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第26回新人公演「フラメンコ・ルネサンス21」

日本フラメンコ協会第21回新人公演「選考委員講評」

選考委員(名前から各講評へリンク)

濱田滋郎(評論家・会長)[G,C]

まずは、第26回新人公演も、なんらの支障も起こらずに無事終了したことを心より喜び、すべての関係者の方がたに厚く御礼申し上げたいと存じます。3日間会場におりますと、フラメンコを愛する大勢の方がたとお会いでき、晴れやかなお顔、お姿、お心に触れて、生き返らせて頂くような感覚を味わいます。「ANIFもこうしてお役に立っているのだな」と実感できるのは、とても嬉しいことです。

全体の「まとめ役」を頂いているので、バイレソロの選考には私は加わっておりませんが、特に数多かった出演者の中から7名の「奨励賞」受賞者が出たことにお慶びを申し上げます。一挙手一投足で観衆の心を奪ってしまうような飛びぬけた人材には今年も出会えませんでしたが、皆さんそれぞれ個性を発揮して、よく踊られたことに疑いありません。賞を得られなかった出場者の中にも、印象に残った人たちはずいぶんいます。ぜひ、更なるご研鑽を、と願っております。また群舞も、8組それぞれのアイディア、振付と技量で、よく奮闘されました。群舞は当公演の華ですから、今後も出場数が減ったりせぬよう、お願いしておきたいと思います。

私が選考委員として加わったギターとカンテに関しては、まず、選考委員の大半が票を投じた森谷忍さんのギターによる「シギリージャ」が圧巻でした。一昨年、その味わいの深さで「話題賞」を贈られたベテランの森谷さんですが、今回は更に腕を磨かれたようです。メルチョール・デ・マルチェーナ流の旧スタイルによる演奏ですが、一面では完全に「自分のもの」として表現されており、ファルセータそれぞれの仕上がり、そして、ひとつのファルセータから次に移る一瞬の呼吸の佳さなど、「これぞフラメンコ!」と、聴きながら胸の内で叫ばずにはいられません。「21世紀のフラメンコ・ギター」の観点を重んじるならば、たとえばやはり「シギリージャ」を弾かれた鈴木一義さん、「ロンデーニャ」を弾かれた池川史洋さんのほうが上位に置かれるでしょう(事実、お二方の演奏はとても聴き甲斐がありました)。しかし、森谷さんには、すべてを超越した、フラメンコの“永遠の真実”が宿っており、それが選考委員たちの心に響いたのです。

カンテの方がたも、それぞれに熱唱されました。往年に比べたら、この部門も全体的水準は格段に上がっています。ただし、まだ「フラメンコとしての声の質」を自分のものにしていられない方、「カナ書き的」な発音に甘んじておいでの方なども散見します。その中で、すこぶる立派だったのは奨励賞に浴された松橋早苗さん。ほかに私が高い点をつけたのは、同じく「シギリージャ」を歌われた齊藤綾子さん。ずいぶん舞台にも立っておられる方で、かねがね思っていたのは「声が美しすぎる」ということでしたが、今回はよく声の「甘味」をおさえ、フラメンコの味に徹しきった感がありました。「ペテネーラ」を歌われたダニエル・リコさんも、この一両年、カンタオールとしての確かな進歩をうかがえました。カンテこそはフラメンコ!今後ともアフィシオナード各位のご研鑽を楽しみにしています。

小島章司(舞踊家・理事長)[Bs,Bg,G,C]

今年のフラメンコ・ルネサンス21はとても充実していた。内容も濃密な作品が多く見られ、とても喜ばしい3日間を過ごすことが出来ました。

バイレ、カンテ、ギターは勿論のこと、一番感動させられたのは群舞部門でした。作品数は多くはなかったが、8作品共にとても異なった視点を持ちながら作品に向き合って創り上げて来た努力が散見され、時に目頭を熱くさせる作品もあった。全出演者の継続し続けてこられた多大な努力と自己犠牲に敬意を表すと共に、更なる発展と前進を祈って私の言葉と致します。以下の文は全作品に触れたものではなく私の視点でとらえた幾つかの作品への私見を述べさせて戴きました。(出演者の敬称は略させていただきました。)

【18日】
<バイレ・群舞部門>
群1奥野裕貴子・SIROCOフラメンコ教室:差別と被差別へのまなざしが色濃く炙り出され、また“母”という言葉の聖性が美を産み出し、ドラマ性を高めた。
群3カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」:美しい夏の日の思い出、胸に大事にしまっていたinfanciaの情景を価値有るものとした。舞踊家となり母となったあなたの慈愛を感じました。
群5Armonía:Lorca-スペイン内戦3人の女たち。不条理と抑圧の下に生きる。その内なる力を熱をはらんで演じ切った。戦さのさ中にも闘い生き抜く強い力を表明する熱気が見えた佳品。
群7La Puerta Abierta:溢れんばかりの白いマントンの波。カラフルな衣裳に包まれた群舞。1960~70年代のヒッピーの時代にコスタ・ブラバやバレアレス諸島で見たフラメンコ・ショーのイメージを思い出させてくれた。

<バイレ・ソロ部門>
和泉冴英香:身体から放たれるエネルギーが一旦濾過されて“ぬけ”感がほしいとこ。
片桐あみん:回転軸をしっかり身につけて。
本多清見:多彩なCádizの空気感が身につくと良い。
橋田佳奈:身体の軌軸の使い方をもっと深く感じながら表現してみて。
谷口祐子:bata de colaやMantónの扱い方とても軽やか。その中にもう少しの重みも加えたい。
庄子裕子:“いたずらっ気”があり自己セールスの能力あり。
佐藤直美:自分の出している速度に抗いながら自在さを謳歌する姿が良い。
池田理恵:“全神経”が最初からフィナルまで張りつめられ、よくmatizarされていた。踊り終わった後¡Muy bien!と叫びました。
牛田裕衣:フラメンコの“間(ま)”が絶妙。肉体から放たれるオーラが尋常ではなく強烈な叫びが聞こえてきた。
平田かつら:劇場の大きさに拮抗する力量を持っていた。熟成という言葉を体感させてくれた。最後はカンテに身を委ねて行く心の大きさも魅力。
大岩奈青:“継続した美の連なり”を創出したのは称賛に価する。深い精神性から伝わって来るものを私たちに伝えてくれた。
平川亜紀:“とてもフラメンコ的なるもの”を胎内に宿しているようなバイレ。ディエゴのカンテにぐっと身心を寄り添わせていたのも魅力が増幅された所。

【19日】
<ギター部門>
森谷忍:非の打ちどころの無いような演奏スタイルを確立され、究極の演奏に到達している。深く心に染み入った名演奏。
鈴木一義:コード進行の豊かさと共にスピードに乗り、一気に走り過ぎる爽快感があった。

<バイレ・ソロ部門>
小島智子:ゆったりたゆたう身体と心の推移が心地良く、身体のラインの美しさをより強調させる結果となった。
鈴木真衣:時折音がビシッと入らない時もあったが、後半のマーチョになってモイの声と共に心の内が震えるのが見てとれた。
瀧野晴美:身体目一杯使っての全力投球、いつも爆発しているような趣。
服部亜希子:足音がとても美しく奏でられたことが大きな魅力の根源となっていた。全体の調和が美をもたらした。
近藤朔:再びこの舞台に戻って来て、フラメンコの深い洞察力と美しさを表現。少しずつ結実して行く姿を見せてもらった。
藤本ゆかり:速いテンポの中でハイテンションを維持しながら続いて行く。その持続性の中の精神力の太さを讃えたい。
川口真理子:“音”に導かれて動いて行く身体の微妙さがもう少し出てくると良いのに…と思った。
西山依里:ボディコントロールが抜群。身体全体のシンクロニサシオンがマッチし所狭しと舞台を闊歩する姿が頼もしかった。
菊池麻由美:ボディラインの流れの美しさを持続し、舞台空間を大きく使いこなし、スペイン民族が培ってきた伝統芸能の様々な様式美までも取り込み、スケールの大きさを示した。
平山奈穂:日本人の中では珍しく、ペソの威力を持続し続けて踊り切った力量は中々なもの。ぶれない軸を操り多彩に踊る姿に拍手。
内田好美:繊細で、表現豊かに溢れ出るよう。時には強烈さも加味すると……。
鈴木雪花:変化に富んだ作品構築。心の豊かさと舞踊への思いの深さが相乗効果で良い展開となった。
山本由紀:パリージョスの響きが冴え亘る。メリハリ良く展開する中で美しい“小宇宙”を創り出していた。
小河由里子:舞踊が大きく見えた。“そこにスペインがあった”そんな雰囲気を醸し出していた。後半過剰なコマーシャリズムが所見されたが、少し控え目の方が余韻が残るのでは。
寺嶋いずみ:後半タンゴスに入ってから冴え冴えとした所作が随所に散りばめられ、楽しいシーンを創り出した。
竹村歩:もう少し“ため”の感覚を身に付けられればフラメンコの奥深いものlo jondo が染み入って来るのでは。
黒木珠美:身体の隅々までよくコントロール出来ていた。舞台空間をバランスよく使いこなす力量を感じさせた。
田中実華江:“間”の取り方が絶妙。ギリギリまで耐えて次のパソに移行することで生まれる所作と足音のソニケーテの連鎖が美を生む。
岡田麻里:起承転結を良く考えた構成となっていた。
富永央子:愛嬌を沢山振りまいて踊る所が、今はやりの言葉“かわいい”を醸し出しチャーミングな一曲とした。

【20日】
<カンテ部門>
松橋早苗:ペペ・マジャのギターと共振しシギリージャの奥深い味わいを出していた。

<バイレ・ソロ部門>
佐渡靖子:事の始まりは美を極めることから。マントンの動きがスタティックさを強調。最初から最後の瞬間まで気を張り詰めた所作の連続にもゆるぎなく、称賛に値する作舞。
齋藤朋之:独特なcolocaciónがユニークさを際立たせ、特別な“間”を創り出すことに成功。
堅正はるか:熟考され尽くした作舞となっていた。カンテやギターとのコミュニケーションも抜群でmuy profundoな踊りでした。
河合浩子:はじける気持ちが楽しさに向かって突き進み、何か“次の予感”をさせてくれるものが生まれ、スピード感も程良かった。
佐藤陽美:エネルギーに満ち、予期せぬようなシーンが生まれるのでは……と期待してしまう踊りっぷりでした。
津田可奈:嘆きがテーマなのでしょうか。速さの妙を身体中で表現し濃密な空間を創り出した。肉体的鍛錬も素晴らしいものだった。
久保田晴菜:舞台からはみ出しそうな位の意気込みを感じさせた。1つ抜け出した感を抱かせるバイレだった。
津幡友紀:ロマンセはロマンセ・ヒターノとも言われているが、とてもアイレ・ヒターノに近づこうとしている思いが伝わって来たが、その中に少しの抑制をきかせるともっと良くなるのでは。

歴代受賞者のエキシビションとなった最終出場者、カンテの山田あかりの磨かれた声の響きに納得させられた。バイレの正路あすかのどんと腰の据わったソレアに「近代から現代」へと移って来た証しが見てとれた。

山田恵子(舞踊家)[Bs,Bg]

今年は暑いだけではなく、地震や水害等で苦しんでいる方々が世界中に多勢いらっしゃいます。その中で幸いにも支障なく舞台に専念出来た皆様に接し、ほっと致しました。毎年この総評を書く度に思うことは、参加された皆様全員に何らかの賞を差し上げられたらという思いがあります。この気持ちをどうぞお察しください。

