存在をいかに伝えるかという厳しさを感じて欲しいのです。

それから流行なのかどうか分かりませんが、踊り始めにサパテアードから入るというパターンが多く見られました。曲目が変わってもまずサパテアードから入って踊る振付はもっと考えるべきです。三位一体で成り立っているフラメンコですから、音楽を大切にして欲しいですね。

群舞に関してはだいぶ良くなってきましたが、創作なのですから、一番大切なことは構成・振付・音楽です。振付者の意図を理解し全員が気持ちを一つにして踊ってください。ソロでは表現出来ないもっと大きな世界が群舞です。これからまた一年色々な分野を観て感じて勉強してください。
最後に受賞には至らなかった小杉愛さん、藤本ゆかりさん、堀越かおりさんが心に残りました。期待しております。

坂中浩治(ギタリスト)[G,C]

<ギター部門>
今年の出演者の皆様も、大変頑張っていらっしゃる方が多く見受けられました。ニーニョ・リカルド、サビカスその他、最近スペインで活躍している演奏家に似ている点もあり、もう少し本人の作品での曲を期待しておりました。今後はもっと日本人らしい作品、テクニック、強弱、幅広いレパートリーのある演奏を期待しております。奨励賞に入選した方、おめでとうございます。

<カンテ部門>
全体のレベルも大変向上しておりました。フラメンコの伝統をよく守って下さる人が出てくることに期待しております。

三澤勝弘(ギタリスト)[G]

<ギター部門>
藤嶋さん:冒頭部、少し立体性に乏しかったか。全体に響きに頼り過ぎたためか、ソロとしての明確な主張が不足していたかと思います。聞きとりにくいところもありました。一音一音をしっかり、輪郭のはっきりした演奏が望まれます。

大山さん:少し経ってからの本来的なシギリージャに移ってからは大変素晴らしかったと思います。ただ全体に前へと向かう姿勢が目立ち、フラメンコの背骨であり核でもあるこの曲の本質(フラメンコとは何で在るのか…)には少し遠かったところも感じました。

廣川さん:フラメンコという限定で観ると冒頭部にはややそれを欠いたかと。また弾き飛ばしが少し目立ったかと思います。リズムばかりに捉われず、ギターソロとしての内容を示していただきたかった。

塩谷さん:ブレリアとはいえ、音や質感の変化・移りなどに配慮があれば、と思いました。一曲のみの演奏ですので、実体のある、もっとフラメンコの内側に目を向けたものをと思いました。

和田さん:他の方にも同様のことが言えるのですが、冒頭部にはっきりした意思が感じられなかったことが残念でした。主張を決めたら、それに沿ってしっかりした輪郭と動き(心の内と外)を持たせること、もちろんフラメンコを見据えながらの“らしさ(存在感)”が望まれるかと。

宇田川さん:雰囲気的な部分では、注目すべき点がありました。克服すべき点は、左右のタイミングかと。また、マイナー部に頼り過ぎたかとも思います。一曲のみの演奏ですのでメジャー部がもう少しあった方がこの曲本来の雰囲気が出たのでは、と思いました。

金沢さん:大変な技量の持ち主かと思いますが“ソレア”が見えてこないのは本当に残念でなりません。曲種としては決して数の多くないフラメンコにおいては、それぞれの中にそれぞれの個有の存在や本質としての価値があり、それらを踏まえた演奏が求められます。それらを外に置き去りにしては、フラメンコにおいての表現やら表情はあまりにも貧弱との謗(そし)りを免れません。これからのこの世界を担ってゆくであろう方ですので敢えて言わせて頂きました。

関根さん:冒頭部に注目するところがありましたが、ソロ曲としては時間・空間の“うねり”が望まれているかと。以前より演奏者としての安定感あるいは風情が感じられましたが、それ以上の何かがあれば、と思いました。

中川さん:伝統的なスタイルのソレアではありましたが、心の中でもっと大きく広い世界を思い描くこと、やはり時空の変移とそれらに密接に関わる音色・音質を探ることなどがあれば伝統の持つ“ある種の「神通力」”を活用できると思います。

岸元さん:たっぷりとした音の流れ、それなりの聴かせどころはあったのですが、もう少し心の動きの積極さが見られる部分があれば全体の印象が大きく変わったかと思います。一番最後の単音、少し生々しく感じましたが、敢えてそうなさったのでしょうか。

今回は冒頭に自由なメロディー、あるいはそれらしいものを採り入れた方が多かったと思いますが、大変難しいものを弾いているという印象が残ってしまいました。

今田央(ギタリスト)[G]

●藤島良博
今風のソレアを感じさせる良い曲でした。ソレアらしさは十分に感じましたがタッチが軽いからか個々のフレーズの分離が悪いですね。あと凝った和音ほど出てくる音全てに責任をもってください。弾きっぱなしで自分の音を聴いてないのではと思えます。音響の問題がよく指摘されますが現状では生音であったとしても同じ聞こえ方でしょう。
 右手はラスゲアードとピカードは出るところは出ているので、Pとその他の指のコンビネーションが悪いのでしょう。アルペジオとプルガールを練習してください。最後のアルサプーアはメロディーが浮いてこず和音ばかり聴こえました。

●大山勇実
今回奨励賞に推しました。ギターの響き、間、モライートのシギリージャをよく弾きこなしていました。特に中間部のPによる単音フレーズは印象に残っています。
技術的には問題ないのでしょうがいくつか気になった点を。シギリージャの基本フレーズに出てくる一瞬のアルペジオはしっかり弾きましょう。P単体はよいのですが、P,i,Pの連続によるフレーズは要練習ですね。シギリージャに入れるのは難しいですがせっかくここまでやったのですから頑張ってください。転調前のフレーズは畳み込む感じを出したかったのでしょうが雑に聴こえました。手の動きだけでなく耳で確認しながら演奏しましょう。

●廣川叔哉
イントロの前半、Eに転調するまでの音使いはスペイン的ですがフラメンコを感じさせなくて面白かったです。あのテンポで弾ききった度胸と集中力はギタリストとして大事な素質だと思います。速い分、表現の幅が狭くなりました。まずラスゲアードの部分が多すぎます。アクセント毎の溜めがないので常に追い立てられる感じですね。もっとウラを意識してください。音質とキレはいいと思います。4連のフレーズはアルペジオ、アルサプーアを含め全て先走っています。単にテンポについていけなかっただけなのか不明ですが、評価を下げたことに変わりはありません。自分の能力を最大限に発揮できる選曲、テンポ、構成を考えてください。

●塩谷経
音がきれいでした。アルペジオのフレーズはコンパスも出ており秀逸です。惜しむらくはブレリアのコンパスの刻みですね。テンポが安定しませんね。iでの刻みはタッチも含めまだ研究の余地があります。あと裏から入るファルセータはもう少し粘ってはいりましょう。しっかりした音楽観をお持ちのようですので、左指をもう少し鍛えれば理想に近づくと思います。

●和田健
自作の曲ということですが奇をてらった音使いもなく良い意味で日本人のセンティミエントを感じる曲でした。中間部のC#mから始まるコード進行が繰り返されるのは少しくどいかなとは思いました。曲は良いのですがもう一つアレグリアスのコンパスを感じません。アクセントを意識してないのかただの3拍子の曲になっています。もう少しブリッジ寄りで弾きましょう。音質がクラシックっぽいです。休符と伸ばす音を大切にしましょう。やはりアルサプーアが浮かびません。アルサプーアは和音ではなくメロディーを弾くためのものです。

●宇田川卓俊
珍しく古風なアレグリアスでした。最初と最後のラスゲアードは綺麗でした。音楽的には良い流れだったと思います。全体の音は比較的タイトに聞こえて良いのですが、粒立ちがはっきりしていれば素晴らしい演奏だったでしょう。弾く位置も含めタッチを研究してください。この手のアレグリアスは自分でテンポを調整できるのでちょっと難しいフレーズは溜めるなど丁寧に弾きましょう。左指の独立性が弱いのか低音部のスラーがかなり走り気味です。一音一音、常に耳で確認し指にフイードバックさせるようにしてください。

●金沢賢二
今回一番慣れを感じさせる演奏でした。一つ一つの技術、特にラスゲアードは文句のつけようがありません。自作の曲もモダンな和声を含めスペイン的な乾きを感じました。ただあまりにラスゲアードが多すぎてソレアのギターソロというよりも踊りの伴奏を感じてしまいました。全体を通して言えるのは間のなさです。それだけのテクニックがあるのですから一つ一つの音を聴衆に聴かせることをもっと意識してください。

●関根彰良
音が綺麗でした。全体に安定したテクニックとリズムでソレアの感じを出していると思います。出だしの低音部のフレーズよいですね。ソレアの基本のファルセータの間もよく、ラスゲアードもタイトに回っていました。中間でちょっとダレてしまいましたね。あと最後のアルサプーアが雑になりました。力んで走ったのでしょうか。
ファルセータの最後の締め、⑩から⑫のところですが、⑩を粘って⑫のゴルペをもう少し抑えるとよりそれっぽく聴こえると思います。

●中川浩之
古典的なファルセータを太い音で弾く。好感の持てるソレアでした。ファルセータの構成も王道で曲としては申し分ありません。あとは表現ですね。
最初のプルガールとスラーによるフレーズですが音は良いのに溜めがなさすぎです。全体に言えるのですが左手の力不足か、伸ばした音を聴かせる場面が少ないですね。自分の意思で支えられず左が勝手に先走る感じです。タコンが落ちて走りまくるサパテアードと同じですね。あとは最後のアルサプーア。4連が入る範囲で速くしましょう。

●岸元輝哉
ロンデーニャのチューニングでしょうか。確かにシギリージャではなくセラーナの雰囲気ですね。他の出演者とは対照的にロングトーンを多用した幻想的な曲です。ご自分で作曲されたのでしょうか。ただあまりにロングトーンが多く、かつテンポを揺らしすぎコンパスが見えてきません。また使われるテクニックもトレモロがあったくらいでフラメンコとしては評価しづらいですね。プルガールの音はよいですが、セラーナの基本のファルセータはもう少し丁寧に弾きましょう。6絃のドローンに負けてメロディーが沈んでいます。

大塚千津子(舞踊家)[Bs,Bg]

まずはバイレ・ソロ、そして群舞にて奨励賞受賞の皆様、心よりおめでとうございます。皆様におかれましては今回の受賞が更なる飛躍の一歩となりますよう心から願い、しばし充実感を満喫して下さい。受賞は努力への一つの証、今後の活動の励みとし更なる精進を重ね新たな目標に向け進化し続けて下さい。ご活躍をお祈りしております。心からお疲れ様でした。

準奨励賞の皆様、受賞おめでとうございます。限りなく奨励賞に近いお三方皆様の受賞に心から拍手を送らせて頂きます。漆畑志乃ぶさん、ここ数年のたゆまない努力の成果を楽しみにしていた一人です。今回のバイレの随所にその執念ともいえる挑むスピリッツを感じました。ご自分で作られた燃えるがごとく赤の衣装からも貴方の強い想いが溢れておりました。

末松三和さん、努力は計り知れず、とても個性的なバイレへのチャレンジ精神に拍手!後半テンポに追われた感じではありましたが踊り切ったコラヘに拍手!欲を言えば下半身安定の強化とコンパスの間合いを身体でもっと感じて欲しいと思いました。

小島智子さん、唯一パリージョでのエントリー。バイレがより深いものに誘われる空気を感じました。今後もバイレと共に是非極めて頂きたいです。上記3名の皆様、次回は是非奨励賞を目指してください。楽しみであり心より期待しております。頑張って下さい!!

ソロで印象に残った方々へ…
【22日(金)】
長本真由さん:テクニックにアイレも兼ね備えていると感じました。クェルポ、特に上体等も駆使し精進なさってみてください。
黒須信江さん:アイレにコンパス感そして表現力も豊だったと思います。今後さらなる精進に励んで下さい。

【23日(土)】
矢村万意子さん:リズムにコンパス感はとてもおありなので内から湧き出る映えを。大きな舞台での効果的なフォーメーションも研究してみてください。
小杉 愛さん:テクニックもアイレもあり表現力も豊かだけに残念です。持ち味のフェルサをもっと生かす研究を。
藤本ゆかりさん:摩訶不思議なニュアンスがあってとても個性的なバイレでした。溜めと抜きのテクニックを、そして表現力も豊かに…。
松村布美さん:動きに無駄なく私は大変好印象を持ちましたが全体通して緩急が足りなかったのかなとも、はじける激しさが欲しかった。是非頑張って頂きたいです。
川松冬花さん:コンパス感に表現力もありましたが内から込み上げる深さがまだ希薄だったように感じました。今後に期待しております。
池田理恵さん:私はとても素晴らしいバイレと感じました。何が足りなかったのかと考えますとやはり全体通しての緩急かと…。是非また挑戦して下さい。期待しております。

【24日(日)】
服部亜希子さん:全体的にとても良かったと思いますがテクニックだけに終わってしまった感が。バイレの基本をもう一度見つめなおしてみてください。
松本千晶さん:個性もあってとても好印象を持ちいい味も醸し出ていました。そつなくまとまり過ぎ地味に感じたのがすごく残念でした。是非再挑戦してください。
浅野直子さん:可能性を感じました。頑張って頂きたいです。下半身の強化そして後半パワー落ちも感じましたので持久力も強化して下さい。
津幡友紀さん:土臭いバイレ路線、アイレに表現力も豊かでした。益々精進を重ねテクニックを磨いてください。楽しみにしております。
大野 環さん:ソレアの深さを感じましたが全体にもっと緩急を!期待しております。

群舞の皆様…
エストゥディオ・カンデーラ:ビジュアル的にとても楽しめた群舞では有りましたが、やはり表現のみが重要視されてしまった印象が強く残っております。群集バイレをもっと織り込んで頂きたかっです。
LAS FLORES MIAS:たかがセビ、されどセビとも感じる私はセビジャーナスをとても豊かなフォーメーションを織り込み楽しませて下さった群舞でした。お一人お一人のレベルアップを目指してください。
Las Azulindas:レベル的には揃っていましたが群舞としての迫力感が感じられずとても残念でした。皆さん! 頑張って下さい。

感想後記…
ソロにおきましては、今年は同じヌメロが重なっていたことやレベルの違いにも大差なく選考の際とても心がゆれ動きました。しかし心に残った方や印象に残った皆様が受賞され、若きアルティスタの皆さんの成長と可能性を感じたときめきの熱い3日間でした。
皆さん! 素晴らしいバイレを拝見させて頂き有難うございました。また今年は群舞への参加者も多くとても楽しみにしておりました。群舞については諸先生方のご指導も含め、群舞の醍醐味と楽しさを拝見させて頂き、技術だけではない沢山の想いの表現に時折魅入ってしまう自分もいたり、心和む瞬間もあって沢山の想いを感じさせて頂きました。有難うございました。
ギターそしてカンテの皆様、選考はしておりませんが努力と挑戦という潔い精神に心より拍手を送らせて頂きますと共に皆様の益々のご活躍を祈っております。そしてコンクール予選受賞の皆様はこれから本戦に向けての新たなご自身との戦いが始まるかと思いますがどうか本選に向け頑張って突き進んでください。参加者全ての皆様、大変お疲れ様でした。今後も精進を積み重ね一歩一歩の前進を目指して下さい。心よりエールを送らせて頂きます。

片桐勝彦(ギタリスト)[G]

皆さん、新人公演お疲れさまでした。私なりの感想を一言ずつ述べさせていただきます。

●藤嶋良博:初っ端の幕開きで緊張感の中、昨年同様いろんな和音を多用しながらもソレアのセンティードがしっかり出ていました。長いフレーズのピカードは最後の音まで良く弾けていましたが、他の奏法(スラーやアルペジオ等)とのコンビネーションの際の短いピカード時に、右手と左手のタイミングが合わずに音痩せした箇所が残念でした。毎回ブレリアへのカンビオを楽しみにしていますが、今回のラスギャード切っ掛けも良かったです。昨年も今年も個人的に好きな曲作りです。

●大山勇実:奨励賞おめでとうございます。音量がしっかり出ていたのと強弱がしっかりついた好演奏でした。一昨年のサパテアードも更にその前のブレリアの時も同じように良かったのですが、クラシックに聞こえがちな選曲やパルマの存在などでなかなか評価が難しかったのだと思います。今回はモダンな音と伝統的なフレーズをうまく混ぜながら、プルガール奏法による低音弦が良く鳴っていて、カバーレスになってからは呼吸と間も絶妙でした。

●廣川叔哉:リブレのオープニングの音使いとコンパスへの持って行き方は緊張感あって良かったのですが、その後出したテンポがかなり速すぎた感があります。この速さで細かいアレグリアスのニュアンスを出せるのは、ペドロ・シエラぐらいではないでしょうか!もう少しテンポを落としてでもアルペジオやラスギャードの切れの良さを出す方が良かったと思います。3年前のアレグリアス同様、最初と同じテーマを途中にも入れたり、Abやグラナイーナの調への和音進行などセンスの良い曲作りでした。

●塩谷経:難しいエミリオのブレリアを最後まで良く弾ききりました。普段フレスポン(学生連盟)で伴奏をたくさんしているだけあって、音色もコンパス感もいいのですが、ソロはまた別物ですね。テクニック的にもう少し簡単な曲だったりパルマが入れば問題なかったと思いますが、今回は難しい曲をソロで挑戦しただけに、コンパスの乱れが少し目立ってしまいました。パルマ無しでもブレリアのマルカールがしっかり出来ると本物です。アルペジオやピカードは良くきまっていたので、アルサプーアのフレーズをはじめとするコントラのリズムやフレーズの変わり目などにもブレリアのコンパスがしっかり出せるよう頑張ってください。

●和田健:南風を感じながら聞かせていただきました。昨年のファルーカで書いたことと同じになりますが、力まずに弾けている長所がタッチが弱いというマイナスイメージにも変わり得るということです。ボリュームや間(呼吸)、それに瞬発力などを研究することによって、更に生き生きとしたアレグリアスになると思います。エンディングにピカードを持ってきたのは男らしい選択でしたが、ちょっと尻切れとんぼに聴こえてしまったかもしれません。また是非良い曲を作って聴かせてください。

●宇田川卓俊:Emからはじまるサビーカスのアレグリアスを、トレモロやピカードを駆使して弾ききったのはすばらしかったです。原曲を知っているだけに、さらに瞬発力のある弾き方を求めてしまいますが、何箇所か出てくるピカードなど、どれもきまっていました。曲の終盤、テンポを上げ過ぎず乱暴にならずにテンション高く弾けたのは圧巻でした。踊りの伴奏者が少ない北海道では宇田川さんはたいへん貴重な存在です。どうぞこのまま頑張ってください。

●金沢賢二:昨年同様、出演者中で一番ギターをうまくあやつれていたと思います。粒もそろっていてダイナミクスがあったのですが、今年はラスギャードなど力を入れた時の音色が少しきたなかったのと、曲の終盤ラスギャードのフレーズが多すぎたのではないでしょうか。いろんな奏法のコンビネーションが得意な金沢さんなので、今年もアルペジオやアルサプーアやピカードをもっと聴きたかったです。

●関根彰良:昨年のソレアをベースにトレモロや何箇所かの改良は見受けられました。ただ昨年同様、ファルセータの羅列に聴こえてしまう曲作りをなんとか脱却できればいいと思います。

●中川浩之:昨年のタランタの演奏同様、今年のソレアも説得力のある音色でした。これは中川さんの誠実さが音にも出ている証拠だと思います。一音一音大切に弾いている分、大きなコンパスの流れが阻害されてしまった部分もあると思います。難しいですね。結果的に少し荒削りな音符があってもいいので、大きい流れで弾いてみてください。

●岸元輝哉:6弦がD、3弦がF#の変則チューニング。昨年のペぺ・アビチュエラのソレアといい今回のマヌエル・カーノのセラーナといい、決して派手とは言えない曲でのチャレンジは賞賛に値します。Dまで下げた6弦もビビることなく、木ペグのギターが良く響いていました。昨年以上にリラックスして弾けていたので、音色も更に豊かでした。

加部洋(プロデューサー)[G,C]

<ギター部門>
今年は昨年と同じく伝統スタイルに根差した弾き方の出場者が多かった。昨年に一歩磨きをかけた印象だ。今年大山君が化けたように、持続する飽くなき向上心が新たなギタリストを生み出すに違いない。

藤嶋良博君●まず感じたのは音響の不調。最初はマイクに近づき過ぎかと思ったが、やはり音響の調整の問題だ。そういう点では可哀そうだった。至って伝統的なスタイルだったが、スラーの曖昧さ、ピカードのタイミング、細かいフレーズの処理など問題点も多かった。後半テンポが上がってからの盛り上げは良かった。

大山勇実君●これまでとは格段に違う別人のような演奏だった。シギリージャのエッセンスをよく分った上で、伝統の味を出しつつ、強弱のメリハリを付けていた。特に低音のファルセータでは心憎い、泣かせるフレーズに満ちていた。更にピアニッシモのフレーズも極めて丁寧に弾かれており、その強弱の対比が演奏の質の高さを物語っていた。そしてムイ・フラメンコだった。

廣川叔哉君●モダンなイントロには、さあこれから何が始まるのかという期待感があった。そして本題に入ったわけだが、一番感じたのはテンポの速さにフレーズがしっかり付いて行っていないところだった。もっとテンポを落としてでもキッチリ弾くべきだと思う。ノリやアレグリアらしさは出ていたので惜しい。

塩谷経君●音がクリアなのは持って生まれた良いところだと思う。しかしブレリア独特のノリが聴こえてこない。またアルサプアがリズムにはまっていなかった。演奏上の注意なり意識を、もう少しコンパスのノリの方に向けるべきだと思う。特にブレリアはフラメンコのなかでノリを最も重要視される曲だ。

和田健 君●「南風」と題されたオリジナルのアレグリアス。その点は素晴らしい。しかしうきうきしたアレグリアスの明るさや楽しさが出て来なかった。主にそれはリズム感に由来すると思われるが、12拍子のコンパスをもう一度見つめ直す必要があると思う。易しいフレーズでもコンパスに乗っていれば曲は生き生きとしてくるはず。

宇田川卓俊君●サビーカスの有名な美しいアレグリアス。情感豊かで好もしい演奏だったが、細かいミスがなければ更に良くなったはずだ。そこが残念。エンディングの盛り上げは上手かった。

金沢賢二君●相当レベルの高い演奏。オリジナルということも高く評価されるべきだと思う。しかしその複雑で、モダンで独自の音世界は十分に弾き込まれていなかった。言いたいことがいま一つ分らなかった。ソレアの情感として何かが足りなかったのだと思う。更なる挑戦を。

関根彰良君●昨年に続いて同じくソレアに挑戦の関根君。正確なテクニックに裏付けされた美しいソレアだった。パコ・デ・ルシアのファルセータでのミスが残念。細かいミスがなかったら相当レベルの高い演奏。来年あたり化けて欲しい。

中川浩之君●伝統の香り豊かなソレア。音の一粒一粒がよく出ていた。特にプルガールの音が素晴らしかった。しかしその音の良さに比べて、コンパス感には足りないものがあった。12拍のコンパスをもう一度見直して欲しい。

岸元輝哉君●変則チューニングのセラーナ。それを生かしてギターがよく歌っていた。クリアな音色はマヌエル・カーノを彷彿とさせる演奏だった。時々あるミスがもったいなかった。もう一歩だと思う。

<カンテ部門>
今年はカンテ・デ・ラス・ミナスのコンクール予選を兼ねていたため、過去の奨励賞受賞者も出場し、日本のカンテ人口の幅の広さを感じさせるカンテ部門だった。今後も更に素晴らしい逸材が出現することを期待したい。

北脇英子さん●まず感じたのは音響の問題。リバーブのかけ過ぎといか、とにかくハウリング気味でカンテの真実味が伝わって来なかった。そういう意味で可哀そうだった。かなりテクニックが必要な曲によく挑んでいたと思う。後半の音程の乱れが残念だった。幾分キーが低かったようにも感じられる。

永潟三貴生君●失礼ながら、今まで聴いてきた永潟氏の歌の中では一番良かった。幾分テンポがゆっくり目だったが、音程良く、節回し良く、堂々の歌唱だった。プロらしい準備と計算がなされていたと思う。

濱田あかりさん●ここ一番という勝負心が、力みや頑張り過ぎに繋がり、裏目に出てしまったように思う。フォルテッシモで押すばかりで、引くところがなかった。つまり、濱田さんが本来持っているハスキーなヒターナ声が影を潜めてしまった。今回を教訓に更なる飛躍を!

占部智恵さん●トーレのシギリージャ。匂いのするシギリージャ。伝統のど真ん中を行く気概が素晴らしい。ただ、全体を通して感じる物足りなさ、迫力不足が今後の課題でしょう。発音も若干カタカナスペイン語的だった。

白鳥光良君●節回しをもっと正確に、手本に忠実に取るべきで、更にもっとフラメンコ的な発声、歌唱を目指すべきだと思う。節回しの最後の部分、つまり「ミ」に終止する手前の節の持って行き方が重要なポイント。

大森暢子さん●本来持っている個性的な声質の魅力が花開いた歌唱だった。節も細かいところまで忠実に再現され、今まで聴いてきた中では一番良かった。個人的にはもう少しテンポを上げて歌って欲しかったけれど。奨励賞に加えて、カンテ・デ・ラス・ミナスのコンクールの出場権も獲得。カンテ・デ・ラス・ミナスに関しては、日本の協会側6票のうち獲得したのは1票だったが、スペイン側から一本釣りされるという幸運を得た。

濱田吾愛さん●独特のテイストを持った歌唱であり、美しく精緻な節回しが良かった。若干節が回りきらなかったところがあったのが残念。最後の盛り上げはたいへんドラマティックだった。

近藤裕美子さん●ピニーニの独特の雰囲気を出そうとしたのは良いが、美しい発声がむしろ逆に感じた。もっとひび割れた感じが欲しかった。明るさはよく出ていた。

土井康子さん●大舞台で無伴奏で歌う度胸には感服。古風な深みが感じられた。音程良く、節回しもほとんど良かったが、強弱・緩急のメリハリがもう一つ欲しかった。

森薫里さん●生来持っている声が魅力的であり、それが強み。その強みを生かして、音程、節回しとも良く、堂々の歌唱だったが、いま一つガツンとくるフラメンコ性が欲しかった。

小林伴子(舞踊家)[Bs,Bg]

年々レベルアップの著しい新人公演ですが、今年も出演の皆さんの実力伯仲でした。バイレ・ソロは各選考委員が各自出演者の1割にあたる7名を推薦するという今回の方法でも、大勢の素晴らしい踊り手がいて私も悩みながらの記名でした。私が記名した7名の方と選考を担当したバイレ群舞について推薦理由を書いてみます。

<バイレ・ソロ部門>
■22日金曜日15番 徳田悠乃さん
大きく表現力豊かな踊りに、好感をもちました。私はタラントはタラントとして踊る時に他のパロより縛りが大きいと思っています。ソレアやアレグリアスより歌詞や音楽の響きに、その成立の歴史が色濃く残っている

からでしょう。自由な解釈になっているのに伝統的な歌詞や音楽で踊ってしまい、衣装や表現がちぐはぐな事になっている「タラント」が多かった中で安心して見ていられました。
■23日土曜日11番 山崎愛さん
終始緊張感漂う気迫の演技。迫力のサパテアードも身体表現もみごとで技術力に偏りの無い充実したバイレを見せてくれました。
■23日土曜日15番 横山亜弓さん
良く動ける高い身体能力で魅力的なシギリージャでした。高い舞踊の表現力に見合ったサパテアード力を期待します。
■23日土曜日20番 内田好美さん
内田さんも高い身体能力を感じさせる演技でした。全般のゆっくりした部分の動きは秀逸でした。
■23日土曜日30番 漆畑志乃ぶさん
今回は技術が高く見事な演技を見せてくれる方は沢山いましたが、気持ちと表現が一体となった漆畑さんのソレアはとても印象に残りました。私にとっては今回の新人公演で一番好きなソレアでした。
■24日日曜日28番 川田久美子さん
トラディショナルなアレグリアスを、はつらつと踊って好感が持てました。とても自然に見えました。
■24日日曜日32番 重盛薫子さん
振り付けソラジャ・クラビホとあるのですが、スペインで修業して、満を持しての出演でしょうか?それとも大好きな踊り手に貰った想い入れの有るソレア・ポル・ブレリアだったのでしょうか?いずれにせよ、そんな事を思わせる、気迫の込もった充実したバイレでした。

<バイレ・群舞部門>
■Hijas de Manzanilla
全員がソロで踊っても良いくらいの気迫でした。その気持ちを一つに集めての群舞は、とても見応えの有る演技で、一票を投じました。群舞の選考はいつも悩みます。群舞の価値が多様で、どこに基準を置いて観るかで、答えが全く違ってくるからです。
■二村広美フラメンコ教室LAS FLORES MIAS
「セビジャーナス」も皆で力を合わせるとこんなに楽しい作品もできるという群舞の楽しさが伝わり、ほのぼのとした気持ちにさせてくれました。

今回はウニオンの予選も兼ねた公演だったせいか、バイレソロの参加曲の偏りがいつにも増して目立つ回でした。ソレアやソレア・ポル・ブレリアは日本人に好まれる曲ではありますが、フラメンコの多様な表現の豊かさを思うとさみしい気がします。私達日本人には、苦手とされる、粋で楽しいグラシアの曲や、手かせ足かせになってしまうカスタネットやバタ・デ・コーラやマントンにも果敢に挑戦して欲しいものです。選考後私たち選考委員の中からも、そういったものへの取り組みをもっと評価して行こうという意見が多く聞かれました。

鈴木敬子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
青木千鶴子さん・昨年アレグリアスを踊った時より踊りが柔らかな女性らしさと安定感を増した。
長本真由さん・元気がありフラメンコ的な動きと、美しいブラッソが印象に残った。
堀越かおりさん・とても丁寧にきれいに踊れていた。
福島沙弓さん・フラメンコ的で強い動きが上手かった。逆に力の抜けるところがもっとあれば更に良くなると思う。
平田かつらさん・堂々としていて落ち着いた良い踊りで、舞台ではとても大きく見えた。私は好きです。
津田可奈さん・前回出演した時より数段踊りのキレが良くなっている。確実に上達していますね。
永田健さん・前半少しブレが気になったが相変わらず立ち姿に品があり美しかった。もう少し爆発する姿が見てみたい。
ヴォダルツ・クララさん・大きく華があり美しい。昨年と比べると、とても上手くなっている。もう少し強さや重さが増すともっと良くなると思う。
小杉愛さん・安定した踊り。曲の後半にもう少し盛り上がりが見たかった。
矢村万意子さん・バランスが良いスタイルで踊り慣れていて上手い。サパテアードも丁寧で心地よい印象を与えてくれた。
横山亜弓さん・恵まれた容姿で立ち姿が美しい。空間を上手く使っていて大きく見えた。
松村布美さん・安定した力強い踊り。逆に力が抜けた伸びやかな部分が加われば更に良くなると思う。
本川幹子さん・前半ファルセータやカンテに合ったエレガントで芯のある踊りで魅せてくれた。後半にもう少し集中力を強く持ち爆発が欲しかった。
小野亜希子さん・大きく迫力のある踊り。時々自分の力がコントロール出来ず少しブレるところが気になったが、全体を通して良かった。
ブラシェ小夜音さん・軸がしっかりとした安定した踊り。強さもあり、今後経験を積みペソが加わっていけばもっと良くなるでしょう。これからがとても楽しみです。
森里子さん・難しい技術をすんなりと踊りこなしていた。美しい動きとキレのあるケブラーダが印象的だった。
漆畑志乃ぶさん・毎年懸命に努力している姿が素晴らしいと思う。安定した踊りにその努力が表れていた。
石川慶子さん・奨励賞を受賞した時よりも存在感が増した。次の大きな目標に向けて前進するんだ!という強い意欲を感じた。
本田恵美さん・高度なテクニックで観客を沸かせた。すでに彼女独自の世界があり素晴らしかった。
末松三和さん・鋭い正確なサパテアードと体の使い方で個性がはっきりとした踊り。不思議な魅力を持った方なので、また他の機会に別のヌメロを観てみたいと思った。
柴崎沙里さん・迫力のある踊りで会場を沸かせた。
佐藤奈々子さん・柔らかな女性らしさが印象的。もっとカンテを感じて踊れたら更に良くなると思う。
小島智子さん・“他の人が避けてやらないカスタネットによく挑戦した”と、これだけで凄いと感心しました。カスタネットを持たなくても、踊りの技術もしっかりしていて大きな舞台映えする踊りでした。
関祐三子さん・勢いがありパワーのある踊りでとても良かった。細かいところは丁寧に踊っているのが見えた。
瀬崎慶太さん・元気が良いのが印象的だった。姿勢をもう少し直したら洗練された踊りになってくると思う。

<バイレ・群舞部門>
エストゥディオ・カンデーラ発「森の踊り子号」さん・今年は何をみせてくれるのかが、とても楽しみに思えるグループです。まるで写真か絵を見せてくれているかのようなシーンが印象的でした。凝った構成で、何よりも踊り手が楽しんでいる様子がとても良かった。
Hijas de Manzanillaさん・一人ひとり踊りの技術のしっかりした人達が重く落ち着きのあるカルメン・レデスマの世界を表現。クルシージョという短い時間で得たものを一つの作品にまとめるのはとても難しいことです。新しい試みで素晴らしいと思いました。

鈴木眞澄(舞踊家)[Bs]

今年は ラ・ウニオン市からの依頼によるコンクールの予選会を兼ねた新たな展開と、それでも新人公演の形態は変えずにいくという困難で複雑な状況下で、大きな事故もなく無事に幕がおりたことにまずはほっとしています。ただ、個人的には現在活躍している方々がもっとたくさん出演して、「日本のフラメンコはこんなに頑張っています!」というところを来日したスペインの選考委員にも見ていただきたかったです。

以下、出演の皆様のご参考になればとの思いを込めて書きます。

・身体の動かし方…スペイン人の動きを具体的な言葉にすると、根がはっているような床のつかまえ方と左右の腰での重心の移動、身体の芯がぶれずに空間を動かしながら踊っているように思います。
・表現について…フラメンコは自己表現のひとつです。今回女性らしい踊りがあまり見られなかったことが残念でした。しなやかさ、優雅さなどは日本人ならではの表現では、と思います。
・伴奏について…共に一曲を作り上げるパートナーの人選は重要です。踊り手と伴奏のレベルがあまりにかけ離れていると伴奏者ばかりが際立ってしまうことがあります。またレベルだけでなく人としてのコミュニケーションが必要です。確かに素晴らしいギターや唄で踊ることは気持ちも引き上げてくれますし大きな喜びではありますが、心の通じあった方々だからこそ成し遂げられる三位一体は大切に考えていきたいです。
・振り付けについて…初見でも合わせられるのがフラメンコの素晴らしいところです。もし、この舞台のためだけに伴奏を頼むならばなおさらシンプルで、安心して弾いたり唱ったりできるような構成をおすすめしたいです。オーソドックスな構成の中に 振りを詰め込み過ぎず、きちんとジャマーダで指示を出していけばもっと一緒に楽しめると思います。
・衣裳について…似合うかどうかはなかなか自分で判断しにくいものですね。好きなものと似合うものは必ずしも一致しないのです。近くで見るのと大きな舞台との差や、照明があたってどのように映るのか、そんな配慮が必要となります。
・すべての人が違う存在であるように、みんな違うフラメンコのはずなのですが、同じようにみえてしまうのはどうしてでしょうか…。苦しみや悲しみ、喜びなど、個人的な想いをもっと表現して踊ったらいかがでしょう。

私は毎年「こんなフラメンコもあるんだ~」「ああ、この方は素敵な一年を過ごしていらしたのだな。」などと新しい発見や成長されている過程をうれしく拝見しています。華やかな群舞、初々しいお嬢さんたちなど新人公演らしくて楽しいです。ただ、時を重ねた方ほど深い味わいのあるフラメンコが表現できると思うので、もっと幅広い年代の方々にもこの大きな舞台にぜひ挑戦していただきたいです。それこそが「私たちはフラメンコにおいていつも新人…」という公演の趣旨が活きることだと感じます。この公演が日本のフラメンコ界にとって有意義な形で続いていくことを願っています。ご出演の皆様、ありがとうございました。

曽我辺靖子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
まず特に印象に残った方々について記します。

【22日(金)】
大岩奈青さん:芯がぶれず雰囲気のあるバイラオーラです。
長本真由さん:荒削りのところはあるがハギレ良い。
堀越かおりさん:正確な踊り手。小さな音も大切に踏み、とても心地よいサパテアードを聞かせてくれました。
佐藤陽美さん:元気がよく今後楽しみな人。
黒須信江さん:サパテアードがリンピオ!流れがあり、ヌケのあとのつなぎが素晴らしい。
徳田悠乃さん:ラストまで丁寧に踊りきった。
津田可奈さん:後半の盛り上がりは素晴らしかった。

【23日(土)】
山崎愛さん:上体の使い方がうまい。サパテアードの強さも光りました。
ヴォダルツ・クララさん:手足の長さを生かしたとてもエレガントなアレグリアスでした。
小杉愛さん:大人の雰囲気が漂い凛とした貫禄。後半のノリの素晴らしさは、これからまたドラマが続くのではないかと思わせるラストでした。
横山亜弓さん:体の内から聞こえる魂の叫びを感じました。技術力に表現力が加わり最高のシギリージャでした。今回の一推しです。
川松冬花さん:リズムがしっかり入っていて、観ていて心地よい踊りでした。
吉本良子さん:ブラッソの柔らかさとゆったり感が何とも女性らしさを表現していました。
ブラシェ小夜音さん:踊り手としての資質を充分に兼ね備えた人。グラシアもあり、十代とは思えない表現力でした。
森里子さん:カンテを感じながらの表現力、サパテアードも鮮明で心地良かったです。
漆畑志乃ぶさん:前回も印象に残りましたが、今回はその上を行きました。体の切れ味も良くマノから感情が伝わり素晴らしいソレアでした。

【24日(日)】
加来幸子さん:体のブレがなくおおらかさが貴女の武器ですね。
久保田晴菜さん:以前に比べ成長を感じます。サパテアードが非常にリンピオ、
ただ上体の使い方に一工夫あると更に伸びると思います。
末松三和さん:細かいところまでよく神経が行き届き、それを良くこなしていました。
柴崎沙里さん:技術力もあり、引き込まれました。
土井わかなさん:小柄だがパワー溢れる踊り。特にタンゴが魅力的でした。
小島智子さん:体の芯のブレがなく、気持ちをこめたパリージョに拍手。
関祐三子さん:強弱のメリハリがあり表現力もあり、引き込まれました。
大野環さん:気持ちの入ったサパテアードに魅了されました。
重盛薫子さん:最初から最後まで一貫した流れにぐいぐい引き込まれました。抜けも心地よくバックとの一体感も感じました。

その他印象に残った方々
佐藤理恵さん:正確な踊り。
福島沙弓さん:足音強く上体の使い方も良い。
平田かつらさん・藤本ゆかりさん:曲の重さを表現していました。
矢村万意子さん・庄子裕子さん:後半のノリが良い。
廣岡理恵さん・服部亜希子さん:リズム感良し。
津幡友紀さん・出口知子さん:個性的な味わいがありました。

<バイレ・群舞部門>
エストゥディオ・アレグリアス:始まりはとても印象的でした。群舞の構成に少しとらわれ過ぎたかしら?
エストゥディオ・カンデーラ発「森の踊り子号」:踊り手達の楽しさが伝わってきました。
Canela y Menta:かわいらしい姉妹の踊りでした。今後が楽しみですね。
フラメンコスタジオ・マジョール:振付者の想いが溢れた作品でした。
鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ:一人一人の技術力、身体能力が生かされた作品でした。
二村広美フラメンコ教室“LAS FLORES MIAS”:ワクワクしながら楽しませて頂きました。
Las Azulindas :チームワーク良く、ラストが印象に残りました。
Hijas de Manzanilla:バックと踊り手達が一体となり、緩急もありとても心に残りました。もう一度観たい作品です。

高橋英子(舞踊家)[Bs]

今年は3年振り、3回目の選考委員を務めさせていただきました。

■今年はそのフレッシュなインパクトが受賞に結びついた方々がいらっしゃると思います。華やかで優雅で愛嬌あるグラシアやサレーロを感じさせる踊りが少なかった中でキラッと輝いたヴォダルツ・クララさん、シギリージャをパリ―ジョで踊るという伝統的な世界をモダンな感覚と快いカスタネットの響きで魅了した小島智子さん、そして、まだ中学生なのにフラメンカなアイレで心籠る踊りを見せたブラシュ小夜音さんの3人です。特に小夜音さんの踊りに惹きつけられた方は多かったと思います。大きな新人が発掘され頼もしいことです。

■毎年奨励賞は選出されるわけですが、選出されなくてもそれに見合う実力を持っている方がいらっしゃるものです。より多くの人の心をつかむのはそれだけ難しいのだと思います。私が個人的に惜しかったと思うのは、佐藤理恵、松村布美、廣岡理恵、松本千晶、柴崎沙里などの皆さんで、高く安定した技術、又は個性や存在感、フラメンコ性、気迫などで多少の難も気にならない凄さがあったと思います。

■踊られる曲目はソレア系が多く、次はシギリージャ、タラントなど。今回はアレグリアスなどの明るい曲が少なく、軽く粋な2拍子系の曲などはありませんでした。出場者の選曲が偏ってしまうのがちょっと残念です。幅広く豊かなフラメンコの世界には沢山のフラメンコ曲があり、それなりの味があり、それらを皆さんの色々な個性で踊るのはステキなことだと思います。昔なじみの伝統的なフラメンコ舞踊曲などもあります。技量ある方が増えてきているのですから、もう少し視界を広げて色々な曲で挑戦していただけたら嬉しいです。

手塚真智子(舞踊家)[Bs]

ポーズ、形、そして体の使い方が上手く、いわゆる踊り上手でも、フラメンコを感じられない踊りが多く、フラメンコとは何とも難しいのかと改めて思いました。私も含めて、唄の勉強をしなくてはと痛感しました。以上のことを踏まえて講評を受け止めてくださるようお願いします。

大岩奈青さん:身体にひねりが出ると良いと思う。
堀越かおりさん:唄振りは良かったが、ブレリアに入るときの爆発力を感じられず残念でした。
佐藤理恵さん:安定感のある印象でしたが、時々腰が抜けるように見えました。
佐藤陽美さん:身体づくり、体幹をきたえて、時折なる内足が少なくなると、安定感が出ると思います。将来が楽しみです。
黒須信江さん:振りからはソレアを感じましたが、ブレリアでは、唄振りからの繋がりが感じられず残念でした。
徳田悠乃さん:楽しんでいる様子が好印象でした。
平田かつらさん:身体が大きく見えて迫力がありました。
津田可奈さん:伴奏者の力を引き出して、とても良いシギリージャでした。
山崎愛さん:良いコンパス感で、全体の流れを作っていたと思います。
ヴォダルツ・クララさん:華やかで、空間の使い方が上手でした。
小杉愛さん:タメと忍び、心を込めた唄振りで、気持ちが伝わって来ました。
矢村万意子さん:元気のある踊りでした。床のつかみ方が弱いのではと思います。
横山亜弓さん:目力があり立ち姿は美しいと思います。ポーズ、形にとらわれ過ぎのようで全体の流れが見えませんでした。
松村布美さん:良く動ける身体ですので、背中に表情をつけると良いと思います。
内田好美さん:ブラッソがきれいでした。
川松冬花さん:顔の表情が好印象でした。
池田理恵さん:バネがあり良いソレアでした。
本川幹子さん:ブラッソの動きを少し早めにするとジャマーダが生きてくると思いました。
ブラシェ小夜音さん:表情豊かでした。後で年齢を知り驚き、フラメンコに向かう姿勢や練習の仕方が真っ直ぐで良いのではと思いました。
漆畑志乃ぶさん:今年は流れを止められすぎて、どこを捉えて良いのかわからなくなりました。
久保田晴菜さん:上手い踊り。形の決め方がバレエ的に感じました。
服部亜希子さん:足のテクニック、ねばりもあり、ブレリアに入る時のタメが良かった。
鈴木真衣さん:感情表現が豊か。
土井わかなさん:良いコンパス感でした。
大野環さん:上半身、ブラッソの使い方、またパルマの打ち方などを勉強すると良いと思います。
重盛薫子さん:力強く良いソレアでした。

花岡陽子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【22日(金)】
佐渡靖子さん:力を入れる、抜くを分析してみて。
青木千鶴子さん:上達なさる要素をお持ちです。足も強いし。
大岩奈青さん:強弱があり、アイレを感じます。
長本真由さん:曲のまとめ方がいいです。将来性を思います。
堀越かおりさん:曲に乗り、ソレアらしい。心地よいです。
佐藤理恵さん:音楽の一部になって、ため込みもいいです。
佐藤陽美さん:基本がしっかりしていてサパティアードもいいです。
松井洋子さん:松井さんらしいフラメンコ。工夫もあちこちに。
福島沙弓さん:足は強いのですが、力を抜くことも考えて。
黒須信江さん:楽しく気持ちよく踊っています。少しさらに研究を。
徳田悠乃さん:心から表現していること。伝わります。
平田かつらさん:欠点は少ないです。盛り上がりがちょっと欲しいです。
津田可奈さん:構成が面白いです。表現が少し小さいです。
高木栄子さん:足が強いです。振りと振りのつながりが今ひとつ。
大家由美子さん:強さが前面に出る。ブラソと共にもう少し工夫を。
永田健さん:今年も健在なり。細やかさとかっこ良さと。

<バイレ・群舞部門>
エストゥディオ・アレグリアス:群舞らしい、華やかです。きれいですが…。
エストゥディオ・カンデーラ発「森の踊り子号」:グァヒーラらしく、夏らしく。全員の息が合っていました。
新田道代フラメンコ教室:初々しく若くかわいいです。
フラメンコスタジオ・マジョール:パコ・デ・ルシアの曲で全員気持ちよく踊っています。
鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ:コスチュームが素敵!4人それぞれが技術・表情、とてもいいです。
二村広美フラメンコ教室:セビジャーナスに変化を作り、たのしく舞台を華やかに。良かったです。
Las Azulindas:きれいにきちんと。赤の衣裳が素敵でした。
Hijas de Manzanilla:重厚感のある振付もよく、6人がお見事。

【23日(土)】
山崎愛さん:強いサパティアードが印象的でした。
ヴォダルツ・クララさん:スタイル抜群。とにかくきれいにソレアを。
小杉愛さん:足が強い人。もう少しパソに工夫を。
矢村万意子さん:力が入りすぎたです。今年も頑張りました。
横山亜弓さん:静と動のバランスが良く、完成度が高いです。
藤本ゆかりさん:ブラソと足が気持ちよく調和していました。
森山みえさん:パンツはやはり難しい。また挑戦して。
山谷祐子さん:フラメンコ的ではありますが、精進してください。
松村布美さん:ご自身の踊りにしています。盛り上がりもいいです。
内田好美さん:しなやかな踊り。足も強いです。
川松冬花さん:盛り上がりも上手。川松さん流のソレア良いです。
池田理恵さん:ブラソも強い足も調和が取れています。
本川幹子さん:全体的に弱いかも。また挑戦してください。
吉本良子さん:きれいにまとめています。振りに気合を。
庄子裕子さん:楽しい気持ちが出ています。若々しいです。
小野亜希子さん:基本がしっかりしていて美しい動きです。
ブラシェ小夜音さん:カンテの心にのってよく表現しています。バランスも。
林由美子さん:体の動きが素敵。今ひとつです。
森里子さん:感情豊か。サパティアードも工夫していいです。
漆畑志乃ぶさん:小柄の体いっぱい。アイレがあります。
小坂みはれさん:自分のものにしています。明るく全体にいいです。
佐藤幸子さん:アレグリアスらしいです。パソに変化が欲しいです。
廣岡理恵さん:静、動が美しいです。よくまとめています。
石川慶子さん:よく練習したことでしょう。美しいです。
本田恵美さん:バストンを自由に発想。試みがいいです。

【24日(日)】
加来幸子さん:強さは内面から出してみて。衣裳が素敵です。
久保田晴菜さん:きれいに踊っていますが情感が欲しいです。
服部亜希子さん:足が強いですね。舞踊性がもう少しです。
松本千晶さん:面白い組み合わせです。華やかさもほしいです。
末松三和さん:これからも踊り続けて。上半身にしなやかさが欲しい。
阪上のり子さん:動きと笑みのバランスを。頑張っていってください。
浅野直子さん:バランスもとれたスタイル。コンパスも見事です。
津幡友紀さん:個性が見事!空間を踊りにして。
重藤優子さん:踊りに伸びがほしい。踊り続けて本物にしていってください。
柴崎沙里さん:身体的能力、静と動、全力投球で美しい。
鈴木真衣さん:細身でしなやかです。少しスタミナ切れが。
土井わかなさん:成長がみられます。自然体でよく踊られています。
佐藤奈々子さん:ブラソが美しいです。前かがみが少し気になります。
小島智子さん:パリージョとブラソの調和、全体によくまとめています。
杉原敦子さん:体からあふれる楽しい表現が欲しいです。
関祐三子さん:奥深い旋律を体全体でよく表現しています。
大野環さん:ソレアらしい、きちんとした表現。演奏者に負けない踊りをしていました。
川田久美子さん:スタイルも衣裳も素敵!魅力的な方です。
月城宏美さん:たくさん踊っていって自分のものにしていってください。
細川由香さん:ソレアらしい曲想で踊っています。きれいな衣裳。
瀬﨑慶太さん:なかなかご自分の踊りにしています。衣裳がもう少し。
重盛薫子さん:足も強く、良く踊っています。まとめ方もいいです。
出口知子さん:衣裳と踊りがよく合っています。これからを期待。
永野暢子さん:コンパスはいいです。サパティアードの研究を。

本間牧子(舞踊家)[Bs]

大切なのは、自分がどのように踊りたいのかはっきりした意志を持つことです。そして心と体が離れないように集中すること。技術は勿論ですが、この大舞台ではメンタル面がとても大事になってきます。そして基本的な縦横の軸、重心移動、パワーが力みにならないように脱力する…練習する時も本番の時も常に忘れず、これらの意識を体感しながら持つことです。難しいことではありますが…レベルを上げる一歩になると思います。

大岩奈青さん…心身一体と気迫を感じました。技が増えるともっと沢山の心を伝えられます。あと一息!
佐藤理恵さん…丁寧に踊られていてクエルポからブラソへの間、静と動のメリハリ良かったです。今度は思い切りパワーを集中させて踊ってみましょう。
津田可奈さん…ブラソ、マノ綺麗でした。歌やギター、空気感を、心を自由にして体感しながら踊れるとより多くのアイレを表現することができます。
山崎 愛さん…エネルギッシュで良かったです。少し脱力して しっかり静止ができるともっと迫力がでます。
ヴォダルツ・クララさん…舞台に出て来られた瞬間ひきつけられました。華、品格、表現力があり、マノ、ブラソも綺麗でした。あとはもう少しメリハリ、強さが欲しかったです。
横山亜弓さん…構成も良く、静寂からの動、クエルポから流れ出るトルネードのようなブラソ、強烈なエネルギーを発し、美しく感動いたしました。
池田理恵さん…軸がしっかりして落ち着いていました。クエルポからブラソへの使い方の間、重心移動も良かったです。メリハリ、しっかりつけると良いと思います。
ブラシェ小夜音さん…基本的なことがしっかりしていてアイレもあり小気味良く、抜けが格好いい!感銘いたしました。
漆畑志乃ぶさん…軸がしっかりしていて安定感があり体のひねりやブラソも美しく、フラメンコを感じさせてくれました。
服部亜希子さん…オーソドックスの中にメリハリの作り方、静かな部分の溜め、そして重さのある落ち着いた踊りが良かったです。
松本千晶さん…軸がしっかりしていて無駄な動きがなく、どのような時にもぶれない頭の位置、アイレも良く素晴らしかったです。
末松三和さん… ポーズ、ポジションの決め、良かったです。クエルポやブラソを柔軟に使いファルー力独特の間が表現できると一段と良くなると思います。
小島智子さん…パリージョの踊りは最近なかなかみられず新鮮でした。パリージョ、振りの部分、それぞれのメリハリ強弱をもっとつけると奥深い表現ができます。
関祐三子さん…心身一体でメリハリがありサパテアードの時の集中力と美しさ、これがフラメンコ!感動いたしました。
重盛薫子さん…クエルポ、ブラソ、マノ、全ての面で上手に使われていたと思います。メンタル面を集中させるともっと素晴らしくなると思います。

渡邊薫(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門> ◎:奨励賞に推薦と来年に期待する出演者
【22日(金)】
大岩奈青:安定感ある身体、もっと自分の感情を表現して!
黒須信江:体幹もしっかりして、テクニックも安定しているが、こちらに届いてくるものがない。自らを発することが大切かと。
徳田悠乃:上手くまとまった「タラント」、あとは自分のアイレを出し切ること。
佐藤陽美:最初は固さもあったが、後半はリラックスして彼女らしさが出ていた。小柄な人にしか出せない(!?)ものがあります。ブラソなどに気を遣う必要があります。

【23日(土)】
◎山崎愛:唄振りがすばらしく、サパテアードもリンピオ。自然な流れで後半への転換も良かった。
◎ヴォダルツ・クララ:美しい肢体を活かし、瑞々しくエレガント。華があった。アレグリアスのアイレもたっぷりでした。
◎横山亜弓:流れの良い踊り、上体の表現力が豊か。
松村布美:切れがあり、メリハリもあって最後までテンションを保っていた。
小野亜希子:振りを丁寧に踊った感情をもっと体現して。
◎ブラシェ小夜音:1つ1つの振りへの想いが強く感じられ、その上若々しくすばらしい「ソレア」でした。
漆畑志乃ぶ:力強い踊り。もう少しサパテアードのアセント、強弱に気を遣ったらいいと思います。

【24日(日)】
久保田晴菜:よく踊り込んでいるサパテアードのリンピオで音楽性を感じた。身体訓練をもう少し。
土井わかな:タンゴが良かった。最後の入り前に力を抜き過ぎた!?
小島智子:パリージョでの挑戦すばらしかった。
大野環:決めの甘さが残念だ。カンテにもっと寄り添えたら…。
瀬﨑慶太:上達が見られた。来年に期待しています。
◎重盛薫子:自分が何を体現したいのか明確だった。バックとも一体化していた。

☆フラメンコの今の流れもあると思いますが、もう一度フラメンコが歩んできた歴史を振り返ることは大事なことではないかと思います。
☆踊り手は身体的条件が異なりますが、自らの身体をよく知り、短所を長所になるように身体訓練、振付を考えていくことは大切だと。
☆今年はバタ・デ・コーラ、マントンを使った出演者がいなかったのは残念でした。確かに大変なことですが、やはり挑戦して欲しいです。

<バイレ・群舞部門>
エストゥディオ・カンデーラ:コケティッシュで工夫にあふれた構成、振付、各人の意欲は伝わったが、もっと身体訓練を。
Arbol de Flamenco:初々しさがあふれていた。Duoとしての構成・振付が欲しかった。
Las Azulindas:6人各人がしっかりとカンテを感じて踊っていた。
Hijas de Manzanilla:個性異なる6人だが、気持ちがしっかりと1つになっていた。フラメンカな踊り。

EL・POKA岡崎(舞踊家)[Bs,Bg]

長年に渡りフラメンコ協会に世話になりながら、沢山の同胞やフラメンコ野郎達に接することが出来たり、本当に刺激を与えてくれているこの新人公演に毎年参加できる事を心から感謝しています。ましてや今回は、目の前で世界的なアーティストのカニサレスの演奏を聞くことが出来、息の根が止まる程、感動と興奮を覚えました。正にこの場が「目から鱗が落ちる」という事なのか!今日までのフラメンコ感が一瞬にして、変わりました。技だけが人の心を動かすのではなく、その人の本当の凄さ、奥ゆかしさ、人間味溢れる最高の温かさが、もの凄く謙虚に、他人の心の中に突き刺さってくる本物中の本物のフラメンコでした。

さて本題に入り、私が気に掛かった沢山の人の中から、今回は数名だけ感想を述べたいと思います。

津田可奈さん:カンテ、ギター、バイレ、パルマ、全ての人達が一体化していて、見事なフラメンコの世界を作り上げていましたので、特に気に入りました。
永田健さん:昨年よりもまた一歩大きく前進している姿を観ることが出来、凄い人が現れて来た…と。今後も益々楽しみに期待しています。
ブラシェ小夜音さん:強い気持ちで初めから最後まで力が気持ちと共に持続していたし、またブレリアが特に印象的でした。
柴崎沙里さん:バックのカンテが、この時ばかりはうるさく感じず、気にならない程、踊りに迫力があり、舞台構成も良く安心して観ていられました。
久保田晴菜さん:振付も面白く、基本もしっかり身に付いていて、アリーバも出来ているし、ブエルタも良かった。
小島智子さん:自分のスタイルに向かって勉強している姿にまず感動しました。力強い踊りでラストまで挑み続けた姿が良かった。これからも期待しています。
関祐三子さん:緩急に長けて踊りにキレがあり、隙の無い凛とした舞でした。
重盛薫子さん:媚びを売ることなく自分の世界を持った完璧な踊りで、キレも良く、アリーバも音の幅も広く、ベテランの味を感じました。
漆畑志乃ぶさん:昨年よりもますます間も良くなり、切れと訴える力も出てましたので、完全に第一段階は通過したと思います。さらに言えば、緩急の緩の部分を勉強しながら、人間味あるバイラオーラになることを望みます。
堀越かおりさん:堂々として落ち着いている態度がソレアの曲に妙に合っていて、観ていて気持ち良かったし、また良く踊っているなと感心しました。

最後に石川慶子さん:流石としか言い様が無いくらい初めから終わりまで、一度も目を離すことなく観させて頂きました。今回も舞台上の皆さんから沢山のエネルギーを頂きました。感謝しています。ありがとう!

市川惠子(舞踊家)[Bs,Bg]

この大舞台を立派に踊りきられた皆さん、本当にお疲れ様でした。毎年皆さんの踊りを拝見し私自身、自分のフラメンコを自問自答する良い機会となっています。私たちはなぜフラメンコを選び、何のためにフラメンコを踊っているのでしょうか。テクニックとコンパスはもちろん重要ですが、何よりフラメンコをいつも心と体で感じながら踊って欲しいのです。その曲らしさを感じることの大切さを忘れないで。あまり技術に走りすぎると一番大切な感情が薄れていくのではないでしょうか。

簡単に理解できないこと、手に入らないこと、時間をかけて悩んでこそ、深く掘り下げてこそ、にじみ出てくる「何か」があると、少しずつつかめてくると信じて、じっくり自分の踊りと向き合って下さい。フラメンコの感動を伝える為に、もっと心の奥深いところに触れるような、内から溢れ出るようなものを見せて頂けたらと願っています。

私が奨励賞に推薦した方々は、
★横山亜弓:エレガントな始まりが印象的。しなやかでのびやかだが込める力がある。足も奏でている。個性的で魅力的。意志のはっきりした緩急のある美しい踊りに惹きつけられた。優雅だが重みも気迫もあるフラメンカで素晴らしかった。
★ブラシェ小夜音:新人らしい、自然体の王道フラメンコで、奇をてらうことなく良くまとまっている振付。全体のバランスが非常に良い。それでいて空気が一時もたるまない強さを感じた。見応えのあるソレアでとても良かった。
★漆畑志乃ぶ:ぐっと締まった空気感。内に秘めたフラメンコの思いが伝わってきて感動。小柄ながら溜めと気迫に満ちたその心意気に目を見張った。終わり方に少し物足りなさを感じたが、深く心に残ったソレア。
★山崎愛:体の締まった良い踊り。ひきつけてやまない。内から発するゆるぎないものに胸がつまった。唄の受けとエスコビージャでバックとのずれが残念だったが、やはりムイフラメンコ!
★末松三和:なぜファルーカなのかびっくりしたが、込める力の強さに凄みすら感じた。フラメンコとして十分魅せる力があるので、終盤そんなに足をしなくても良いのではと思ったが、その一時も空気が緩まない力には涙が出た。
★小杉愛:渋さ、静けさの良さ。一つ目の唄に物足りなさが残ったが、二つ目の唄が心に沁みた。足を打つ時の肘の甘さが気になるが、コンパスの締めがよい。ブレリアからの激しさに今までにないパワーを感じた。良いソレアの空気感、細いながらにフラメンコの存在感。
★服部亜希子:ブラソとマノに甘さがあるが、気迫のあるソレアを見せてくれた。コンパスの締め、足の見せ方リズムも良い。タパからブレリアにかけてのアイレも良かった。リズムの切り替えが上手くいかなかったのが残念。そのフラメンコ性に将来を感じた。

悩んだ末の次点の方は、
☆重盛薫子:フラメンコをよく知っている。フラメンコ性もある気迫に満ちた存在感のある踊り。コンパスの締めも素晴らしい。いいフラメンコを見せてもらった。重みもある。最後のしつこさをそぎ落として。フラメンコとして完成度の高い踊り。
☆ヴォダルツ・クララ:スカッとしていて華がある。恵まれた肢体の伸びやかさ、軽やかさ、表現力も豊かでその魅力に惹きつけられた。シレンシオのマノ、ブラソも素敵。アレグリアスらしくてとても良かった。強さも出てきたが、もっと強烈に迫るものが欲しい。
☆黒須信江:自分の世界を持っている優雅で繊細な上質な踊り。リズムも足の音もきれい。さり気ない粋さに心惹かれた。が、上手くてこなれすぎて、ムイフラメンカな印象が薄れてしまったのでは。

特に印象に残った方々は、
●森里子:最初が魅力的。優雅でしなやか、品がある。クエルポにうねりがある。繊細な音で足も奏でていた。自分の世界を持っているので魅入ってしまった。
●久保田晴菜:身体がよく利く。優雅で凛とした良い踊り。無駄な動きがなくなって、すきっとしている。足もクリア。でも舞踊的すぎて、フラメンコ性が薄れているのでは。もっと唄を感じて。ポーズはきれいに決まっているが、「間」が踊りだという意識を持って。
●松本千晶:上体・腰ともびくともしない、しっかりとした軸を感じる。上手いのだがエスコビージャにアセントをもっと入れるべき。フラメンコ性、存在感もあるのに10の締めが甘いので軽く感じる。いろいろしている割に盛り上がりに欠けているのが残念。
●柴崎沙里:舞踊的には優れていて華やか。良く踊っているが、きれいに踊りすぎていて見せるフラメンコという感じがする。振りの誇張がフラメンコの感動を薄れさせてしまっているのでは。
●関祐三子:柔軟な動きに激しさもある。技術もしっかりしていて表現力もあるが、演技過剰に見えるところがある。ドラマティックフラメンコ。説得力もあるので深く心に染み入るようなところが欲しい。

次に印象に残った方々は、
◎堀越かおり:締まりある身体。きれいな踊りで振付もよくまとまっている。エスコビージャをゆっくり奏でているが、切り替えが甘い。もっとフラメンコとしての強さがいる。
◎佐藤理恵:存在感のあるパワフルな踊り。独特な個性で印象的。表情がずっと一緒なのが気になるが、静かな良さもある。将来性を感じた。足を打つときの姿勢に気を付けて。
◎福島沙弓:日本人離れした恵まれた肢体に荒削りだが力があり、おもしろい個性が印象的。肝心のレマーテと足が弱い。将来に期待。
◎徳田悠乃:肢体に恵まれのびやかで優雅だがまだ振りで踊っている。もっとタラントの痛み、絞りが欲しい。腰が浮いているので注意。
◎津田可奈:素晴らしい唄に応えきれていないのでは。唄の締め、絞りをもっと感じて。気迫と頑張りは感じたが、重みが欲しい。足はしっかりしていてマチョからは迫ってくるものがあった。
◎矢村万意子:身体能力は高くよく踊っているが一本調子に見える。足はリンピオ。振りもまとまっていて力強いが、絞りうねりが欲しい。
◎松村布美:上半身が硬いが込める力がある。コンパスが締まっていて心意気を感じる。色々しすぎだが、気迫もフラメンコ性もあった。
◎内田好美:長身で切れがあり身体も利くのだが、冷めて感じる。足も締まっているが慌ただしい。ソレアの重みが欲しかった。
◎池田理恵:身体がしっかりしていて上手いのだが、まとまりのない振りに感じた。足をごちゃごちゃいれ過ぎでは。終わり方はきれい。
◎浅野直子:まだ全体的に何か中途半端。でも何か良いものをもっている。新人らしく将来性を感じた。
◎津幡友紀:印象的な始まり。フラメンコ性を感じるパワフルで個性的な踊り。力強いが、どこかうるささを感じる。足はすきっとしている。どこかに情感とさりげないところが欲しい。
◎小島智子:冷静すぎて、きれいに踊っているがフラメンコとしての力強さが足りない。カスタネットは美しく素晴らしいがまだ身体の芯が甘いように感じた。

今後に期待したい方々は、
○佐藤陽美:まだつたないが、良い。このまま進んで。素直なフラメンコ性に好感が持てた。リズムは良いが、マルカールも抜けもまだ甘い。腰がどしっとしているのに、右足のぐらつきが気になった。
○川松冬花:表情が豊かで個性的。気迫があり、一生懸命なのは伝わったが、色々しすぎがマイナスに。行き着くところがどこなのか考えて。
○林由美子:印象的。自分の世界を持っている。何か雰囲気がある。気配がいいのに足の音が小さいのでは。ドーンと強いところが欲しい。
○廣岡理恵:始まりは良い。全体的にも割と良いのだが、肩が上がるのが気になった。足の力で踊っている印象。
○小坂みはれ:パワフル。打ち出しの強さに目を見張った。まだ荒削りだが若々しく面白い個性を持っている。印象に残った。足を打つ時の手と姿勢に注意。ブエルタも甘い。
○加来幸子:元気いっぱいで晴れやか。ずっと張り付いた笑顔が気になった。込める力、うねりがあるとなお良い。
○大岩奈青:重みはあるがさらっとした独特な踊り。いつもの落ち着いた感じがしなかった。シギリージャの重みまで行き着いていない。将来性を感じるので頑張って欲しい。
○長本真由:荒削りだがパワーを感じる。フラメンカ。足の力で踊りすぎ。肩が上がって見えるので力を抜いて、タパオからアイレがありブレリアにかけても良かった。
○鈴木真衣:フラメンコ性もあり、空気感が良い。首が突き出ているのが気になった。ブラソに注意。肘手首の意識をもっと持って。マノももっと使って。だけど見てしまう、期待の新人。

今後、さらなる精進を期待したい方々
□佐渡靖子:印象的な始まり。だがいつもの良さがでていないように感じた。感情の起伏をはっきり出して、どこかに強さが欲しい。
□藤本ゆかり:良い踊りだが、なぜか印象が薄い。後半動きすぎ。自分の良さを生かすために、振りをそぎ落とす勇気を。
□庄子裕子:肝心の唄の部分をもっと大切に。もっと自然に唄を呼んで。タパオからは良い。後半に少し自分の魅力が出てきたのでは。
□小野亜希子:ひたむきさに心惹かれ印象に残った。ギターのメロディばかりで踊りすぎてかえってテンションが下がったのでは。
□川田久美子:晴れやかで若さを感じる踊り。好感が持てる。エスコビージャは気持ち良さそう。シレンシオはもっと上体を使って。
□青木千鶴子:以前より身体の芯がしっかりし、前よりずっと良い。絞り・うねり・込める力が欲しい。抜けを自分の心から抜けて。
□大野環:唄の部分にパルマや足の音がうるさくそぐっていないように感じた。もっと唄を感じて。気合は伝わるが大げさ過ぎて足も浮いている。自分の良さを生かすためにも、もっと丁寧に踊って欲しい。
□瀬﨑慶太:立ち姿が気になった。首が突き出ている。もっと胸を上げて。必死な気持ちは伝わった。凝った振りをするより、良いものは持っているのだから、もっと基本的な事を学んで頑張って欲しい。

皆さん自分の信じるフラメンコを踊っていらっしゃると思いますが、まず芯のある身体作り、フラメンコならではの表現を大切に。溜め、しぼり、含み、うねり、込める力、そしてここぞというときの瞬発力、そこに至るまでの持続力と必然性、難しい事ですが年月をかけて取り組んでいただけたらと思います。動きと動きの間こそが踊りなのです。
女性としての情感を、もっとブラソ・マノを細やかに使って、次の展開の前に一度身体、コンパスを締めて、アセントをしっかり掴み、シャマーダは強く、意志を持って、自分自身の感覚を大切に踊って頂きたいと思います。

<バイレ・群舞部門>
群舞で奨励賞に推薦したのは、
★Hijas de Manzanilla:静かなフラメンコ性を感じ、皆がフラメンコとして大切にしているものに立ち向かっていく気迫に胸を打たれた。が、カルメンの振りを踊るには、セギード・レマーテ・ジャマーダに、もっと息をのむような強さがいる。それぞれの個性が発揮できる部分があるとなお良かったのでは。

悩んだ末の次点、特に印象に残ったのは、
☆エストゥディオ・カンデーラ発「森の踊り子号」:楽しませてくれる、魅力あふれる構成。強いアピール度にいつも惹きつけられる。グアヒーラなのにフラメンコの強さがある。身体がまだまだな人もいるが、フラメンカ。

次に印象に残ったのは、
◎鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ:パワフルで個性的。いろいろと考え抜かれた振りだと思うが、決まりすぎていてフラメンコ性が薄れているのでは?