さて、御受賞の皆様おめでとうございます。感じたことを書かせて頂きますが、甲乙つけがたい踊りに大変苦労致しました。まずシギリージャを踊られた服部亜希子さん、この曲を踊りこなすのはとても難しいです。イメージをしっかりとらえた貴女の踊りは、味わい深いものでした。平山奈穂さんのソレアはカンテと貴女の奥深い嘆きがすばらしかったです。黒木珠美さんのソレアは踊りの流れが見事で、特にブエルタからの次のパソに移る瞬間が美しく、静と動のハーモニーと共に空間に花が咲きました。佐渡靖子さんのシギリージャは、何てカンテを大事に踊るのかと心を打たれました。特にサリーダです。色々なスタイルがあると思いますが、ギター・カンテと始まり踊りが入ってくるその瞬間を、私は大切に拝見します。ここで決まると言っても過言ではありません。カンテを静かに聞き入る、そして思いのたけを踊り出す、これぞ本来のフラメンコの姿で、三位一体だと思うのです。カンテのすばらしさをサパテアードで邪魔をしてはいけないと私は教えられました。堅正はるかさんのタラントは、とても個性あふれる重厚な踊りでタラントの持つ独特な味わいが表現されていました。津田可奈さんのシギリージャは、自分の心をすべて出し切った極限の世界を踊り、踊りの強弱と間の取り方がすばらしかったです。久保田晴菜さんのソレアは、体とリズムが戯れているように見え、また最後のポーズがなかなか良い感じで振付の妙味でした。皆さん、出と入りを大切にしましょう。

わずかな差で準奨励賞の佐藤陽美さんは、スペイン人のような雰囲気があり、好感度大。あと少しの努力です。

群舞ですが、私は毎年同じことを申し上げています。それは群舞のすばらしさはソロでは表現できないことを人数で表現すること(同じ振付を多勢で踊らないで)。ダンサーがお互いの個性を認め合い、テーマをはっきり意識して創作する、個々の動きがいつの間にか1つになっていく、そのプロセスの面白さを考えましょう。構成・振付・センスが大切で、もしユニゾンで踊るなら、ボリショイバレエのように、背丈・体重・体形等あらゆる条件を満たし、一糸乱れず踊って表現できるならOKです。今回私はカンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」を選びました。子供達のテクニックはまだ未熟な部分が多々ありますが、難しいリズムを身につけてのびのび踊っていて感動致しました。ご指導なさった先生、センスが良いです。拍手です。これからが楽しみですね。

受賞されたArmoníaは3人の踊りがそれぞれすばらしい、個性豊かなダンサーなので、ユニゾン的に踊ると少々つまらなくなります。もっと色々なパートを考えて遊んでみたら面白かったのにと思いました。構成でがらっと変わりますし、更に良くなります。

同じことがグアヒーラにも言えます。男性2人の対話でしょうか?話が聞こえてくるようで面白いのですが、やはり2人がほとんど同じ振りを踊りましたが、達者な2人ですからやはり構成を考えたらいかがでしょう。私は群舞の創作が大好きです。

以上ですが、他に心に残った方々は、有田ゆうきさん、大井昌子さん、久貝輝代さん、小宮山葉子さんです。来年また更に良い踊りを期待しております。お疲れ様でした。

三澤勝弘(ギタリスト)[G]

<ギター部門>
今回も、出演された方たちの水準が高く、嬉しく思いました。
1)塩谷氏:冒頭部はしっかりと聴こえ、印象が良かった。ただ、親指での表現が平坦かと。また中心となるべき部分の印象も弱く、その骨太さが望まれます。
2)森谷氏:主張が以前にも増して明確になっておりました。しかし、曲の性格上、より微妙な動き、空間、音色などの扱いを今後の課題として下されば、と思います。
3)池川氏:とても進化されたというのが第一印象。弱い音での音の出や表現に一層の磨きが必要かと。立ち上がりや輪郭など…。
4)福嶋氏:冒頭部はとても印象に残りました。中盤に入りフラメンコ感に安定さを欠いたかと。全体に表現に厚みが望まれるかと。
5)和田氏:輪郭が弱く細い印象でした。演奏(表現)が前方へと向かってくる気配がないと感じました。技術の更なる向上と“情”の置き方や音楽的表現、更にその奥に在る“心”の部分を探求されることを望みます。
6)鈴木氏:しばしば現れるラスゲアードが少し指先に力が入り過ぎているのでは、と感じました。親指を①弦開放音(人差指)との響きに緊密さが欠けたか。中盤は集中感があり好印象でしたが、ポイントを絞っての大きな表現のところがあっても、と思いました。
7)内山氏:とても音楽性があると思いましたが、冒頭部を除くと、独奏(ギタリストひとりでの演奏)の表現をとしては、中味がはっきりせず、外観の雰囲気だけが印象に残ってしまいました。

全ての方も素晴らしく、将来性を持ち合わせておられましたが、参考とされたもの、あるいは作・編曲にあたって、パルマも含めて他との重奏などの要素を持ち込んではおられなかったのか。独奏としては食い足りない演奏が目立ちました。

小林伴子(舞踊家)[Bs,Bg]

毎年の事ですが、今回も101組の皆さんの熱い思いとエネルギーに圧倒されました!フラメンコ自体の技術の進歩にともなって、新人公演のレベルも毎年上がってきているのは当然のことなのでしょう。奨励賞を目指す人、新人公演を発表の場として挑戦する人、目的は様々だと思いますが、何度かの出演を重ねている方たちが、確実に進化している姿を見るのは嬉しいものです。
以下は私の個人的感想を出演順に記述します。

<バイレ・ソロ部門>
18-8池田理恵さん:ドッシリと堂々としたシギリージャは群を抜いて素晴らしかったのに、時間オーバーで失格になってしまったのが惜しまれます。
18-20平川亜紀さん:ノリの良いソレア・ポル・ブレリアが気持ち良かった。
19-13服部亜希子さん:ブラッソとマノの動きがサパテアードや体の動きを増幅させ表現力豊か。
19-23平山奈穂さん:ドッシリした体格を活かした迫力のイントロでした。
20-18佐渡靖子さん:今年はバタ・デ・コーラやマントンでの出演がとても多かった様に思います。多くの方がバタやマントンを巧みにさばく事が目的になってしまっている様に見えましたが、佐渡さんはバタやマントンを自己の感情表現のツールとして使っていて素晴らしかった。
20-30津田可奈さん:巧みな構成を活かした技術と感情表現でドラマを感じました。
20-32久保田晴菜さん:堂々と品格のあるソレアでした。

<バイレ・群舞部門>
群舞で私が票を投じたのは、18-9奥野裕貴子・SIROCOフラメンコ教室です。出演者の個性を活かした発想と構成、それを熱演した踊り手達、素晴らしいと思いました。準奨励賞のカンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」の小さい皆さんもすばらしかったし、LAMA y SONACAYのduoも見せ場たっぷりでさすがでした。
今年の群舞部門は多種多様なアプローチを見る事が出来、とても見応えのある回となりました。それ故に評価の基準も難しく、悩ましい事と成りましたが、選考する側にも、様々な価値観がある事でバランスが取れているとも思いました。熱い3日間の101組の皆さんへ心より大きな拍手!です。

飯ヶ谷守康(ギタリスト)[G,C]

<ギター部門>
2番目に演奏された森谷忍さんが奨励賞を受賞されました。ギターの部は7名の出場でしたが、その中では森谷さんの演奏が最も優れていたことは紛れもない事実でしょう。
確かに伝統的過ぎる?スタイル、難しいテクニックの不使用、地味、そして、えっ?…なんで?…というところも、あるにはあったのですが、ウソ、ハッタリが無く、ひとつひとつの音を“噛みしめる”ような気遣いのこもった弾き方に好感を持ったというのが奨励賞に値する、という判断に至った最大の理由です。
他の出場者に共通して感じたこと、それは細部の不完全さがちょっと多過ぎた、というところでしょう。例えば、1本調子なラスゲアードと親指の使い方、ファルセータやリズムの抑揚感の不足、更にメカの切れ目や左手のポジション移動時での最後の音がハッキリと出ていないことが多く、これでは説得力が大幅に減少してしまいます。最大限に気を付けて欲しいところです。なお、コンパスの理解で、えっ?あれっ!…という感じがあったのも残念なところです。
そんな中、グァヒーラスを演奏してくれた和田健さん、とても素晴らしいセンスの持ち主ではないか、と感じました。ただ残念なことに音が弱く感じられてしまいました。緊張からのことなのでしょうか…!?これからに期待しています。頑張って欲しいと思います。

<カンテ部門>
6番目に唄ってくれた松橋早苗さんが奨励賞を受賞されました。ちなみに、昨年も出場されていたのですが、いくつかの残念だったことのほとんどを、今回は修正できていたようです。わざとらしい発声や演技をしている感が無い、そして無理せずストレートに勝負している感じが気持ち良いですね。また、息の使い方がとても丁寧なこと、子音の発音が素早く、母音で唄おうという気遣いが感じられるところ、更に大きな声を出しても煩く感じられないことも魅力です。
なお、私の好みを言わせていただけるとすれば、マラゲーニャを唄ってくださった深谷恵子さん、とても良い感じだと思いました。ただ、イントネーションでの息の使い方がもう少し、と感じました。今後に期待してしまいます。
いずれにしても、真正面から自分の持っている技術の最高レベルを、細心の注意と大きな度胸でぶつかる…昔から言う“繊細且つ大胆”ということが、最終的には不可欠なようです。

今田央(ギタリスト)[G]

今回は今までになく迷いました。新人公演の意味とか、作曲力とかも評価すれば別の選択もありました。ただ予選も課題曲もなく、自作である縛りもない新人公演では当日の演奏だけで評価すべきという立場で森谷さんを奨励賞に推しました。自作曲で臨んでいただいた方にはそこを汲めず忸怩たる思いです。

塩谷経
イントロは良い感じではじまりましたが、コンパスを刻むあたりからちょっと緊張感がなくなったように思いました。D#のキーによるブレリアは音を重ねやすいので普通にアルペジオだけでも広がりのあるフレーズが作りやすいのですが低音成分が響きすぎタッチがしっかりしてないとぼやけたフレーズになります。途中P指によるフレーズが続いたあたりはコンパスも感じられなくなりました。全体に言えるのはリズムの安定感が弱く、かなり前のめりですね。アクセントをもっと引っ張り気味に感じましょう。ゴルペの音がちょっと耳障りなのも気になりました。

森谷忍
やはり先人の作ったファルセータは神だと確信しました。少ない音とコード展開ながらシギリージャの世界を構築しています。もちろんそれを表現できる森谷さんの力量があってのことですが。ギターの音色、間とも今回抜きん出てたと思いますし、フラメンコってこういう音楽だったんだと改めて納得させる力がありました。

池川史洋
曲の展開、コンパスの安定感、さすがの演奏でした。前半、pianissimoのフレーズやアルペジオが埋もれることもありました。PAとの相性もあるのでしょうがアルペジオはもっとクリアで硬い音が欲しかったです。トレモロも含め全体に高音弦側が弱いと思いました。後半の安定感は実戦で培った賜ですね。自然なグルーブが出てたと思います。