今後に期待したいのは、
○エストゥディオ・アレグリアス:まだつたないながらも、それぞれがフラメンカ。皆一生懸命頑張っている姿にオレ!好感が持てた。
○フラメンコスタジオ・マジョール:ひとつにまとまっており、フラメンコの愛を感じる心が伝わってきた。
○二村広美フラメンコ教室“LAS FLORES MIAS”:扇も帽子も効果的に使った振付で、セビジャーナスらしい楽しさが良かった。
○Las Azulindas (鍜地陽子フラメンコ舞踊団):頑張っているが、難しい曲なのでもっと曲の理解を深め、もっと芯のある身体作りを。
○Canela y Menta(新田道代フラメンコ教室Arbol de Flamenco):照明に入ろうとする初々しさ、かわいい。まだつたないが新人らしい晴れやかさに好感。

ラ・ウニオンのコンクールへ向けて出演された3名の方々の意気込みには圧倒された。さらに精進された踊りに感動。石川さんを推薦した。
永田健:さらにそぎ落とされ、無駄のない身のこなし。胸に迫るものがあった。足の後半が少しギターとそぐっていないと感じた。
石川慶子:独創性に優れ、パワフルで凄いインパクト。切れ味のよいドーンとした踊りで惹き込まれた。
本田恵美:突出した独自性。ぐっと込めた力の凄みすら感じるその意気込みに目が釘付けに。

東仲一矩(舞踊家)[Bs,C]

<バイレ・ソロ部門>
まずは「奨励賞」を受賞された方々から私見を述べます。「山崎愛」さん、ピエの力強さが印象的でした。「ヴォダルツ・クララ」さん、前回よりずっと成長されて、自分が一番表現出来るバイレを選ばれていたと思います。「横山亜弓」さん、踊り全体の完成度、構成度、そして何より、静謐な感じが良かったと思いました。「ブラシェ小夜音」さん、技術的に完成され、何よりも自分の踊りにされていたと思いました。今の若さであの空間を一人占めにされたのは驚きました。「関祐三子」さん、テクニックに裏付けされた舞踊、創造性は感じました。「重盛薫子」さん、素敵なグラシアと完成度の高いテクニックで楽しく拝見しました。
以上の方々の他に私が気になった出演者を。「大岩奈青」さん、安定した表現。「長本真由」さん、スピード感が素敵。「松井洋子」さん、テクニック、安定感がありました。「小杉愛」さん、軸の振れなく前回よりずっと良くなっていました。「内田好美」さん、完成度が高かった。「森里子」さん、踊り全体にペソを感じました。グラシアも十分出ていたと思います。「漆畑志乃ぶ」さん、ピエのテクニックと表現力は素晴らしいものでした。「服部亜希子」さん、踊り込んだ作品でした。「末松三和」さん、テクニック、キレが素敵でした。前後しましたが「福島沙弓」さん、安定した表現、体のキレが素敵でした。以上が今回のバイレ・ソロを拝見した私の感想です。

<カンテ部門>
まずは「大森暢子」さん、受賞とウニオンへの出演おめでとうございます。今回の出演者の中で一番自然に聞けました。メリスマの音程の確かさ、無理な発声のなさ等、素敵でした。
さて、その他の出演者の方々に私見をお話しするわけですが、踊り手である私は一番「カンテ」が好きでフラメンコは「カンテ」が一番だと思っている一人です!!
「北脇英子」さん、レトラの語尾が流れ、不明瞭になるように思いました。「濱田あかり」さん、高音節の「のび」はありました。腹式の練習をされたらもっと良くなると思います。「占部智恵」さん、声は自然で作って唄おうとしなかったことは良かった。これからも続けてください。「濱田吾愛」さん、声量はありました。スペイン語も確かにうら付けされたものでした。「グラナイーナ」のゆれを研究されるともっと良くなると思いました。「森薫里」さん、少しビブラートが気になりました。

「カンテ」が私は一番日本人にとって難しいものと思っている一人です。これからもこの世界にアフィシオナードが増えることを望みます。

菊地裕子(評論ライター)[Bs,Bg]

今年のバイレ・ソロ部門はカンテ・ラス・ミナス音楽祭の日本予選も兼ねるとあって、昨年より10名多い65名が出場。選考委員にとっては、ちょっとばかり評価方法がややこしいことになったが、私は例年通りの採点方式でメモを取った。すると、既受賞者以外の【特A】評価がちょうど規定数の7名になっていたので、ほとんど迷うことなく、その方々を奨励賞に推薦し、ラ・ウニオンへは既受賞者の石川慶子さんを推薦した。

気になったのは、コンクール予選の影響だろうか、破綻のない優美な踊りに無難にまとめ上げている人が多く、強い印象を残す作品が少なかった点だ。しかも力みもあってか、後半の盛り上がりに欠け、見ているほうが欲求不満のまま終わってしまうケースが多かったと思う。

奨励賞は投票による多数決がベースなので、特にバイレソロは舞踊的に平均点の高い人が受賞する傾向がなきにしもあらずかと思う。しかし平均点の高さとバイレの魅力とは全く別ものだ。振付をいかに上手に踊るかではなく、いかに自主的にバイレを創造していくかを私は見たい。いや、フラメンコが好きな人なら、誰だってそうだと思う。受賞してもしなくても、見る人はどっちでもいいのだ。新人公演を良き通過点、挑戦の場として、自分のフラメンコを究めていって欲しいと切に願う。

今年の群舞部門の出場者は8組と昨年より3組多く、作品の趣向もまちまちで、いつにも増してどのように評価するか苦しんだ。奨励賞に推薦するグループは、舞踊手の技量、フラメンコ性の発露、ミュージシャンとの共鳴、全体のアンサンブルなど、全てにおいてレベルが高く、頭ひとつ秀でていたHijas de Manzanillaにすんなり決めたものの、それ以外のグループも、個々の目指すところを感じ取れる力作が多く、細かい採点は困難を極めた。それだけ群舞の舞踊作品としてのレベルが上がってきているということかもしれない。

特に、複雑なフォーメーションをしっかり踊り込んできているグループが多いことに目を見張った。舞踊手の技量がまだまだでも、練習量で補える部分があることを今回は特に痛感した。個々の舞踊手が技量を磨くことはもちろん大事だが、ひとつの目的に向かって出演者全てが心をひとつにして精進した作品には気迫がみなぎる。感動を誘う。何かを感じさせることは、上手に踊ることより尊いことだと私は個人的に思っている。
完成度という点でHijas de Manzanillaを推したが、他のグループもそれぞれの趣向で楽しませてくれたのは間違いなく、日本のフラメンコの群舞が面白い様相を呈してきていることにワクワクさせてもらった。全ての演者と振付・演出の先生方にOle!

(●=既受賞者、◎=奨励賞に推薦、○=高評価、△=今後に期待)

<バイレ・ソロ部門>
【22日(金)】
△大岩奈青/フラメンカな雰囲気。自然だが、唄振りはやや動きすぎ。その後の見せ場とのメリハリがつかず、全体に緩急がないイメージに。力配分の再考を。
◎長本真由/これまたフラメンカな雰囲気。コンパスを身体中で表して心地よく、格段の成長。指先までセンティードが行き届いている。欲を言えばもう少しインパクトがあれば。
△堀越かおり/大変、優美で見栄えがする。内包しているものが大きく、かつ丁寧な踊りで説得力がある。しかし惜しいことに決め手に欠けた。もっと踏み込んだ踊りを。
△佐藤理恵/抑制がきいていて重みがある。ただ、せっかくの感情の発露が振付に留まっており、自分のものとして出てきていない。深く大きな感情をもっと。
△黒須信江/とても良い雰囲気を持ったアレグリアス。上手だし嫌味がない。けれど決め手に欠ける。明るい部分だけでなく、それを支える深い感情をベースにして。
○徳田悠乃/自分の中に鮮明なイメージがある、しっかりしたタラント。終始リードして踊っていたが、もっとバックとからんでも良かったかも。力が抜けたところも見たかった。
○津田可奈/非常に厳しい雰囲気のシギリージャ。曲をよく自分のものにしていて、随所に心惹かれる部分が。ただ全体に空気が固すぎたか。開放されたところも見たかった。
●永田健/昨年より個々の動きが確実になり、安定感が出てきた。意外性に欠けるきらいもあるが、スタイリッシュに決める格好良さは、昨年より今年に軍配。

【23日(土)】
◎山崎愛/細部にわたって抑制のきいたソレア。出てきた時から闘牛みたいな存在感とエネルギー。深さも重さもある唄振り。身体のキレがコンパスのアクセントになっていた。オレ!
○小杉愛/カンテをよく聴いていてgood!ただクエルポの表現が地味すぎた。大劇場では損。小杉さんならではのやり方でマグマをほとばしらせて。
◎矢村万意子/気合の入ったシギリージャ。非常に緩急のある踊りで見せ場もいっぱい!やや詰め込みすぎかもだが、テンションが落ちないのが凄い。転んだ時も問題なしでした。
△横山亜弓/正確で美しいシギリージャ。だが確実に踊ろうとするあまり、振付が透けて見える。振付を超えて、自分ならではの表現を探って欲しい。そこからがフラメンコでは。
◎松村布美/キレがいい。生きたエネルギーが身体の中に凝縮され、それがコンパスとなって身体からあふれ出るように感じた。それだけで感動して見入ってしまった。素晴らしい!
○内田好美/マルカールが良かった。身体の使い方も上手く、ソレアの空気感をよく掴んでいる。惜しむらくはペソが足りない。もっと重い空気を感じて踊って欲しい。
○川松冬花/身体全体でコンパスを表現。足音が心地よい。けれども、あと一歩、振付を自分のものに消化できていない感じ。生き生きとした感覚を持って踊って。
○池田理恵/中身の詰まった良い踊り。メリハリがあってノリも良い。しかし後半に失速。パソを詰め込みすぎて忙しすぎたか。力の配分を考えて再挑戦を!
○小野亜希子/重さを感じるソレア。身体の使い方が上手く、説得力がある。しかしクオリティの高い踊りなので、足音にもっと色彩が欲しかった。コンパスの妙味を探って。
○ブラシェ小夜音/舞踊センスが抜群なだけでなく、よく踊りこんで自分のものにしている。ただソレアとしては、個々のパソをもう少し深彫りして欲しかった。これからが楽しみな逸材!
△森里子/バランスがいい。身体もよくコントロールされているが、展開に意外性がない。序破急を自分の中でイメージして、血をたぎらせて欲しい。
◎漆畑志乃ぶ/鉄火で中身が詰まった踊り。ソレアらしい味と匂いを感じた。緩急を上手に配していて、昨年より格段の進歩。これからも地道に精進してください。
○廣岡理恵/よくコントロールできている踊り。よくできたシナリオを最上の形で踊っている感じ。課題は独自性。シナリオの段階で、もっと自分の中と向き合って。
●石川慶子/圧巻のソレア。カンテ、ギターと呼応、共鳴して一体感があり、踊りの見せ場も満載。一昨年のシギリージャも感嘆したが、今回も堪能。(※カンテ・ラス・ミナス音楽祭に推薦)
●本田恵美/力作のシギリージャ。デジタルな動きも取り入れ、舞台を大きく使って、次々に意外な展開を重ねた。やや不安定なところもあったが、非常に面白い意欲作だった。

【24日(日)】
△久保田晴菜/スタイリッシュなタラント。よく鍛えられた体の動きが美しい。だが、バックと呼応して踊っている気配が感じられない。舞台を一緒に作る感覚をもっと。
○松本千晶/キレのあるソレア・ポル・ブレリア。踊り手としての実力を感じる。エネルギーの溜め方が素晴らしく、メリハリもきいている。だが盛り上がりに欠けた。持久力をつけて再挑戦を。
◎末松三和/短いスカートでのファルーカ。ユニークで面白く、意外性の連続で目が離せなかった。やや地味に映るのはエネルギーの放出が抑え気味だったからか。今後にさらに期待!
○津幡友紀/動きによってエネルギーの凝縮、流れがわかる、メリハリのあるソレア。いい踊り手だと心底思うのだが、今年はコレ!という個性に乏しかった。こだわりを押し出して練り直しを。
○柴崎沙里/ソレアの雰囲気をしっかり持って上手に踊った。欠点は特に見当たらないが、突出した個性がうかがえない。好きな部分、得意な部分にもっと磨きを。
△関祐三子/踊り手としての身体は仕上がっていて、舞踊センスもある。上手な踊り手だと思うが、振付ありきで踊っているところが気になる。もっと自分自身を開いて欲しい。
◎大野環/ピリッとしたソレア。メリハリがきいて、本人に自分のソレアのイメージがしっかりとあるのがわかる。多くの人が失速した今回、最後までやりきった感があった数少ないうちのひとり。
△細川由香/しっとりと美しいソレア。エスコビージャは格好いいし、表現力もあるが、力強さに物足りなさが。エネルギーを凝縮して吐き出す瞬間をどこかに。
△重盛薫子/内側の充実を感じさせ、思いが伝わってくる踊り。非常に好ましいが、背中がやや丸い。肩甲骨の間を意識し、もっと自分らしさを掘り下げて。

<バイレ・群舞部門>
△エストゥディオ・カンデーラ発「森の踊り子号」/遊び心のある面白い構成ながら、舞踊手の重心が全体的に高く、持ち味のコンパス感がイマイチ心地よさを生み出せなかった。やることが多いせいか、一つひとつの動きが何となく流れてしまい、印象が薄くなった感が。振付をもう少しシンプルに整理するか、動きの確実性を上げるかして、再挑戦を!
△フラメンコスタジオ・マジョール/舞踊手のレベルはまちまちながら、非常に凝った構成で上手にパコの曲を生かしてみせた。特にワンポイントで男性3名だけが踊った味のあるシーンは面白く、実に上手い使い方だと思った。これがマジョールの強みのひとつであることは間違いない。誰もが知っている曲にマジョールならではの個性が光り、チャレンジ精神を感じた力作!
△鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ/個々に舞踊手としてフィジカルがよく鍛えられている。コンパスの妙味を振付で表現できるのも、それ故だろう。惜しいのは、それが形にとどまっているせいで、コンパス本来の心地よさにまで到達しない点。きっちりとした振付の中でも、自ら発するリズム、中から湧いてくる情感を生かすことを目指して欲しい。
◎Hijas de Manzanilla/揃いの黒一色の衣装が未亡人の集団に見えたぐらい、全員が凄みさえ感じる重い情感をたたえて踊った。個々の舞踊手としての高い技量とフラメンコ性が、的を射た振付との相乗効果で花を咲かせた感じで、群舞による曲種の表現としては、かなり高いレベルだったと思う。随所に心動かされる場面があった。もう一度、見たい!

西脇美絵子(評論ライター)[Bs,Bg]

今年のバイレ・ソロ部門はいつもにもまして実力が伯仲していた。ただし、突出した人は少なく奨励賞のボーダーライン上とそこまであと一歩の人、この層に集中していた。いってみれば下手な人はいないと言っていいほど皆うまかった。私はいつも0.5点刻みの10点法で点数をつけているのだが、奨励賞に押そうと思ってつける7.5点以上の人が図らずもちょうど7人いたので、奨励賞には、あまり悩まずその7人の方を推した。ちなみに奨励賞のライン上にいると思われる人(自分では推さなくても奨励賞受賞していいと思う人という意味)には7点をつけているが、ここには14名。このあと僅差でもう一歩という人たちがずらりと続く。

誤解を恐れずに言うならば、受賞した人と惜しくも逃した人の間に明確な差はない、特に今年は、と私は感じている。皆同じようにうまいのだ。なんだか重箱の隅をつつくようにして、選考を行った気がする。少々破綻してたっていい、溢れ出るエネルギーを、溢れ出るあなた自身を、もっと感じたいというのが正直な感想だ。

総じて皆身体はよく動く。でも、フラメンコは自分がひょこひょこ動いたってダメだ、自分の腹で、周囲の空気をぎゅっと掴んで動かさなくては!技術はできているのに、リズムにだって乗っているのに、なのにそれが大きなうねりにならない。なんとももどかしい思いを今年は何度もした。

そんな中で、奨励賞対象外、ウニオンのカンテ・デ・ラス・ミナスのコンクールの予選として出場した3人(これまでの奨励賞受賞者)は、さすが別格の風格があった。特に、新人公演という場で徹底的に作品として作りこまれた斬新なシギリ―ジャを踊った本田さんの心意気には胸を打たれた。その勇気あるチャレンジ精神に敬意を表します。

以下、私が奨励賞に推した人について書きます。奨励賞に推したのは末松三和さん、山崎愛さん、関祐三子さん、福島沙弓さん、大岩奈青さん、藤本ゆかりさん、柴崎沙里さんの7人。

中でも私の今年のナンバーワンは、ファルーカを自分の世界に再構築して踊った末松三和さん。振付の記載は特になかったので自作かどうかは分からないが、完全に末松さんのファルーカになっていたと思う。直線的な動きが強調されたファルーカ本来の様式美と斬新さが融合していて衝撃的だった。それを見事に踊りきっていた。山崎さんは、今回本領発揮の演技ではないと感じたが、フラメンコの総合力は明確に感じることができたので推した。関さんは、同じ舞踊団出身者で先輩格の中田佳代子さんを彷彿とさせるような存在感が際立っていた。肝がストンと落ちて、重さ、力強さと、力の抜き加減を抑えていた福島さん。よく踊り込まれていたとも思う。大岩さんはキレの良さと重いマルカールのコントラストがすばらしかった。藤本さんは、ゆったりと重厚なソレアを密度濃く踊った。柴崎さんは全出場者の中でも際立って舞踊性、身体性の高い人だと思う。前回まではそれが逆に邪魔をしてフラメンコに見えなかったが、今年は格段の進歩。フラメンコ的なエネルギーの出し方、緩急の付け方がきっちりできていた。他の選考委員の推薦が集められなかった理由をあえて考えるなら、動く身体を使いすぎた、動きすぎたということか。動く身体を持っている人がおもいっきり身体を使って踊るのは私は好きだが、それをフラメンコ的でないと感じる人も多い。なんだか傾向と対策みたいなアドバイスで申しわけないが、身体を使い過ぎないことは、たしかにフラメンコ性の一つにポイントではある。

この他に、奨励賞のボーダーライン上にいたと思われる人は、佐渡靖子さん、長本真由さん、佐藤陽美さん、黒須信江さん、津田可奈さん、ヴォダルツ・クララさん、松村布美さん、ブラシェ小夜音さん、漆畑志乃ぶさん、松本千晶さん、大野環さん、月城宏美さん、重藤優子さん、細川由香さん。
中でも、ブラシェさんとヴォダルツさんのまだまだ伸び代がたっぷりありそうな素質の高さには今後目が離せない。また、何度も挑戦している人が大勢いる中で、大野環さんの格段の飛躍には感動した。昨年まで目立っていた体の癖が見事にとれ、見違えるほどのバイレになっていた。この人独特のコラへも健在だ。あと一歩だと思います。
このあとに、僅差であと一歩という人たちがどっさりと続く。さぁ、来年は、そうした中から誰が抜きん出てくるのか、楽しみに待つことにしよう。

小森晧平(カンテmaestro)[C]

<カンテ部門>
来年スペインでのカンテコンクールに選ぶために、スペインからの選考委員の方が3人来られたので、今年の評価結果にかなり緊張感を味わった。そして、出演された方々も、以前奨励賞や努力賞を取った方が3人もいて、今年はいつもと比べて非常にレベルの高い新人公演となっていた。現在何人かがバイレのためにかなり真剣に取り組んでいるので、以前と比べてカンテのレベルが高まってきている。

ただし、カンテのみとして聞かせる唄い方としてはあともう少し複雑な節回し、音の流れ方が必要となるかも…。カンテのみにかかわる微妙な音の流れに真剣に取り組んで頂けたら、スペイン人のカンテに少し近づくことが出来るでしょう。ちなみにカマロン以降、節回しがさらに複雑になってきています。

瀬田 彰(ギタリスト)[G]

今回の出場者は実力が拮抗し採点も僅差でしたが、私は2番の大山さんを奨励賞に推薦しました。以下、出演順に講評します。(敬称略)

1番・藤嶋(ソレア):
自分の個性を曲に刻み込もうとしている姿勢は大変良い。
しかし前半のファルセータは十分なフレーズ感が伝わらず、途切れがちに聞こえた。
後半のポル・ブレリーアスになってからは持ち直した。

2番・大山(シギリージャ):
モライートの「シギリージャ・イ・カバール」を熱演。
ヘレス風で伝統的な雰囲気が随所に現われ、とても良い演奏だった。

3番・廣川(アレグリアス):
リブレで始まり、曲想は完全なモデルノ。
スピードや躍動感を伴った演奏は良かったが、ファルセータ部とラスゲアード部の音量差が大き過ぎて全体のバランス感を欠いていた。

4番・塩谷(ブレリア):
現代的なブレリーアス(エミリオ・マジャ)。
ワクワクする演奏だったがプルガール(右手親指)奏法のファルセータで音が繋がらない部分と、途中の音づまりが有ったのが残念。

5番・和田(アレグリアス):
イントロはリブレで、以後ゆったりしたアレグリアスのオリジナル曲。
明るく繊細な旋律を持った良い曲だが、演奏面がもっとダイナミックな表現になると良い。

6番・宇田川(アレグリアス):
サビーカスの「オレ・ミ・カディス」という短調のアレグリアス。
華やかなギター奏法を使った名曲をよく弾きこなしていたが、前半のファルセータ部でのテンポの揺らし過ぎが少し気になった。

7番・金沢(ソレア):
モデルノ風のオリジナル曲。
テクニックもスピード感も十分にある良い演奏だが、もっとダイレクトにフラメンコ感を伝えてほしかった。
それと最初のファルセータのジャマーダがはみ出ているのは再考。

8番・関根(ソレア):
重厚感のあるソレア。
パワーもテクニックもあり良い演奏だったが無難にまとまり過ぎていた。
もっとはじけるような何かが有ればよかった。

9番・中川(ソレア):
伝統派スタイルのソレア。
骨太感のある音でセビージャ・モロン派を思い起こさせる良い演奏。
しかし冒頭のファルセータ(2コンパス)がコンパスからはみ出て長い部分は再考。

10番・岸元(セラーナ)
マヌエル・カーノのセラーナ。
セラーナにしては珍しいロンデーニャ調弦を使った個性的な曲。
カンテをモチーフにしたファルセータ部は楽器を十分に鳴らして良い演奏だった。
しかし何度も出てくるリガード部(セラーナのコンパス)がはっきり弾けていなかったのが残念。

◆現代舞踊協会・池田瑞臣[Bs,Bg]

フラメンコ協会の「新人公演」は楽しみの一つです。出演者の挑戦の熱意がじかに伝わり魅かれます。公演を見た翌朝、張り付いた痛さを体の数カ所に感じたのは、つい舞台の出演者と一心同体になって、客席で踊っていた自分の興奮の部分だと感じています。

バイレ・ソロの分野では、「ソレア」が65曲中36曲、半数以上。中央にスタンバイして踊り出す出だし、それがほとんど類似した形で、構成も似通っていました。その同じような条件の中で、出演者のそれぞれの存在感がどのように現れるのかと興味を持ちました。緊張で固くなり先を急ぐ踊り方、メリハリのポーズを決めたものの、次への呼吸が止まり、折角の舞踊の流れが途切れてしまった方、やはり大事なことは余裕だと思いました。余裕のある方は踊り出しの上げた手、その一発にすでに語りの美しさが見られます。

踊りは柔らかくとも激しくとも、相手に語りかける心象表現だと考えているのですが、体軀を屈曲した捩りには祈りへの叫びさえ覚えたりして納得します。その点「ソレア」では、半数の方に存在感がありました。でもあとちょっとです。隠れた有望株がんばって下さい。次なる成果を全員の皆さんに期待をかけております。

カスタネットは一つ、小島智子「シギリージャ」。音質が温かく快い余韻を与えてくれ、好感度大です。男性の瀬﨑慶太「タラント」は楽しめました。複雑な動きも難なくこなして活動的。ただ肩に力みすぎが目立ったのは残念でした。

バイレ・群舞は、それぞれの作品に努力の成果を感じました。でも空間の広がる大きさを願う作品もありましたが、やはり群舞は構成が大事です。それと共に、共演者間の心の調和も大切で、その効果が作品を盛り上げているとも思いました。

この3日間を通して強い印象を受けた作品は関祐三子「シギリージャ」。突然出現し、踊り狂い一瞬に去って行く感覚。カリスマ的な匂いさえして、激しいスカートの裁き方も踊る表情にぴったりで、言い知れぬ感動。有意義な3日間でした。


第22回新人公演「フラメンコ・ルネサンス21」

2013.09.26

選考委員(名前から各講評へリンク)

濱田滋郎(評論家・会長)[G,C]

2013年度、第22回新人公演もお陰様で無事、成果を挙げて終了しました。ひとくちに「無事」と言いますが、この催しの統括責任者という立場にある者としては、この言葉のかげでどれほど多くの人びとに深い感謝を申し上げなければならないか、を感じます。出演者の皆様、関係者の皆様をはじめ、それぞれに責任感をもって役割をきちんと果たしてくださった皆様のおかげで成り立つ新人公演です。すべての皆様に心より御礼申し上げます。

私はバイレ部門の選考委員にはなっておりませんが、初めから終わりまで、今年もまた、つぶさに見せて頂きました。やはり、全体の水準は高くなり、出演者はほとんど粒揃いでした。その中にも幾莫かの差があってバイレ・ソロ部門6名の「奨励賞」受賞者が決まったわけですが、とくに印象深かったのは、相変わらず数少ない男性出演者の一人、永田健さんのファルーカでしょうか。昨年、惜しい所で受賞を逸した永田さんでしたが、今年精一杯の実力発揮は、頼もしく、清々しいものがありました。その他の方がたも、受賞した、しないに関わらず、皆さん、どこかしらに美点があり見処がありました。その意味から、いつも言うことですが、新人公演に勝者・敗者の別はなく、皆が主役であることに疑いはありません。

今年の群舞は5組でしたが、それぞれに特色があって楽しめました。なんと言っても群舞は舞台の華です。いろいろと大変な面もあることでしょうが、これからも群舞で新人公演を盛り上げる方がたが増えてくださることを、私たちは願っています。

20名の出場を見たカンテ、11人が競演したギターも、皆さんそれぞれの熱演を傾聴することができました。スペイン語の発音やイントネーションの面を含め、カンテで最も大切なのは「自然さ」だと思います。今回、準奨励賞・話題賞の決定にも、この点が最も大きなポイントとなりました。ギターでは、技術・創意にすぐれた金沢さんと、フラメンコの気骨を示した江戸さんに準奨励賞が贈られましたが、紅一点の伏見さんほか、皆さん立派に聴くべき演奏をされたと思います。ぜひ、またそれぞれに育まれた世界を聴かせてください。

小島章司(舞踊家・理事長)[Bs,Bg,G,C]

【23日】
多田れい子:ゆったりした間を保って行くタラントの時は、もう少し“深い呼吸”が必要に思います。タンゴスになってからはもう少しCHISPEARしたらと思います。
小林浩子:中間の淡い音で表現する美しさを表現していました。
土井わかな:コンパス感が心地良く響いて来ました。
井田真紀:踊る為の身体能力の高さを感じました。マヌエルの野太いカンテに拮抗する力がもう少し湧き出て欲しかった。
amicielo:群舞一人一人の身体的なコントロールが良く出来ていました。
エストゥディオ ・カンデーラ発「銀河系うずまき号」:不思議の世界を感じさせてくれました。チャーング。

【24日】
金沢賢二:サザナミのざわつきを感じさせてくれたアレグリアス。
関根彰良:静けさが音楽の行間を広がって行く様子が伝わって来ました。
佐渡靖子:よく考えた構成となっていたが、そこからもう少し空気が染み出す感じが欲しかった。
相田良子:サパテオのソニケーテをもう少しハイクオリティ-にして、美しい足音を織ぎ出す意識を持って下さい。
加藤誠子:もっともっと踊り込んで、もう一度見せて下さい。
漆畑志乃ぶ:後半のMACHOの部分高揚しました。
朱雀はるな:身体能力の高さが光っていました。肩からBRAZOSの動きは美へと導かれました。
瀬戸口琴葉:バイレ、カンテ、ギターの一体感が、踊っている間ずっと継続され、振付者の能力をも感じさせてくれました。
杉山須美江:バストンを持って踊ることの難しさを感じましたが、最後の引込みの数コンパスの気迫に圧倒されました。
徳田悠乃:洗練されて来る一歩手前の良さを感じました。
大城まどか:BRAZOSの大きな使い方が美しさを引き出していました。
細川由香:小気味良い瞬間が多々ありました。
木川美奈子:眼一杯踊る事を楽しんでいる様子が伝わりました。

【25日】
金沢賢二:いい所ついていると感じました。TERCIOの終わり、ブレスがもう少し深くなるともっと豊かになったのでは…。
ノリコ マルティン:スペイン語のなめらかさは板についていて好感が持てました。もう少し伝えたい部分を強調してみて下さい。
鈴木高子:高い境地の“うたごえ”心に響きました。
椎原佳奈子:深く人の心に入り込んで来る魅惑のソレアでした。
田倉 京:考え抜かれた踊りは隙のない、凛とした舞になりました。
永田 健:男性舞踊手の基としての“ダンスの高貴さ”を表現していました。素晴らしいファルーカでした。
小林成江:力強さ、美しさ、その未来に一票投じます。
(出演者への敬称は略させていただきました。)

山田恵子(舞踊家・副会長)[Bs,Bg]

例年にない猛暑の中での稽古は大変だったと思いますがお疲れ様でした。講評を書くということは辛く、出来れば皆さんに何らかの賞を差し上げたい気持ちです。
まず奨励賞を受賞された永田健さん、田倉京さん、椎原佳奈子さん、瀬戸口琴葉さん、朱雀はるなさん、井田真紀さんおめでとうございます。そしてamicielo、準奨励賞のエストゥディオ・カンデーラの皆さん、良く頑張りました!一言ずつ感想を申し上げます。

永田健さんは選考委員全員の満票、素晴らしい踊りで男心の切なさとロマンを表現し心に響きました。田倉京さんの踊りは強弱のバランスがとても良く、衣裳もしっとりとしていました。椎原佳奈子さんは体全体が自己主張していて間の取り方が上手い!瀬戸口琴葉さんは思わずmyBienと心の中で叫びました。朱雀はるなさん、ヒターナ的で力強さの中に哀を感じる踊りでした。井田真紀さん、なんてきれいなブラソ!つめの先まで血が通っていて流れていること…とても大事なことです。

以上6人に共通していることは、①音楽を感じる心②表現力が豊か③自分をよく知っていてコントロール出来る④ブラソがきれいで体全体が踊っている⑤テクニックをつめこみすぎないこと、等良く知っていると思います。

代わって群舞ですが、amicieloの皆さんが踊った「ロス・アラス・イ・ロス・グリートス~羽と叫び~」を私は第1に推しました。選曲・構成・振付がすばらしく、踊ったダンサー1人1人が意図を理解していて流れがきれい!その息づかいが心に伝わりました。フラメンコではないという人もいますが、創作は振付者が感じた曲を自由に創っていくアートの世界です。古い世界にとらわれず、これからももっと上を目指してください。準奨励賞のエストゥディオ・カンデーラの作品は良かったのですが、所々乱れがあったと思います。踊る人の気持ちがひとつになって欲しいですね。発想は面白いのであと一寸の努力でぐーんと良くなります。

今回感じたことは伴奏者のことです。踊りは三位一体と言われています。踊りは良いのに伴奏者に煽られて自分をアピールできなくなった方もいました。踊り手を生かす伴奏者を選ばないと音楽の強さが前面に出てしまうので考えましょう。振付と伴奏が合わないと違和感が生じるのです。また、テクニックをつめこみすぎて静の部分がつぶされ哀がなくなっている方もいます。もう一度自分を見つめてみましょう。

最後になりましたがこれから期待する方々、徳田悠乃さん、坂本恵美さん、青木うららさん、大野明子さん、前進のみです。若い方々のエネルギーを頂いて感謝しております。ありがとう!

坂中浩治(ギタリスト・副会長)[Bg,G,C]

<ギター部門>
今年の演奏者の方々は例年になく平均的にレベルアップしていて大変楽しく聞くことができました。飛び抜けて技術と音楽性がある人がいらっしゃいませんでした。皆様ますます頑張ってフラメンコの進歩に期待しております。

<カンテ部門>
大変スペイン語の発音の良い方がいらっしゃいました。カンテはスペインフラメンコの中での心髄です。10年や20年でその感性は至難のことです。本場でいつか1人でも歌える人が出るよう期待しております。

<バイレ群舞部門>
【amicielo】大変品があり斬新な今までにない舞踊。今後の新しい舞の代表作だと思います。おめでとう。

三澤勝弘(ギタリスト・副会長)[G]

<ギター部門>
初めての参加の方も多く大変興味深く聴かせて頂きました。1.和田さん:技術的にはアルペジョとトレモロに少し力不足が見られました。良くファルーカの感じが出ておりましたが一瞬の間あいに心を配るとさらに良くなると思います。2.藤嶋さん:音の繋がり、連絡に少し不安がありました。ソレアとしての格調の高い骨太さがあればと思いました。ただし、弾き手の内面が感じられ、今後の向上に期待しております。3.金沢さん:飛び抜けたテクニックに驚かされました。ただし、アレグリアとのこともありますが、少し弾き過ぎの感がありました。奨励賞を取られてもおかしくない演奏でしたが、私個人としては、来年再び参加され、できることならソレアを聴いてみたいと思っております。少し気になったのは冒頭部分での①弦上での右指の扱い。スラーがあったとは思いますが、薬指での連続打弦。私の思い違いでしたら申し訳ないのですが、間合い・音色・表情が、私にはその様に聴こえました。4.伏見さん:技術的には繋がりの部分でいまひとつの踏ん張りが望まれます。後半の歌メロディー部などでの繊細さも美しく、随所に女流としての感性も備わり好印象が残りました。5.今田さん:できればポル・メディオでの正調でのものが聴きたかった。表現にまで至る技術の向上が望まれます。限りある時間内でのソロ一曲としてリズム部分が少し多過ぎた感がありました。表現力を向上させ、さらに上へと進展されることを望んでおります。6.江戸さん:まずは音がしっかりとしていて大変快い演奏でした。冒頭は少し過激な表現と感じました。この公演としては少し抑えた方が私としては望ましく思います。それにしても、音の美しさといい、ソレアらしさといい、大変素晴らしい演奏でした。7.野路さん:技術に少し不安がありました。セラニート系の演奏でしたので、特にそれが気になりました。ただし、随所にソレアの美しさと弾き手のそれを見る目が感じられる好演でした。8.関根さん:冒頭の部分、落ち着いておられ好印象でした。トレモロが長過ぎた為か、私には主張が少し弱く感じられました。トレモロは美しいのですが、反面力強さには遠い場合が多く、扱いには少し慎重さが要ります。全体的に安定感がありますので、それに力感が加わればさらに良い演奏になるかと思います。9.中川さん:大変良質のタランタと感じました。ピカードが少し甘かったと思いました。好演ではありましたが、それにいまひとつ奥深い響きが加わればさらにさらに素晴らしくなると思います。10.鈴木さん:とても良いバランスで弾かれておりました。曲もフラメンコらしく素晴らしい演奏でした。欲を言えば、より一層の存在感を加味できれば(特に伝統を感じさせる場面)次へと飛躍できます。11.岸元さん:トレモロ・ピカードの部分にいまひとつの向上が望まれます。前半部に比べ後半はとても良く聴かせて頂きました。音の伸びに配慮し、頭の中での印象を強くし演奏されると良いと思いました。

今井重幸(作曲家・理事)[Bs,Bg]

最初に一言。小生は新人公演の初期から選考委員を全部門で引き受けてきたのですが、あいにく今回は体調が優れず、ギター部門とカンテ部門だけは辞退させていただきました。関係者一同に深くお詫び申し上げます。

さて、群舞部門から始めると、今回は出演団体は5組、少ないのが大変残念だったが、全体のレベルが高く、なかなか観応えがあった。選考会ではあまりばらつきが無く、すんなり1位のamicieloが奨励賞に決定した。

「ロス・アラス・イ・ロス・グリートス~羽と叫び~」はまず作品としての完成度が高く、構成・振付がしっかりしていてすきがなかった。また、ユニゾンを多用せず、時間・空間構成に無駄がなく、ダンサー達のテクニックのレベルも平均していて安定感があり、全体のバランスが良くまとまっていた。

今回は特に出演団体全体のレベルが高かったことに鑑みて、第2位のフラメンコ性を強烈に表出した「エストゥディオ・カンデーラ発(銀河系うずまき号)」にも準奨励賞が決定された。来年の第23回新人公演には、群舞部門により多くの団体が参加、挑戦し、舞台がより華やかになることを期待したい。

次にバイレ・ソロ部門。今回のバイレ・ソロ部門では、奨励賞入賞者は6名、それぞれに才能と個性と新しい可能性を持ったダンサー達が選ばれたことは、大いに祝福したい。中でも今回の最大の収穫は、昨年の第21回新人公演で準奨励賞だった永田健のこの1年間の成長とダンサーとしての大飛躍を観れたことである。人間は強靭な意志と不屈な精神と人一倍の努力を持って大いなる目標に立ち向かえば、到達できる場があることを示した良いお手本だと思う。今回入賞できなかったダンサーたちも、負けずに来年に向けて精進して欲しいと思う。

この後例年のごとく、バイレ・ソロ部門で残念ながら入賞はできなかったけれど、テクニックはしっかりしていてなお、フラメンコ性・表現力・感性等豊かで新しい可能性を感じさせ、特に印象に残ったダンサー達を列挙しておきたい。

【23日(金)】ヴォダルツ クララ、堀越かおり、黒木珠美、下山明子、【24日(土)】加藤誠子、漆畑志乃ぶ、北村和実、坂本恵美、青木うらら、瀬﨑慶太、杉山須美江、林由美子、徳田悠乃、細川由香、【25日(日)】柴田千穂、津幡友紀、小林成江、大野環、以上である。

最後に、話題賞に輝いた鈴木高子は、このところフラメンコ一筋に精進している姿を垣間見るにつけ、テクニックを越えてフラメンコ性を感じさせるカンテに成長したと思う。

EL・POKA岡崎(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

私が推薦した人は、永田健さん、椎原佳奈子さん、瀬戸口琴葉さんの3名と田倉京さん、朱雀はるなさん、井田真紀さんの3名です。

先の3名に共通して感じたことは、皆、努力する才能を持っている。この方達は益々、年ごとに成長していくことでしょう。特に瀬戸口さんには、最高のカンテのもと、最高のチームワークの中でソレアを踊った貴女に運の強さと才能を感じました。田倉京さん、私の中では次に好きな踊りでした。優雅でみがきのかかった、内からにじみ出る深さを感じる踊りでした。朱雀はるなさん、舞台に明りが入った時から、空気が変わり引きつけられるオーラさえも感じられました。楽しく観させてもらいました。井田真紀さん、貴女にも同様、衣裳のセンスも良く、常におちついていて、上手だなあと、ゆっくり観させてもらえました。

次に気になる3名。小林成江さん、大胆な衣裳をさらりと着こなす、素敵なセンスを持つ貴女の踊りに魅了されました。過去の日本人に無い何かを感じました。坂本恵美さん、貴女も派手な衣装を見事に着こなし、メイクも踊りも素敵でした。次回が最高に楽しみです。杉山須美江さん、良い感じで楽しめました。もう少しだけバストーンの振りも欲しかった気がします。大物になる素質をも感じさせてくれる踊りでした。次に黒木珠美さん、振付を丁寧に理解し、嫌味のない素敵な踊りでした。相田良子さん、貴女の踊りの内にヒターナを感じさせる力強さをみました。ぜひ身近なタブラオで観てみたいと私は思いました。きっと楽しくなり、素敵でしょう。ヴォダルツ クララさん、素直で伸び伸びとフラメンコに向かっている様に好感を覚えました。漆畑志乃ぶさん、あと少し!外に向かって踊るのではなく、内に向けた感情が外に出るともっと楽(上手)になると私は確信します。加藤誠子さん、踊りはもちろん、衣裳の着こなしも良く、次回の成長を楽しみに待っています。最後に気になる藤村純子さん、おつかれ様でした。素直で真面目な素敵な踊りでしたよ。自然に感情表現が出来るようになる為に、もっと体力をつけて、足音の幅を広げることです。より小さな音を出せる様にね。また、目の前にいる濃い仲間(先輩達)から、もっとフラメンコのエネルギーを盗み取ってください。ここ1,2年が勉強時です。あとほんの少しだけ頑張ってみてください。陰ながら応援して期待しています。

片桐勝彦(ギタリスト・理事)[G]

和田健:前奏から親指の奏法・ファルーカのコンパス・そしてアルペジオと続いて前半のトレモロまで、力まずにミスタッチもほとんど無い演奏でした。その後のピカード(スケール)も落ち着いて最後の音まで弾ききれたら良かったのですが、残念です。Bbからのフレーズの後のハイポジションでのメロディーもミスなく聞こえてきました。後半のトレモロからのエンディングも途中のピカード同様、最後の音まで欲しかったですが、個人的には好きな曲構成でした。全体を通して感じたのは、力まずに弾けている長所がタッチが弱いというマイナスイメージにも変わり得るということ。難しいですね。親指のアポヤンドも少し弱く聞こえがちでしたが、実はすべてきれいに音が伸びていて良かったです。トレモロ部分の親指もしっかりアポヤンドが出来ていたので、ボリュームや間(呼吸)などで更に良く聞かせるよう研究してみてください。

藤嶋良博:F9からの導入やAm11などの和音を多用しながらも、しっかりソレアのセンティードが出ていました。人差し指を伸ばしてベース音だけ下げて弾くフレーズも、長い指を効果的に使っていて良かったです。ピカード時に右手の手首が曲がってしまうのと、セーハしながらのメロディーが少しクリアーさに欠けていましたが、ブレリアへのカンビオは一昨年以上に更にさらりとして良かったです。カンビオの前後のピカードの精度も良く、昨年と違い右手の指が伸びてしまわずにしっかりおさまっていました。

金沢賢二:準奨励賞おめでとうございます。右手の親指と他の指とのバランスが良くて、アルサプーアやアルペジオとピカードのコンビネーションが全出演者の中で一番良かったと思います。このコンビネーションの良さは、実は左手の押さえ方がしっかりしているからで、スラーやセーハも無理なく聞こえました。最初のリブレで同じメロディーを二回繰り返した後、タパオでリズムを出してからもまた同じメロディーが繰り返されたのは少し退屈な感じもしましたが、一定のテンポを守りながらも最後には無理なく盛り上がりました。パルマなど無しでこれだけぶれないテンポ感はすばらしかったです。サザナミというタイトル通り、水面の小さな波を感じながら聞きました。

伏見かるな:重い音色でいてクリアーに通るメロディーラインは、タッチの正確さや間の取り方のうまさから来ているものなので、自信を持ってください。トレモロの時のamiが少し速すぎたのと、エンディングの音がほんの少しだけですが乱れたのが残念でした。

今田亨:ブレリアを最後までグラナイーナの音使いで弾いたのは良かったですが、リズムが若干揺れるのが気になりました。具体的には12拍ある中で10拍目のシメが少し走っている部分がありました。あとゴルペが多すぎて爪の音が目立ったのと、ラスゲアードの音が時折良くなかったので、更に音色に気を配ってみてください。

江戸裕:準奨励賞おめでとうございます。右手親指(プルガール)をブリッジにかなり近い部分でアポヤンドしているので、力強く骨太の音になっていました。初っ端からこれでもかというゴルペを伴ったプルガール奏法は圧巻で、まるでモロン出身のギタリストが弾いているようでした。後半のピカードも強いタッチで弾ききっていて、全体的な音色は全出演者の中で一番良かったと思います。

野路雄大:全体的に音量が出ていて、強さが感じられたすばらしい演奏でした。例年通りP指のアポヤンドの音が太かったです(今回はトレモロ時もP指のアポヤンドがバッチリでした)。エンディングのピカードとアルサプーアとラスギャードの連打は見事でした。いつか野路さんの踊り伴奏も聞いてみたいです。

関根彰良:最初から最後まで安定感のある演奏でした。ソレアのオーソドックスな音使いを中心にうまく曲を構成したと思います。粒のそろったトレモロも良かったのですが、欲を言えば一弦以外のトレモロも聞きたかったです。トレモロ後に違和感なくAm(b13)からのファルセータを入れられたのは良かったですが、エンディングがラスゲアードだけだったのは残念でした。

中川浩之:力強い音色で良かったです。後は更に呼吸(間)があると、尚良くなると思います。ハイポジションでのメロディーはきれいに出ていましたが、その後下がってくる時のアルペジオ(特にmi)が少し走っていたのと、その次のピカードが最後まで弾ききれなかったのは残念でした。

鈴木宏宜:パルマ無しでもブレリアのマルカールがしっかり出来てました。メジャー(長調)へのカンビオも気持ち良かったです。次回はピカードやトレモロの奏法も聞かせてください。

岸元輝哉:ぺぺ・アビチュエラのソレアはある意味地味で難しいですが、それを敢えて選曲したことにまずエールを送りたいです。そして途中ハレオをかけたくなるような瞬間が何度もある好演奏でした。出だしの間(呼吸)が絶妙だったうえ、音量がしっかり出てたので、その後のラスゲアードが少し力が入りすぎたのが残念です。エンディングは玄人うけする構成でかっこよかったです。

加部 洋(プロデューサー・理事)[G,C]

<ギター部門>
今年は伝統スタイルに根差した弾き方の出場者が多かった。言い換えれば、「フラメンコに聞こえない」と感じさせる演奏者はほとんどいなかった。そういう点では、地に足が付いた姿勢で好感が持てた。これが日本におけるフラメンコの発展の過程と考えられるのかどうか。今後を注目したいと思う。

和田健君●サビーカスのスタイルを基にした伝統スタイルのファルーカ。音色が美しく、情感もあるので、そこがいい所だが、一番の問題点はピカードのフレーズの多くの部分で抜けが目立ってしまったこと。緊張もあるだろうが、練習不足のようにも思える。また、全体的にサラサラ弾き過ぎているのも気になった。もっと一音一音に気持ちを込めれば、リズムのタメも生れ、生き生きした演奏になると思う。藤嶋良博君●最初に気になったのは、右手の弦に対するタッチで、それが浅いためかギターが胴から鳴らずに弦だけが鳴っている印象だった。また細かいアルペジオが不揃いで、流れるようにきれいに聞こえなかった。モダンな音使いは美しかったが、もっとソレアのコンパスの気持ちよさを前面に押し出して欲しかった。金沢賢二君●モダンなアレグリアは凝ったことをやろうとする余り、返ってワンパターンなってしまうことが多いが、金沢君のオリジナルは「弾き過ぎ」という意見もあるが、アレグリアの明るさやわくわく感が出ていて好演だったと思う。ただ1箇所、低音からの親指フレーズが抜けてしまったのが残念だった。伏見かるなさん●まずイントロの、女性とは思えない太い充実した音に驚かされた。そしてタランタへの生半可ではない深い思いを次に感じた。しかし、イントロが終わってパコ・デ・ルシアのファルセータになって以降細かいミスが出て来てしまった。トレモロもシビアに見れば不揃いだった。タランタのアイレは充分に感じられたので、あとはいかにミスを少なくしていくかだと思う。今田亨君●アルペジオとピカードを主体にした、流れるようなイントロからしばらくは素晴らしかった。しかしブレリア独特のリズムが入ってきて、ラスゲアードやセコを多用するようになってから、急にブレリアのノリが出なくなった。そしてまた最初のテーマの戻ると良くなった。結論的に言えば、ラスゲアードやセコを使ったブレリアの独特のリズムのニュアンスを徹底的に鍛えるべきだと思う。江戸裕君●情感たっぷりのイントロ。古いスタイルにこだわった演奏で、メルチョールやディエゴ・デル・ガストールの顔が浮かんでくる。一音入魂のスタイル。しかし、それら先人たちのギターを鵜呑みにしているのではなく、自身のスタイルとして消化しているところが立派だ。少々のミスが惜しかった。野路雄大君●セラニートのソレアへの挑戦は何度目なのだろう。その固い意志にまず驚かされる。過去の記憶を辿ってみると、以前はもっとゆっくりなテンポで練習曲のように弾いていたように思う。しかし今年はかなりノーマルなテンポで挑戦していた。これは遠大な計画なのだろうか。テンポが上がった分、ミスも出て来たのが残念だった。今後の行方を注目したい。関根彰良君●伝統スタイルを基本にした情感あるソレア。イントロの後の低音にミスがあったので、その動揺があったとすれば、普段はもっと上手く弾けているのかもしれない。倍テンポのトレモロが美しかった。エンディングの盛り上げもスムーズだった。中川浩之君●これは楽器の選択の問題で致しかたないことだが、今回の音響の状況下では出る音が金属的に聴こえた。演奏はきっちりとハッキリした音で好感が持てた。ただ、速いピカードのパッセージの音抜けが残念。更にめりはりをつけて、つまり速いパッセージは更に早く、逆に粘るところはもっと粘って弾けば、表現力は上がると思う。鈴木宏宜君●ブレリアのコンパス、アイレ等々すべてを正しく受け止めた上での演奏が素晴らしかった。唯一気になったのがアルサブーアで、リズムが多少つまって聴こえたが、その他は助言も無いくらいで、返って将来を安心してしまった。「のびしろ」が沢山ある。岸元輝哉君●ソレアをより歌わせて表現しようとする「歌心」が感じ取れた。しかしピカードやアルペジオ、トレモロ等々個々のテクニックが不完全で、表現しようとする気持ちに追い付いていなかった。テクニック全般を鍛え直せば、かなり上手くなると思う。

<カンテ部門>
今年のカンテ部門は大挙20人の出場者で驚かされた。お馴染みの方々も多かった。従って聴く前から、去年以前のことを考えて、勝手な想像をしてしまいがちだった。しかしよく注意して聴いてみると、確実に上達していることが今回分かった。飽くなき向上心が現状を変えることを理解した。

田中としろー君●フラメンコに合った良い声質はいつもの通り。それだけでも大きなメリットだが、サリーダから全体的に節回しに自然でないものがあった(一生懸命節を回そうとする努力は分かる)。音程も時々フラット気味になる。しかしタンゴになってからはなかなかの熱唱で、盛り上がった。上野君代さん●第一声からインパクトのあるフラメンコな声。節回しも自然で、切々と訴える歌唱が素晴らしかった。今までの上野さんの中で一番良かった。「こんなに上手かったっけ」と思ってしまった。欲を言えば、スピード感、メリハリがあればと思った。金沢賢二君●歌のセンスがあることは、最初の歌い出しで分かった。情感豊かで音程も良く、何よりもフラメンコのセンティミエントがあることが素晴らしい。発声が更にフラメンコ的になれば言うことなし。最後の一節でちょっと不安定になったのが惜しかった。山田ナオリさん●サリーダで音が不安定なところがあったが、そんなことはどうでもいいくらいヒターナっぽい歌いっぷりが良かった。後半のドラマティックな展開で盛り上がり、更に良くなった。今後に期待したい。松橋早苗さん●音程良く、情感込めた歌い方だったが、発声や節回しにフラメンコ的な自然さが無かった。発音もカタカナスペイン語的だった。しかし、ハレオや最後の立ち振る舞いなどステージングはフラメンコだった。ノリコマルティンさん●持って生れたハスキーボイスが魅力的で、節回しに独特の味わいがあり、エストレージャ・モレンテのようでもあり、インディア・マルティネスのようでもあった。テンポが上がって更に良くなった。将来に期待大。鳥居貴子 さん●音程も節回しもよく、息の強弱の出し入れも堂に入っている。経験の豊かさを感じる。唯一気になるのが発音で、それが良くなれば、かなりのレベルに行くのではないだろうか。諏佐真代さん●まず感じたのは節回しの素晴らしさだった。なかなか出来ることではない。グアヒーラの良い意味での“軽さ”も出ていた。しかし、難しい曲に一生懸命挑戦しているという印象があり、つまりそれはまだ曲を完全に自分のものにしていないということなのだと思う。更なる精進を。中山えみ子さん●少し鼻声だったが、独特のふっくらした声質が魅力的だ。音程もいいし、小気味よく回る節回しもいい。更にもっとフラメンコな表現の領域に分け入ってほしい。鈴木高子さん●今年もやってくれました。お歳のことは言いたくないが、少しもかすれない太い堂々たる声量は特別!マラゲーニャを自分のものにしている。ベルディアーレスになってから更に良くなり、最後は聴衆に明らかに届いた迫真の歌唱だった。小林ゆうこさん●ピティンゴのヒットしたカンシオン・ポル・ブレリア。緊張していたためか全体に力みがあり、力の入れどころ、抜きどころのメリハリが足りなかった。一番ドラマティックな転調部分は疲れのためか声が前に出なかった。しかし、哀感ある独特の声質が魅力的だ。永井正由美さん●伝統の香りをたっぷり感じさせるソレア。気持ちのタメも伝わってきた。音程が時々若干下がったが、よく聴くと可愛い声で、魅力がある。もう少しキーを上げたら迫真のカンテになるのではないだろうか。岡村佳代子さん●内に秘めた情熱を切々と歌ったソレア。マックスで声を出した時に、返って味のある声質になる。節回しが「ミ」に戻る時の処理が不安定な時があったが、並々ならぬカンテへのアフィシオンが伝わってきた。福田加弥子さん●音程よく、カンティーニャの“軽い”味わいをよく出していた。節のメリハリもかなり意識されていた。転調のある難しい部分で音程が不安定になったりしたが、全体的には安心して聴いていられた。佐々木紀子さん●上手くなりましたね。佐々木さんのカンテは何度も聴いてきたけれど、今回が一番良かった。すでに風格さえも出てきている。飽くなき向上心でステップを上げた良い例だと思う。大森暢子さん●サリーダから節回しを正確に辿ろうとしているところに好感を持った。時々音程が不安定になったのが残念だった。私の好みとしては、もう少しテンポアップして発声の強弱のメリハリを付けて欲しかった。土井康子さん●ド迫力の声量!ペルラ・デ・カディスやカマロンのアレグリアが歌われた。ただ後半、声をマックスに張り上げたところで、音が届かなかったのが残念。しかし、説き伏せるような説得力があった。齊藤綾子さん●音程良く、節回しもマラゲーニャの微妙な味わいを実に正確に出しているのに驚いた。しかし何か足りないものがある。発声か?そこをクリアできれば、ガラリと変わるのではないだろうか。北脇英子さん●エストレージャ・モレンテのアレグリア。北脇さんはこの曲に何度か挑戦しているが、今回が一番良かった。音程の不安定さは時々あったが、勢いで歌い切って、全体が纏まっていた。アレグリアの華やかさが出ていた。定直慎一郎君●フラメンコに向いた良い声の持ち主だ。定直君は今までギター部門でお馴染みだったが、ギターよりカンテのほうがいいと思う(失礼!)。まだまだ「のびしろ」が沢山ある。更なる精進を!

鈴木敬子(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロの部>
ヴォダルツ クララさん・とても美しく雰囲気が良かった。強さと安定感が加わればもっと良くなっていくと思う。黒木珠美さん・踊りがとても安定していた。鈴木真衣さん・フラメンコ的な動きがとても良かった。堀越かおりさん・ブラッソが上手く使われ大きな踊りで美しかった。沖真悠子さん・しなやかな動きが印象に残った。もう少しペソが加われば更に良くなるでしょう。井田真紀さん・とても技術があり踊り慣れている。この日一番印象に残った。佐渡靖子さん・踊りがとても安定していて良かった。加藤誠子さん・キレ良く安定した踊りだった。バックの素晴らしいカンテに踊りも触発されていた。相田良子さん・女性らしい美しさと強さを兼ね揃えた踊りでした。朱雀はるなさん・美しい立ち姿。昨年よりフラメンコ的な力が増しとても良くなったと思う。瀬戸口琴葉さん・キレのある動きで安定している。曲の後半で特に感じるものがあった。今は透明なイメージの彼女が、これからどうなるか将来がとても楽しみです。大城まどかさん・手足が長くスタイルが良い上に、踊りに品がありとても好きでした。上半身の動きのキレとペソが加われば更に良い踊り手になると思う。木川美奈子さん・長時間の公演最後の曲だったにもかかわらず、心温まる嬉しい感じにさせてくれたアレグリアスでした。踊りの技術は未だ荒削りかもしれませんが、心から楽しんで踊っている感情が伝わりとても爽やかな気分になりました。柴田千穂さん・ブラッソが綺麗でしなやかな動きが印象に残った。品が良く爽やかな気分にさせてくれるガロティンでした。大野明子さん・女性らしい踊りでとても安定していました。椎原佳奈子さん・踊る身体が出来ていてとても美しく、特に曲の後半に集中力が増して良かった。大野環さん・フラメンコ的な動きが上手くペソがありとても良かった。永田健さん・昨年一番印象に残った人でしたが今年はもっと良くなっていたので驚きました。アントニオ・ガデスを思い出させるような正統派の男性のフラメンコスタイルがとても粋でした。まずはこれが出来て次の自分を探して行ければ本物なのではないかと思う。今後もまた彼の踊りを観て行きたいと感じた。

<バイレ・群舞の部>
二村広美フラメンコ教室「LAS FLORES MIAS」・3名とも踊りの身体が出来ていて安心して観れた。フラメンコ的な動きも強さもとても良かった。エストゥディオ・カンデーラ発「銀河系うずまき号」・群舞のフォーメーション、振付ともフラメンコ的な強さや魅力を発揮していてとても良かった。この日の群舞のなかで一番好きでした。

鈴木眞澄(舞踊家・理事)[Bs]

「繋がるべきもの」
本来のフラメンコ舞踊が生のギターやカンテとともにあるのは大きな特色と言えます。それは、三位一体となって感情表現することが大切な基本になっているからです。生のギターやカンテにのせた思いを自分の身体を通して表現することが、アレグリアスの喜びや、ソレアの孤独感、シギリージャの叫び、ガロティンの愉しさ、タラントの悲哀等々だと思うのです。
そして、もうひとつ大切なもの…。ほかの誰でもない唯一無二のご自分の存在を忘れないでほしいです。フラメンコは一人一人の個性を重んじる「私は、こう生きてます!」その表現だと思うからです。CORAJE(コラへ)…勇気、気力、「肝っ玉」と訳した方がいらして、的を得た表現だと思いました。

蔑まれて、痛めつけられた民族のコラへをもった心の叫びがフラメンコなら、その原点を忘れては本道からそれてしまいます。ましてや私たちは異民族なのですから、もともとフラメンコは何だったのかをいつも心に刻んで、遠い道のりながらもまっすぐに歩んでいくべきではないか。そんなふうにみなさんにも、自分自身にも問い続けていきたいです。

以下、考えられるアドバイスをお伝えします。何かのお役に立てたら幸いです。
・数ではなくコンパスの流れやギター、カンテのメリハリを意識して振り付ける。
・ギターやカンテを心で感じて対話しながら踊る。
・物理的には、重心が安定して根っこがはっていないとギターやカンテを受けとめられない。
・三位一体の要となるMANDAR(マンダール)…指示をだす、LLAMADA(ジャマーダ)…知らせの意味をきちんと把握し、より自然に唄い、奏でていただく。
・AGUANTAR…ぎゅうっと力をためるということ。そして解放する。
・力を入れるだけでなく、空間を動かすという観念。
・自然の成り立ち…風をおこすようにとか、コップの水が溢れ出るように足をだす。重いものを動かすようにしたら力強いブラセオ(腕の動き)になりますし、空気を切り裂くようにすればシャープな動きになります。

いつも大地をしっかりとおさえて根をはり重心を安定させ、身体の芯である幹をまっすぐに、枝を大きくのばしてより大きな空間を動かす。このような視点からもう一度ご自身の踊りを見つめなおしていただけたら、より素晴らしいフラメンコの世界が見えてくるのではないでしょうか?

最後に、心の繋がりを感じられた方々、ヴォダルツ クララさん、黒木珠美さん、土井わかなさん、池田理恵さん、大岩奈青さん、木川美奈子さん、津幡友紀さん、長本真由さん、永田健さん、とても嬉しかったです。すべての出演者の方々へ、今回の経験が皆さんの大きな糧になることを心から願っています。ありがとうございました。

曽我辺靖子(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

まず特に印象に残った以下の方々について記します。
【23日(金)】
重藤優子さん:ブラッソから上体への動きは美しい。サパテアードの強化を望みます。ヴォダルツ クララさん:スタイルも良く、足も強い。パソの流れが良く魅了されました。黒木珠美さん:個性的な衣装が似合ってました。バックとのバランスも良かったです。もう少しタメが欲しかったですね。土井わかなさん:小柄ながら機敏な動きが魅力でした。下半身の重さが加わると更に良くなるでしょう。池田理恵さん:コンパス感も確かで、切れ味良く表現力もありました。沖真悠子さん:体がよく動く方です。それが前半ではプラスに、後半では少々マイナスの面に出たかしら?大岩奈青さん:アレグリアスらしい雰囲気のある踊りでした。井田真紀さん:強く正確なサパテアード。動きにスキがなくぐいぐい引き込まれました。横畠由美子さん:難しい曲に挑戦しましたね。背中を意識すると踊りが大きく、空間をつかむことが出来ますよ。

amicielo:モダンな衣装と振付。身体が訓練され、スキも無く良くまとまっていた作品でした。鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ:それぞれが楽しんでいる姿に好感が持てました。二村広美フラメンコ教室“LAS FLORES MIAS”:三人のチームワーク良く、一生懸命踊っていましたね。もう一歩はじけてみては?ALMA FLAMENCA:男らしさをふつふつと感じさせてくれました。それぞれの持ち味をもっと長く観ていたかったです。エストゥディオ・カンデーラ発「銀河系うずまき号」:6人のパワーと構成、振付、転換の良い「うずまき号」でした。1人1人のモチべーションも高く見応えがありました。

【24 日(土)】
佐渡靖子さん:大胆な動き、ブエルタの美しさが良かった。漆畑志乃ぶさん:小柄な身体から溢れるパワー。特に後半からの表現は素晴らしかったです。昨年に引き続き好印象でした。青木千鶴子さん:曲の感じは良くとっています。手首の柔らかさが武器ですね。朱雀はるなさん:サパテアードのハギレも良く、緩急のある踊りが見事です。青木うららさん:コンパス感抜群。正確なサパテアードに身体の切れ味も良く強く印象付けられました。瀬戸口琴葉さん:リズム感良く、表現力も増しましたね。前回に比べかなりの成長を感じました。徳田悠乃さん:大人の踊りを感じさせてくれました。ぜひ再度観たいです。大城まどかさん:体のしなやかさと共にブラッソの流れに味がでていました。

【25日(日)】
柴田千穂さん:ブラッソ美しく曲の持ち味であるコケティッシュさも良く表現出来ました。コルドベスをもう少し使って欲しかったです。津幡友紀さん:後半のノリは素晴らしいですね。椎原佳奈子さん:タメと呼吸を感じさせる動きにバックとの一体感も伝わりました。田倉京さん:実力を感じました。凛とした世界観を持っています。小林成江さん:以前にも増して実力を上げてきましたね。正確で力強いサパテアードを武器に表現力のアップを。大野環さん:魅力ある踊り手さんです。実力を出し切れなかった感じが残念です。永田健さん:こう来ましたか永田君!試行錯誤の結果は大成功。フラメンコの大切な歴史を思い出させてくれました。

そのほか印象に残った方々を列挙します。
鈴木真衣さん:強いサパテアード。堀越かおりさん:メリハリのある踊り。北村和実さん:細い体から湧き出る芯の強さ。阪上のり子さん:女性らしい柔らかさ。坂本恵美さん:独創的な世界観。山根智子さん:シレンシオとブレリアの良さ。小林万希子さん:ほっとした時の可愛らしさ。木川美奈子さん:くせのない素直な踊り。川田久美子さん:おおらかさ。藤本ゆかりさん:大人の雰囲気。

手塚真智子(舞踊家・理事)[Bs]

*土井わかな:一生懸命に踊っている気持ちが良く伝わって来た。フラメンコの身体作りも勉強すると良いでしょう。
*池田理恵:始めの立ち姿が美しく印象に残りました。全体の流れにメリハリが欲しかった。
*鈴木真衣:ねばりと歩き方を大切に。
*堀越かおり:しっかりとしたソレアで、もう少し見ていたいと感じた。顔等に感情表現が出ると良いと思う。
*大岩奈青:今年は、大岩さんの迫力が出て来なかったようで残念でした。
*加藤誠子:安定感が良かった。
*朱雀はるな:顔の表情が良く、昨年と比べ、大人の雰囲気が出たように思う。
*瀬﨑慶太:フラメンコ歴がまだ浅いのでしょうか?身体作りから基礎を身につけて、これからが楽しみの一人です。
*瀬戸口琴葉:ブレリアに入ってからも途切れない気力。見ごたえのあるソレアでした。
*大城まどか:エレガンテでした。
*木川美奈子:笑顔が良い印象でした。重心の置き方、プリエ等を勉強するとブエルタがもっと良くなるのではないでしょうか。
*柴田千穂:身体の勉強も出来ているよですが、ブラッソの使い方に気を付けると良いのではないでしょうか。
*大野明子:背中、ブラッソの使い方が良く、好印象のティエントでした。
*藤村純子:難しそうな振り付けに良く努力をしたと想像しました。
*津幡友紀:元気で、演技力があると感じました。
*椎原佳奈子:全体的に好印象で、特に引っ込みが良い感じでした。ただ、重心が少し後ろになりがちのように見えました。
*藤本ゆかり:力強さはありましたが、ブレリアに入ってからエネルギーが切れたように見え、配分を考えると良いでしょう。
*田倉京:気迫に溢れ、目力もありました。
*小林成江:丁寧に踊り込んだソレアですが、もっと感情表現が欲しかった。
*長本真由:根性のアレグリス!化粧の工夫も大切です。
*永田健:見ていて思わず背筋が伸びるようなファルーカでした。フラメンコに向かう姿勢が美しく、オーレ!