福嶋隆児
最初のファルセータ(パリージャ?)は音、間ともに素晴らしかったです。イントロのラスゲアードは踊り伴奏っぽくそぐわないかなと思いましたが。
その後はちょっと弾き急いでしまいましたね。トラディショナルなファルセータでまとめて好感の持てる構成ですがアルペジオは音が分離してないですし、アクセント毎のゴルペ音も気になりました。PAのせいもあるのでしょうが破裂音に近かったです。ゴルペやラスゲアード等音量でアクセントを表現してはいけません。あとP指のタッチをもう少し研究してみてください。現状でも音は良いのですが太さに欠けますし早いフレーズに追いついてない感じです。

和田健
ちょっと単調な演奏になってしまいました。自作曲ということですがあまりコードやリズムの展開もなく奏法のバリエーションのみで展開していくから踊り伴のファルセータみたいです。グアヒーラにはそういう面があるのかもしれませんが今一つフラメンコ的熱を感じられませんでした。タッチが弱いせいもありますね。コーダのラスゲアードからはブレリアの感じ方がまだ甘いように見受けられます。ブレリアのリズムをもう少し研究してみてください。

鈴木一義
テンション高いイントロで期待が高まりましたが気持ちを制御しきれなかったようです。自作、コピーを良いバランスで混在させ構成はとても良かったです。後半転調してからの畳み込みは日本人としては異例の創作だと思いますが、余りにも前のめりすぎてフレーズが聴き取れません。左手が右手に追いついてない感じですね。ツッコミ気味に弾くと低音部のスラーがつまっています。
技術的には素晴らしいものをお持ちです。この曲、温めて行ってください。

内山友樹
作曲力もさることながら時折織り交ぜるピカードの正確さ、かなりのテクニシャンですね。中段のファルセータは個人的には単品で賞を差し上げたいくらいです。ただファルセータの部分は良いのですがコンパスを刻む段になると頭ノリの余裕のないリズムになります。突っ込むという程ではありませんがアクセントを音量で捉えているのか大音量のゴルペも重なるので音楽に集中できません。踊りや唄の伴奏を通じてブレリアの刻みを磨いてください。このままでは惜しいです。

大塚千津子(舞踊家)[Bs,Bg]

新人公演出演者の皆様、大変お疲れ様でした。今年も拝見させて頂き皆さんのバイレに感動と刺激etcと沢山の思い感じた3日間。有難うございました。
ソロ・群舞奨励賞受賞の皆様、心よりおめでとうございます。日々精進を重ねた成果の受賞が今後の新たなエネルギーとなり益々飛躍への一途となり邁進されることを願いご活躍お祈りしてます。
ソロ受賞の皆様に感じた事、諦めずに挑戦し続けたお一人お一人から今年こそという最後の執念?と思える渾身のバイレでした。その募った思いを燃え立たせた気迫さが満ち溢れ圧巻!完成度高いバイレに優秀の美を感じました。素晴らしい変貌遂げしバイレに賞賛!
群舞で奨励賞を受賞された「Armonía」。実力あるお一人お一人のフォルマと個性が融合とぶつかり合ったコラッヘ!とても見応えあり個人的にも好きでした!
ソロ準奨励賞の佐藤陽美さん。若さはち切れたバイレ、フラメンカな気質に成長楽しみです!頑張って下さい!!
群舞準奨励賞受賞・カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」。お子様達の群舞はとにかく理屈抜きでゆるむ心はばからず楽しく拝見しました。結構難しいフォーメーションをほんとに良く動いて一生懸命バイランド。ピュアな表現にも心和みました。ご指導大変だったと思いながら、子供達の希望列車“たからもの号”の未来を見つめながら元気に走り続けて欲しいです。

受賞されずとも印象に残った皆様。期待込めてのエールを送らせて頂きます。主観にてご容赦下さい!
【18日】
和泉冴英香さん・時折足元のぶれに残念、身体の求心力強化を!
片桐あみんさん・基本をしっかり踊られた10代等身大のバイレ、将来楽しみ!
谷口裕子さん・華やかな持ち味備えエレガンテ! 緩急に表現力を。
庄子裕子さん・内外に発するフェルサ足りず、コラッヘが欲しい!
牛田裕衣さん・ダイナミックで安定感あるバイレ。タンゴ惜しい~!
平田かつらさん・コラッヘと存在感あっただけにタンゴ盛り上がらず残念!
大岩奈青さん・表現力おありなのでテクニックの研磨を。
平川亜紀さん・持ち味を出し切れずとても残念、更にテクニック研磨を。

【19日】
藤本ゆかりさん・特に溜めと抜きでしょうか。
西山依里さん・柔軟なコンパスがグルーブ、逆に全体が流れてしまったのか!緩急を。
菊池麻由美さん・モダンでダイナミック、素敵な個性を感じました。
有田ゆうきさん・とても残念、期待大!
鈴木雪花さん・テクニックにコンパス感おありなのでアイレを、身体とのバランスからマントン大き過ぎた感あり。
岡田麻里さん・テクニック全般のレベルアップを。
富永央子さん・アイレそして内なる映えをもっと放って!
佐野裕子さん・とても雰囲気あってバイレを楽しまれてる様に好感を持ちました。

【20日】
津幡友紀さん・泥臭いアイレでのコンパス感、特異なセンティードにも目が離せなかった!フォンドなバイレを是非。
山内佳代子さん・歌振り流れてしまった感有、ペソをもっと下に。

今回はバタ・デ・コーラが多くてびっくり!マントンにバリージョ等とテクニック配分難しいバイレに挑戦された皆さん、その心意気に拍手!!そして男性皆様へは、更なる精進を重ねそれぞれのバイレとステージアップを目指してください!近藤朔さん、進化なさり嬉しく思いました。お元気に邁進なさって下さい。

総評及び雑感…ソロにつきましてはレベルも高くなり選考結果が割れたように思えました。群舞はそれぞれの良さもあり何をもっての選考か、でした。他群舞につきましては前年度等を思い起こすと、群集の迫力での醍醐味に欠けていたように感じました。群舞の難しさは痛感しております。
「LOS TARANTOS京都」はドラマチックで主軸となられた方に魅入りとても楽しく印象深い楽しい作品でした。「デ プエルト ア プエルト」では最初にバタで少し踊られた方がムイ フラメンカ!他皆様のレベル向上目指して下さい。
衣装については、より洗礼されたデザインやノスタルジー感漂うスタイルを取り入れたり、また曲調での色使いに拘る方等とバリエーションとても豊かでした。同じヌメロ続くのは歪めない新人公演ですから、衣装もほんとに大事です。今年も賞に限りなく近い方、可能性を感じる皆さん、是非諦めずに挑戦を。最後に、今回も照明で皆さんのバイレが事の他際立ち映えていました。益々凝ってきているような!新人公演の醍醐味!!

岡本倫子(舞踊家)[Bs,Bg]

久々に選考委員として3日間に渡ってバイレソロ、バイレ群舞のすべてを拝見させていただきました。近年バイレの技術的なレベルが確実に上がっていることを痛感し、とても感心いたしました。出演した半数以上の方々には技術的レベルでは甲乙つけがたく奨励賞候補として投票することは困難を極めました。ここで印象に残った方々への感想を一言ずつですが述べさせていただきます。

<バイレ・群舞部門>
・カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」
小さなフラメンコスたちに「オーレ!」です。
・Armonía
気迫に満ちたマルティネーテ イ シギリージャでした。3人の動きが速いテンポの中でもピタリと揃っているのは圧巻でした。
・LAMAySONACAY
プロ中のプロお2人のグァヒーラには奨励賞はそぐわないでしょう。とても楽しいものを見せていただきました。ありがとうございます。

<バイレ・ソロ部門>
【18日】
・和泉冴英香さん トップバッターで登場というプレッシャーの中、ペソのある落ち着いたタラントでした。タンゴになってからも力が抜けなかったのは残念です。
・片桐あみんさん シギリージャの難しいリズムを確実に踊っていてこれからが楽しみです。
・谷口祐子さん バタ・デ・コーラとマントンの捌きはすばらしいと思いましたがバタとマントンの動きの中にアレグリアスのコンパスが感じられるものが欲しかったと思います。
・庄子裕子さん 柔軟なからだの動きで魅せてくれました。タンゴに入ってから顔の表情でタンゴらしさを表現する感じになってしまったのが残念です。
・佐藤直美さん 恵まれた身体をいかした振りでしたがブラソをもっと大きく使うと存在感が増してくると思います。
・池田理恵さん 振りに追われることのないとても感動的なシギリージャでした。時間オーバーでの奨励賞候補失格が大変残念でなりません。
・牛田裕衣さん とてもフラメンコ性を感じましたが動きが多い振りにはボリュームがありすぎる衣裳と髪飾りの多さは一考の余地があると思います。
・平田かつらさん 全体的に安定感のあるとてもしっかりした踊りでしたが時として重心が上にいきすぎて身体がぶれるのが気になりました。
・松下ひろみさん 長い手足を十分に生かした振りでとてもペソを感じさせてくれるシギリージャでした。
・大岩奈青さん ペソのあるシギリージャでした。ブラソにフェルサが増すと完璧です。
・平川亜紀さん 絵に描いたようなムイフラメンカな衣裳と小気味良い踊りっぷりがぴったりでした。

【19日】
・服部亜希子さん 凝縮された集中力と硬質な個性で踊った見事なシギリージャでした。
・藤本ゆかりさん 安定感がある振りでとても魅せてくれました。
・西山依里さん とてもフラメンコ性を感じさせてくれるタラントでした。
・菊池麻由美さん 恵まれた身体を生かした動きで舞台での存在感が抜群でした。肩が上がって首がなく見えてしまう衣裳の襟元が残念でした。
・有田ゆうきさん 安定感のあるソレアでした。
・平山奈穂さん 恵まれた身体から繰り出されるフラメンコは風格さえ感じさせてくれて圧倒されました。
・鈴木雪花さん 自身の見せ方を知った動きとステージ使いがとてもよかったと思います。
・小河由里子さん シンプルな振りながら十分魅せてくれました。
・竹村歩さん 小気味良い踊りっぷりがよく似合う衣裳とマッチしてとても素敵でした。
・大井昌子さん 足の強さが素晴らしくしっかりした印象でした。
・黒木珠美さん 安定感のある動きと華のある存在感で魅せてくれましたが後半の動きと表情の多さが多少気になりました。
・田中実華江さん とてもいいタンゴを見せていただきました。
・岡田麻里さん とても密度の濃いソレアでした。
・佐野裕子さん 大人のソレアを見せていただきました。

【20日】
・相田良子さん とても印象に残るソレアでしたがブレリアに入ってから焦り気味になってしまったのが残念でした。
・野上裕美さん 踊りは巧いと思いましたが常に客席に向かって投げ掛けられる視線が気になりました。
・菅家寿幹さん 進歩のあとがみられます。前傾姿勢からくる体幹の弱さが後半のぐらつきに繋がったと思います。
・伊藤千紘さん 小柄ながら身体全体に凝縮されたパワーで安定した大きい存在感を放っていました。
・佐渡靖子さん スケールの大きいフラメンコの世界に感動しました。
・齋藤朋之さん とても味のある踊りを見せていただきました。下半身のバランスの取り方を安定させるとより存在感が増すのではないでしょうか。
・堅正はるかさん 媚びが一切ないフラメンコ。安定した動きとステージ使いが見事です。
・久貝輝代さん バタ・デ・コーラがとてもお似合いの身体と雰囲気をお持ちです。マントンとバタ・デ・コーラの一層の鍛練を期待します。
・河合浩子さん アンティーク調の衣裳は素敵でしたが切れの良い踊りには合わない印象を受けました。
・佐藤陽美さん 安定した足捌きと切れの良い動きが素敵でした。 
・久保田晴菜さん とてもペソのある美しい身体使いのソレアでしたが常に微笑ん見える表情に多少違和感を覚えました。
・津田可奈さん 動きの多い振りを抜群の安定感とリズム感でこなして見事なシギリージャでしたが衣裳の襟元の長いフレコと光りすぎの髪飾りが観る側からするとかなり邪魔になっていたように思います。
・小宮山葉子さん 個性的な衣裳で踊ったソレア・ポル・ブレリアは安定感もありとても素敵でした。
・津幡友紀さん ペソがありムイフラメンカなステージを堪能させていただきました。