野村眞里子(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

<バイレソロ部門>
(奨励賞):井田真紀「シギリージャ」。歌振りとレマーテがよかったです。エスコビージャはファルセータとよく絡んでいました。緩急のつけ方もお上手でした。回転のキレもありましたが、少し不安定に見えるところがあり、また後半あわてたような部分がありました。このあたりを調整されるとさらによくなりそうです。朱雀はるな「ソレア」。1歌はじっくり、2歌は次第に激しく――。メリハリのきいたいさぎよい踊りです。「ヌキ」やブレリアの入り口が格好良く、フラメンコ体質を感じます。引っ込みはタイミングが少し惜しかったです。瀬戸口琴葉「ソレア」。最初のジャマーダから曲に入り込んでいるのが伝わります。足がとてもよく動いていて、歌とぶつける部分も素敵でした。ブレリアもよかったです。椎原佳奈子「ソレア」。「ソレア」の雰囲気がよく出ていて、スビーダ、ジャマーダは強く、回転のキレもいいです。ダイレクトに入った2歌では、足とぶつけた振付もさえました。すでに基礎力を十分お持ちなので、今後は表現に磨きをかけてください。田倉京「タラント」。歌振りとレマーテは静かに踊り、その後強い足へ。ファルセータで動いてコントラに入るなど、舞台を広く使っていました。昨年と比べても、一段と力をつけられたようです。永田健「ファルーカ」。バイオリンが入った音楽構成で、じっくりと踊っていきます。スビーダの強さや速さ、ジャマーダ、回転からのキメなども、昨年よりぐっとよくなっていました。キメのポーズの美しさに加え、マルカールが美しいです。ピルエットで少し不安要素もありますが、これは今後の課題にしていただければ十分です。

(印象に残った方):大西美江「アレグリアス」。とてもきちんとなさっていたのですが、その分インパクトが薄くなってしまいました。もう少し「爆発」があってもよかったかもしれません。黒木珠美「ソレア」。歌振りはしっとりと、ファルセータ振りの最後は足で盛り上げました。全体に踊り慣れていらして、いさぎよさが感じられる踊りでした。土井わかな「ソレア・ポル・ブレリア」。元気がいい踊りで、スビーダの思い切りもよかったです。キメが少しあわてて早くなってしまったところもありますが、全体としてよく踊れていたように思います。池田理恵「ソレア・ポル・ブレリア」。足も体もよく動いていました。スビーダもしっかりとして、安定感があります。ブレリアも面白く、腰の動きがとてもセクシーでした。漆畑志乃ぶ「シギリージャ」。じっくりとためのある動きがよかったです。ドラマチックな流れを上手に踊っていらっしゃいました。レマーテは少しバランスをくずしたところがありました。マチョへの入り方がよかったです。北村和実「ソレア・ポル・ブレリア」。モダンで、シャープな動きに個性があります。エスコビージャの細かい足もよく動いていました。ジャマーダの後の「間」を研究なさってみてください。坂本恵美「タラント」。ファルセータに合わせた動きがモダンで素敵です。レマーテも変化に富んでいました。ご自身の好きなフラメンコのスタイルがあって、それを追及していらっしゃるのがよくわかります。タンゴもよかったです。徳田悠乃「ソレア・ポル・ブレリア」。歌振り、ジャマーダなどの作りがモダンですが、とてもよくこなしていらしたと思います。ファルセータ振りもよい雰囲気です。メリハリがありました。津幡友紀「ロマンセ」。フラメンコ体質の、思い切りのよさが魅力です。歌振りで手を上げるだけのところでも、見ごたえがありました。「ヌキ」はもう少し研究なさってみてください。藤本ゆかり「ソレア」。昨年より回転の軸がしっかりしてきましたし、サパテアードの音色もきれいになっていました。今後ますますの精進をお願いいたします。小林成江「ソレア」。体がとてもよく動く方で、全体に音楽とよく作り込んだモダンな構成です。ジャマーダも「9裏」などを違和感なく使っています。ブレリアもよかったです。大野環「バンベーラ」。ギターや歌との絡みもよく、「歩き」を含めた舞台での動きも堂に入っています。作品としても見ごたえがありました。今後は、サパテアードの音質を研究していただくと、さらによくなると思います。

<バイレ・群舞部門>
(奨励賞): amicielo「ロス・アラス・イ・ロス・グリートス~羽と叫び~」。ドランテスの曲に合わせて踊るモダンな群舞です。白っぽい衣装の3人と、茶やグレーの衣装の5人が、それぞれにポーズをとっての暗転板付。手の動きから。途中さまざまにフォーメーションが変化し、次第に盛り上げていきます。最後は、手がすーっと下りていくところで暗転。ドラマチックな美しい作品に仕上がっていました。

(準奨励賞):エストゥディオ・カンデーラ発「銀河系うずまき号」「バンベーラ」。暗転板付。一人が後ろ向き、他の方が前向きに立っての始まり。ユニゾンはよく合っていて、フォーメーションのさまざまな変化にもよく対応されていたようです。ファルセータの入り口のウエーブのような手の動きがユニークでしたので、もっと効果的に使われてもよかったかもしれません。最後は、最初のポーズに一度戻ってから、一人ずつ退場して暗転。余韻が残りました。

花岡陽子(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
須磨カオリさん:ていねいに踊っていますが、ダイナミックさが欲しいです。
多田れい子さん:線が美しく、ブラソも美しいです。
重藤優子さん:ボリュームを生かしてブラソも動きも美しいです。
小林浩子さん:舞台いっぱいがよかったです。楽しさが欲しいです。
ヴォダルツ クララ:スタイル抜群!力強さがもう少しです。
大西美江さん:アレグリアスらしい表現もいいですし、シレンシオも工夫しています。
黒木珠美さん:パソがていねい。重厚感もありアイレもありです。
土井わかなさん:よく動かれています。少し物足りなさが。
佐藤幸子さん:大きく、力強い、きっとファンがいらっしゃるでしょう。
池田理恵さん:身体がブレない、伸びやか、しなやか。衣裳もステキ。
鈴木真衣さん:サパティアードよいです。パフォーマンス性が少し欲しい。
堀越かおりさん:全体のバランスが良く、ソレアらしい踊りがよかったです。
沖真悠子さん:なめらかに踊っています。ブラソにもう少し力を入れて。
大岩奈青さん:大きい身体をいかし、安心して拝見できます。
井田真紀さん:舞踊性がありカンテによく乗り気持ちがいいです。
横畠由美子さん:身体、ブラソのお勉強をもう一度してみてください。
下山明子さん:強く、美しいブラソをどんどん踊っていってください。
佐渡靖子さん:少し物足りなさが。荒けずりかも。
加藤誠子さん:テニクニックもすばらしいです。振りが少し多いです。
相田良子さん:パソが少し単調になります。もうひと工夫です。
漆畑志乃ぶさん:全身全霊で踊られていること、こちらに伝わります。
西村真由美さん:スタイル抜群、よくまとめています。
青木千鶴子さん:楽しさを表現するテクニックを。これからです。
朱雀はるなさん:盛り上げ方と表現力、素晴らしいです。
北村和実さん:コンパスは素晴らしい。粋さとかもう少し。
山谷祐子さん:大型フラメンコダンサー。また来年挑戦して。
阪上のり子さん:タラントらしい感情表現がもう少しです。
坂本恵美さん:動きが少ないのが個性的。ステキな衣裳。
青木うららさん:ボリューム感あってアイレがあります。
瀬﨑慶太さん:将来性を感じます。光り輝く日まで。
稲垣栄子さん:小柄の身体でよく動いています。姿勢とかブラソとかもう少し。
瀬戸口琴葉さん:瀬戸口さんのフラメンコになっています。充分楽しませていただきました。
杉山須美江さん:バストンの踊り、もうひとつ工夫してください。
林由美子さん:精いっぱいが伝わります。表現が少し足りないかも。
山根智子さん:たくさんこれからも踊っていかれると力強さが出てくるでしょう。
徳田悠乃さん:切なさが良く表現、足の強弱も上手です。
大城まどかさん:立ち姿ステキです。表現力のある大城さんに期待。
細川由香さん:初々しいです。これからの上達が楽しみです。
小林万希子さん:安定感のあるアレグリアス、サパティアートも面白いです。
木川美奈子さん:テクニックとしての楽しい、明るい振りを!
柴田千穂さん:サパティアードお上手、舞台をもう少し大きく使って。
大野明子さん:美しく伸びやかにです。アピール度の高い何かもうひとつ。
藤村純子さん:大きな世界を舞台で創ってみてください。
川田久美子さん:初々しいです。たくさんこれからも踊っていって欲しいです。
津幡友紀さん:日本人ばなれした、とてもフラメンコを感じます。
椎原佳奈子さん:伸びやかな強さがあります。レベルの高いものを拝見しました。
藤本ゆかりさん:力強さが力みになっているかも。よく踊っています。
田倉京さん:きれい!しなやか!よく勉強していますね。
細野貴子さん:もうひと工夫して、上達を楽しみにしています。
小林成江さん:内側からわき出たブラソを研究してみて。
宮本靖子さん:力強さが欲しいです。舞台空間をもうひと工夫。
長村奈津代さん:女らしく、色っぽさのグァヒーラが欲しいです。
大野環さん:これを見て!というパソが欲しいです。
長本真由さん:ボリューム感が出ています。少し荒けずりかも。
永田健さん:17人の選考委員全員の“すばらしい”でした。スピード感と美しさがありました。

<バイレ・群舞部門>
amicielo:モダンダンスの要素を取り入れ、構成・技術とも素晴らしかったです。
鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ:コミカルなブレリアでした。カンテも面白いです。少し新鮮味が足りないように思いました。
二村広美フラメンコ教室LAS FLORES MIAS:3人でしたのでひとりひとりがもっと力強く。構成が今ひとつでした。
ALMA FLAMENCA:3人の個性が伝わりました。気持ちよく拝見できました。
エストゥディオ・カンデーラ発「銀河系うずまき号」:フラメンコを感じました。衣裳をユニゾンでなくても。よく揃っていました。

本間牧子(舞踊家・理事)[Bs]

受賞された方々はどの方も立ち姿、軸がしっかりしています。インナーを使うことができメンタルと肉体をコントロールすることができています。バック(ギター、カンテ、etc.)と心を合わせながらそれぞれの世界を表現してくれました。

井田 真紀さん→レトラの部分の間合いも良く、メンタル部分と体がひとつになりブラソも美しく重厚なシギリージャで感動いたしました。 朱雀はるなさん→素晴らしいメリハリと歌と共に弧を描く ゆったりとしたブラソ、ブレリアの盛り上げも素晴らしくフラメンコを堪能させてくれました。瀬戸口琴葉さん→軸がしっかりとしていて落ち着いた感じがしました。丁寧に踊りながらも静と動の間合いが良く しっかりアイレが伝わってくるのに感銘いたしました。椎原佳奈子さん→総合力がありブラソ、マノ、体の使い方にしなやかさとメリハリがあり ひとつひとつの振りが明確に伝わってきて素晴らしかったです。田倉京さん→気迫を感じました。キリッとした動きの中でしなやかに絡むブラソが素敵でした。目線がしっかり決まっていて最後のはけもイキです!初めて本当の姿を現してくれた竜のようで…感激しました。永田健さん→最高のファルーカでした!正統派男性舞踊の素晴らしさを観せてくれました。これからも楽しみにしています。

☆多田れい子さん→マノ、ブラソ とても美しいです。体が流されないように しっかり止めると良いと思います 。池田理恵さん→躍動感があり良かったと思いますが…構成に静の部分を作りメリハリをはっきりさせると動も生きます。堀越かおりさん→重さ、安定感があります。目線を時には思い切り正面にするとインパクトを作れます。相田良子さん→パワーがあり後半良かったです。前半、静と動のメリハリつけてみて下さい。坂本恵美さん→体の使い方、コンパクトでしっかり使えていて良かったです。もっと思い切りはじけてみて下さい。瀬﨑 慶太さん→素晴らしい資質を持ってらっしゃいます。後半まで変わらず踊り続けられるよう基礎作りをしてみて下さい。大城まどかさん→落ち着いた感じで良かったですが、強さ重さもっとほしいです。体も気持ちもめいっぱい使ってみて下さい。大野明子さん→ピリッとして良い感じでした。重心を落として静止をしっかりするとより良いと思います。小林成江さん→りんとした美しさとパワーがあります。ゆったり感がほしいです。静と動のバランスを考えてみて下さい。長村奈津代さん→椅子からの出が美しかったです。扇子使いも丁寧で良かったと思います。頭の部分(首)を しっかり体の上に乗せましょう。

渡邊薫(舞踊家・理事)[Bs]

第22回新人公演の出演者の皆様お疲れ様でした。それに益して新たなる感動、熱い感動を届けて頂きありがとうございました。バイレ、群舞、ギター、カンテ部門すべてのプログラムを拝見させていただきました。改めて日本のフラメンコの底上げがされたことを再認識いたしました。

<バイレ・ソロ部門>
奨励賞受賞の方達おめでとうございます!私は選考会で8名の方が印象深く残り、6名の選出に悩みました。ここではバイレを通して想いが私に届いた方達と来年に期待を込めての方達について書かせて頂きます。

*井田真紀さん:コンパス感があり空間を上手く掴んでいた。メリハリのある踊り。
*朱雀はるなさん:自分の世界をしっかりと表現していた。
*瀬戸口琴葉さん:カンテを感じて踊り、押さえもあり好感のもてる踊り。
*椎原佳奈子さん:カンテ、ギターと上手くからみ、求心力がある。上体の表現力も豊か。
*田倉京さん:落ち付きがありドラマ性を感じさせる大人の踊り。
*永田健さん:久々に伝統的で端正なるファルーカでした。私の中にはガデス、トーマス、グイート、マノレーテ達の姿が目に浮かび感動でした。前回の悔しさ?!をバネに素晴らしい成果を実らせました。もっともっと踊って下さい!
*ヴォダルツ クララさん:体幹がしっかりしていて、サパテアードもリンピオ。間のとりかたも良かった。ペソ不足が惜しい。是非次回も!期待しています。
*青木うららさん:ギター、カンテとよく合った力強い踊り。
*徳田悠乃さん:安定した腰、カンテとのからみも良かった。ファルダをあれだけ使う場合、衣装に対しご一考を。
*大城まどかさん:スピード感があり、リズムも安定していた。もっと自分が何を伝えたいのかを明確に。
*津幡友紀さん:フラメンカで存在感がある。がもっと靜、動のメリハリを。
*小林成江さん:リンピオなサパテアード、抑揚があり前回より数段の上達。もう少し感情を表にだしては!
*大野環さん:テンペラメントを感じた、もう少し丁寧に最後まで踊って欲しかったと…。

以前からも感じていた事ですが、今回は特に強く思いました。踊りとバックのギター、カンテとのバランスです。バックがリズム、コンパス感をリードし過ぎて、その前で踊らせてもらっている(!?)と感じた方達が何名かいました。バックと上手くかみあっていなかったのです。自分の今の踊りをよく知りバックのギター、カンテを選ぶのも踊り手のセンスと考えています。出演者の皆様がそれぞれ、いろいろな思いを込めて踊られた舞台、充分に感じ受け取りました。この新人公演をバネに益々ステップアップして下さい!楽しみにしています。

市川恵子(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

真摯な気持ちで自分のフラメンコと向き合い、いろいろな壁を乗り越えながら今回の公演に臨まれたことと思います。その経験がこれからの皆さんの励みとなり、またこれから立ち向かうであろう壁を乗り越えていく可能性へとつながっていくよう願っています。技術の優れている方はより高いフラメンコ性を目指し、フラメンコの心意気を大切になさっている方はより気持ちが伝えられるよう、地道な訓練と努力を、また、まだまだフラメンコとしての身体が出来上がっていない方は基本的な芯のある身体作り、シンプルな振りを背伸びすることなく、一歩ずつ進まれるようそれぞれが自分のレベルに応じて努力されますよう、フラメンコの心を大切に、フラメンコの感動を求めて頑張っていただきたいと思います。自分の奥深いところからこみ上げてくる思い、一振りを大切に…。

<バイレ・ソロ部門>私が奨励賞に推薦したのは、
★池田理恵:まず立ち姿がきれい。気迫もあり、粋な洒落た踊りでアイレも十分。フラメンコを良く解っている踊りだったと思う。モデルナだがフラメンコ性もある。あえて言うならブラソが少し大振りだったかもしれない。
★井田真紀:ブラソ、マノが丁寧で情感のある見応えのある踊り。緩急・安定感があり切れ味も良く、力強さを感じさせた。上手い!そのフラメンコ性好きでした。始まりが惜しい。マッチョへいく必然性を大切に。
★漆畑志乃ぶ:うねり・絞りがあるとても良い踊りだった。舞台に流れる緊張感、内から湧き出るひたむきな熱い思いが伝わってきて、思わず引き込まれた。将来に期待したい。
★朱雀はるな:見事に化けた。締りが出てきて存在感すら感じた。もともと個性もアイレもあったが、この1年の成長は目覚しい。その成長ぶりに感動。力強さのある、気迫に満ちた表現力豊かな踊りだった。
★椎原佳奈子:自分をしっかりと持っている踊り手だと思う。細いのにパワフル。それでいて心に沁みるものがあり、雰囲気もあった。足もしっかりしていて、込める力もあるのだが、フラメンコとしての重みが欲しい。
★田倉京:見事だった。舞踊的に完成度高く、上質な、美しい踊り。自分のスタイルを崩さずに、自分の世界のままでやり遂げた姿勢に胸を打たれた。たゆまぬ努力がなかったらあんな踊りは踊れない。舞踊家として感動!
★永田健:無駄のない身のこなし。立ち姿、歩く姿がきれい。男性としての伝統的なスタイルを保つ貴重な存在だと思う。それを迷うことなく貫き通した強さ・努力に感動。ファルーカとしてのパルマの振りが少し軽く、コンパスの締めをもっと大切に。

次に、特に印象に残った方々は、
●ヴォダルツ クララ:長身を活かした、伸びやかでしなやかな踊り。次への展開がスカッとしていて心地良い。新鮮で好感を持てる。ジャマーダをもっと強く。これでフラメンコの強さが出たら期待大。
●大西美江:個性あふれる元気で晴れやかな踊り。切れ味のあるピエ。意志を感じさせる小気味良さ、表現力、フラメンコ性もある。魅力的で良い踊りだったが、個性が勝りすぎるとアクになる。
●大岩奈青:スタイルのはっきりした独自性の強い個性的な踊り。自由自在に自分の意志で踊っている姿が魅力的で味がある。思わず見てしまう。少しブラソが甘いのが気になる。どこかにシビアなところが欲しい。
●相田良子:不思議な魅力があって印象的。メリハリがあり、見せ方もうまい。うねり、激しさ、コンパスの締め、ジャマーダもはっきりしている。私はフラメンコ性を感じるのだが、その独特な雰囲気に疑問を持たれる場合もあるかもしれない。
●青木うらら:全体的に良くまとまっている。荒削りだがパワフルなそのフラメンカな踊りに惹きつけられた。抑揚が出てくるともっと良いのでは。私は好きです。
●瀬戸口琴葉:素晴らしいカンテによく応えて踊っていたと思う。まさしくソレアの空気感。心を打たれ見入ってしまった。バックが強すぎて足の音があまり聞こえなかった。

次の方々も印象に残りました。
◎多田れい子:優雅でしなやかで魅力的。身体の線も美しい。去年は少し強すぎたが、今年は少し弱かったのが惜しい。良いものを持っているので、フラメンコの真の強さとは何かを考えて、もう一度挑戦して欲しい。
◎黒木珠美:印象的で迫力があった。華もあり気合があるのは良いのだが、少し大げさ過ぎるので、さりげなさ、ふくむところがあると良いのでは。
◎土井わかな:独特の突出した個性があり、フラメンコ性も強い。真っ直ぐな視線やひたむきさに惹き込まれたが、もっと女性としてのマノとブラソを大切に。
◎鈴木真衣:少し大げさなところもあるが、気合は十分に伝わった。一部リズムの乱れが気になったが、フラメンコとして良いものを持っている。もっと自分で音頭を取って。絞りがあるとなおいい。
◎堀越かおり:始まりが印象的。全体的によくまとまっていて、フラメンコを良く知っている踊りだと思う。上手だがもう少しフラメンコとしての感動が欲しい。
◎徳田悠乃:身体能力に優れ、しなやかで優雅な品格を感じる。足を打つ時に体が上下するのを注意。肝心の抜けに甘さも。フラメンコとしてグッと迫ってくるものが欲しい。

今後に期待したい方々は、
○佐渡靖子:フラメンコとしての身体は出来ている。踊りがきれいで、キレもあるのだが、マルカールが流れ気味で、テンションがずっと同じ印象。ドーンとした部分が欲しい。
○坂本恵美:今風な振り付けのかっこいいフラメンコ。ちゃんと踊っているのだが、フラメンコの感動についてもっと考えてみて。唄の最後はもっと大切に。
○柴田千穂:ブラソとマノが美しい。リズムがきれいで、ガロティンらしさが良く出た、こなれた踊りだったが、全体的にもっとピリっとしたところが欲しい。
○大野明子:唄ぶりにティエントらしい重み、うねりがある。ちゃんと意思を感じるパッションがあるのに、少し中途半端さも残る。セギードをもっとしっかり。
○川田久美子:アレグリアスらしい表情に好感がもてた。可愛らしさに惹きつけられた。シレンシオはモダン過ぎて、踊りこなせていない感じがある。足はもっとしっかり。
○津幡友紀:パワフルでフラメンコ的表情があって結構好きだった。最初から最後まで一辺倒にならないよう、情感を感じさせるような部分も欲しかった。選曲ももう少し考えて。
○小林成江:印象的。モダンな振りを良く踊っているが、振りが懲りすぎ。タパオはカッコ良く、ピエもクリアだが、フラメンコとしての表情、心から湧き出るものが欲しい。
○大野環:抜けなどにハっと思わせる部分がある。ブレリアは良かった。が、足元が少し浮いている。全体の纏まりが悪い。もっと落ち着いた振りの方が良さが出ると思う。
○長本真由:面白い個性で、気合のあるフォルテな踊りが魅力。ただ、ずっと同じ印象なので、肩の力を少し抜くところも欲しい。将来が楽しみなフラメンカ。

そして、今後さらなる精進を期待したい方々へ。
□重藤優子:重みはあった。唄の部分に足を入れるなら、もっと気分良く奏でて欲しい。唄の締めもしっかり。全体的に少しオーバーな表現が気になった。
□加藤誠子:身体の芯は出来ているがずっと同じテンション。マルカールが流れ気味。マッチョへ行く時の必然性が足りない。コンパスの締めが弱いので注意。
□青木千鶴子:ちゃんと踊っているのに何故かつまらない。もっと唄を感じて欲しい。演技過剰に感じるので、もう少しシンプルにした方が良さが活きるのでは。
□杉山須美江:きちっとは踊っているが、もっとフラメンコとして迫ってくるものがいる。身体が安定していない。もっと重さがいる。フラメンコとしての表情が欲しかった。
□林由美子:ファルセータがきれい。気迫と雰囲気はあるが何か中途半端に感じた。少し足が弱い。唄をまだ感じられていない。シギリージャをもっと理解して。
□山根智子:ブレリアからのテンションが良かった。が、足が浮いている。シレンシオのギターをちゃんと聞いて。ずっと印象が変わらない。アレグリアスらしい起承転結を。
□大城まどか:宙を掴む不思議なブラソ。マノをもっと使って伸びやかに。グッと身体を締めて、もっと絞り、うねりが欲しい。歩く姿が良かった。
□藤本ゆかり:個性的!タパオは良かったのだが、全てが大振りな印象。ピエももっとしっかり。そして、もっと情感を大切に。
□木川美奈子:踊りはまだまだだが、笑顔が良い。アレグリアスらしい良い雰囲気を持っている。新人らしいひたむきさに惹かれ楽しくなった。ブラソ、マノなどしっかり学んで今後頑張って欲しい。

群舞で奨励賞に推薦したのは
★amicielo:素晴らしい!モダンダンスとフラメンコの融合?CDで作った作品なのに確かにフラメンコの感動があった。個性を活かした芸術的な振付に存分に応える身体を駆使した踊りで見応えがあった。

悩んだ末の次点・特に印象に残ったのは
●銀河系うずまき号:フラメンコへの熱い気持ちが伝わってきた。強烈に訴えかけてくるものを感じる、気迫ある群舞で構成も素晴らしい。いつもムイフラメンカなエストゥディオ・カンデーラ。そのフラメンコ性、私は大好きです。

印象に残ったのは
●ALMA FLAMENCA:フラメンコ性の高い個性的な3人が、今回は何を見せてくれるのだろうと期待し過ぎてしまった感がある。それぞれの個性のぶつかり合い、3人がもっと異なる振りにしても良かったのでは。(例えばレマーテだけでも。。。) 揃って踊ろうとする意図がマイナスに働いたかもしれない。もちろんソロの部分は素晴らしかった。

今後さらなる精進を期待したいのは
○鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ:すべてが大げさ過ぎてフラメンコ性が薄れているのでは。一旦肩の力を抜いて。もっとさりげないところを作った方が、かえって気持ちが伝わるのでは。
○LAS FLORES MIAS:真面目にフラメンコに取り組んでいる気持ちが伝わってきて好感が持てた。フラメンコとしての身体がまだできていない人も見受けられた。芯のある身体づくりに努力して欲しい。

東仲一矩(舞踊家・理事)[Bs,C]

<バイレ・ソロ部門>
今回バイレ・ソロ部門で奨励賞を受賞された「井田真紀」さん、完成度の高い踊り込まれて時間を費やした時の味を感じました。“ブラソ”“ピエ”を自己の感性の内から表現されていました。「朱雀はるな」さん、前回と今回の成長をはっきりと観せていただきました。スピード感が素晴らしいと思いました。「瀬戸口琴葉」さん、唄に寄り添うようにそしてその時感じた自分自身の感情を表現されていました。構成も良かったと思います。「椎原佳奈子」さん、構成力も感じ、フエルサ、足のテクニック、何よりも踊りに“ペサ”を感じました。「田倉京」さん、バックとのアンサンブルが見事でした。完成度も高く、自分自身が良く出ていたタラントでした。「永田健」さん、とにかく素晴らしかった!!昨年と今年との変化の様、ケレンとハッタリのないオーソドックスな表現の内にモダンな現在をも内包して久し振りにすがすがしい男の踊りを観ました。

さて、賞にもれた方で私自身が気にかかった方の名前を列記いたします。まずは「ヴォダルツ クララ」さん、恵まれた身体、素晴らしく思いました。後半に爆発すればと思いました。「池田理恵」さん、充分に自己を意識しての踊り、自己解放を強く。「堀越かおり」さん、自分の世界観を持って強く。「大西美江」さん、完成度の高い踊りでした。「徳田悠乃」さん、時をかけているのを感じました。「相田良子」さん、フエルサがあってしっかり自己表現出来ていました。「青木うらら」さん、ペサ、ピエ、見るものがありました。「長本真由」さん、自分自身を良く知っている表現だと思いました。列記した方々もこれからも頑張ってください。

<カンテ部門>
今回は20名に及ぶ参加者、素晴らしいことだと思いました。「フラメンコ」の中でも一番難しいジャンルにこんなに参加者が増えたことはうれしいことです。まず『準奨励賞』の「ノリコ マルティン」さん、まずはスペイン語がとどきました。“レトラ”を確実に自身のものとして唄われて自然に感じました。『話題賞』の「鈴木高子」さん、“参りました”。時をかけたものは中途半端な物は飛ばされてしまうという現実をまざまざと観せられました。その他「金沢賢二」さん、音程も確かで唄い込んでいるのも実力があるのも分かりました。次回はソレアかシギリージャのホンドの唄で聞きたいと思います。

総じて語尾が流れるのと音程の不確かなことがいつも気にかかります。自分の唄を録音して聞き、またスペイン人に聞いてもらう練習もひとつの上達の方法かもしれないと思います。3日間、皆様御苦労様でした。

菊地裕子(評論ライター)[Bs,Bg]

今年のバイレはソロ部門が55名、群舞部門が5組と、昨年よりも出場者が少なくなったが、平均的なレベルは例年と変わりなく、全員が全力投球の3日間だったと思う。中でもソロ部門では新人公演に何度も挑戦している出場者の成長ぶりに目を見張り、群舞部門では昨年に続いてバラエティに富んだ作品の数々に驚かされた。フラメンコがフラメンコとして日本に着実に根付くことを祈りつつ、出場者と関係者の皆様に心からオレ!素晴らしい3日間をありがとうございました!
以下は印象に残った出場者のメモです。(◎=奨励賞に推薦、○=高評価、△=今後に期待)

<バイレ・ソロ部門>
【23日(金)】
○多田れい子/出の緊張感が良かった。身体表現が素晴らしい。昨年より成長したが、もう少しペソが欲しい。そして自分の中にもっとドラマを!
○ヴォダルツ クララ/長いブラソの美しさ、さらに袖の先で軟らかく動く白いマノが印象的。そしてコンパスが心地よい。まだ強い個性には欠けるが、今後が楽しみ。
△池田理恵/前半はテンポ良く、小気味良いフラメンカな踊り。後半、盛り上がりに欠け、平板な印象に。これは振付の問題か、はたまた体力の問題か? 惜しい。要研究!
○堀越かおり/踊りの上手さを感じさせるが、心に迫ってくる何かが決定的に足りない。それは何かというと、唄とギターとの共感・共鳴。カンテを沢山聴いてフィエスタに興じてみて。
○大岩奈青/とても自然で、しっかりフラメンコの感興があり、今年はメリハリもあって良かった! あとはもっと自分の感覚を身体の隅々まで研ぎすまし、感じているものを大きく膨らますこと。
◎井田真紀/素晴らしい! ペソがあり、強さがあり、キレと緩急がある。深く黒い世界に杭を打ち込むごとく踊りで自分の印を刻んだ。オレ!

【24日(土)】
△西村真由美/非常に抑えたソレアで見応えあり。ただ、ラストにかけて盛り上がりが不足した。持久力UPして見せ場をもう1つ!
△青木千鶴子/華のある独特の雰囲気が魅力的。技術的には未熟なところもあるが、自分らしさがよく出ていた。あとはバックとの連携を深め、もっと一体感を。
◎朱雀はるな/アイレがあり、思い切りが良く、キレも鋭く、コンパス感が心地よく、ひねりも味もある。方向性は素晴らしい。あと、感動までもう一歩。このまま深めること。自分の中を。
△山谷祐子/溜めが利いて、ペソのある、説得力のある踊り。昨年より良い! ただ、ブエルタでテンションがやや落ち気味に。上半身の使い方に研究の余地あり。
◎坂本恵美/美的センスが非常に高い。抑制の利いたフラメンコならではの表現! しかも詰め込み過ぎていないのが良い。あとは大舞台での緩急の見せ方にもう少し工夫を。
△青木うらら/フラメンカな踊り。この振付が好きで踊っているのが伝わる。惜しむらくは身体の使い方。上半身を鍛え、力の緩急を自在にできるようになると、きっと良い味が出るはず。
△瀬戸口琴葉/的を射た正確な踊りで気持ちが良い。逸材だ。昨年より飛躍的に良くなった。ただ、ソレアとしては屈託がなさすぎの感。さらなる成長を期待しています!
○林由美子/振付を自分のものにして踊っている感じ。嘘臭さがない。惜しいのはコラへ。もっと溜めて。そして盛り上がりを研究すること。尻すぼみの印象にならない工夫を!
◎徳田悠乃/ギターとカンテのみと踊った、数少ない1人。足音が生き生きとし、自分の世界を雄弁に物語った。緩急と剛柔を使い分け、強さと繊細さ、苦みと笑みと怒りと深みを表現。素晴らしい!

【25日(日)】
○津幡友紀/強い個性。ペソがあり、リズムの面白さでも魅せた。でも作品としては、もう一波乱欲しかった。山場をもっと高いところに設定して、もっと印象深い作品に。
◎椎原佳奈子/集中力が高く、唄振りなどは踊りに血が通っている。バイレ、カンテ、ギターの三位一体。カンテに感じている私と同じか、それよりもっと踊り手が感じているのが伝わる。あらまほしき姿なり。オレ!
◎田倉京/今年の出場を大変楽しみにしていた。最初はインパクトに欠けるかもと心配になったが、タンゴになってからの目の覚めるような展開!唄に寄り添って踊る極彩色の大輪の花!オレ!
△小林成江/キレがあり、アクセントがコンパスに入っていて気持ちいい。よく踊り込んでいるが、盛り上がりを欠いた。構成・振付をもう少し練って再挑戦を!
○大野環/決然としてフラメンカ! 唄を呼び込む踊り!しかし大舞台の作品としてはもう一歩、観客の心臓に肉薄する何かが欲しい。たった1箇所でいい。あと一歩!
◎永田健/クラシカルなファルーカを、けれん味もなく、崇高に踊った。そのひたむきさには曲想に通じるものがあり、彼らしさとフラメンコの美学が感じられた。真摯なアフィシオンに心から敬意を表します。

<バイレ・群舞部門>
△amicielo/よく訓練された動きが美しく説得力がある。8人のうち3人が上手からはけてすぐに下手に登場して踊るなどのサプライズも含め、洗練された振付・構成にも唸った。しかし音が録音だったこともあってか、フラメンコの味わいという点で、胸に迫るものが薄かった。バレエ・フラメンコの群舞の流れには、バレエとしての洗練、舞踊としての洗練に加え、フラメンコの洗練という側面があり、このグループはその流れを牽引する日本の一翼だと思う。その期待感を反映し、今回はやや辛口。

○ALMA FLAMENCA/プロで活躍中の2人(三枝雄輔・SIROCO)に話題の新人(NOBU)が加わっての群舞とあって、面白くないわけがなく、個人的にも全群舞中、一番楽しめた。けれども全体に力が入りすぎていて遊び心が足りない。際立った色の違いを強く印象づけるまでには至らなかったのも惜しまれる。個々の持ち味を生かす部分と群舞としての整然とした部分が鮮明になっていればもっと感動が増したと思う。

◎エストゥディオ・カンデーラ発「銀河系うずまき号」/個々がカンテをよく聞いており、ミュージシャンとの一体感が素晴らしかった。ツボを得た振付・構成でフラメンコの感興に満ち、感銘を受けた。何がフラメンコの感興に満ちているのかといえば、コンパスの増幅装置としての舞踊手の存在だ。所作で、足で、上半身で、フォーメーションで、コンパスの面白みを体現すること。この方向性、この気概に心からオレ!