片桐勝彦(ギタリスト)[G]

皆さん、新人公演お疲れさまでした。音色や奏法上の点で気が付いたことを、一言ずつ述べさせていただきます。

塩谷経:変則チューニングの難しいブレリア。テクニック的には一番難しい曲だったと思います。レの音に下げた6弦の音が両用のギターからよく響いていました。この速いテンポをパルマなしでキープ出来たのも、塩谷さんの技術の高さがうかがわれます。ただ逆を言うと、もう少しテンポを落として更にコンパスが浮き上がるような演奏になれば、もっと良かったと思います。和音からメロディーに移る部分やピカードからプルガールへの切り替え部分などで、若干のリズムの乱れがありました。その他、速いパッセージの後や休符時に少し走ってしまったのが惜しかったです。しかしこの難曲がゆえの乱れなので、良く弾けていたことには間違いありません。前回のソレアや前々回のブレリアもすべてが難曲でした。一度テクニック的なことから離れて、呼吸や音色に集中して感情移入のできる曲作りを考えてみてください。

森谷忍:奨励賞受賞おめでとうございます。前奏のラスゲアードの後のグラネアードの音色、それに続くアルペジオのキレの良さ、ビブラートのニュアンスなど、出だしから魅了されました。前回の話題賞の選考理由である「豊かで美しい音色」は、このシギリージャの澄み切った一音一音でも感じられました。右手に無駄な力が一切入っていないことと、前回も書きましたが自然なゴルペの音量バランスなどが全体の音色を決定づけています。最近のフラメンコ奏法ではあまり聞かれなくなった右手のつま弾きによるファルセータも、絶妙な呼吸や間と相まって、シギリージャの特徴を醸し出していました。そして印象的なエンディング。演奏の最後は迫力のある音で派手に終わらせることが多いですが、最後の素朴な単音ラの音が印象的です。森谷さんの無心で、そして集中して最後まで弾ききった今回のシギリージャを聴いて、間や呼吸や音色の大切さを強く感じました。

池川史洋:昨年のブレリア同様、太い音色と絶妙な強弱や緩急で安定した演奏でした。6弦のD音も両用ギターの音色を引き立てていました。池川さんの弾くピカードやラスゲアード、アルペジオなどの奏法はどれも曲の中に溶け合っていて、自然に聞こえてきます。つまり良い意味でのプロの演奏とでも言いましょうか。そして後半のリズムになった箇所も安定していて、コンパスもしっかり聞こえてきました。強いて言うならば、1弦のトレモロが少し速すぎて聞こえにくかったことです。トレモロ時のp指は理想的でしたので、ima指が速くならないように気を付けてみてください。奨励賞に値しても良いほどの好演奏でした。

福嶋隆児:迫力のある演奏でした。ピカードとプルガールのコンビネーションも良かったです。全体を通して気になったのは、ラスゲアードの音色です。力を入れすぎて時折、音が割れてしまってました。手首を使うアバニコ奏法時に腕が少し大振り傾向にあるのと、チョルリターソ時などは ami指のタイミングが少し速すぎて音が分離していない時もありました。それと、ゴルペの量が多くて音が大きすぎるので、少し減らしてみては如何でしょうか。

和田健:毎回楽しませて頂いてる和田さんのオリジナル曲。今回のグアヒーラも所々好きな感じのフレーズがありました。途中ミストーンも多少ありましたが、そのことよりもずっと下を向いての演奏が気になりました。高音部のメロディーなどギター全体のポジションを使った曲作りは良かったのですが、ローポジション時では顔を上げることによって、音もさらに前に出てくると思います。しっかりとしたタッチで弾ききった前回のソレア・ポル・ブレリアに比べると、ちょっとおとなしく感じられたのも、顔の位置や弾く姿勢などにも関係してくるのかもしれませんね。そしてまた今回もエンディングのピカードが上手くきまってました。

鈴木一義:全体的に力が入ってしまって、音がつぶれてしまってました。ラスゲアード時に指が伸びきってしまっているのも原因の一つです。楽器や指にもかなりの負担がかかってしまうので、乱暴な弾き方にならないよう注意が必要です。オクターブ奏法時に高音部の音がプチプチと切れてしまうのは、左手の移動が速すぎるからです。ギリギリまで押さえてからポジション移動をしてみてください。そして、細かい音や速いフレーズほど丁寧に弾くように心がけてください。特にカバーレスの部分が気になりました。以前弾いた変則チューニングのブレリアからは今回180度違うタイプの曲でよく頑張ったと思います。次回も期待しています。

内山友樹:Dbのブレリア。高い演奏技術もさることながら、作曲も編曲も一流でした。 ami 指のアポヤンド奏法はビセンテ・アミーゴのような音色と力強さで、ラスゲアードやプルガール奏法とのコンビネーションも良かったです。ゴルペの音量が少し大きすぎる部分もありましたが、その分迫力がある演奏でした。ポジション移動の際も指板を見ずに弾けるのは、それだけギターに慣れている証拠ですね。そして自分の音をしっかり聞いて演奏しているのも印象に残りました。いつかリブレの曲も聞いてみたいです。

加部 洋(プロデューサー)[G,C]

<ギター部門>
ひと昔前に比べれば、世代交代がなされ、若くなり、演奏スタイルもモダンなものになってきた。そのレベルも一定の高さを保っている。気にとまった出演者を書きます。

森谷忍君●とにかく驚いた。一昨年のタランタより更に磨きをかけたシギリージャだった。年配者は衰え行くものの真逆で、進化していた。微妙な音色変化が素晴らしかった。池川史洋君●好んで弾かれる変則チューニング。その深い低音の響きのメリットを十分に生かし、ドラマティックに構成した演奏だった。ちょっと気になったのは高音域のパッセージとトレモノの高音の不鮮明だった。福嶋隆児君●踊り伴奏で鍛えた演奏のキレが大変良かった。高音域のフレーズの歌わせ方が素晴らしかった。ちょっと気になったのは、バランス的にゴルペの音が大きかったことと、3連符のラスゲアードのキレだった。和田健君●毎年出場の和田君。何度かの出場中、今回が一番良い出来だった。自身作曲のグアヒーラはメロディラインが自然で美しかった。グアヒーラらしかった。ミスタッチが惜しい。鈴木一義君●独特の思い入れに基づいたシギリージャ。演奏も高度で、一つの世界観を表現していた。しかしどうしても理解できない部分があった。

<カンテ部門>
毎年楽しみにしているカンテ部門。今年も多士済々の出演者でたっぷり楽しませて頂いた。カンテはなかなか上手くならないものだが、努力のあとが見られる出場者が何人もいた。気にとまった出演者を書きます。

深谷恵子さん●サリーダも良く、気持ちを込めて細かいところまで丁寧に歌っているところに好感が持てた。全く正統な歌い方だった。今までで一番良かったと思う。努力すれば上手くなるということの好例。山田裕子さん●情感、思いの丈を目いっぱい振り絞って歌っているところが普段の山田さんではなかった。これは凄かったという意味。声がかすれるほどの熱唱だった。カバルになって更に山田さんらしくなった。中山えみ子さん●素晴らしいサリーダから始まった。デリケートな節回しを克明に正しく辿っていて、言うことなし。音程も乱れなかった。明らかに上手くなっていた。一票を投じました。ダニエル・リコ君●いつも楽しみにしているが、今回はいつものダニエル君の良さが無かった。音程が不安定で、節回しもスムーズでなかった。残念。田中敏郎君●田中君も今までになく良かった。ダンゴに移る当たりからノリノリで楽しめた。はっきりと成長のあと。齊藤綾子●上手いし、声量もあり熱唱なのだが、どこか平板に感じてしまうところがある。強弱緩急をつけてドラマティックにして欲しい。

鈴木敬子(舞踊家)[Bs]

【18日】
和泉冴英香さん/トップバッターのプレッシャーを感じさせない力強い踊りでした。片桐あみんさん/わずか10歳でどうどうと大きな舞台でソロを踊るのは大変なことです。身体がブレるところなどありますがこれからが楽しみです。谷口祐子さん/上手く綺麗に踊れている。マントンやバタ・デ・コーラのテクニックに追われ身体がブレてしまいがち。余裕が出るまで踊り込んでいって欲しい。庄子裕子さん/ブラッソの使い方が綺麗。体の軸がしっかりしていて安定していた。池田理恵さん/フラメンコ的なペソがありとても安定していて良かった。バックのアルティスタと良い感じで盛り上がり、特に曲の後半テンションも上がり観ていて引き付けられた。タイムオーバーで選考外となってしまったことが本当に残念だ。牛田裕衣さん/力強くテンションの高い踊り。これからは一定の強さだけではない様々な表現が加わればもっと良くなると思います。平田かつらさん/安定した冷静な踊り。丁寧に練習を重ねてきたのが見えた。松下ひろみさん/キレがありブレない身体でとても良かった。山形志穂さん/正確なパリージョ。パリージョを持っていてもブラッソまでしなやかな女性らしい美しい踊りでとても良かった。

【19日】
小島智子さん/滑らかなブラッソとクエルポの使い方が美しかった。もう少し踊りに重さが加われば更に良くなると思う。鈴木真衣さん/ブエルタのキレが良かった。最後バックに頼りすぎたように感じた。服部亜希子さん/安定した力強い踊りでとても良かった。サパテアードのレベルも高く、曲の後半が特に盛り上がり観客を引き付けた。近藤朔さん/味わいのある踊り。前回もそうでしたが、今回も記憶に残りました。髙野正子さん/マルカールの時のブラッソがしなやかで美しかった。表情から踊ることを楽しんでいることが伝わった。藤本ゆかりさん/力強く安定した踊りでとても良かった。観ている方も引き込まれ会場が沸いた。川口真理子さん/立ち姿が美しい魅力のある踊り。もう少し力強い部分や踊りを崩す部分が見えると更に良くなると思う。西山依里さん/毎回印象に残る人。軸がしっかりしていてとてもブラッソの使い方が上手い。年々安定して良くなってきているので今後が楽しみです。佐藤幸子さん/毎回挑戦して努力が見えているのが素晴らしい。以前より表情がすごく良くなった。有田ゆうきさん/さらっと自然な動きが良い感じを与えた。バックと合っていて曲の後半盛り上がり会場も沸いた。平山奈穂さん/迫力のある大きいバイレ。熱くエネルギッシュな中にも冷静に安定した踊りでとても良かった。内田好美さん/スタイルが良く美しい。線が細いけれど安定した踊りでした。身体を叩くパソなどの手に重さが欲しい。鈴木雪花さん/スタイルが良く立ち姿が美しい。サパテアードの強弱がはっきり使い分けられ気持ちよかった。山本由紀さん/踊りの身体が出来ていてしなやか。パリージョがとても上手かった。またぜひ挑戦して欲しい。竹村歩さん/力強くメリハリのある踊りだった。感じの良いバイレで、また彼女の踊りを観てみたいと感じた。黒木珠美さん/力強いサパテアード、メリハリもありとても良かった。もう少し力を抜いたところも観たい。田中実華江さん/ペソがありフラメンコな踊りだった。特に曲の後半タンゴを楽しんでいるのが伝わってこっちも嬉しくなった。岡田麻里さん/とても安定してパワーのある良い踊りだった。

【20日】
伊藤千紘さん/曲の後半特に集中力が増しテンションが上がり引き付けられた。佐渡靖子さん/新人公演に何度も挑戦して努力を重ね、強い精神力とブレない身体に成長した。技術も高く踊りに貫禄まで感じ、曲が終わっても余韻が残った。今回の新人公演の中で一番印象に残った人です。おめでとうございます!山中純子さん/いろんなものを使った難しい振付を頑張って踊っていた。別のシンプルな曲での彼女も観てみたい。齋藤朋之さん/重みのある味わい深い踊り。とても引き付けられた。またぜひ挑戦して欲しい。加藤美佳さん/明るく表情がとても良く観ている方も和んだ。もっと丁寧に踊ることを心掛けると更に良くなると思う。堅正はるかさん/以前より力強さとキレの良さが踊りに加わり、とても良く変わった。久貝輝代さん/踊りが美しく品が良い。後半もっと踊りにメリハリが欲しかった。佐藤陽美さん/フラメンコ的な熱いキレの良い踊り。強いサパテアードと、はっとする動きで会場を沸かせた。津田可奈さん/毎年のように新人公演に挑戦する度、確実に力を増してきた。安定した踊りで、後半には曲も盛り上がった。久保田晴菜さん/踊る身体が出来ていて安定している。ブラッソや足のさばき方が美しい。昨年までの踊りからとても変化してフラメンコ度が増していた。津幡友紀さん/テンションが高くパワーが感じられた。ゆったり滑らかな表現も加えてこれから更に表現豊かなバイレを目指して欲しい。そして、歴代受賞者によるバイレ・ソロで踊った正路あすかさん/さすが大きな安定した踊り。常に彼女は前向きにいろんなことに意欲的に取り込んでいることが見える良い踊りでした。今年の新人公演の大勢の参加者の最後に、さわやかな余韻を残して終わりました。ありがとうございます!

鈴木英夫(ギタリスト)[G]

久しぶりに新人公演ギターの部の選考委員をやらせて頂きましたが、全体的に見てかなりのレベルの向上が見られとても喜ばしく思いました。それぞれの皆さんの演奏を聞いて感じた事を少しだけ書かせて頂きます。

①塩谷経さん(ブレリア)
音響のせいもあったようですが、フレーズが低音の使い過ぎで少し単調に感じられました。

②森谷忍さん(シギリージャ)
奨励賞おめでとうございます。とても良い雰囲気のシギリージャらしいシギリージャを聞かせていただきました。益々の精進を期待しています。

③池川史洋さん(ロンデーニャ)
全体的に淡々とし過ぎてもう少しメリハリがあればより良くなるでしょう。とくにトレモロのメロディーが聞こえにくく感じました。

④福嶋隆児さん(ソレア)
とても力強いのは良いのですが、全体的に荒っぽさが目立っていました。

⑤和田健さん(グアヒーラ)
きれいなメロディーの組み立てで上手くまとめていますが、もう少し丁寧に弾かれたらより良かったと思います。

⑥鈴木一義さん(シギリージャ)
力強く迫力があり他の追従を許さない音と伴奏で培ったリズム感が心地よく感じられました。

⑦内山友樹さん(ブレリア)
とてもテクニックはあるように思えます。ただ全体的に線が細くもう少しブレリアのリズム感と迫力が欲しかったです。

皆さんそれぞれ甲乙つけがたい演奏でこれからのギター界がとても楽しみです。頑張って下さい。

鈴木眞澄(舞踊家)[Bs]

「新人公演に感じたままに」

ギター、カンテ、バイレすべての部門にご出演くださいました皆様、それぞれの誠心誠意、心を込めたフラメンコをご披露いただきありがとうございました。
人生の大切な一時期を練習に励み、時には悩んだり迷ったりしながらもこの舞台を目指してがんばりぬいた皆様のフラメンコはすべて心に響くものでした。
なぜフラメンコなのか?と自分自身にも問いかけながら拝見しました。迫害の中から生まれ育まれてきたその生い立ちと遠い日本でフラメンコに関わることと、やはり何かの縁が繋げたことなのでしょう。そんな素晴らしいものをたくさん感じさせていただきました。特に心に残った方々をここに記します。

和泉冴英香さん…熱い気持ちを感じました。片桐あみんちゃん…幼いながらも確固たる意思が見えて頼もしかったです。本多清見さん…アレグリアスらしさが嬉しかったです。池田理恵さん…情熱を感じました。平田かつらさん…心が一緒に踊りました。平川亜紀さん…安定感が心地よかったです。近藤朔さん…時々心まで届く何かを感じ不思議でした。それが何なのかを私も探していきたいと思います。髙野正子さん…ご自分の生き方を実感できるフラメンコでした。藤本ゆかりさん…フラメンコらしい振りはすばらしかったのですがもっと振りを少なくして心で踊る時間をふやしてはいかがでしょうか?佐渡靖子さん…マントンとバタ・デ・コーラによって表現が広がりすばらしかったです。ずっと拝見していて今年は心からおめでとうございます!齋藤朋之さん…真摯に向かう姿勢が素敵でした。加藤美佳さん…アレグリアスを楽しんでいらして素敵でした。堅正はるかさん…心から発信されるものをうれしく受けとめました。久貝輝代さん…見ていて楽しくなりました。久保田晴菜さん…表現力がすばらしかったです。
フラメンコで共有すること…歌う、踊る、奏でる、手を叩いてリズムの輪を作る、かけ声をかける、心の中で同じ気持ちになる。これからも皆さんといろんな共有が出来ることを楽しみにしております。

曽我辺靖子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【18日】
和泉冴英香さん:成長がみられました。もう少し力を抜くことを覚えるとさらに良くなるでしょう。少々緊張していたかしら?
片桐あみんさん:踊り心を感じます。今後が楽しみですね。
谷口祐子さん:バタ・デ・コーラとマントンさばきの流れは美しかったです。サパテアードをもう少し頑張って。
庄子裕子さん:タンゴからのノリが印象的でした。
池田理恵さん:サパテアードが心地よく響き、吸い込まれていく迫力がありました。
牛田裕衣さん:情熱を秘めたタラントに引き込まれました。緩急をつけると更に良くなると思います。
平田かつらさん:堂々と空気を包み込むタメのある踊りに拍手。タンゴの入りも良かったです。
大岩奈青さん:心を感じたシギリージャ。印象的なラストでした。
平川亜紀さん:足音強く、全体的にパワーを感じましたが、表現力を増すとさらに良くなるでしょう。
山形志穂さん:繊細な雰囲気を漂わせながらも心の響きが伝わってきました。まだまだ伸びしろを感じます。

【19日】
小島智子さん:心地よいサパテアードの響きと、タンゴからの変化に魅了されました。もっとはち切れてもよいのでは?と思います。
横畠由美子さん:きちんと練習された成果が見受けられました。ラストまで、ファルーカの持ち味である凛とした雰囲気が持続できていて良かったです。これからも続けてくださいね。
鈴木真衣さん:カンテを良く聞きその表現力も伝わってきました。
服部亜希子さん:コンパス感がありサパテアードも強く、ラストまで途切れることなく安定感がありました。
近藤朔さん:フラメンコと真摯に向き合っている姿に頭が下がります。
藤本ゆかりさん:強いサパテアード、芯のある動きが魅力的でした。
菊池麻由美さん:印象深い始まり。恵まれた容姿から爆発する貴女を観たいです。
有田ゆうきさん:強くメリハリのあるソレアでした。情感をもう少し。
平山奈穂さん:全身から湧き出るフラメンコ性に魅了されました。もう一度じっくり観たいソレアでした。
鈴木雪花さん:レトラの表現は良かったです。
山本由紀さん:体幹もあり体もよく動きパリージョの音色にも心を感じました。曲の重さを意識するともっと良くなるはずです。
小河由里子さん:いかなるものにも動じない自分の世界観を感じました。
黒木珠美さん:この日を待っていたかのようなソレア。メンタル面の強さも増し、貴女の本来の実力が開花したのでしょう。カンテを良く聞き重心も安定していました。ゆっくり入るサパテアードの難しさも上手にクリアでき、波に乗れましたね。
田中実華江さん:なかなか良い味を出していました。ファルセータのゴルぺの音が若干気になりました。

【20日】
野上裕美さん:上体が美しく足の強さもあるが、タメが欲しいです。
伊藤千紘さん:動きも良くマノがきれい。
佐渡靖子さん:素晴らしい情感に圧倒されました。昨年のソレアも良かったですが今回のシギリージャはそれを超えることが出来ました。バタとマントンが体の一部のように表現できた貴女の底力に拍手です。
持田賀津子さん:サパテアードの理解が深まりました。今後タメを感じて踊ることを期待します。
堅正はるかさん:足音強くメリハリあり芯がぶれない。その上あの広い舞台空間を自分のものにしてしまう素晴らしさ。
佐藤陽美さん:華を感じる踊り手さん。緩急を意識して踊ると更に良くなるでしょう。これからも観たい人です。
津田可奈さん:取り憑かれたような流れのあるシギリージャでした。
久保田晴菜さん:体幹のある体の柔らかさ、しなやかなブラッソ、踊りが大好きという心の叫びが聞こえてきました。
東田美智江さん:シレンショの音の取り方を工夫すると更に良くなるでしょう。

<バイレ・群舞部門>
奥野裕貴子・SIROCOフラメンコ教室LOS TARANTOS京都:心に響いた作品でした。最後まで引き込まれました。
鈴木敬子フラメンコスタジオ カデーナ フラメンカ:気持ちの統一性があり一生懸命さが伝わってきました。
カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」:フラメンコのリズムにのり楽しんで踊っている子供たちの真剣な表情が忘れられません。松彩果さんの指導にオレ!
Armonía:実力ぞろいの力量をみせてくれましたね。三人三様でありながら統一性がありました。
LAMA y SONACAY:タイプの異なる2人の掛け合いをとても楽しみました。

改めて感じたことですが、小物を使用することの難しさ、何か不具合が生じた時に踊りよりそちらに目が向いてしまうので、相当な練習と覚悟が必要かと思われました。多種多彩の群舞…見応えがありました。

高橋英子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
一番たくさんの方が挑戦するバイレ・ソロ部門。いつも思うのですが、参加者の皆さんにはもっと沢山のパロ(曲種)に目を向けていただきたいです。参加者の踊る曲種がもっとバラエティに富んでいてそれも堪能できる新人公演であったら理想です。1曲しか踊れないので、奨励賞獲得を願うためなのか、踊る曲がソレア、アレグリアス、シギリージャなどの特定な数曲に偏る傾向にあるのは頷けないことではありません。でも今や日本の皆さんのテクニックはとてもレベルアップし、どんな曲でも感動的に踊る準備はできてきていると思います。そうでなくても、ステキな曲がいっぱいあるのがフラメンコです。さて、今年も皆さんのパッションとパワーの渦の中に巻き込まれフラメンコ漬となりました。受賞者の方々の演技は本当に素晴らしかったです。また受賞者以外でもよかった方々が沢山いらっしゃいましたので、そういう方々から順に書いていきます。