西脇美絵子(評論ライター)[Bs,Bg]

今年は、バイレ・ソロ部門の出場者が例年よりも少なかったが、出場者のレベルが総じて高いという傾向は今年も変わらなかった。ただ、際だった印象を残した人は少ないと感じた。選考はいつも以上に難航するかと思われたが、意外や意外、終わってみれば個人的にも選考会でも、受賞者はすんなりと決まった。

また、何度も挑戦している方がたくさんいたが、受賞の有無に関わらず、成長の跡を感じた人が多かったのは嬉しいことだ。一方、あと一歩のところに立ち止まっている人も見受けられたが、それを自覚している人は、やみくもに技術を磨こうとするのではなく、練習方法、フラメンコへのアプローチの仕方そのものを捉えなおしてみてほしい。私は技術を軽んじる者ではないが、それは踊るための前提のようなもの。特にフラメンコ舞踊は、舞踊テクニックだけでは踊れない。根本を見つめ直すことが重要と思います。

今回私が特に良いと思い強い気持ちで奨励賞に推したのは、朱雀はるな、永田健のふたり。フラメンコの大きなうねりを感じさせた朱雀さん、伝統的なファールーカをカッコよくマチョに踊りきった永田さん、素晴らしかったです。

奨励賞のライン上と感じたのは、田倉京、井田真紀、瀬戸口琴葉、黒木珠美、加藤誠子、椎原佳奈子。切れ味の鋭さとエレガンシアを身にまとって踊った田倉さん、溌剌と踊りきった井田さん、去年とは別物の身体と技術を見せつけてくれた瀬戸口さん、ゆったりとした振付を充実した気合で踊った黒木さん、椎原さん。歌をよく受け止め肝の据わったソレアだった加藤さん。上記8名の中から7名を奨励賞に推しました。

出場者のなかの多くの人が、それなりの技術とそれなりの踊る身体を持っています。そういう意味では、非常に僅差の中に大勢の方がいます。そこで見る者に何が強く響くのかといえば、特に今年私自身が感じたことですが、次の2点です。1つは、何を踊りたいのか、何を伝えたいのかという踊り手の強い意志が感じられること。もう1点は、平均点的に上手くまとまっているのではなく、突出した何かを持っている人、です。

また、今年はバックの音楽陣にスペイン人アルティスタを起用した人が多かったですが、あの莫大なエネルギーを受け止められる自分ができていないと、かえって踊りのスカが目立ちます。スペイン人のギターとカンテで踊りたいという思いは、多くの練習生の夢だと思います。でもそれでよい結果を生み出すには、それ相応のフラメンコ力、コミュニケーション力が不可欠であることを自覚された方がいいでしょう。スペイン人との共演の前にやるべきことはたくさんあるはずです。

以下、あと一歩と感じた方、特に印象に残った方の名前を出場順に書きます。上手く器用に踊ろうとするのではなく、一つ一つの技を、振りを、深めてください。フラメンコの基礎、フラメンコ舞踊の基礎(フラメンコを踊る身体)をしっかり身につけてください。フラメンコは中身で勝負する舞踊ですが、気持ちだけでは踊れないのです。来年また、皆さんの一段と魅力的になったバイレに出会えることを、楽しみにしています。

重藤優子さん(強い意志が魅力)、小林浩子さん(音を消してもガロティンを踊っているのが分かります!)、ヴォダルツ クララさん(華あり、センスあり!)、池田理恵さん(すべてが平均点以上の出来、だがもの足りない)、鈴木真衣さん(たっぷりと踊り良いのだが…)、堀越かおりさん(気合十分!)、佐渡靖子さん(まだ荒いが勢いがある)、相田良子さん(基礎力まだ弱いが惹きつけるものがある)、漆畑志乃ぶさん(基本的な技術しっかりしている)、阪上のり子さん(身体のエネルギーがいっぱい!)、青木うららさん(緩急あり、身体の使い方ができている。あと一歩!)、瀬﨑慶太さん(ポエジーある。もっと踊り込んで!)、稲垣栄子さん(全体によくまとまっているが、技術力甘い)、杉山須美江さん(基礎力あり、潔いアイレ)、徳田悠乃さん(恵まれた肢体と素直な感性、素質感じる)、藤本ゆかりさん(フラメンコ的感性あり)、大野環さん(個性ありパワーもあるが、舞踊としての基礎力を)、長本真由さん(ものすごいパワー、コラヘ!)。

<バイレ・群舞部門>
最後になりましたが、群舞部門について。
amicieloとALMA FLAMENCAのどちらに入れるかで最後まで悩み、amicieloに一票を投じました。群舞は何を評価するのかが、すべて選考委員の物差しにゆだねられています。いや、群舞部門に限らず、すべての部門においてそうなのですが、群舞については様々な考え方があり、また出演者の実力を判断するのか、振付者、指導者の実力つまりは作品力を評価するのか、群舞としての完成度か、フラメンコ性を重視するのかなど、さまざまな推し量り方があるからです。

今回、指導者を別に置かずに、すべて自分たちの力でやりきったのはALMA FLAMENCAでした。しかも一人ひとりの演技者の実力は突出していました。ソロ・群舞をとおして、私が一番フラメンコを楽しんだのは、ALMA FLAMENCAです。しかし、ソリストとしての実力の高さに拠ってたった感がどうしても残りました。一人ひとりソロで踊っている時と、大きな変化が感じられなかったのです。この3人のソロだからこそできる群舞にはなっていなかったと思います。

一方、amicieloは群舞作品として素晴らしかったです。録音音源を使い、かなりモダンな創作作品ながら、その中にしっかりしたフラメンコに対する美意識がありました。演技者たちもその作品の意図をよく理解し、また作品の魅力を伝えるだけの訓練が徹底してなされていたと思います。そして、終演後に残された大きな余韻が、その作品力を物語っていました。
この他では、エストゥディオ・カンデーラ発「銀河系うずまき号」も楽しい作品でした。フラメンコ性に満ちながらも創意あふれる振付を、演者たちは生き生きと踊っていたのが印象的でした。しかし、総合的な完成度としては、私の中では今一歩でした。

今年も熱い3日間が終わりました。すべての出場者の方の努力と研鑽に熱いオレ!を送ります。

小森晧平(カンテmaestro)[C]

<カンテ部門>
今年は20人参加というすごい状況になった。しかしカンテは毎年徐々に良くなってきた。今年は男性も3人参加したが、それぞれに特徴があり共に良い声の出し方、音の流れをきくことができた。特に金沢賢二さんはギターにも良い能力があるみたいだがカンテもかなりレベルが高い。テクニックもしっかり身についているし、男性としてかなり高い音程に挑戦されていることが素晴らしい。ぜひともペテネーラ以外の曲をきいてみたい。

そして女性は17人も出て、難しいカンテに真剣に取り組んでこられた。かなりレベルの高い超難しいカンテに挑戦された方も何人かいらっしゃる。部分的に音程がズレた方々もいらっしゃるが、とにかく節回し、あとテクニック(こぶしなど)も相当身につけておられる。特にノリコ マルティンさんはすごくスペインっぽい感覚で素晴らしい唄をきかせてくれた。レベルの高い節回し、テクニック、声の出し方、いずれも日本人としてはほとんど身につけておられる。将来期待できるカンタオーラだ。

とりあえず日本のカンテは徐々にレベルが上がりつつある。ただし、新人公演のステージに出ると緊張感がはまってしまって自分の特徴を出せない人が多いみたいなので、とにかく勉強して身につけたカンテを何回か人前できかせて、自分の実力を100%出せる様に努力して頂きたい。

全体的に声の出し方は良くなっている人が多い。唯一、気になるのは節回しがシンプルな人が何人かいる。曲によっては絶対にこぶしが必要な部分もあるのでそれに真剣に取り組んでもらいたい。
今後も皆さんに心から期待したい。

瀬田 彰(ギタリスト)[G]

今回の私の採点順位は1位・該当なし、2位・関根さん、同点3位・金沢さん、江戸さんでした。全体的な印象としては概ね出演者の演奏技術も高く実力が伯仲していました。しかしその中で「とび抜けて…」という人がいなかったのが残念でした。

以下、出演順に講評します。(敬称略)

1番・和田(ファルーカ):
伝統的なスタイルのサビーカス風なファルーカ。
落ち着いた演奏だったが決め所のピカード部に音量がなく、またミスも出てレマーテ感が失せてしまったのが残念。

2番・藤嶋(ソレア):
自分流のソレアを求めているようで表現の方向性は良いが、音の発音に斑が有る。
アルペジオとピカードの技術を上げれば表現したいフラメンコがもっと良く伝えられる。

3番・金沢(アレグリアス):
モデルノ風なアレグリアスのオリジナル曲。
「曲頭はリブレ、後に速いテンポのアレグリアス」という構成で曲作りのセンスは良い。
但しアレグリアスになってからテクニックにばらつきが目立ち全体的に粗い印象を受けた。
3本指ピカードの精度をもっと上げればより良く聞こえる。

4番・伏見(タランタ):
全体的にタランタのアイレが有り良かった。
しかしパコのファルセータの中で使っているアルペジオ部や後半のトレモロ部には研究課題がある。
最後のファルセータでミスが目立ったのが残念。

5番・今田(ブレリア):
グラナイーナの調性のワルツ風ブレリアス。
オリジナル曲の様だがあまりフラメンコ度が感じられない。
ラスゲアードの切れが甘いので、もっとラスゲアードがタイトになれば曲が引き締まる。

6番・江戸(ソレア):
プルガール(親指奏法)を多用したオーソドックスなソレア。
自分なりのタメを多く作り、ゆったりとした骨太感のある演奏は良い。
しかしプルガールやラスゲアードは良いのだが、それらに比べてimのテクが不足気味でファルセータが破綻してしまうのが残念。

7番・野路(ソレア):
セラニートの難曲なソレア。
全体的には落ち着いてゆったりした演奏で良かった。
あとはセラニートの様なペジスコ(タメや捻り)が有ればもっと良かった。
各ファルセータのあちこちで見られるが、セーハ移動などの時に12拍の纏まり感が無く3拍づつの塊に聞こえるのは弱点。
リズムをもう一度点検した方が良い。

8番・関根(ソレア):
今回の演奏者の中では一番良い演奏だったソレア。
ドブレのトレモロ部は独自性が有って良い。
しかしその後のアルペジオのファルセータはツーファイブやクリシェを多く使っているのでフラメンコ感が薄まってしまっている。
モデルノを目指すにしても、まず先にフラメンコの根っこを探求すると良いのでは?

9番・中川(タランタ):
オーソドックスな構成のタランタ。
出だしは気迫がこもった演奏で良かったが、最後まで持続しなかった。
トレモロ部は良かったが、アルペジオとピカードのファルセータが滑らかに聞こえないのは弱点。

10番・鈴木(ブレリア):
パコやヘレス風ファルセータのブレリアで雰囲気は良いが・・・。
コンパスが狂っている所が何点かあった。
ブレリーアスや タンゴスを弾く時には事前に、正確なパルマスなどに合わせる練習をしないと誤った感覚が身に着いてしまう。

11番・岸元(ソレア):
エンリケ・メルチョール風のファルセータで始まったソレア。
全体的に力み過ぎて演奏が硬かった。

北井一郎(現代舞踊協会)[Bs,Bg]

8月23、24、25日の3日間ゲスト選考委員としてバイレソロ55曲、バイレ群舞5曲を拝見しました。
選考委員全員の評価の合計で本年度の奨励賞が発表されました。受賞された6名の方々にお喜び申し上げます。
そして、私の推した3人が受賞され、推したが合計点で基準点に達しなかった人が3名いられたのでお名前を記しておきます。

○永田健さん
昨年惜しくも次点で賞を逸しましたが今回は見事にトップ入選でお喜び申し上げます。サパテアド、ピルエットいずれも見事にこなし、体に合った衣装が男性の鋭さ、力強さを助け文句なしの演技でした。

○朱雀はるなさん
大人の品格と美しさを充分出して、演技も幅広さを感じさせてくれました。今後も成長を続けてください。

○瀬戸口琴葉さん
落ち着いた演技で品格をかもし出し、入賞にふさわしい作品に仕上がって振付師の努力も報われたと思います。

○ヴォダルツ クララさん、黒木珠美さん、加藤誠子さん、徳田悠乃さん
演技力で推薦したのですが、同調者の数の合計数で入賞者リストには外れたのですが、素質はあるのですから目的に向かってあきらめないで頑張ってください。

○井田真紀さん、椎原佳奈子さん、田倉京さん
栄えある入賞おめでとうございます。これからもフラメンコの星として輝きつづけてください。


第21回新人公演「フラメンコ・ルネサンス21」

2013.03.30

選考委員(名前から各講評へリンク)

 

 

濱田滋郎(評論家・会長)[G,C]

第21回新人公演も無事、盛会の内に終えることができ、統括責任者としてほっとした思いを抱くと同時に、関係されたすべての方がたに対し、深い感謝をおぼえます。やはり、この「フラメンコ・ルネサンス21」あってこその日本フラメンコ協会である、との思いを新たにしています。皆様本当に有難うございました。今年も出演者の大半を占めた「バイレ・ソロ部門」からは、5名の「奨励賞」受賞者が出ました。全般に技術的水準が上がった中で選考は難しさを加えていますが、まずは誰が見ても納得の行く選出であったと信じられます。群舞部門も今年は8組の出場を数え、その中からふさわしい「話題賞」も出るなど、たいへん楽しめました。新人公演をよりいっそう盛り上げるためには、群舞部門の充実がぜひ必要だと思います。来年以降にも、群舞の積極的参加が多いことを期待しましょう。

「ギター部門」「カンテ部門」もなかなか良い内容を示していたと思いますが、「ギター部門」の参加者が6名にとどまったというのは、例年に比べても少なく、やや寂しく思われました。ただし、6名はそれぞれ聴きごたえのある演奏を繰りひろげました。「ブレリアス」を選んだ出場者が2人あり、それぞれに好演だったのは、今回から「ギター・ソロにおけるパルマの伴奏は認めない」とした取り決めが正しかったことを実証してくれた感もあり、喜ばしく聴きました。「ブレリアス」を弾いた2人の中から、若々しいテクニックの切れを持つ木村君が準奨励賞を受けました。フラメンコ的な良い持味を、今後も伸ばしていって頂きたいと思います。

「カンテ部門」は近年、顕彰を受ける人が出ずに終わっていましたが、今回は13名に及んだ出場者の中から、許有廷さんが準奨励賞に決まりました。つづけて出られている中で、昨年の「マラゲーニャ」も捨て難かったと記憶しますが、今年の「シギリージャ」は、声の強さ、全体的な乱れの無さなどにおいて、いっそうの進歩が認められました。ひたむきにぐいぐいと押してくる歌いぶりは魅力ですが、そこにいまひとつ、押すばかりでなく「引き」のニュアンスが加わったなら、更に素晴らしいカンテになるのでは、と感じました。ほかでは、許さんと同じく「シギリージャ」を歌った齊藤綾子さんに、カンテの形をよくとらえた素直な唱法から、今後の「伸びしろ」を予感することができました。一般的に言って、カンテをスペイン語のイントネーションで”語る”ことのできる人が、まだまだ少ないと思わせられたのは残念でした。スペイン語を「歌う」だけではなく、日常にも「話す」訓練をすることが、カンタオール/カンタオーラには、
とても大切なのではないでしょうか。

 

小島章司(舞踊家・理事長)[Bs,Bg,G,C]

今年も出場者の皆さんの熱い思いとまっすぐなチャレンジ精神に溢れた新人公演でした。バイレ・ソロ部門は例年にも増して実力が非常に伯仲しており、奨励賞候補にはたくさんの名前が挙げられ、その中から推挙の数の順に5名の奨励賞と3名の準奨励賞が選ばれました。群舞部門。今年は8組が参加。それぞれに異なる個性の力作で楽しかったです。ギター部門は出場者数こそ少なかったですが、レベルは全体に高く聴きごたえがありました。カンテ部門はこれまでで最多の出場者数。カンテを歌う人が増え、喜ばしい限りです。出場者全体のレベルも高くなり、特に自然な発声で歌う人が増えたのが良かったです。ただ、問題はそこからで、如何にカンテとして聞きごたえのあるものに仕上げられるか、が問われます。そんな中、今年は許有廷さんが準奨励賞を受賞。近年該当者なしが続いていたので、うれしい授賞となりました。

受賞された方も、残念ながら受賞に至らなかった方も、フラメンコの道半ばであることに違いはありません。たゆまぬ精進をぜひ続けてください。出場された皆さんのこれからに期待しています。

以下各部門ごとに特に印象に残った皆さんについて、記します。

バイレ・ソロ部門。身体が細部まで良く稼働しており、そこに魂が宿っていた東仲マヤさん。渾身のシギリージャに魅せられ、感動しました。大槻敏己さんは、これまでの男性出場者にはあまり見られなかったグラシアがありました。またブラソの使い方が絶妙、ブラボー!を心の中で叫びました。西岡愛さんは、心の深さが身体の芯から溢れていました。遠くを見据えた乾いた目線が魅力的でした。徳田志帆さんは、スピード感とキレ味が際立っていました。フラメンコのテクニックがきちんと身についていて内容の濃いバイレ。快走するテンポ感が心地よかった内田好美さん。内なるものが表現できていました。身体の中にフラメンコがつまっていた松村布美さん。カンテとうまくシンクロしていたと感じました。末松三和さんは、典雅で深いバイレ。拮抗する上半身と下半身のバランスが素晴らしかったです。鈴木真衣さんのソレアは、最初はテンポがゆっくり過ぎて大変そうでしたが、後半、ソレア・ポル・ブレリアになってからが秀逸でした。以上の8人が特に素晴らしいと感じた人たちで奨励賞に推薦しました。

このほかにも強く印象に残った人が大勢いました。以下、出演順に記します。

24日。素晴らしい振付を端正に踊り込んでいた多田れい子さん。神経が身体の隅々まで行き届いていました。肉体の豊かさを生かして踊っていた佐藤真知子さん。ときにペジスコが感じられ魅力的でした。椎名利恵さんは、重厚なソレアをしなやかに踊っていました。前半と後半のコントラストが際立っていました。森山みえさんはブラソに存在感があり美しく舞台に映えていました。

25日。全体がフラメンコの要素に満ちていていた黒須信江さん。藤本ゆかりさんはカンテに支えられながら、精一杯踊っているという印象で好感が持てました。踊っている時のまなざしが魅力的でした。魂を込め表現力たっぷりに踊った石川慶子さん。やや上半身が固いと感じましたが、身体の細部を鍛えぬき、しなやかさが今より増してくると格段に良くなると感じました。黒木珠美さんのグアヒーラは、1つの作品を見ているかのような表現力がありました。美しい態の持続をしていたのも印象的。内側からみなぎるエネルギーを感じた西内佐知子さん。美しさが際立っていました。永田健さんのバイレには、スペインのバイラオールの一つの系譜、典型を感じました。一つ一つの動きの正確さ、精度を上げるとさらによくなるでしょう。胸の部位の使い方が美しくエロスを生みだしチャーミングだった廣岡理恵さん。ユニークな振りを踊りこなしていた吉田智宏さん。さらに踊り込んで振りをもっと自分のものにしてください。ムイ・フラメンカなノリで生き生きと踊っていた山崎愛さん。技術的にも安定感がありました。タラントを丁寧に踊った浅野直子さん。後半のタンゴになってから情感が溢れ良かったです。

26日。とても優美にシギリージャの様式美を表現した李成喜さん。内から湧き出る力と曲の持つ重みがもっと出せるとさらに良くなります。洗練の極みを舞った太田マキさん。挑戦する心意気を感じました。隙のない構成・振付・身体の使い方、全てが素晴らしかったです。瞬間、舞台から飛び散る毒の華も見たかった。

群舞部門。奨励賞を受賞したラ・クラベ・デ・ソルは、統制力が発揮されており踊り手たちの技術力も高く、ファルーカの様式美が表現されていました。奨励賞に推したのはエストゥディオ・アレグリアス。微妙な揺れ、振りのグラデーションが印象的で素直なフラメンコ性に好感を持ちました。人生の豊かさが感じられたラス・マジョーレスも心に残りました。鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオは、完成度が高く素晴らしかった。考え抜かれた構成の中で少し力み過ぎた観があったように思います。

ギター部門。準奨励賞を受賞した木村直哲さん。スピード感があり、ブレリアの生き生きとしたノリが表現されていました。盛り上げ方も素敵でした。中川浩之さんは、一音一音が粒立ち、起伏が有りました。中間部にもう少し”うた”の心が欲しかったです。

カンテ部門。許有廷さんは、勢い、押しのある声で内なる叫びを感じました。ただ、フォルテのみでやや一本調子になったのが残念。声の綾がもっとほしかったです。田中としろーさんは、フラメンコ的な声が魅力的でした。力まず、さりげなく自然な歌い方が心に残っています。

 

伊藤日出夫(ギタリスト・最高顧問)[G,C]

<ギター部門>
1.中川浩之:グラナイーナらしくすばらしい。
2.渡辺イワオ:ソレア。少し音が多すぎる。
3.木村直哲:ブレリアだが、音が多すぎる。
4.大山勇実:サパテアードらしい。うまい。
5.藤嶋良博:ブレリアス。音が多い。
6.岸元輝哉:ファルーカらしい。

<カンテ部門>
1.ソレアを唄った占部智恵さん。ソレアらしいソレアだった。俵さんのギターによく合っていた。
2.ソレア・ポル・ブレリアをがんばって唄った鳥居貴子さん。
3.ソレアを唄った土井康子さん。ソレアらしいソレア。ギターとよく合っていた。
4.アレグリアスを唄った林祥子さん。パルマに合わせてリズミカル。
5.ティエント・デ・チャコンを唄った上野君代さん。これもティエントスらしい。エンリケ氏のギターによく合わせていた。プロに違いない。
6.シギリージャを唄った齊藤綾子さん。うまい。プロらしい。
20.アレグリアスを唄った深谷恵子さん。サリナのパルマがよく合っていた。
21.マルティネーテ・イ・デブラを唄った鈴木弘子さん。カンテ・ソロで聞かせるベル・カント唱法か。
22.田中としろーくんのソレア。発声をもっとやればよくなる。
23.白鳥光良くんのティエント。発声がいい。
24.ソレアを唄った北脇英子さん。ソレアらしいという点で評価できる。
25.シギリージャを唄った許有廷さん。唄い方がプロらしい。
26.ファンダンゴを唄った山口恵都子さん。ファンダンゴをむりなく唄った。

 

岡田昌己(舞踊家・最高顧問)[Bg]

8月24日の公演を観させて頂きました。特に群舞だけに絞って感想を述べさせていただきます。
参加グループ8団体のうち、特に印象に残ったのは3団体。

○まず、エストゥディオ・アレグリアス。とても正統的な振りのつけ方で、いかにもフラメンコらしい強弱の自然な流れでよく踊れていたと思います。

○次にスタジオ・トルニージョ。全員が同じエスティーロのマルカーヘ。マルカーヘの連続がしゃれていて、
]フラメンコ舞踊の情緒的な部分がとても魅力的でした。白と青のシンプルな衣裳もよかったです。ただどこかに一刻、
強いレマタールがあったらうんと引き締まったのではないかと思います。

○3番目のグループは、ラ・クラベ・デ・ソル。ダントツの出来ばえでていねいにセンティドをもって振りつけられていて、
テアトロ用プレゼンテーションとして最高だと思います。

以上の3団体がとても印象に残りました。他に、シニアばかりのラス・マジョーレスはほほえましくて、温かい雰囲気がありました。
日本のフラメンコ、アフィシオナドスの層の深さを知らされました。

この日、フラメンコ協会の催しで日本の現在の本当に幅の広い層の踊り手たちをみる事ができたのは、驚きと喜びです。

 

山田恵子(舞踊家・副会長)[Bg]

21回新人公演に出演された方々お疲れさまでした。私は26日に高知での公演がありましたので、今回は群舞のみ観させて頂きました。
まず受賞された方々に心からおめでとうと申し上げます。群舞も年々水準が上がり、今年は一段と見応えがありました。創作はまず選曲・構成・振付です。
それにダンサーの表現力が加味されて芸術性豊かな作品になります。

その条件を満たし、群を抜いていた作品が「ラ・クラベ・デ・ソル」です。9人のダンサーはそれぞれ自己主張をしながら振付者の意図を理解し、
のびのびと踊っていました。次に良かったのが、鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオです。構成も振付も良かったのですが、少々力み過ぎたように思います。
皆さん力はあるのですから、踊りを楽しんでください。スタジオ・トルニージョの3人はもったいないですね!構成も面白かったし、十分踊れる方々ですから、
花を落としたり転ばないように気配りしましょう。気が散ります。

また、エストゥディオ・アレグリアス、島村香フラメンコ教室、花岡陽子S.D.カンパニーの方々、もう少しがんばりましょう!
次回に期待。

最後にラス・マジョーレスの皆様方、益々お元気にフラメンコを楽しんでください。私も頑張っておりますから(笑)。

 

坂中浩治(ギタリスト・副会長)[Bg,G,C]

「ギターの部」
今年の出演者の方は皆様指の動く人が多く、中川浩之君は大変音色がすばらしく、渡辺イワオ君の曲はもう一つと思いました。
木村直哲君はリズムとバランスがすばらしかったです。大山勇実君のサパテアードは新しい形をもう少し色々研究してください。
後のお2人はこれから勉強次第ではすばらしいギターリストになると思います。

「カンテの部」
許有廷さんの声に大変声力があり、力まず良く出ていました。一番難しいのはカンテの部ですので、私は6点制で点数をつけております。
皆様もますます頑張ってカンテのレベルを上げてください。

「バイレ群舞の部」
ラ・クラベ・デ・ソル、ファルーカの構成が良かったと思いました。おめでとう。群舞は色々なアイデアができる部門です。

 

三澤勝弘(ギタリスト・理事長補佐)[G]

<ギター部門>
例年より少ない6名の参加でしたが、初めての方もおり、興味深く聴かせて頂きました。

(1)中川氏−伝統的内容での演奏であり、個人的にはフラメンコの魅力を感じることができました。ただし、音の出方に少しバラツキが認められ、
まだ”一瞬の空間””余韻”に一考と研究が望まれました。

(2)渡辺氏−ファルセータ・メロディーに伝統の線上での編曲のものが、もう少し欲しかったと思います。その方がフラメンコの持つ”力”を
取り込む一助となり得ると思います。力量を感じさせる方ですので。

(3)木村氏−全体に”独奏”としての演奏としては、いまひとつ存在感のあるものが望まれます。心情の深いところでの演奏が望まれます。
技術的には大変素晴らしかったと思いますし、期待しております。

(4)大山氏−最初と最後での弱音に、張り・生命感が少し不足していたのが惜しいと感じました。演奏力の進歩がとても認められ嬉しく思いました。
ただし、一曲のみのフラメンコ曲サパテアードには、選曲として問題が気になりました。よりフラメンコを表現できるものの方が良かったと思います。

(5)藤嶋氏−生命・躍動感に少し欠けたかと思います。音・演奏が前に飛ばない印象がありました。タッチ、
とりわけ意味のある音への研究が”次”への課題かと思います。期待しております。

(6)岸元氏−全体に緊迫感に欠けたかと思います。フラメンコ的な間合いや輪郭が欲しかったとの感が残りました。オリジナルのみならず、
先人達の演奏に接する機会をもっと増やすことで自然と身につくことと思われます。

それぞれの奏者の課題は異なりますが、弾くだけでなく、聴く・感じる時間を大切にしていただけたらと思います。

 

今井重幸(作曲家・理事)[Bg,C]

日本フラメンコ協会主催の新人公演も今年で21回目。協会の中心を成す重要な企画公演も第三段階に突入した訳で、協会の今後の運営・発展・展開・志向性、新しいビジョン等、改めて皆で気を引き締めねばと痛感致します。

また私事ですが、今回は小生運悪く、中日の25日が自作の初演コンサートと重なり、初回以来連続してきたバイレ・ソロ部門の選考委員を残念ですが今回だけ初めて辞退することになり、大変申し訳なく思っております。

さて、まずカンテ部門ですが、出演者全員にその一生懸命さを感じ取れた。カンテ・フラメンコの世界は、その特殊性に鑑みると総体的な完成度を極めるには、大変難しい分野である。何の要素が何の様に優れているのか。そして全体的には何の様なバランスであるか等、その判断は大変難しい。

今回では、占部智恵、齊藤綾子、深谷恵子、田中としろーが、発声・音程等の安定感で1票取れたが、フラメンコ性に乏しく、またギター無しの無伴奏でマルティネーテ・イ・デブラに挑戦した鈴木弘子の意欲は立派だが、逆に多くの欠陥を露呈してしまった感がある。最終的には、今回の中では一番フラメンコ性があり、昨年に引き続きの挑戦ではその進歩の大きさを感じさせた許有廷が最高得票で受賞が決定した。

賞種では色々な意見が出たが、未だ未完の要素に鑑み、準奨励賞で決着した。他の出演者たちもこの情況を踏まえた上で益々の精進を、また再挑戦を期待したい。

次はバイレ・群舞部門。昨年の3団体に比べ、今年は8団体、しかも大変バラエティがあって楽しかった。総合レベルとしては、1位はラ・クラベ・デ・ソル、2位は鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ、構成・振付としては、「マルティネーテ」もしっかりしていたが、ダンサー達の表現の安定感、テクニックの一体感、全体のハーモニー、男性的音楽を女性の群舞のみでクリアする等、総合点として「ファルーカ」が上回った。奨励賞は当然の結果であった。

なお今回、特に話題賞として、全員が還暦過ぎとは全く感じさせない情熱と楽しさでホールの空気を和ませた、「ラス・マジョーレス」に理事会全員一致で賞を出したことは大変素晴らしいことだと思う。それぞれが必至な想いで競い合うバイレ・ソロ部門とはひと味違った意味で、新人公演の「新しい風」として、多くの群舞が参加して、バラエティのある、そしてフラメンコを楽しめる雰囲気も提供して欲しいものである。

また、今回久しぶりに再現した準奨励賞、僅差の次点でも、全く賞に関われない人達のことを考えると、今後も情況に応じて存在しても良い賞だと思う。

 

大塚千津子(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

「希望と挑戦…終わりが来た時それは始まりに過ぎないかもしれない」

まずは新人公演出演されました皆様、大変お疲れ様でした。ソロ・群舞・ギター・カンテの各部門にて受賞されました皆様、心よりおめでとうございます。皆様の努力において結果が報われた喜びはひとしおかと思います。更なる飛躍を目指し、新たな第一歩を踏み出して下さい。

受賞された皆様におかれましては結果の通りで多くの皆様も周知ところでありますので、お一人お一人には私が感じたままの一言の言葉を送らせて頂きます。

大槻敏己様、変貌・進化
石川慶子様、フォンド・魅了
徳田志帆様、フラメンキータ
東仲マヤ様、情念の舞
太田マキ様、魅了・圧巻

さて今回のバイレ・女性ソロの総評を少し書かせて頂きますと、全体の雰囲気が似た感じのタイプの方が多く見受けられました。曲調の為か衣装も黒がとても多く、そう感じた要因の一つかもしれません。テクニックの点では、ほんとに皆さん大差なく、選考もばらけた感は歪めずやはり大変悩みました。

初日の群舞につきまして個人的に印象に残りましたのはカンティーニャス、小物好きな私にとりガロティンも印象に残りました。

群舞はメンバー皆さんが心一つに成し遂げる過程を考えますと心から拍手を、そして生徒皆さん達への惜しみないご指導、諸先生方お一人お一人にも心からお疲れ様とお伝えしたいです。そして群舞の中で特に会場の空気を一変したティエントスの皆様、お疲れ様でした。心がなごみ、気持ちもホットホットで見入ってしまい、目は舞台に釘付けでした!皆さん!人生に乾杯!! 年期入ったカディーラにはノックアウトでございました。これからも元気の源であるフラメンコを楽しみ是非頑張って下さい!!そこであとお一方、バイレソロで同じ空気を感じさせて下さったのが近藤様でした。フラメンコにひた向きに向き合うそのチャレンジ精神。近藤様、これからもフラメンコで人生存分に謳歌してくださいませ。お疲れ様でした。

最後にバイレソロにつきましては、印象に残りました皆様方に。

24日…多田れい子様、ブラッソがとても美しく一番に目が奪われバイレの大きさを感じました。曲のらしさが少し欠如の感はありましたが後半タンゴはノリがあってとても良かったです。是非期待しております。
臼井由紀様、身体能力がとてもあると思いますので内面から湧き上がる思いをもっと身体全身で感じて表現して欲しいと思いました。マノをもっと使って下さい。
西岡愛様、決めのポーズやエスコビもそうでしたがやはり軸の弱さから上体の不安定さを感じました。軸感を強くするためにはブェルタ系の練習をなさるといいと思います。
佐藤真知子様、粗削りながらも心が躍っていました。ダイナミックでいさぎ良さとフラメンコ要素をとても兼ね備えていらっしゃり伸びしろを感じました。頑張って頂きたいです。
末松三和様、私はとても魅了されましたので残念です。また是非挑戦して下さい。
椎名利恵様、身体にとても表情を感じましたが今一つこちらへ届く何かが欲しいと感じました。

25日…小島智子様、上体の無駄な動きが肝心なフォルマを殺してしまって残念と感じました。全体のペソをもっと下に置いて安定感を。
柿崎祥子様、フラメンコを熟知し、てらいの無いとても安定感あるバイレで好感がもてました。だからこそ破けるはじける瞬間をもっと感じたいと思いました。是非期待しております!!
漆畑志乃ぶ様、ご自身の踊り心を大切にし愛くるしさと表現力とで観てる人を引き込む魅力をお持ちです。後はフラメンコのアイレをもっとかもし出してください。
黒木珠美様、小物を使うバイレの方がなかなか選考されないのですがトータル的にとても素晴らしい資質の備えていらっしゃると思います。私個人としては、
賞を差し上げたい気持ちで一杯でした。
柴田千穂様、とても個性を感じましたが曲の深さと内にため込む強さが欲しいと思いました。
多田美和子様、テクニックがとてもおありなので残念です。強さのみが際立ってしまいエレガンテさに欠けてしまった気が致します。
堅正はるか様、伸びしろを感じます。頑張って頂きたいです。
助川しのぶ様、素晴らしいリズム感だと思いしましたが振りに躍らされてしまっているようでバイレが忙しく感じました。
溜めを感じられるようそぎ落とすことも必要かと思います。進化に期待します。
内田好美様、抜きと溜めのバランスとても良かったです。気になったのは肘の位置が下がる事、そして上体をもっと使って欲しい…。
伸びしろを感じどんな色に染まってゆくか、楽しみにしております。
吉田智宏君、相違工夫もあり成長が観て感じられたのですが、逆に持ち味が薄れた感を持ちました。突き抜ける何か爆発感が欲しかった。
岡田麻里様、私は貴方の持ち味好きです。魅入りました。是非頑張ってまた挑戦して下さい。

26日…朱雀はるな様、まだまだこれからの進化に期待大です。随所随所がとてもボニータで潔さも感じました。頑張って下さい。
松村布美様、小気味よいリズム感を感じましたがあれもこれもと盛り沢山と詰め過ぎてしまったのでは…。あとは軸の強化をなさるといいと思います。
大岩奈青様、今回のバイレの中では独特なセンティード、個性的でした。方向性とご自信のスタイルを信じ突き進んで下さい。私は魅了されました。是非共再挑戦を!!
小杉愛様、足がとても強くテクニックあるだけに残念です。内から放つ空気の広がりと舞台空間をもっと掴んで欲しいと思いました。もう一息です、頑張って下さい。
李成喜様、全体的にとてもエレガンテで丁寧なバイレでした。全体にもっと緩急をつけてメリハリを。
岡田知子様、しっかり踊っていらしたのですが、フェルサが伝わらず少し物足りませんでした。後半ブレリアに入り乗ってきたので引き込まれました。頑張って頂きたいです。
中村里美様、コンパス感とってもしっかりしていました。随所の盛り上がり時に一歩手前で止めてしまうような切り替えがとても残念です。もう一息です、頑張って下さい。
小澤圭子様、個性をとても感じましたが少し動きすぎるかと。そのせいか何に向かい何を表現したいのかが見えてきませんでしたが、資質をとても感じます。頑張って下さい。
鈴木真衣様、とてもフラメンキータでした。是非また挑戦して下さい、期待しております。
清水亜紀様、ところどころにいい意味での土臭さを感じました。個性を大切になさってください。持ち味に合う衣装をもうひとひねりしてみたら如何でしょうか…。

 

鍵田真由美(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

すべては強い”あこがれ”と”まね”から始まる。大好きなアーティストや師から学んだことをなぞらず、それをどれだけものにして自らのコトバで語ることが出来るか。
言語、食べ物、服、メイク、音楽、アート…。流行りは日々変化する。それに敏感に反応しながらも流されない個性。
スペインと日本。流行と個性。壮大であり日常的なテーマから振り落とされないように…。そんなことをポツポツ言ってみましたが、とにかく!!