【18日】
池田理恵さんのシギリージャは、凄味のあるムードの中でなにか内に込めた想いがひしひし伝わってくる迫真の演技、時間オーバーがとても残念でした。牛田裕衣さんのタラント、芯あり、軸ありで、なかなか個性的なアイレの持ち主、楽しめました。庄子裕子さんのタラント、派手な衣装の色使い、パチッとした大きな目がチャーミングで印象的、技術的にも安心して見られるレベルで目立ちました。大岩奈青さんのシギリージャ、なかなかフラメンコなシーンを作りだす表現力を感じました。谷口祐子さんのアレグリアスは、出だしから印象的。マントンやバタの豪快な捌きにスリルがある振付をよく熟し、ブラッソも綺麗で楽しめる演技でした。

その他、山形志穂さんのシギリージャはパリ―ジョで心を込めて踊られて、上体の動きも綺麗でした。本多清見さん、アレグリアスの振りに身体が馴染み、その明るさを思いっきり表現していました。森加寿子さんはシンプルなティエントの歌振りを落ち着いて表現し、平田かつらさんはタラントでシンプルな歌振りをじっくり踊り込んでいましたが、2人ともタンゴになってからの身のこなしにしなやかさがあったらもっと良かったです。佐藤直美さんも凝った振付のシギリージャをよく熟していました。平川亜紀さんもリズムに乗り楽しそうに踊られていましたし、和泉冴英香さんはしっかりしたサパテアードで練習成果が感じられますが、ペソのあるタラントのアイレが出しきれていない感じがしました。松下ひろみさんは効果を狙った振付に見合う上体の粘りのある表現が足りないような、そんな感じでした。堅田幸子さんのシギリージャの音楽構成は素敵で、出だしのパリ―ジョもよかったですが後半ちょっと乱れた感がありました。福田峰子さん、白い衣装が印象的なティエント、ちょっと身体がリズムに乗っていない感じで、これからもっと総合的な技術を付けて欲しいです。橋田佳奈さん、アレグリアスをバックスペインアーティストのアイレに乗って丁寧に踊りこんでいましたが、これからもっと技術も磨けると思います。片桐あみんさん、よく頑張りました。これからが楽しみです。

【19日】
藤本ゆかりさん、気迫がこもるソレア・ポル・ブレリアで本人の持ち味を出しきっていてよかったです。今回は惜しかったです。岡田麻里さんのソレア、エレガントでフラメンカ、なかなか雰囲気がありました。シンプルな振りで強さをうまく表現、なかなか迫力ある演技で印象に残りました。田中実華江さんのティエントは効果を狙う振付。なかなか太い踊りで、いいです。タンゴもよかったです。鈴木雪花さん、そこはかとなく感情が込められたシギリージャで好感が持て、技術的にも優れていました。山本由紀さん、ペテネーラを巧みなパリ―ジョで熱演、盛り上がり楽しめました。いつも色んな曲に挑戦していて頼もしい存在です。

その他、西山依里さん、タラントを踊りましたがリズミカルな動きは独創的で面白いです。もう少ししゃんとしたところがあればいいような。内田好美さん、竹村歩さん、大井昌子さんたちは、スペインアーティストの本場のアイレに浸り、現代タッチのソレア・ポル・ブレリアをはつらつと踊られていました。健闘しました。小河由里子さん、ソレアを落ち着いたフラメンカな雰囲気で踊られました。もう一押しのコラッヘがあればと感じました。青木千鶴子さんは赤いバタとマントンで華やかなアレグリアス、そのさばきも綺麗でした。チャーミングな笑顔でエレガント。小島智子さんのティエント、その踊りにはしっかりした方向性があり、前半はよかったのですが、タンゴになった途端に踊りが軽くなりちょっと残念でした。小野栄子さんのソレア、アカデミックできちんとした踊りを、丁寧に踊られていたという感じでした。瀧野晴美さんのソレア・ポル・ブレリア、バックの歌が冴え、うまく振付られた踊りをしっかり踊られました。近藤朔さん、シギリージャ。茶色のスーツで決め込み、とにかく確実なマルカールで踊っている真摯な姿が好感持てました。髙野正子さん、ソレア・ポル・ブレリア、綺麗なブラッソでしっかりした踊り。自分で踊ることの歓びを味わっている感じが好印象でした。川口真理子さん、スラッとした身体で、か弱いイメージが漂っていますが、品格あるシギリージャでした。菊池麻由美さん、やはりスラッとした身体を活かしたモダンなシギリージャ。語りかけるような表現力を加味できたら、と思いました。有田ゆうきさんは出だしから激しい気迫を込めたソレア、見えを切りながら良く踊っていらっしゃいました。寺嶋いずみさん、ティエント。前半は美しい動きでよかったですが、タンゴにもっと重量感あったらよかったように思いました。瀬﨑慶太さん、青いスーツに白い靴、しゃきっと踊ったカンティーニャは演出もあって楽しめました。富永央子さんのソレア・ポル・ブレリア、チャーミング。今風の踊りをコンパスに乗って楽しそうに踊られていました。佐野裕子さん、シンプルでしっとりしたソレアは大人のムードで迫っていました。佐藤幸子さん、アレグリアス。とにかくきちんと踊られているのが好印象でした。横畠由美子さんのファルーカ、バイオリンを使った音楽構成は良かったですが、やはり練習、踊り込みが足りなかったような感じに見えました。鈴木真衣さんのシギリージャ。スペイン人アーティストの本格的アイレでの雰囲気づくりは良かったです。これからもっと技術も磨けると思います。北中昭子さん、Trianaのしっとりしたソレアでムードありました。後半は息切れしたように見えましたので、これからはスタミナもつけて頑張ってください。

【20日】
今回準奨励賞だったのが惜しかった佐藤陽美さん。ソレア・ポル・ブレリア、ソレアを入れ込んだステキな構成。若く荒削りな感じがフレッシュで、その力強い足も見応えがあり、なかなかフラメンカでした。津幡友紀さんのロマンセ、ちょっと力み過ぎの感もあるテンションの高い踊り、はちきれるテンペラメントが圧巻でした。小宮山葉子さんのソレア、ステキな衣装で、足さばきも綺麗で品があり印象的でした。伊藤千紘さんのシギリージャはしっかりした足で始まる力強いジャマーダなど効果的な内容で熱のこもった演技でした。山中純子さんのカラコーレスは、扇とパリ―ジョを同時に持つ難度の高い踊りをキュートな感じでステキに踊りました。もう少し派手でもいいと思います。

その他、この日はアレグリアスを踊られた方が多く、皆さんそれぞれの振付と個性で壮観でした。河合浩子さん、テクニックもあり、振付も凝っていて面白く楽しめました。久貝輝代さん、マントンとバタをステキにさばいていてブラッソも綺麗、粋な振付で魅せました。新谷のどかさん、白いバタで、笑顔がステキ、いい感じでした。山内佳代子さん、元気たっぷり、楽しさ明るさを追求した振付で楽しめました。ブレリアの動きが軽快でちょっと浮いてしまった感はありました。東田美智江さん、ブラッソ、上体はしなやかでよかったですが、もう少し落ち着きのある優雅さが欲しかったです。加藤美佳さん、堂々としていて華やかなアレグリアス。上体のノリもよく、しっかり踊られていました。渡辺亜矢子さん、スラッとした容姿が綺麗で、落ち着いたムード。終わりごろにドラマチックなアイレを盛り込んだアレグリアスで健闘しました。

さて、ソレアを踊られた相田良子さん、落ち着いてしっかり踊りましたが、ブレリアになってから少し体が浮いてしまった感じでした。野上裕美さんもソレア。バックアーティストのプーロな歌の世界に浸り、集中し、踊り込んでいました。齋藤朋之さん、タラント。淡々とリズムにのり、マルカールしながらパソを進行させ、タンゴになってからも淀みなくしっかり踊られていました。菅家寿幹さん、シギリージャ。地味ですが、誠実さを感じる踊り。今後もっと力を付けて頑張っていただきたいと思いました。阪上のり子さんのタラント、前半は雰囲気ありましたが、タンゴになってからせっかくの曲が残念な結果になった感がありました。持田賀津子さんのカンティーニャ。ステキに踊っていましたが、身体のバランスが取れず、マルカールが浮いてしまうなどで技術的な改善が必要だと思いました。池本真希子さん、アカデミックですがラメ入りの衣装がステキで、バックに支えられたいい雰囲気のソレアでした。長岡聖子さん、ソレア。舞台を大きく使ってよく動き、一生懸命踊られていました。飛びが多く、それが気になりました。

<バイレ・群舞部門>
複数の参加者が合同で1つの作品を踊る群舞ですが、純粋に舞踊の範疇での芸術性を追求するものの他に、ドラマ性を加えてより人々に訴えようとするものがあります。作品の良しあしは、構成、演出、振付などの他に、踊る人達の舞踊レベルでも変わって来ると思います。ですので、バイレ・ソロで、以前奨励賞に輝いているプロの方々が、2人とか3人のグループで参加なさると踊り自体はとても目立ちます。今年はあらゆるタイプの群舞があって、内容的に優れた作品が多く、一作品だけを選考するのは至難の業でした。

[群1]は演出、舞台効果をよく考え、ドラマチックな観客アプローチもあり、更に主役的存在のような小太りの踊り手さんの演技がなかなか楽しめ、全体的に見応えあるステキな作品に仕上がっていたと思います。
[群2]典型的な群舞のスタイル。群舞ならではの位置交換での連帯性などを考え、無理なく作られた作品を研究生の皆さんがきちんと演技し、好感が持てました。
[群3]出だしと終わりの鈴の音?が、夏の風物詩、まさに真夏の祭典にマッチしてほのぼのとした作品でした。また次の世代を担う子ども達の演技も粋でいっちょ前、可愛かったです。
[群4]クラシックな音楽構成がやはり心をひき、赤いリボン紐のようなものがおしゃれな雰囲気でした。ただ、群舞ならではの迫力ある押し出しがもう少しあると、見応えがあったのではと思いました。
[群5]緑、ピンク、紫のショッキングカラーで登場した女性3人。女の強さを感じさせ惹きつけられる作品でした。その意気込み、演技も高度で見応えありました。
[群6]男性2人のちょっとパロディ風なアクションを入れ込んだ作品。踊る方が楽しんでいる感じでした。
[群7]典型的な群舞のスタイル。細部でもう少し工夫があったらよかった、という感はありましたが、マントンを使ったカーニャの振付をステキに踊られていました。
[群8]アバンドラーオで粋な音楽作り、赤いバタの女性陣にブーツを履いた旅人風の男性が印象的。アンダルシアの風景が目に浮かぶ作品で楽しめました。

手塚真智子(舞踊家)[Bs]

【18日】
18-1 和泉冴英香さん:幕開けがインパクトがある力強い踊りでした。
18-2 片桐あみんさん:緊張が伝わりましたが、一生懸命踊り切った姿に安心し、嬉しく思いました。今回の経験を活かして成長を期待します。
18-4 橋田佳奈さん:スタイルの良さ、柔軟性を活かした踊りで、ブラッソも綺麗でした。
18-8 池田理恵さん:ため、瞬発力、感情表現そして気迫がありオーレ!でしたのに、残念です。
18-13 牛田裕衣さん:力強さを感じ良いタラントでした。
18-15 福田峰子さん:顔の表情とともに表現力を身に着けると良いと思います。
18-16 平田かつらさん:タラントの重みをよく表現しながらタンゴの軽妙さとのバランスが良かった。
18-18 大岩奈青さん:出だしで祈りのようなものを感じましたが、全体的にメリハリに欠けたようで残念でした。
18-19 堅田幸子さん:挑戦の意気込み!
18-20 平川亜紀さん:特にエスコビージャの時の重心移動が自然で綺麗でした。

【19日】
19-9 小野栄子さん:振付を丁寧に踊っている様子でしたが、時折止まりのブラッソの遅れが気になり、上半身のしなやかさがあると良いと思います。
19-11 鈴木真衣さん:タメのある力強い踊りでした。
19-12 瀧野晴美さん:はじける!感じが好印象でした。
19-13 服部亜希子さん:熱に引き込まれました。
19-18 西山依里さん:タンゴのコンパス感がとても良い印象でした。
19-20 菊池麻由美さん:奇を衒うことなどなく、好印象の踊りでした。
19-21 佐藤幸子さん:しなやかさとご自身らしさが見たいです。
19-23 平山奈穂さん:内に秘めたものを爆発させる力にオーレ!
19-24 内田好美さん:好感度の高い印象です。もう少しペソ?があったらと思いました。
19-27 小河由里子さん:もったいないなぁと思ってしまいました。とてもフラメンコを感じましたが、ペソ、タメ、重心、呼吸などを考えたらよいかと思います。
19-30 大井昌子さん:若さ、エネルギー、笑顔に好感を持ちました。
19-32 田中実華江さん:どっしりとした安定感のある良いティエントでした。
19-33 青木千鶴子さん:良く練習を重ねて、今までの中で一番楽しそうに踊っている印象を受けました。
19-37 佐野裕子さん:しっとりとした大人の味のソレアでした。

【20日】
20-15 野上裕美さん:マルカールなどの歩き方が自然でした。
20-17 伊藤千紘さん:足音がしっかりとし、ブラッソも綺麗でした。
20-18 佐渡靖子さん:渾身のシギリージャにオーレ!
20-20 山中純子さん:笑顔が素敵で、華やかなカラコレスでした。
20-22 齋藤朋之さん:豊かな感情表現。しなやかさが出ると良いなと思います。
20-23 加藤美佳さん:元気で良いアレグリアス!
20-25 渡辺亜矢子さん:長身を活かしてこれからが楽しみです。
20-26 久貝輝代さん:のびやかさ、しなやかさがありポーズが綺麗でした。引っ込みの粋さも素敵でした。
20-29 佐藤陽美さん:“con coraje”でこれから益々期待してます。ため、ねばりなどが出ると良いです。
20-31 池本真希子さん:広い舞台をよく使っていました。
20-32 久保田晴菜さん:よく踊り込んで、顔の表情も良かったです。
20-33 小宮山葉子さん:きちんと踊り、コントラ、ティエンポも綺麗に聞こえました。足の割合を減らしてしっとりさを出せたら良かったのでは?
20-36 山内佳代子さん:笑顔に引き込まれました。

花岡陽子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【18日】
和泉さん/タラントらしくきちんと踊ってます。もう少しです。
片桐さん/今後の成長が楽しみです。
本多さん/楽しそうで美しいアレグリアスでした。
橋田さん/ブラソと身体のバランスが少し物足りないです。
谷口さん/マントンさばきお見事。何の踊りも上手そう。
庄子さん/全体に良かったです。表現力があって。
佐藤さん/重厚感があって今後が楽しみです。
池田さん/魅力的。フラメンコ舞踊性抜群。
牛田さん/恵まれた体型でたくさん踊っていってください。
森さん/構成を見直してみて。少し単調かも。
福田さん/たくさん踊って勉強していって。今後に期待。
平田さん/よく踊ってます。別に欠点はないのですが。
松下さん/音楽に乗って、動きが美しいです。
大岩さん/踊り込んでいます。よく練習しましたね。
堅田さん/難しいフラメンコです。勉強していって。
平川さん/サパティアード正確。お見事でした。
山形さん/将来きっとすばらしいバイラオーラになるでしょう。

【19日】
小島さん/ブラソの研究もう少し。のびのび踊ってます。
小野さん/上半身をもう少し研究して。よくなります。
横畠さん/気持ちよく踊れますよう、頑張って。
鈴木さん/個性的。サパティアードもいいし、今後に期待。
瀧野さん/踊り込んでいます。ご自分自身のバイレを研究して。
服部さん/ギター、カンテとよくとけ込み、観客の心に染み渡りました。
近藤さん/フラメンコに出会って明るい人生が開けますように。
髙野さん/欠点は少ないのですが、また挑戦してください。
藤本さん/アイレがあります。エネルギーが伝わってきます。
川口さん/細いお身体でも力強さは出ます。頑張って!
西山さん/ヒターナ・フラメンコですね。少し荒けずりになります。
北中さん/まとめ方はよかったです。もう少しです。
菊池さん/舞踊性があり、流れるように楽しかったです。
佐藤さん/佑子先生の伝統的なフラメンコを拝見しました。
有田さん/ここまで踊るため、練習を重ねたことでしょう。
平山さん/肉感的。フラメンコを踊るために生まれてきたのですね。
内田さん/疲れないフラメンコ。美しいです。気持ちよく拝見しました。
鈴木さん/欠点が少なく、別のヌメロも拝見したいです。
山本さん/パリージョも美しく、難解な技術をすばらしい!
小河さん/ティエンポ正確。大きなお身体で圧巻でした。
寺嶋さん/きっと練習はもっと力が入っていたでしょう。ちょっと残念。
竹村さん/体幹がきちんとしています。もう少しです。
大井さん/サパティアードが細やか。少しの努力を望みます。
黒木さん/ボリュームがあって、足が強くて速くて一番素敵でした。
田中さん/身体がしなやか。力強く踊ってます。
青木さん/マントンとコーラ、よく踊りました。華やかでした。
岡田さん/ブラソが美しいです。絵のようでした。
瀬﨑さん/何気なくさらりのフラメンコ。好感が持てました。
富永さん/舞台いっぱいにさわやかに。サパティアードもいいです。
佐野さん/美しかったです。構成をもう少し工夫して。

【20日】
相田さん/踊りの要素をきちんと織り込んでいます。
野上さん/美しいです。基本もしっかり勉強してます。
菅家さん/コンパスもいいです。少し踊りに広がりが欲しい。
伊藤さん/練習の成果が舞台で発揮できました。
佐渡さん/マントンのさばきお見事。叫びが伝わります。
阪上さん/気持ちが入っている時と荒けずりの部分と。
山中さん/アイレがあります。頑張りが伝わります。
持田さん/たくさん踊ってもっと上達してください。
齋藤さん/身体からわき出る重厚感で、もっと頑張って。
加藤さん/フラメンコが楽しいわぁ、と踊ってます。
堅正さん/柔軟な体に芯のある踊り。将来性があります。
渡辺さん/細くきれいなお身体で、強さが入ったら。
久貝さん/ティエンポよく、アレグリアスを充分に踊ってます。
河合さん/さわやかに初々しく、可愛らしく踊ってます。
新谷さん/おしゃれなフラメンコでした。また参加してください。
佐藤さん/全体にバランスよく、気持ちよく拝見しました。
津田さん/メリハリがあり、舞台をよく使ってました。
池本さん/ステージをたくさん経験してください。
久保田さん/表現力のある美しいフラメンコでした。
小宮山さん/ブレリアのティエンポに気持ちよく心地よかったです。
津幡さん/ヒターナの味わい深い個性豊かな踊りでした。
東田さん/バラのようにひまわりのようにステキでした。
山内さん/チャーミングでした。細い身体に一生懸命でした。
長岡さん/よく踊ってくれました。お疲れ様でした。

<バイレ・群舞部門>
奥野裕貴子・SIROCOフラメンコ教室/ドラマになさってました。少し難解でした。
鈴木敬子フラメンコスタジオ/息が合ってアンサンブルを重視した作品でした。
カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」/ブレリアを工夫して創作し、面白いです。衣裳も工夫しました。
フラメンコスタジオマグダレーナ/リボンは新しい試みでした。もう少しです。
Armonía/3人とも実力者で魅力的でした。バストンもなかなかです。
LAMA y SONACAY/グアヒーラを面白く、男っぽいパレハでした。
La Puerta Abierta/美しかったです。少し単調かも。
斎藤克己フラメンコアカデミー札幌/赤いマントンが美しい群舞。去年の方が良かったかしら。

本間牧子(舞踊家)[Bs]

18-1 和泉冴英香…安定感としなやかさがあり、マノがきれいでした。静止の部分流れないように意識してみましょう。
18-2 片桐あみん… 最後までしっかり踊りきった集中力、素晴らしかったです!これからが楽しみです。
18-5 谷口祐子…マントン、コーラ使いが素晴らしく、くずれない軸とブエルタ、すべてが一体となり美しく躍動感のあるアレグリアスでした。
18-8 池田理恵…メリハリと重厚さ、構成も良く、魅力的でした。時間オーバー残念です。
18-16 平田かつら…存在感があり振りから振りへの間がとても良かったです。決めの時の静止がぶれないと、もっと間が生きてくると思います。
19-13 服部亜希子…歌との一体感が素晴らしかったです。メリハリ、重心移動の間も良くアイレが伝わってきました。
19-14 近藤朔…立ち姿が美しく、ひとつひとつの振りを大切に踊られていて思いが伝わってきました。
19-16 藤本ゆかり…安定感と伝わってくる気迫!抜けが良かったです。アイレを感じさせてくれました。
19-20 菊池麻由美…ブラソ、重心移動の軌道がエネルギーを発し、深い海の底から唸り出て来るようなすごみがありました。
19-22 有田ゆうき…重さと力強さメリハリがしっかりつけられ、抜け、決めの部分の静止、とても良かったです。
19-23 平山奈穂…安定感と切れ味、内からあふれでてくる心を感じました。
19-31 黒木珠美…強い!!迫力があり、一歩たりとも引かないまっすぐに向かってくるソレア。鳥肌がたちました!
20-18 佐渡靖子…構成も良く内面性が伝わってきてドラマを感じさせてくれたシギリージャ、素晴らしかったです。
20-22 齋藤朋之…基本にしっかり向き合ってブラソもしなやか!心を込めた踊りに感動いたしました。
20-24 堅正はるか…からだ使いがとても良かったです。振りのひとつひとつから気持ちが伝わってきました。
20-29 佐藤陽美…力強さと小気味良さを感じました。振りと振りの繋ぎの間を大切に!
20-30 津田可奈…構成も良く、すべてに安定感と気迫がみなぎり、後半マチョへの盛り上がりが素晴らしく感動しました。
20-32 久保田晴菜…丁寧なブラソと踊りに強さ、重さがあり、特に出のジャマーダ、印象的で良かったです。

群舞、ギターの選考委員ではありませんが…カンデーラの皆さんのまっすぐなフラメンコのパワーに、森谷忍さんの澄んだ音色に心ときめき、忘れそうになる大切なことを思い出させてもらった気がいたしました。出演者の皆さま、お疲れさまでした。これからさらなる目標に躍進していかれますように…。