受賞者の皆さん、おめでとうございます。喜びを満喫してください!すべての出演者の皆さん、本当にお疲れ様でした。がんばりましたね!

自分の足でしっかり立ち、未来を見据え、個性豊かにステージで華ひらくことを夢見て…。ここからまた始まりです!!

 

片桐勝彦(ギタリスト・理事)[G]

出演者の皆さん、お疲れさまでした。私なりの感想を一言ずつ述べさせていただきます。

中川浩之:曲の構成が完璧だったので、呼吸や間(ま)をもっとたっぷりとって全体的にゆっくり弾けば更に良くなると思います。
具体的にはピカードがあらかったのと、トレモロが速すぎたのが気になりました。音色は少し硬い気もしましたが、グラナイーナの雰囲気が良く出てました。

渡辺イワオ:音使いがソレアではないという意見が多く出されましたが、私はその逆で曲の最初から終わりまでしっかりソレアに聞こえました。
参加者全員の中で、トレモロの奏法・アルサプーアとラスギャードのコンビネーションも一番安定していたので、受賞にいたらず残念です。

木村直哲:準奨励賞受賞、おめでとうございます。全体的に速かったこともあってテンポの揺れが気になりましたが、
パルマなしでもブレリアのコンパス・ノリが出せるよう頑張ってください。

大山勇実:音量に強弱がしっかりついていて、テクニック的にも安定した好演奏でした。昨年のブレリアではメロディーと
伴奏の音量が逆転してしまう箇所もありましたが、今年はメロディーの音も起って聞こえました。
曲調と音色がそもするとクラシックに聞こえてしまうのが、評価上不利だったのが残念です。

藤嶋良博:昨年同様、長い腕や指をうまくコントロールして弾いていましたが、
それでも時折右手の指がピカードやアルペジオ時に伸びてしまうのが少し気になりました。

岸元輝哉:初っ端のフレーズから音量・音色共に昨年に比べて段違いに良くなっていたので、嬉しくなりました。
全体的に落ち着いた演奏で、呼吸や間(ま)も良かったと思います。

 

加部 洋(プロデューサー・理事)[G,C]

<ギター部門>
6人という例年になく少ない出場者だったが、レベルは一定の高さに保たれていて、それが当たり前になったギター部門。実力的にも伯仲しており、選考は難しかった。しかし上手いかもしれないが、無難で優等生的な印象でもあった。型に収まりきらない凄みや野生味が欲しかった。

中川浩之君●伝統スタイルのグラナイーナ。余裕を持ったテクニックの範囲で弾いていたのは良かった。が、弾き急ぎが一番気になった。リブレ曲に不可欠のタメが足りなかった。ひと節弾き終わった後のタメ。嫌らしいくらいにタップリ溜めて丁度いいかも。4連のトレモロは美しかった。渡辺イワオ君●昨年と同様ソレアに挑戦。個々のテクニックを含めて昨年より更に完成度の高い演奏で、申し分なかった。問題はソレアに聞こえたかどうかの、ただその一点。調性の自由な飛躍−モダンスタイルを志す演奏家ならば、自由な転調やテンションコードの使用により高い緊張感を生み出す方法を採るのは当然だ。問題は聴き手の許容範囲がどこまでソレアと認めるかである。今回の演奏は筆者の許容範囲を超えていた。木村直哲君●良かった。カッコ良かった。しかし良かった場合、余り言うことがなかったりもするものだ。アイレ、コンパス感を含めて今のスペインの香りがした。しかし、構成がもっとドラマティックだったら、更に良いブレリアになっていたと思う。大山勇実君●ギターテクニックの巧拙がもろに出てしまうサパテアードを選曲した勇敢さに、まず敬意。重厚な音色は楽器の選択もあるだろうが、何よりもテクニックの安定感から来るものだろう。最初は緊張感からか固くなっていたようだが、次第に曲に強弱・緩急のメリハリが出てきて、なかなか音楽的なサパテアードだった。藤嶋良博君●ヘレスの伝統スタイルの楽しいフレーズや泣かせるファルセータを集めたブレリア。”間”の取り方もブレリアのエッセンスをよく理解している感じで良かった。更に磨きをかけて”凄み”が出るまでにして欲しい。岸元輝哉君●サビーカスの有名なファルーカ。ピカードのテクニックで”抜け”が大分あったのが残念だった。”間”の取り方の解釈だが、少し自由に間を取り過ぎていたように思う。ちなみに原曲のサビーカスはほとんどコンパス通りに弾いている。

<カンテ部門>
今年はカンテを聴いて、出場者の皆さんが発音の稚拙さや音程の悪さなど、自分の欠点にどこまで気づいているのだろうか考えてしまった。欠点に気づくのは耳である。確かに先生からの指摘があるわけだが、最終的に理解するのはやはり本人の耳である。耳に頼ることを軽視してないだろうか。全身を耳にして、手本のカンテを徹底的に模倣する以外に上達の道はないと思う。

占部智恵さん●最初に固さがあったのか、音程が不安定(フラット気味)だった。もう少し節回しを手本に忠実に厳格に追って欲しい。節が「ミ」に終止する部分で、節がきれいに流れなかった時があった。後半は落ち着いてきたのか、のびのびと声もよく出て、良くなった。鳥居貴子さん●音程、節回し良し、強弱のメリハリも良し。思わずオレ!を掛けたくなった。パルマもカンどころで入ってくるのが良い。逆に後半に節がギクシャクしたところがあったのが残念だった。あとはもう少しフラメンコらしい発声の研究を。土井康子さん●声量たっぷりで、歌い慣れており、力の入れどころ、抜きどころを知っている。ただ、例年に比べると、音程が不安定だったり、「ミ」に終止する節の持って行き方が直線的に落ちてしまったりしたのが残念だった。林祥子さん●サリーダからアレグリアらしい軽さが出ており、好感が持てた。時々音程が不安定になるのが気になった。あとは、声を出す時は思いっきり出すフラメンコ的激しさを身に着けて欲しいと思った。上野君代さん●独特の渋いノドが素晴らしい。音程も良く、伝統の香りがタップリで、節もよく回っていた。これと言って大きな欠点があるわけでもない。このまま年輪を重ねてカンテを熟成させていって欲しい。齊藤綾子さん●声量・音程とも申し分なかったが、力一杯の一本調子の歌い口が気になった。これは許有廷さんのシギリージャにも言えることで、フォルテッシモの声量を前に出すばかりで、引くところがない。強弱・緩急のメリハリが自在のカンテを目指して欲しい。深谷恵子さん●毎年聴かせてもらっているが、音程も良く節回しも良いのでいつも好感を持っている。ただ、前年も同じだったが、発音がカタカナ・スペイン語的なのだ。いい感じのカンテなので惜しい。発音を直せばガラっと変わるのではないだろうか。鈴木弘子さん●無伴奏カンテという孤独な戦いに挑んだ勇気は敬意に値する。そして難しい節回しを懸命の追いかける努力も素晴らしい。しかし、音程の不安定さやコンパス感が感じられないなど問題も多かった。やはり少し背伸びし過ぎたのではないだろうか。田中としろー君●声質に恵まれたちょっと渋いノドが魅力的。ただ、リズム的には要所々々にパルマを入れてもっとソレアのコンパス感を出したほうがいいと思う。後半テンポが上がってからも、もう少し盛り上げが欲しかった。白鳥光良君●声の質はフラメンコに向いていると思う。ただまだ経験が浅いためか、発音や節回しが稚拙だった。節が「ミ」に終止するところも、節がきれいに流れていない。自身の向いている声質を信じて頑張って欲しいと思う。北脇英子さん●毎回一生懸命カンテに向かう情熱には感服する。しかし、音程や流れの不安定さがかなり気にかかる。またソレア全体の構成からも、もっとドラマティックに歌って欲しかった。許有廷さん●昨年のマラゲーニャの弱々しい声とは打って変わって、まるで別人と言ってもいい音圧のカンテに鳥肌が来た。カンテは普通いくら努力してそんなに簡単に変われるものではない。それがガラリ変わったのだから驚きだ。音程はもともといいし、節回しも素晴らしかった。ただ前述したように、発声がフォルテッシモの押しの一手で、引きがなかったのが惜しまれる。それが出来ていたら相当のレベルだ。山口恵都子さん●ファンダンゴ・リブレはフラメンコの曲種の中でも、一、二を争うドラマティックな曲だ。そこをよく理解しているようで、一生懸命ドラマティックに歌おうとする姿勢に好感が持てた。ただ、そのドラマに必要な大事な節回しが上手く回り切れなかったのが残念だった。努力の余地は充分にあると思う。

 

小林伴子(舞踊家・理事)[Bg]

8.ラスニーニャスカンパニー
フラメンコは様々な文化を取り込みながら形成されて来たもので、アラビックなフラメンコもありだと思います。どうしても先生に目が行くのは貫禄ですね!新人公演という視点から見ればお弟子さんたちが中心になって構成して欲しかった。今回のような作品で今度はアニフェリアに是非出演して下さい。

9.花岡陽子S.D.カンパニー
ほのぼのしたさわやかな作品でした。夕焼け(?)のシルエットもハンチング姿も可愛くてすてきでした。せっかくの楽しい振付のアイデアを生かす個々の技術をこれからもっと高めて下さい。

10.エストゥディオ・アレグリアス
気迫のこもった素晴らしい演技でした。堂々とフラメンコらしい群舞で好感が持てました。

11.スタジオ・トルニージョ
個々の技術も高く素晴らしいトリオだったのですが、残念でした。転んだこと、花を落としたこと、それ自体は私にとって審査の上でさしてマイナス点にはなりません。ただそれをどう処理したかを見ていました。後の処理が不適切だったことが惜しまれます。対処の仕方によってはマイナスをプラスに変えることも出来たのでは…。

20.ラ・クラベ・デ・ソル
>モダンな構成と衣装、それを生かす個々の技術もしっかりしたものがあり素敵な群舞でした。ただブラッソの同調性(これは形ではなくフラメンコ音楽としてのタイミングのことです)など、まだまだ皆さんで心を合わせ磨いて行く余地があるように思いました。

21.ラス・マジョーレス
長年踊っていらっしゃる方たちのフラメンコと共に年を重ねた姿はすてきでした。会場で皆さんを見た年配の方たちは勇気づけられたと思います。

22.鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ
作品としてスピード感もあり、構成もすばらしく、踊り手の技術も相まって見応えのあるグループでした。
ただ気迫や思いが強すぎて観客に向い攻撃的にさえ感じられたのが私には気になりました。

23.島村香フラメンコ教室
とても楽しく4人が心を合わせて踊っている姿は好感が持てました。私は皆さんに1票入れました。いつも”群舞”の選考基準が何なのか審査員皆それぞれで頭を悩ませる事だと思いますが、私は”新人公演”そして演じた”本人たち”をキーワードに1票を投じました。

さて、これは全体に関してですが賞があるために皆、賞を目指し、”傾向”と”対策”を考えて出演してくるのは当然なことだと思います。ただその結果シリアスでスピード感パワフルな物ばかり賞には入りやすいと思われ、出演者のヌメロがシギリージャ、ソレア、ソレア・ポル・ブレリアなどに偏ってしまうのは残念な気がします。豊かなフラメンコの全体が見渡せるような新人公演が良いのになあ!と思っているのですが……。私たち選ぶ側にも長期的ビジョンが必要ですネ!

 

鈴木敬子(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

「バイレソロの部」で印象に残った方。
多田れい子・踊っている時の体のラインがきれいだった。力が入り過ぎているところを変えて行けたらもっと表現力がアップすると思われます。佐藤真知子・大きな身体を活かしたペソのある動きがムイ・フラメンコで良かった。楽しんで踊っている感じが伝わり気持ち良かった。中村葵・若くて爽やかな踊り。華がありこれからが楽しみです。黒須信江・踊り慣れている。曲の構成が良かった。大槻敏己・技術がしっかりしている。バックの素晴らしいアルティスタと共に良いテンションになり会場に伝わった。男性ならではのキレが更に加わればもっと良くなると思う。黒木珠美・大きく上品な踊り。バックとのコンビネーションも良く好感が持てた。柴田千穂・身体の使い方が上手くエレガントなソレアでした。永田健・最後まで集中力が途切れず心に響く渋いシギリージャでした。新人公演を観ていることを忘れるほど質の高い踊りでした。また別の機会で観に行きたいです。吉田智宏・個性があり楽しませてくれた。岡田麻里・洗練された踊り。キレのある動きと美しいブラッソが表現力を広げていた。山崎愛・素晴らしいバックのアルティスタと共に力強くムイ・フラメンコな踊りでとても興奮しました。朱雀はるな・恵まれた身体でスペイン人のようでした。ペソがある中にキレがあり、踊りにインパクトがあった。松村布美・踊り慣れている感じがした。最後までテンションが高いままムイ・フラメンコでした。岡田知子・迫力のある踊りで良かった。指先まで行き渡る繊細さが加われば、更に良くなると思います。太田マキ・エレガントかつ力強い踊りでとても良かった。バックアルティスタに影響され自分をはっきり出せていたと思う。

「バイレ群舞の部」
エストゥディオ・アレグリアス・様々な個性が一つにまとまりフラメンコ的だった。ラ・クラベ・デ・ソル・構成が良く踊り手のフォーメーション等、飽きさせないスピード感ある展開でまとめられていた。衣装も曲にピッタリだった。ラス・マジョーレス・登場した途端に会場の空気が変わり、ゆっくりとそして、重みのある人生を感じる踊りに感動しました。

 

鈴木英夫(舞踊家・ギタリスト)[G]

久しぶりに新人公演のギターの部の選考委員をやらせて頂きました。いつもギターの出場者は少ないのですが、カンテの出場者に比べても今年のギターは総勢6人と言う例年になく少ない出場者で淋しい思いがしました。もっともっと積極的にギターには参加して欲しいと思います。さて今年のギター、私の感じた一人々々の感想をここに述べさせて頂きます。

まず1番の中川さん、弾き始めた途端に力強いタッチに驚きました。最近はサラサラっと弾く傾向のある中でこれぞフラメンコと感じさせる音色に圧倒されました。古き良き時代のグラナイーナスの感じがして良かったのですが、少し荒削りな感があったのが残念です。もう少し音を大事に弾けばずっと良くなると思います。

2番の渡辺さん、弾き出しの雰囲気はとても良かったのですが、同じ感じのメロディーが続いたり後半が少しソレアと言う曲の雰囲気から外れた感がありました(個人的な意見です)。それぞれ演奏者の特徴なのかもしれませんがやはり基本的なソレアの和音展開が大切です。リズム感、テクニックは申し分ありません。

3番の木村さん、準奨励賞おめでとうございます。演奏を聞いて大分弾き込んでいる感じがしました。ブレリアスはいろいろな意味で大変難しい曲ですが、リズム感、コンパス感、そして歯切れも良く素晴らしい演奏でした。ただ気になったのは場所によってアルサプアが少々雑に聞こえたところです。もう少し丁寧に仕上げればずっと良くなると思います。

4番の大山さん、最近では珍しいサパテアードの演奏、楽しく聞かせて頂きました。クラシックギター的な技巧を駆使して良く弾いていますがテンポが速いためアルペジオやピカードが少し雑になり、メロディーがあまり聞こえてこなかったようです。もう少しメリハリをつけてアルペジオやピカードがしっかりとした音を出せればグっと良くなると思います。

5番の藤嶋さん、全体的に線が細く、1本調子の感じがしました。ブレリアスに大切なものはやはり独特なクロスリズムとコンパス、躍動感、そして歯切れの良さでしょう。きちんと弾いてはいますが、今一つ盛り上がりとインパクトが足りない気がしました。あと、甲高いゴルペ音が少し気になりました。

6番の岸本さん、懐かしいサビーカスのファルーカですが、難しい選曲だったと思います。と言うのはどうしてもコピー物は原曲と比べてしまうのでその分オリジナル曲より難しくなってしまいます。技術はそれなりにお持ちのようなので是非自作の曲でまた挑戦して見てください。

今回の出演者、皆さんの演奏はとても個性的でそれぞれ素晴らしかったです。もうすでにギタリストとして活躍なさっている方、これからプロとして活動を始める方、趣味で弾き続ける方皆それぞれでしょうが、皆さんフラメンコギターへの情熱を持ち続けて、これからのフラメンコギター界を担って行く存在になって欲しいと思います。

 

鈴木眞澄(舞踊家・理事長補佐)[Bs,Bg]

「舞台からみえてくるもの」

踊る人、唄う人、弾く人、たたく人、それぞれがどんな思いで舞台に立っているのかがみえてくるような気がしてつくづく舞台の怖さを感じました。

素晴らしい技術と表現力なのに、なぜか心にまで届いてこない方。逆にまだ拙い踊りなのにちゃんと伝わってくる方。どうもそこが他のジャンルとは異なる、生演奏で三位一体と言われるフラメンコの特色が所以しているような気がします。

ヒターノたちが長い年月をかけて育んできた文化は、その根っこのようなものがあるはずです。私たち異民族にとってその根っこは深く、行きつくのはとても困難ではありますが、それを見据えずしてフラメンコをやる意味はないと思うのです。また一方では、私たちも同じように喜怒哀楽のある人間ですから、表現するものに変わりはないようにも思えます。

昨年の大震災、原発事故という未曾有な経験をした私たち日本人が、それをヒターノたちの受けてきた苦難と置き換えれば、フラメンコ本来の表現が可能とも言えます。多くの苦難を受けた民族の文化は強くて深いと言われ、まさしくフラメンコは苦境の中から生み出し、育んできた人間の営みそのものです。そうであるならば、老若男女問わず、元気な人もそうでない人も今のあるがままの自分を表現する手段としてフラメンコを踊ればいいのではないでしょうか。

多田れい子さん、西岡愛さん、佐藤真知子さん、末松三和さん、椎名利恵さん、工藤栄さん、阿部和子さん、山崎愛さん、小林アントニオさん、
黒須信江さん、大槻敏己さん、小島智子さん、藤本ゆかりさん、西内佐和子さん、多田美和子さん、小杉愛さん、近藤朔さん、太田マキさんに心からの拍手をお送りします。
精一杯かたむけた何かが舞台から伝わってくるのはとてもうれしいものです。

私たち日本人がフラメンコをめざす道は二通りあるのかな、と今回感じました。 ひとつは、個性を生かし自分の世界を作り上げていく。
もうひとつは、あくまでもフラメンコの原点をめざし、それに近づくべく修練を重ねていく。いずれにしてもどのように心をかたむけているかが、いつでも、
どんなときでも舞台からみえてくることを忘れないでいたいと思いました。ありがとうございました。

 

曽我辺靖子(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

【24日(金)】
多田れい子さん:力強く流れのある動きに引き込まれました。津田可奈さん:小柄ながらパワーを感じました。表現力がつくとさらに良くなるでしょう。臼井由紀さん:マントンを投げた後の動きが少し気になりました。今後の成長が楽しみです。佐藤真知子さん:ブレない強さは貴女の持ち味です。それを大切に。中村葵さん:体は良く動き、アレグリアスらしさは感じましたが、ファルダの使い方に一工夫を。末松三和さん:メリハリ良く表現力もあり昨年に続き存在感のある踊りでした。椎名利恵さん:派手さはないが深みのある表現力は貴女の持ち味です。益々の精進を。浜井麻衣子さん:バックと共に楽しいアレグリアスを創り上げていました。森山みえさん:情感は伝わってきましたが、サパテアードに磨きをかけると一段と良くなると思います。正木舞さん:歯切れ良く丁寧に踊っている姿に誠実さを感じました。
花岡陽子S.D.カンパニー:シルエットからはじまる遊びの世界、思いもかけない展開に見入りました。エストゥディオ・アレグリアス:それぞれがよく踊りこんでいて味のあるグループでした。スタジオ・トルニ—ジョ:アクシデントがあったにも拘らず3人の息の合った、そしてバタで踊っていることを感じさせない自然な動きに魅了されました。ラ・クラベ・デ・ソル:構成おもしろく、曲に合ったシャープな動きに衣装も合い、一人一人のモチべーションの高さを感じました。ラス・マジョーレス:人生を感じさせてくれたグループに”オレ!”鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ:めまぐるしく変化する展開と若さみなぎるパワーに圧倒されました。島村香フラメンコ教室:とても好感の持てるガロティンでした。

【25日(土)】
瀬戸口琴葉さん:リズミカルで小粋であるが、フラメンコに大切な”タメ”が欲しいですね。黒須信江さん:自分の世界観を持ったアイレのある踊り手ですね。大槻敏己さん:この一年間での進歩は素晴らしいです。自信に溢れた踊りに引き込まれてしまいました。小島智子さん:流れ良くまとめていてブラッソの使い方に個性を感じますが、それが少々気になる点でもありました。藤本ゆかりさん:歌振りは良く踊っているのに、サパテアードの時に集中力が切れる感じになるのは惜しいです。石川慶子さん:ブラッソの動きを巧くいかし、そこからの感情のひっぱりに引き込まれ感動しました。漆畑志乃ぶさん:ラストまで心乱れず曲を深く理解した踊り。アレグリアスの中では一押しでした。山根智子さん:実力のある方です。ラストが少々気になりました。黒木珠美さん:衣装・アバニコ全て貴女にぴったりでした。以前より増した曲の理解度、表現力に大拍手です。徳田志帆さん:確実なサパテアード、特にレマーテの抜けの音が心地よく響き、今でも耳に残っています。もう一度観たい人です。西内佐知子さん:個性的な衣装がピッタリ似合っていました。もう少し曲の重さを感じてほしいですね。伊部康子さん:サパテアードも強く、長いブラッソを生かした心情表現も良い。群舞の時も光っていました。助川しのぶさん:衣装が曲とよくマッチし、”踊りが心から好き”という感じが全面に発揮されていました。内田好美さん:中盤から盛り上がりラストが印象的でした。阿部和子さん:印象的な衣装に身を包んだ踊りに熱いものを感じました。もう少し背中からの動きを意識するとよいと思います。永田健さん:昨年よりの進歩に拍手です。タメができ前向きに挑戦している姿が嬉しいです。サパテアードの強化を望みます。浅野直子さん:きちんと踊っていますが衣装に一工夫を。岡田麻里さん:リズム感があり、今後楽しみな人です。山崎愛さん:力強さは確かに伝わりました。実力のある人です。もう一歩ですね。惜しいです。

【26日(日)】
東陽子さん:以前より安定感が増し、芯の強さも発揮していますが、少し抑えた表現が欲しいです。伊藤明美さん:踊っている時の顔の位置が少々気になりました。朱雀はるなさん:ラストまでテンションがくずれずノリの良い踊りでした。マノも綺麗でよく踊りこんでいました。東仲マヤさん:上体の使い方が良く、軸もくずれず、情熱が湧き出ていた素晴らしいシギリージャでした。沖田真理子さん:貴女の笑顔が会場をほっとさせましたね。ラストのアイデアは可愛さ倍増です。花田玲子さん:タンゴからの盛り上がりに魅了されました。李成喜さん:おおらかな雰囲気の踊りでした。”重心を下に”と意識して下さい。今後楽しみな人です。小杉愛さん:自然な雰囲気の中で自分の世界を持ち、確実なサパテアードに引き込まれました。近藤朔さん:きっちりした動きが往年のフラメンコを思い出させてくれました。益々の活躍を期待しています。小澤圭子さん:テクニックもあり、力強く輝いていました。鈴木真衣さん:フラメンコ性に溢れたエネルギッシュな踊り。中盤からラストへの盛り上げ方は最高。次回が楽しみです。太田マキさん:芯が強く何かにとりつかれたような表現力。今までの殻を破りましたね。大拍手です。

 

手塚真智子(舞踊家・理事)[Bs]

○多田れい子さん:しっかり踊っている良いタラントでした。○山谷祐子さん:決めの時などブラッソの使い方と全体の流れを考えると良い。○津田可奈さん:身体のひっぱりが良いと思うが、ブラッソが直線的過ぎた印象。○佐藤幸子さん:リズムの不安定が気になりました。○臼井由紀さん:バタ、マントンをきれいに使っていました。○西岡愛さん:身体のしなやかさが欲しい。○佐藤真知子さん:ペソがあり良いティエントでした。○中村葵さん:フラメンコの身体の使い方を更に勉強されると良いと思う。○末松三和さん:昨年に比べてベテランの雰囲気が出てきたと感じた。○青木千鶴子さん:身体の芯を作ると、ねばり、足音も変わってくると思う。○椎名利恵さん:前半、身体が浮いた感じがしたが、後半に良い力が見えた。○工藤栄さん:笑顔が好印象。○浜井麻衣子さん:伴奏者の力に負けないような力量が欲しい。○森山みえさん:出だしの歩き方が良かった。○瀬戸口琴葉さん:軽快なリズム感はあったが、ねばり、ベジスコが欲しい。○黒須信江さん:安定感があり、ソレア・ポル・ブレリアを良く理解した上での構成も良かった。○大槻敏己さん:成長した踊りが見られて”オーレ”でした。背中の柔軟性があると決めの立ち姿が更に良くなると思う。○石川慶子さん:表情が豊かで良いシギリージャでした。○漆畑志乃ぶさん:足音がしっかりと気持ちの良いアレグリアスでした。○山根智子さん:全体の流れが不自然に感じられた。○黒木珠美さん:粋なアバニコの使い方で華やかな雰囲気。○柴田千穂さん:一音に込める気迫を感じた。○伊部康子さん:ティエント特有のねばりが感じられなかった。○助川しのぶさん:良い表情のアレグリアスでした。○内田好美さん:感情表現があり、力強いソレア・ポル・ブレリアでした。○永田健さん:迫力、切れ、ブラッソも良かった。○廣岡理恵さん:目力が良かった。○浅野直子さん:伴奏者との良い信頼感が伝わった。○岡田麻里さん:しなやかな踊りで自分の世界がある印象。○山崎愛さん:リズム感が気持ち良かったが、抜ける時のペジスコが欲しい。○小林アントニオさん:将来が楽しみです。○東陽子さん:伴奏者との交流が感じられず残念です。○伊藤明美さん:丁寧に踊っている印象。○河村由紀子さん:唄とのからみが好印象。○朱雀はるなさん:昨年に比べて魅せる力がついた印象。○大岩奈青さん:身体作りを勉強されて、迫力が出てきた。伴奏者とのコミュニケーションが良いソレア。○沖田真理子さん:笑顔で会場の色を変えた。○小杉愛さん:テクニックもあり良いソレア。○岡田知子さん:引っ込み際に振り返ったところがステキでした。○下山明子さん:実力が十分に発揮できなかったのでは?○中村里美さん:全体の流れが自然で、しなやかさ、目力を感じた。○鈴木真衣さん:誠実な良い印象。○太田マキさん:品のある良いソレア。○清水亜紀さん:上半身、ブラッソが良くなっている印象。

 

野村眞里子(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

バイレ・ソロ部門(奨励賞): 大槻敏己「アレグリアス」。オーソドックスな部分を残しながらも、独特の面白い味を加えていらっしゃいます。ブレリア・デ・カイのノリがよかったです。石川慶子「シギリージャ」。最初は歌振りとのからみに少し緊張感を感じましたが、だんだんよくなっていきました。マチョ・フィナルに入ってからの表情が特によく、粋に格好よく決まりました。徳田志帆「ソレア・ポル・ブレリア」。最初の強い足から「フラメンコ体質」の方だと感じました。メリハリもアイレもあり、全体的にとてもよかったと思います。東仲マヤ「シギリージャ」。歌振りも、エスコビージャもとてもよく踊れていらして、ソロ・デ・ピエには凄みもありました。マチョ・フィナルもよかったです。太田マキ「ソレア」。1歌の最初のレマーテから、訴えかける力がありました。エスコビージャの強弱も申し分ありません。ブレリアもいいです。「コラヘ」の伝え方が堂に入っています。

バイレ・ソロ部門(準奨励賞):黒須信江「ソレア・ポル・ブレリア」。レマーテのキレがよいほか、エスコビージャの構成やスビーダもよく、ご自分の「思い」を演じ切っていらっしゃるように見えました。永田健「シギリージャ」。歌振りも気持ちが入っていましたし、最後まで格好をつけて踊り切ったところがよかったです。山崎愛「ソレア・ポル・ブレリア」。元気がよくて、とても雰囲気を持った方です。キメの後に少し早目に動いてしまうところに注意をなさり、コントラ・ティエンポの効果を突き詰めていかれると、さらによくなると思います。

バイレ・ソロ部門(印象に残った方):佐藤真知子「ティエント」。アイレたっぷりの踊りでした。パルマを打つ動きの時に少し「素」が出るようなので、そこを研究なさってみてください。多田美和子「タラント」。歌とレマーテの呼吸がとてもいいです。タンゴもよかったのですが、もう少し盛り上げた方が伝わりやすかったかもしれません。浅野直子「タラント」。凛とした雰囲気があり、メリハリの利いた踊りです。上に着ていた方の衣装をエプロンに見立て、エプロン使いをしながら引っ込んでいったところが粋でした。岡田麻里「ソレア」。ゆったりの動きに魅力があります。ブレリアの歩き、ちょっとしたマルカールなどにも味わいがありました。小林アントニオ「ソレア」。小さい頃からフラメンコとの付き合いが深かったことを髣髴させる踊りです。正統派の踊りで、歌との絡みがよかったです。東陽子「シギリージャ」。歌振りの中にもサパテアードをぶつける難しい振付を、よくこなしていらっしゃったと思います。もう少し気持ちを落ち着かせて踊られるとよかったです。小杉愛「ソレア」。歌振りの動きは少なく地味ですが、じっくり歌を聴きながら何かをためこんでいく踊り方です。ジャマーダからエスコビージャへの入り方、「抜き」のところなどが特にお上手です。近藤朔「ソレア」。伝統的なバイラオールの衣装で、古風なスタイルをとてもていねいに踊っていらっしゃいました。小澤圭子「アレグリアス」。マイ・ペースを貫いていらっしゃるところが素敵です。鈴木真衣「ソレア」。じっくり歌を聴いて踊っていらっしゃいます。ブレリアも含め、いい踊りでした。

バイレ・群舞部門(奨励賞):ラ・クラベ・デ・ソル「ファルーカ」。掛け合いの足なども格好良かったですし、ファルーカの雰囲気がよく出ていたと思います。列などはよく揃っていたので、ユニゾンでのブラソも揃えた方がよかったかもしれません。

バイレ・群舞部門(話題賞):ラス・マジョーレス「ティエント」。還暦を過ぎた女性ばかりによる群舞。観客の心をしっかりつかみました。少し動きに「恥じらい」があるように感じましたので、もっと思い切って腰を動かされてもよかったかもしれません。

バイレ・群舞部門(印象に残った組):鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ「マルティネーテ・イ・シギリージャ」。サパテアードのテクニックとメリハリ、回転などのテクニックにそつがありません。よく揃っていました。特にマチョ・フィナルの盛り上がりは見事でした。

 

花岡陽子(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

「バイレ・ソロ部門」
多田さん:切れがあり、全体的にとてもステキでした。
山谷さん:ポーズがきれい。少し振りに単調さが…。
津田さん:面白いパソ、オリジナル性があります。
佐藤(幸)さん:独自性があります。力が入ってフラメンカ!です。
臼井さん:動きが美しく、きれいにまとめて私は好きです。
西岡さん:カンテの響きに乗って安定感があります。
佐藤(真)さん:長身を生かした大きな動きが魅力的。
中村さん:初々しく可愛らしい。これから楽しみです。
末松さん:強さと弱さがミックスされておしゃれでよかったです。
青木さん:だんだん成長なさることでしょう。楽しみです。
椎名さん:自分の踊りになっています。ミスが少ないです。
工藤さん:若々しく明るく、上達が楽しみです。
浜井さん:にこやかで楽しそう。よく踊っています。
森山さん:きれいなお身体、ブラソを研究してください。
正木さん:可愛らしく、衣裳もステキ。もう少しです。
瀬戸口さん:ねばりが欲しい。また挑戦してください。
黒須さん:ムイフラメンカ!バランスが良く会場の拍手も多い。
大槻さん:バネのある身体。パフォーマンスがステキ!
小島さん:恵まれた体型。おしゃれな衣裳、うっとりです。
藤本さん:激しさがぐんぐん伝わります。
石川さん:よくまとまっていて自分のものにして踊っています。
柿崎さん:気持ちよく、難なく踊っていますね。
漆畑さん:小柄の体を力いっぱい。明るさが持続。とてもいいです。
山根さん:よく踊りこなしています。動きにもう少し研究して!
黒木さん:流れるように美しいです。エレガント賞をあげたい!
徳田さん:安定性、重厚感、切れ、スゴイ!!
西内さん:パソにもうひと工夫。基本はいいです。
柴田さん:品性のあるフラメンコ。舞台をもう少し広く使って。
重盛さん:アイレがあります。好感がもてる踊りです。
多田(美)さん:全身で自分の踊りにしていますね。
堅正さん:工夫があちこち。華やかさが欲しいです。
伊部さん:きれいな身体、きれいな動き、うっとりです。
助川さん:最後まで華やかさが持続。すばらしい!
内田さん:ブラソを研究して。また挑戦してください。
阿部さん:ソレアに挑戦。しなやかさが欲しいです。
永田さん:サパティアートが音楽になっています。カッコいい!
廣岡さん:成長なさる予感がします。上半身をもう少し。
吉田さん:独自性のあるアパティアートですね。
浅野さん:よく動いて欠点が少ないのですが、ひと工夫を。
山中さん:一年一年成長なさるでしょう。頑張ってください。
岡田さん:美しい踊りの方です。足も強いです。
山崎さん:ぶれない身体、すごいです。
小林アントニオさん:これからが楽しみなバイラオール。
東さん:強さが心から沸き上がってくる様なものに。あと少し!
伊藤さん:きれいに踊られていますが、切れがほしいです。
河村さん:盛り上りの部分を考えて、また踊ってください。
朱雀さん:華やかさがあり、将来性を感じます。
松村さん:全身でフラメンコ。自分のものにしています。
大岩さん:重厚感があります。サパティアートきれい。
東仲さん:早いパソ、しなやかさ、ピカッ!と光っています。
沖田さん:可愛く軽快、もうひと工夫してください。
花田さん:欠点が少なく、気持ち良く踊っています。
李さん:大きい動き、すっきり。拝見して気持ちが良いです。
小杉さん:強い足、安定感、バランス良し!
近藤さん:温かい人生観を感じさせる踊りをしています。
岡田さん:正確なサパティアートがとても印象的です。
下山さん:しなやかさが加わったらまた挑戦してください。
中村さん:立ち姿ステキ。持続するサパティアート。
小澤さん:オリジナルなフラメンコ。力を少し抜いては?
君塚さん:よく踊りこなして、自分のものにしています。
鈴木さん:ねばりのある表現豊かな踊りでした。
太田さん:パソに魅力を感じます。カンテが心に入っています。
清水さん:全体に好感がもてます。ボリューム感も。
長村さん:心が浮き立つようなアレグリアスをどうでしょうか。
河野さん:きちんとまじめなフラメンコでした。振り(パソ)に同じものが多いかも。

「バイレ・群舞部門」
ラスニーニャスカンパニー:珍しいジプシースタイル。伴奏者も衣裳を着ては?
花岡陽子S.D.カンパニー:さわやかに、軽快に踊ってくれました。
エストゥディオ・アレグリアス:よく揃って基本がしっかりしていました。
スタジオ・トルニージョ:美しくさわやかに。3人がステキです。
ラ・クラベ・デ・ソル:構成、振付、とても良かったです。
ラス・マジョーレス:おひとりおひとりの人生観が出て、ゆったりと拝見できました。
鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ:完璧のように素晴らしかったです。
島村香フラメンコ教室:キビキビとよく踊っていました。

新しい感覚、新しいパソに出会えてありがとう!!

 

渡邊 薫(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

●バイレソロ部門

65名の出演者の皆様を見せて頂きました。私が推薦した8名の方です。
*末松三和さん:切れのあるブェルタ、流れが良く大人の踊り。
*徳田志帆さん:濃密な時がつまった踊りで、ムイフラメンカ。推薦の○も付けました。
*永田健さん:よく踊り込まれ、立ち姿が良い、パソがリンピオでした。少し力みすぎましたか!?
*山崎愛さん:安定した踊りで、フラメンコのアイレを感じました。
*朱雀はるなさん:メリハリがあり迫力ある踊りでした。
*東仲マヤさん:リズムの切り換えがスム−ズ、自分の想いがしっかりと体現出来ていました。しなやかな踊りですばらしい上達です。
*中村里美さん:雰囲気があり、パソもリンピオ。上体とバランスのとれた踊りでした。
*太田マキさん:切れもよく、よく踊り込まれていて好ましく思いました。

以上の方以外に私が気になり、次回への期待を込めて…
*佐藤真知子さん:伝統的振付をよくこなしていたが、タンゴのリズムが惜しかったです。
*工藤栄さん:自分らしく気負うことなく踊られ、爽やかな一風を感じた。リズムをもっと自分の中で感じて。
*黒須信江さん:よくコントロ−ルされた踊り、ブラソも表情豊かでバック特にカンテとのからみが良かった。
*西内佐知子さん:魅力的な大人の踊り、とくに後半が良かった。
*多田美和子さん:パソがとてもリンピオでバックとのコミュニケ−ションも良い。体幹、姿勢にもっと注意されたらよいと思います。
*伊部康子さん:長身で美しい踊り。ペソ不足が惜しいです。
*小林アントニオさん:まだ荒削りですが、好感のもてる踊りです。身体の固さ、フラメンコの訓練を積んでください。次回を楽しみにしています!
*東陽子さん:切れのある踊りに逞しさが加わり上達されました。
*李成喜さん:てらいの無い振付を丁寧に踊り、最後までテンションが高かった。
*岡田知子さん:抑揚のある踊りで、流れのもっていき方が上手い。
*鈴木真衣さん:テンペラメントを感じた。押さえたテンポ、マルカ−ヘが良かった。
*河野いおりさん:以前より切れがある。もっとあなたの感じたものを外に出しては。

●群舞部門

*ラ・クラベ・デ・ソル:推薦しました。9人のファル-カ、リズムを合わせるのは難しかったかと。すばらしかったです。今後の課題として、ブラソにもう少し気をつけられたらますます完成度が高くなると。
*スタジオ・トルニ-ジョ:3人各人の魅力が出ていて、曲とのからみがおもしろかった。
*ラス・マジョ-レス:本当にフラメンコを敬愛し、とても丁寧に踊られた姿に感動です!
*鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ:個々の動きがよく、構成も変化があり良かった同時にユニゾンの美しさも見せてくれた。
*エストゥディオ・アレグリアス:各人のレベルは高い。構成に一工夫欲しかった。

最後に気になったことを書きます。踊り手の衣装に合わせたアクセサリ(ペイネタ、花)を舞台上に落とすのは観客もドキッとします。ましてや踊っている方達はなおのこと。特に群舞の場合はフォメ-ションのこともあり影響があると思います。是非とも付けるなら工夫をして下さい。先輩達に聞くのも手ですよ!

 

市川恵子(舞踊家・理事)[Bs,Bg]

いくら素晴らしい振付であっても、又、技術や身体能力に優れていても、そこに踊り手の心があり伝えたいものがなければ感動は生まれないのではないでしょうか。今年は振りを詰め込みすぎで少しせわしなく感じた方が多かったように思います。シンプルでもフラメンコでしか出来ない表現、本当に自分の内から湧き出るような女性としての情感、マノ、ブラソの美しさ、そして生命を感じる様なフラメンコとしての強さ、フラメンコをどういう風に好きなのか?振りを踊るのではなく、自分の感情を大切に踊っていって欲しいと思いました。

バイレソロで私が奨励賞に推薦したのは、★末松三和:余分なものがそぎ落とされて、大人の魅力を感じさせる静かな重みのある存在感のある踊りになった。上体にひねりが出るとさらに深みが出るのでは。★黒須信江:フラメンコ性もあり、存在感もある、全体にバランスの良い締まった踊りで、ムイフラメンカ。好きでした★大槻敏己:精進するのはこういうことだと感動。十分に伝わった心意気!男性としての力強さも増し、芯の太い踊りに。コンパス感もしっかりしていて説得力もあった。★石川慶子:始まりが美しくドラマティック。現代風ムイフランメンカ。一時も空気がたるまない、身体の利く、締まって芯のある踊りに目が離せなかった。★徳田志帆:上手い!アイレ溢れるムイフラメンカ。堂々と自分の踊りを確立している。存在感もあり、豊かな表現力で印象深く心に残った。★山崎愛:まっすぐに届く、フラメンコの心意気。ぐっと締まったコンパス感、アイレもある気迫に満ちた踊りに引き込まれずっと見てしまう。私はとても好きなので○を付けて推薦。★東仲マヤ:唄ぶりに心打たれ感動した。独自性の高い個性的な踊りだが唄を深く感じ、全身を駆使して内から発するものに魅入ってしまった。エスコビージャが動きすぎたのが残念。★太田マキ:スパッとした切れ味のピエ。芯のしっかりしたフォルテな踊りに最後まで引き込まれた。きつ過ぎるところもあるが意気込みに思いは伝わった。とにかく上手い!

次に特に印象に残った人は●多田れい子:足も強く、切れ味もよく力強さが出てきたが自分の良さを大切に。少し今までと違う印象。ギターで作り過ぎて少し振りに振り回されている感あり。●多田美和子:ピエもクリアで唄もよく聴いている。溜めのある、味のある踊りに魅力を感じた。●永田健:始まりが印象的で良かった。男性としての正統派の踊り。実力を付けてきたと感じた。エスコビージャに少しムラが。●吉田智宏:唄ぶりはもう少し落ち着きが欲しい。でも本当に独創的。個性に目が釘付け。ブレリアからの盛り上がりがたまらない。オレ!●朱雀はるな:始まりが素敵。グラシアのある魅力的な踊り。いい空気感で力強い意志を感じた。もっと身体は締めて。●松村布美:小柄だが力強さを感じる、足腰がしっかりした安定感のある踊り。振りがせわしない。踊る力をもっているのでもっとそぎ落としたほうが良い。足の入り口が残念。●大岩奈青:唄の絞り、含みがあって好きでした。しっかり自分のスタイルを持っている、個性を感じる独特の空気感。ピエはクリアだが最後の足に上体の安定感がなかった。●小杉愛:鋭い足さばきに、いい緊張感のフラメンコとしての”気”を大切にした踊りなのだが、今回強烈に訴えかけてくるものが…。なにか物足りなさを感じた。ここまで動かないならもっと存在感がいる。肘の甘さも気になった。

印象に残った人は、○西岡愛:まだまだ甘さはあるが、込めた思いの伝わる、情感も、味もある踊り。そのフラメンコ感結構好きでした。最後のセギードもっとがんばって。去りも大切。○浜井麻衣子:表情が良い。ピエがクリアで身体の線がきれい。そつなくサラッと踊っているのに何か匂いがある。華がある魅力的な踊り。どこかに強さを。○佐藤真知子:まだ荒いが空気感が良い。体型を生かした振りがフラメンカ!ヒターナっぽい出で立ちでインパクト大!○中村葵:晴れやかで伸びやかで見ていて気持ちが良い。かわいく、さわやかで若さいっぱい。新人らしく好感が持てる。マルカールに含みとアセントが欲しい。○漆畑志乃ぶ:昨年(シギリージャ)の方が良かった。コンパスの締めもあるいい踊りだが、大きく動き過ぎて溜めがないように見えて損。自分の良さを知ることが大切。○黒木珠美:身体のラインがきれい。ピエもOK!グァパでグラシアもある魅力的な踊り。去りがきれい。○西内佐知子:軸がまっすぐでシンプルな踊りに好感が持てた。唄は聴けているがブレリアから動きすぎ。○柴田千穂:緩急もあるしなやかな踊り。唄を良く聴いている。静かな良さ。上手くて魅力的だがフラメンコ性もあるのになぜか物足りなさが。○伊部康子:しなやか、年々エレガントになってきている。2つ目の唄メロディで作りすぎていてフラメンコ的でないと感じた。品があるがティエントらしくない。少し弱い気がした。○助川しのぶ:かわいい、好感が持てる踊りだがずっと一緒の印象。ブラソ、特にマノが甘い。○内田好美:身体も出来ていて上手い、フラメンコ的。タパ部分が素敵で、ブレリアから野性的な魅力で惹きつけた。○浅野直子:込めた想いは伝わる。踊りは上手いが、構成がめまぐるしく、もっと動かないところを作って。リブレの唄をもっとしっとりと。○岡田麻里:振りをよく踊りこなしていて雰囲気がある。唄ぶりが良かった。ソレアポルブレリアが印象的。抜けから足に入る間が良い。○小林アントニオ:歩く姿が良い。バックと一体感があった。タコンが弱い。ブレリアに入ってからテンションが落ちた。マルカールをもっと大切に。○東陽子:鍛えぬいた身体が美しい。力強くかっこいいがフラメンコとして迫ってくるものが欲しい。唄の一振りをもっと大切に。大振りすぎるので足で踊っている印象に。○岡田知子:足音はクリアだがコンパスが甘い。ジャマーダが気になったがブレリアは上手く、軽く踊りこなしている。気合もあり良い部分がたくさんあるが、何か中途半端。○中村里美:締まった踊りで良い。身体の線、ブエルタがきれい。マチョの部分が弱い。コントラが気になる。まだまだだが意志をしっかり持っている。今後に期待。○小澤圭子:インパクト大。力いっぱいだが少しうるさい。自分の意思を感じ、大げさだが面白い。現代風で独創的な踊り。○鈴木真衣:軸がまだしっかりしていないが、自分を信じて精一杯踊る気持ちが伝わってきて好感が持てた。エスコビージャを大切に踊っている。

群舞で○を付けて奨励賞に推薦したのは★ラ・クラベ・デ・ソル:始めから素敵で、皆が上手なわけではないが、構成も素晴らしく魅力的。フラメンコとして大事にしているものが伝わってきた。ファルーカらしさをしっかりふまえた振付。シンプルで美しくモダンだがフラメンカ。空気感が良く完成度が高い。印象に残ったのは、●スタジオ・トルニージョ:ファッショナブルできれい、カッコイイ。粋でアイレもあり、ノリも良い。それぞれの個性を生かしている。●ラス・マジョーレス:出てきた途端、何故か涙が出た。人生を感じる。グリーンの衣装の人は一体何者なの?凄いと思った。点数なんか関係ない。フラメンコだ、オレ!●島村香フラメンコ教室:かわいい!ガロティンらしく好感が持てた。皆それぞれに表情が良く楽しく見ることができ、素直なフラメンコらしさが私は好きでした。

 

東仲一矩(舞踊家・理事)[Bs,C]

<バイレ・ソロ部門>

「フラメンコ・ルネサンス21」を省みて、出演者の皆さまお疲れさまでした。まず「奨励賞」を受賞された方達から感想をのべたいと思います。

「大槻敏己」さん、前回より安定度が増し、スピード感のある踊りでした。「アレグリアス」の”かわいた”風土感を表現されていたと思います。

「石川慶子」さん、非常に時間をかけて踊り込まれた様子を観られました。ピルエッタの安定度、ピエのテクニカもあちらこちらに拝見することができました。

「徳田志帆」さん、フラメンコを自分のものにされていて楽しく拝見させてもらいました。ピエでの表現そして軸のゆれなさ、安定した空間処理等、フラメンコの持っている黒色の部分を垣間見せてもらいました。

「東仲マヤ」、自分の娘なので書きません。

「太田マキ」さん、前回よりもずっと踊りが大きくなって、また大人の女性という感を覚えました。フェルサも弱い部分も計算された安定した世界を観せて頂きました。

「準奨励賞」になられた「黒須信江」さん、肩の”力み”が取れたらと思いました。後半が少し単調になったように思います。それとカホンの音にもう少し神経を使うと良かったと思います。

「永田健」さん、私的には好きな表現者です。男性の持つストイックな体のラインを良く計算されていました。今後はくずれた線とか点を入れてみればよりおもしろくなると思いました。

「山崎愛」さん、自分自身を良く識った舞踊でした。特に”ピエ”のテクニックは素晴らしいものでした。その他、賞にはもれた方達の中で、僕自身が気になった方達を連記いたします。

「末松三和」「椎名利恵」「多田美和子」「岡田麻里」「中村里美」「松村布美」「小杉愛」、以上の皆様が今回私の印象に残った方達です。是非次回に期待しています。

<カンテ部門>

やはり発声とスペイン語の「レトラ」のコンパス感のなさが気になりました。かなりの方が「たてのり」でレトラを唄っていました。それとスペイン語が会場まで届かなくて、途中で消えてしまっていました。「準奨励賞」を授けた「許有廷」さん、前回より太くなった唄い方でした。声量はあるのですから、今後足したり引いたりする技を覚えられれば良いと思います。今年も暑い中、皆様本当にお疲れさまでした。

 

瀧本正信(カンタオール)[C]

<カンテ部門>

今回は全体的に評価させていただきます。13名の出場者の方々全員に言える事ですが、リズムのある曲、ない曲に問わず、全て表乗りです。まずその部分が改善されない限りカンテと言うにはほど遠いと思います…。と言っても表乗り、裏乗りが理解できない方もおられると思いますが、ご希望があれば説明させていただきます。

次にカンテは歌詞です。言葉です。言葉にもアクセントがあります。そしてもうひとつ、言葉には発音があります。アンダルシア独特の響きがあります。私達日本人やスペイン人以外の外国人には、とてもハードル高い部分でもあります。しかし、カンテを続けていくかぎり決して無視できない事です。カンテを職業にしている方々は特に…。

そして発声ですが、やはり難しいのでしょう…。これも全員、口先でしか歌っていないような気がします…。そう感じるのは私だけでしょうか。力強い声と大きな声は違いますが。

もうひとつ、初めて出場された方以外にご質問させて頂きたいのですが、なぜ初めて出場された時の曲目で出場されないのでしょうか?毎回同じ曲目で出場されたほうが、採点する者にとっても個人の練習の成果や進歩が感じられるのではないでしょうか…。最後に私個人の提案なのですが、全ての曲目、無伴奏でカンテ部門が開催されたら、ある意味興味深い新人公演になると思います…。今現在我が国のカンテレベルにおいては、ギターのイントロで、ソレアならソレアと言う先入観でその人の歌を聴いているのではないでしょうか…。

いろいろ話しましたが、全て私自身もいつも向き合っている事柄です。

 

菊地裕子(評論ライター)[Bs,Bg]

震災から1年、日本のフラメンコたちがこんなにも頑張ってきたのかと感動に継ぐ感動の3日間だった。特にソロ部門ではフラメンコへの愛をたくさん感じた。群舞部門はバラエティに富み、表現の枠が広がってきていることを感じた。豊かなりしフラメンコ!出場者、関係者の皆様、本当にお疲れさまでした。ありがとう!(◎=奨励賞に推薦、○=高評価、△=今後に期待)

<バイレ・ソロ>
【24日(金)】
△多田れい子/舞台映えのする踊り。身体の中に充実があって引きつける。タンゴになってからの変化が少なく、やや平板な印象に終わったのが残念。
△津田可奈/キレ良く、リズム感もあり、小気味よい。振付・構成に美意識あり。上半身にやや硬さ。中盤から単調になった。最後までニュアンスを大事に!
○佐藤真知子/きわめて自然で呼吸するようなティエント。シンプルでひたすら心地よい。嘘のない、フラメンコの幸せな時間。オレ!
○末松三和/抑えが利いて内実がある。しかし振付の見せ場がわかりにくく地味な印象に。もっと必然性を自分の中に探して!

【25日(土)】
◎黒須信江/綿々と続くリズムの輪が心地よい。ゆるんだところがどこもなく、あっけにとられて見ていた。課題は強烈な個性か。
◎石川慶子/カンテに応えて素晴らしい出だし。大きな感情を内包し、強さと美しさと、しっかりしたシギリージャの世界観を表現した。オレ!
○柿崎祥子/削ぎに削いだ振付。非常に濃密な感情が詰まっていた。そのビロードのような手触りに感動。大舞台では地味だけど、私は泣きました。
△黒木珠美/雰囲気ある達者な踊り。全体を覆う女性らしさも良い。あとは振付・構成の意外性と強烈な個性。
◎徳田志帆/思わずニヤリとしてしまうようなヒターナ風の振付。わざとらしさがなく、自分のものとして踊っているところに感動!
△西内佐知子/要所を捉えて丁寧な踊り。しかし決め手に欠ける。具合のいいところでばかり踊っていると緊張感は生まれない。ギリギリのところで勝負を!
△柴田千穂/個性的で格好良いが、あざといまでの構成が逆にバランスを欠いた。もっと踊る部分を増やして再挑戦を。
△重盛薫子/真っ当なソレアだが、見せようという意識が表に出て深みが不足。もっと自分の中を深耕してほしい。
◎多田美和子/一昨年とは傾向の違うモデルノなタラント。抑制が利いて、粋な瞬間には思わずニヤリ。ただ、近年見かける振付だけに、自分の印をもっと工夫して。
△伊部康子/舞踊的には進歩のあと。だが、今回は振付が未消化な感じ。動きにもっともっと必然性がほしい。
○助川しのぶ/上手い。けれど決め手に欠ける。自分にしかできないことをもっと貪欲に探して。
○内田好美/振付・構成は良かったし、理解もできている。だが、時折、身体がぐらつく。筋は良いので身体作りをもっと。
○阿部和子/どーんとそこにいてカンテを感じている姿から痛みが波のように押し寄せてきた。ソレアの王道を感じた。感無量。
○永田健/緊張感が持続して、何と言っても格好良い。欲を言えば、もっと見せ場がほしい。技の精度を上げて、再挑戦を。
△吉田智宏/楽しいし面白い!味があって大好きです。ただひとつ、背中に隙があるのが惜しい。背筋を鍛えて、この路線を突き詰めてほしい。
△浅野直子/上手いがそつなく踊るので意外性に乏しい。振付の一つひとつを自分の中からのものか精査して、深いところからの必然性を。
○岡田麻里/抑制も利いているし、よく感じて踊っていた。だが、これといった見せ場がない。残念。「ここぞ!」ってところに磨きを!
○山崎愛/身体の中にいっぱい詰まった充実の踊り!自分らしさを持って踊った数少ないうちのひとり。欲を言えばもう少し足の面白さを追求してほしかった。
△小林アントニオ/間違いなくソレアだが、違うものに見えるほど不可思議な動き。勘所は押さえているから、まだ自分のものになっていないのか?才能、華を感じる。

【26日(日)】
△東陽子/身体を駆使した踊り。しかし感情のすべてを身体を動かすことで表現すると、かえってフラメンコ的感興から遠のく。要研究だと思う。
△朱雀はるな/曲をよく理解して踊っている感じだが、大舞台で踊るには振付の世界観が小さい。空気を動かす大きなエネルギーを基にして。
○松村布美/抑制が利いていて空気感もあり、見応えあり。見せ場もあったが、肝腎の足音が音楽に掻き消えてしまって非常に残念。これは要検討。
○大岩奈青/踊りにリズムが息づいていて自然にフラメンコしている印象。これからもっと自分の必然性を探して。
◎東仲マヤ/フアン・ビジャールJrの唄に応え、魂の息づかいのように踊った。感動で涙が止まらなかった。今回の奇跡!
△李成喜/よく抑えて踊ったが、軸がぶれるのが気になる。へそに力をつけて、3倍ぐらいでかい身体で踊るイメージを。
◎小杉愛/出てきた時から素晴らしい緊張感。フアンの唄と一体化し、見せ場も多く、大変に見応えがあった。一部足音が聞こえにくかったのが難点といえば難点か。
△岡田知子/良い感じでフラメンコしているが、足の場面が多すぎて作品イメージが小さくなった。大舞台で踊る際の振付・構成をもっと工夫して。
○中村里美/バランスが良く、シギリージャの展開も良い。だが小さくまとまってしまっている。もっとイメージを膨らませて、大きな踊りを。
△小澤圭子/踊れる人だが、今年は力が余計に入りすぎた感。空気が動かない。自然ににじみ出る個性をもっと大事にしてほしい。
△君塚理恵子/曲調を捉えて、繊細な女性らしい踊り。だが全体の印象がぼんやり。落差とか緩急とか、輪郭をはっきりさせる手だてを研究して。
◎鈴木真衣/唄を感じて、よく魅せた。味も個性もあり、見応えがあった。あとは大劇場で見せる工夫を。
◎太田マキ/見入ってしまった。最初から最後まで感じさせるソレア。メリハリが利いて、中身の充実度が半端じゃなかった。もう1回観たい!!!

<バイレ・群舞>
○スタジオ・トルニージョ/水準以上の踊り手が揃い、曲のイメージに品がある。だが、3人にしてはきれいにまとめすぎの感も。全然違う得意技を少しずつ披露するとか、個性を発揮する場面がほしかった。
◎ラ・クラベ・デ・ソル/非常に高い美意識を感じた。女性らしい揃いの衣装で踊りながら、そこかしこにファルーカのアイレが。それはまるで、踊り手たちがファルーカを踊るひとりの踊り手の細胞の一つひとつになったようで、細部にリズムが息づいていた。バレエ・フラメンコの美学を見た思い。素晴らしい!

 

西脇美絵子(評論ライター)[Bs,Bg]

今年も熱い3日間が終わった。バイレ・ソロ部門は、例年にも増して実力が伯仲。選考はとても難しいものとなった。私の中では、頭一つ出ていたと感じた人が3名。奨励賞のボーダー上にいると感じた人が14名。そのすぐ後ろにも大勢の人たちが続いていた。選考委員にもそれぞれの考え方、感じ方があるので、1票獲得の人も含めて奨励賞に推挙された人は40名近くにものぼり、票は、かなり分散したといっていいだろう。例年そうなのだが、今年は突出した人がほとんどいなかった分その傾向が強かった。

皆うまいのである。驚くほどよく身体も動くし、フラメンコ独特の動きや所作もけっこうカッコよく決める。リズム感というレベルでいえば、ノリだっていい人が大勢いる。(毎年毎年)これだけ多くの人がこんなにうまくフラメンコを踊るなんてそれだけでも感動的なことだ。だが、なのである。ほとんどの人が、どこか物足りないのだ。そつなく踊っているのだが、ズドンとこちらの胸に迫ってくるものがない。気合が足りないのか?いや、それは痛いほど伝わってくる。技術力の問題か?多くの人がこちらがお腹いっぱいになるほどあんなこともこんなこともできる。

では、気合と技術のその先にあるものはいったい何なのだろうか?私が迷わず奨励賞に一票を投じた3人と、ボーダー上にいると感じた14名、そのすぐ後ろに続く人たちとを分けたものはなんだったのか?大きく括れば、私は2つのことが感じられるかどうかが分岐点となるように思う。ひとつは、自分がなにをしたいのか、どんなフラメンコを踊りたいのか、つまり踊り手の明確な意思が感じられること。もう一つは、フラメンコ舞踊のフラメンコ舞踊たる魅力、カンテやギターを感じ、音楽隊とともに大きなエネルギーの渦を作り出しているか。

さて、今回私は7名の出場者を奨励賞に推挙した。絶対奨励賞!の思いで投じた3名は、東仲マヤさん、石川慶子さん、山崎愛さん。東仲さんのバイレはキレとタメがぎりぎりのところで拮抗し、醸し出される絶妙のアイレに思わず唸った。カンテやギターのパワーを身体に取り込んで、一つの世界を構築したと思う。石川慶子さんは、彼女の身の内から溢れる表現欲求に、ハラハラドキドキしながら見入ってしまった。彼女が発する思いが強烈だったので、こちらも揺さぶられた。山崎愛さんは、気風のいい鉄火肌な踊りっぷりがとても魅力的。フラメンコの楽しさと元気を凝縮させたようなバイレ。何より身体が歌っていた。

この他に奨励賞に推挙したのは以下の4人。徳田志帆さん、黒須信江さん、柿崎祥子さん、東陽子さん。徳田さんは、肝っ玉印のフラメンコで、バックとの一体感があった。黒須信江さんは、自分は何を踊ろうとするのか、どんなフラメンコが踊りたいのかが伝わってくるバイレ。柿崎さんは、確かな技術、安定感があり、力みのない落ち着いた大人のアイレが好印象。指の先まで神経が行き届きブラソの美しさが際立っていた東陽子さん。力み過ぎがやや気になったが、きれいなだけにとどまらない意気込みを感じた。ほぼ同一線上に並んだ14名の候補者の中から上記の4人に絞ったわけだが、平均点が良かった人ではなく、多少欠点があっても特にいいところがあった人、という物差しで選んだ。結果的にそういう人たちが全てを見終わった後に印象に残った人だった。

上記以外の私の中の候補者を以下に出演順に列記する。ひねりが効いていた津田可奈さん。タメの効いた重いシギリージャを踊った西岡愛さん。踊る意思と個性を感じた藤本ゆかりさん。昨年から格段の成長ぶりを見せた大槻敏己さん。生き生きとアレグリアスを踊った漆畑志乃ぶさん。重さも切れ味もあった椎名利恵さん。確かな実力を感じた多田美和子さん。ソレアのニュアンスを美しく舞った伊部康子さん。力まずに重くたっぷりとしたソレアだった重盛薫子さん。しっかり体を鍛えての再挑戦が衝撃的だった永田健さん。嫌みのない自然マチョさ加減もいい。詰め込まない振りを思いっきり踊った阿部和子さん。踊り込みは足りないがユニークな振りでの挑戦が個性を放った吉田智宏さん。野性的なエロスを感じた朱雀はるなさん。カンテパワーを自分のものにして踊った松村布美さん。間合いを大事に振りを丁寧に踊り込んだ小杉愛さん。野性味ある力強いアレグリアスを踊った小澤圭子さん。重みのあるブラソでフラメンコ的内実が豊かだった鈴木真衣さん。前回よりも格段にうまくなった太田マキさん。よく踊りこまれていて振りを自分のものにしていた。

このところ活気づいている群舞部門。今年は8組が参加。結局なにがやりたかったのか?と首をかしげるものもあったが、それぞれの視点、個性の異なる群舞を楽しんだ。中でも突出してレベルが高かったのが、ラ・クラベ・デ・ソルと鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオ。フラメンコの内実とファルーカという曲種のニュアンス、特徴、美学をみごとに作品化したラ・クラベ・デ・ソル。統制美とドラマチックな振付で魅せた鍵田・佐藤舞踊団。一般の劇場公演なら鍵田・佐藤組の方が観客は沸いたかもしれない。だが、フラメンコ群舞の王道とも言うべき風格を感じたラ・クラベ・デ・ソルに一票を投じた。

 

小森皓平(カンタオール)[C]

<カンテ部門>
1.占部智恵:バイレ伴唱のカンテとしては、特に問題はないかも。カンテソロで感動させるには、声量の技術とかもう少し学んでほしい。
2.鳥居貴子:この方もカンテソロへの取り組み方をもう少し研究して欲しい。節回し、特に下におりる節の部分をしっかりと。
3.土井康子:気合いの入れ方充分認める。あとは声量を部分的に変えたり節の下り部分をもう少ししっかりと…。
4.林祥子:カンテはなるべくまっすぐの節にしないように。特にアレグリアスには基本的に節を回す(こぶし)部分がある。あとキーをもう少し上げて欲しい。
5.上野君代:声質はとても良い。節回しにも特に問題ないが、やはり下におりる節の階段下りがうまくいっていない。
6.齊藤綾子:節のテクニックはかなりレベルが上がっている。あとは声量ではなくて声質を。そして身についているこぶしをもっと強めに使っての強弱感を更にアップしたい。
20.深谷恵子:素朴な声に問題はないが、今後カンテに真剣に挑んでいけば、ハリのあるカンテっぽい声質になっていくでしょう。
21.鈴木弘子:無伴奏でも音程はしっかりずらさないように。またこの曲は節の流れに微妙な部分があるので、それをしっかり捉えてほしい。
22.田中としろー:声質はかなり良いと思う。ただしこの曲は特に思いっきり張り詰めた部分も必要。そこにこぶしを入れて欲しい。
23.白鳥光良:部分的に一部音程がずれるのは仕方がないが、音程がずれたまま節が流れるのはあまり良くない。まずはそれに取り組んでほしい。
24.北脇英子:部分的に身につけた技術、それをきかせるためにはまずしっかり音程を保つこと。声のハリを出すこと。
25.許有廷:音程、節回しの資格はかなり実力がある。更にハイレベルなテクニックを捉える素質を認めることができる。
26.山口恵都子:レベルの高い節回しに挑戦するためには、節の上げ下げの音程をしっかりと身につけることが必要です。

 

瀬田彰(ギタリスト)[G]

<ギター部門>

今回私は3番・木村さんを準奨励賞に推しました。理由は彼の将来的な伸びしろに期待したからです。今回の演奏者達は演奏レベルも高く全般的に良い演奏をしたのですが、各々良い点悪い点が有りその中で抜きん出る方がいなかったのが残念でした。

以下、出演順に講評します。(敬称略)

1番・中川(グラナイーナ):伝統的なスタイルのグラナイーナで古風な味の良さは感じられるがアルペジオやトレモロのファルセータが単純な表現に聞こえた。それとファルセータ中の短い各フレーズの演奏だが、最初と最後の音にウェイトをかけすぎて中間の音群が弱くラインが聞こえないので点検が必要。

2番・渡辺(ソレア):全体的にはテクニックも安定していて好印象だが、1番目のファルセータの中のレマーテにEmの響きを使っているのが気になる。自分なりの新しい感性を表現する方法として代理コード的に使っている様だがフラメンコの存在感が削がれてしまう印象を持つ。特にプーロフラメンコの曲種の場合はこの様なコードは両刃の剣になる。

3番・木村(ブレリーア):モデルノのブレリーアをスピード感を持って弾き切った。将来性を期待して準奨励賞に推薦した。

4番・大山(サパテアード):難しいテクニックを使ってよく演奏したが、この曲種はソロ曲の場合曲の作り自体が音の綾織の様な形式なので全ての音(テクニック)が均等に出ないと曲の良さが伝わらない。演奏音にばらつき感があったのが残念。

5番・藤嶋(ブレリーア):ヘレス風のブレリーアで雰囲気はよく伝わったが、演奏が小さく纏り過ぎていた。もっと骨太のコンパス感が欲しい。それと最後のアバニコのラスゲアードが2拍ずつの塊に聞こえず異質に聞こえた。

6番・岸元(ファルーカ):サビーカスのファルーカを自分なりの個性を加え、かなり大胆なタメを交えて弾いたのは良い。しかし最初のファルセータでコンパスからはみ出す部分が2か所あるがソロ演奏といえどもコンパスにはしっかり入れたほうが良い。

 

北井一郎(舞踊家・現代舞踊協会)[Bs,Bg]

「3日間の激戦を観て」

私なりの9点以上の祭典をさせて頂いた方11名のお名前をあげさせて頂きます。(出演順に記名)

【24日】
・多田れい子「タラント」
動きが良く、エンジ色のドレスがよく似合う。

【25日】
・黒須信江「ソレア・ポル・ブレリア」
後半の情感表現がうまいが全体に力みすぎるのが惜しい。
・大槻敏己「アレグリアス」
テクニックもあり強弱の使い分けが優れている。
・西内佐知子「ソレア」
しっとりした情感が良く出た作品表現。
・伊部康子「ティエント」
長身が映える、顔の使い方がうまく、また抒情性に優れている。
・助川しのぶ「アレグリアス」
長身を生かして華やかな表現が魅力的。
・永田健「シギリージャ」
プロとして多くの舞台に出ている人だが今日は確かな技術と抜群のサパテヤードを披露、本日の一番として推したい。
・廣岡理恵「タラント」
ねばっこい踊りだが、モダンな表現が良い。

【26日】
・朱雀はるな「ソレア・ポル・ブレリア」
大人の表現がうまく、戦後の名手加藤よう子さんに良く似た踊り。
・李成喜「シギリージャ」
長身が映える大人の踊りを感じた。
・太田マキ「ソレア」
激しい表現と解放された動きの間が良い。

 


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