渡邊 薫(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・群舞部門>
1.奥野裕貴子・SIROCOフラメンコ教室
独特のアイレで展開された群舞。今回はコンセプトが明確であった。
2.鈴木敬子フラメンコスタジオ
久々にユニゾンの美しさを見せてもらいました。10人が各人しっかりと振付をこなし、清々しささえ感じた。
3.カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」
始めの情景からぱっと正面を向き踊り始めた時、空気の変わり方がすごかったです。年令に関係なくフラメンコのアイレたっぷりの7人の踊りに「ole!」でした。
4.フラメンコスタジオ マグダレーナ
「Café de Chinitas」で始まり、10人で踊り継がれた「Zorongo」は心が1つになっていて大きな求心力になっていた。
5. Armonía
実力ある3人による群舞、見ごたえがありました。
6. LAMA y SONACAY
ソロ受賞者2名による「Guajira」。とにかく楽しませて頂きました。
7. La Puerta Abierta
緊張のせいか始め固さがあったが、後半に向けて良くなった。バタ、マントンとともに、練習の成果がみえた。
8. 斎藤克己フラメンコアカデミー札幌
デュオ→ソロ→9人と構成されておもしろかった。この一年の成長がみられました。

<バイレ・ソロ部門>
◎奨励賞に選出
【18日】
和泉冴英香:抑え目のタンゴ、溜があり良かった。レマーテからの抜けに注意。
片桐あみん:シギリージャへの挑戦がすばらしい。何気なく振りをこなしているが、もっとこだわりを!
谷口祐子:慣れたバタさばき、マントンの扱い美しい。
庄子裕子:カンテへのコンテスタシオン不足。腰の浮きが気になったが、タンゴは良かった。
◎佐藤直美:奨励賞に選出しました。よく踊り込まれていて、マルティネーテへの切り換えも良かった。来年に期待しています。
平田かつら:足さばきもきれいで安定した踊り。
松下ひろみ:止めをしっかりと!
◎大岩奈青:存在感があり、足もリンピオ。彼女自身がしっかりと表現された踊り。
山形志穂:テクニカメンテは良い。もっと自分が何を伝えたいかを明確に意識して。

【19日】
鈴木真衣:身体をよく使い踊っているが、コントラが少し不安定。来年も見せてください!
瀧野晴美:メリハリがあり、全身を使い踊っていて好ましい!
服部亜希子:受賞おめでとう!カンテへのコンテスタシオンが素晴らしい。首の切れ、マルカーヘも良かった。
近藤朔:確実に一歩ずつ前進している。止めが不安定。
◎藤本ゆかり:自分をしっかりと持ち、表現された踊り。足は良く動いていた。上体の引き上げを!
◎菊池麻由美:コントロールされた入り方、難しい足を良くこなしていた。
佐藤幸子:全体的に力みが少なくなり、足も安定してきた。
有田ゆうき:雰囲気のある踊り手。溜め、切れもあった。
平山奈穂:おめでとう!安定した腰、リンピオな足。
鈴木雪花:よく踊っていたが、自分の内に向かって何を表現したいかの問いかけを!
◎黒木珠美:おめでとう!すごい成長ぶりです。溜め、Peso有り、バックのムシコスとちゃんと会話していた!
青木千鶴子:魅力ある踊り、ダイナミックなマントンさばき。前回より楽しんでいる感あり!
瀬﨑慶太:リズムのコントロールが良くなった。Vueltaで体幹の弱さを感じた。難しいですが頑張ってください!
富永央子:動き過ぎて止まりの時揺らいでいる。
佐野裕子:彼女によく合った振付です。もっと自分のものにしてください。

【20日】
相田良子:抑えのきいた踊りで、リズムの切り換えが上手い。
伊藤千紘:丁寧な踊り。得意なVueltaを活かしていた。首の前傾が気になった。
佐渡靖子:おめでとう!ダイナミックで大人の踊り。バックのムシスコも良かった。
山中純子:とてもエレガンテ。パリージョも上手く使っている。前回よりはるかに自分の踊りを表現した。
齋藤朋之:この一年の成果が見られました。また新しい一面も見せてくれましたね!
◎堅正はるか:おめでとう!溜め、メリハリがあり抜けも素晴らしい。足もムイ・リンピオ。良くコントロールされた踊り。
渡辺亜矢子:ブラソ表情豊か。長身ゆえ(!?)猫背気味が気になった。
久貝輝代:緊張のせいか表情が硬かった。もっと自分を前に出して表現を!
佐藤陽美:上体の固さ、Vueltaに注意。ゆっくりのマルカーヘを大事に!
津田可奈:おめでとう!しっかりとして足もリンピオ。マチョへの入りが良かった!
◎久保田晴菜:おめでとう!表情豊かなブラソ、足をしている時にも身体(上体)が良くついて踊っていた。
小宮山葉子:魅力的な踊り手。体幹をしっかりと訓練して来年も出演してください!
津幡友紀:モイのカンテに寄り添った踊り。少しせわしい感じはあったが。

市川惠子(舞踊家)[Bs,Bg]

今回賞を獲られた方々は、何度も出演されている方が多く、それだけの年数、経験を重ねられており、またフラメンコとしての身体も出来上がっていて、技術的にも優れ、その上でフラメンコを高いレベルで理解し、そして素晴らしい振りをしっかりと自分のものにして踊っている。さらにフラメンコとして大切なノリやアイレ、気迫や心意気などで、十分に皆さんの心に届く踊りを出来た方々なのだと思います。遂にはここまできた姿に胸が詰まる思いでした。

<バイレ・ソロ部門>
私が奨励賞に推薦したのは、
★牛田裕衣:どしっとした重みに、うねり、絞りも出てきた。存在感のある踊り。足もしっかりしていて、コンパス感もある。フラメンコ性も高く、熱い気迫の踊り。
★服部亜希子:フラメンカな上にドラマチック。一時も緩まない空気感。自分の強い意志で踊っている。その気迫、込める力、うねり、絞りもあり、素晴らしい。すべて良かった。内から発するものに胸打たれ、渾身の踊りに感動!オレ!
★平山奈穂:フラメンコとしてのノリはダントツ。印象的な振りが自分のものになっていて表情も豊かでアイレもありすごく魅力的。ずしっと重みを感じる、腰が据わった踊りに目が離せない。
★黒木珠美: 凄みすら感じる、張り詰めた空気感。最初からずっと惹き込まれた。しなやかさと力強さをあわせ持った、緩急があり完成度が高い。腰の据わった芯のある素晴らしい踊りに感動。その激情に心打たれ涙。
★佐渡靖子:重ねてきた年輪を感じる素晴らしい踊り。ここまできたのかと感動。その激しさに心揺さぶられ本当に見入ってしまった。マノも身体も綺麗。マントンもバタも素晴らしい。
★堅正はるか:印象的な始まり。上手い。身体もすきっとしていて無駄のない質感の良い踊り。スカッとしていて良い。込める力もうねりもあって、間合いも表情も良い。
★佐藤陽美:身体しまっていて足もリンピオ。軸がしっかりしていて自然体で気持ちの良い踊り。表情の良さに魅力を感じた。好感度大。打ち出しの強さが出てくると尚良い。

本来ならば、奨励賞に推薦したかった。時間オーバーで失格になられて本当に残念です。
☆池田理恵:テンションの高いノリもアイレもあり表情も良い、とても素晴らしい踊りに思わず惹き込まれた。ここまで完成させるとは凄い。オレ!

特に印象に残った方々は、
☆藤本ゆかり: 切れもあり気迫に満ちた激しい踊り。重みもあって良いが中盤がごちゃつきすぎ。ラストもそのまま帰っていった方が活きる。
☆菊池麻由美:静かだが込める力がある。独特の雰囲気でモダンだが熱く、存在感もある。とても恵まれた肢体。手が遅れるのが気になるがしなやかで強い。
☆津田可奈:上手い。身体が出来ている。ブエルタも良い。込める力もある。凝った振りをよく踊りこなしていて素晴らしいが、激しい踊りなのにどこかに冷たさを感じる。
☆久保田晴菜:身体能力に優れ、しなやかで大胆なその踊りに惹きつけられ、強い思いを何か感じた。フラメンコとしての感情表現について、さらに追求して欲しい。
☆津幡友紀:重みもアイレもありその熱さについ見てしまうが、前半から凄い気迫で迫ってくるので、少し疲れてしまう。もう少し起承転結を付けさりげないところがある方が、そのパワフルさも活きる。

次に印象に残った方々は、
●谷口祐子:マントンは良い。ずっと同じ笑顔が気になったがアレグリアスらしく晴れやか。面白い振りを良く踊っているがマノがバレエ的。
●庄子裕子:足もしっかり、マノ、ブラソも良い。自分の個性を大切に意志を持って踊っている。タンゴの入口が好き。スタイル抜群。表情豊かで魅力的。
●平田かつら:しなやかで凛とした静けさの中に重厚さも激しさも加わりすごく良くなっているが、どこかまだ硬い。もっと動かない方があなたの美しさが活きる。
●大岩奈青:独特のスタイルで味がある。すごく良くなっているのに後半動き過ぎでばててしまって残念。自分の個性は大切に。体力をつけて。
●鈴木真衣:溜めも込める力もあって、上手い。プーロな雰囲気が何かあるのだが、決め手に欠ける。
●西山依里:個性的で面白い。コンパス感も抜群で上手いのだが、わかりずらい。もっと全体にすきっとしたところがいるのでは。
●有田ゆうき:自分の意志を強く感じる。足もしっかりしていてアイレもあり空気感も良いのだが、もう少し内に込めた何かが欲しい。
●内田好美:足の音も綺麗で踊りもしなやかで上手いのだが、全体に少し軽く感じた。以前のような野性味、熱さが感じられず残念。
●鈴木雪花:ずいぶん上手くなってびっくり。素敵でした。激しさに惹きつけられたが、どこかまだ硬い。姿勢に気をつけて。
●山本由紀:パリージョも素晴らしくクエルポも綺麗。しなやかで凛とした雰囲気は良いがもっと情感と力強さが欲しい。
●竹村歩:激しさもあって、抜けも良い。気持ちは伝わるがどこか力を抜くところがいる。
●岡田麻里:軸がしっかりしていてぶれない足。良く踊っていて何か伝わってくるものがある。気迫もあるのだが、しなやかさも欲しい。
●野上裕美:足からの始まりが素晴らしく印象的。上手いのだが見せ所が見せきれていなくて残念。
●久貝輝代:頑張っていて良いが、踊り込みが出来ていないのか、余裕がない。アレグリアスの活気、楽しさが伝わってこない。
●東田美智江:表情が豊かでアレグリアスらしい華やかさがある。ブラソ、マノも良くなった。ジャマーダはもっと強く。どこかに強烈な打ち出しを。

今後に期待したい方々は、
○片桐あみん:子供なのにシギリージャ、と、びっくり。しっかり抜けも良く、雰囲気もある。特に後半が良く意志を感じた。
○松下ひろみ:ブラソもマノも良い。パワフルで綺麗だが、まだ身体の芯が出来ていない。深さや重みがほしい。
○平川亜紀:個性的でパワフル。込めた力はあるが一本調子に見える。切れ味のあるピエも良いが少しハイテンション過ぎ?肩の力を抜いて。
○山形志穂:パリージョも上手く美しいが、重みと強さがほしい。少しバレエ的。
○小島智子:足はしっかりしているが、唄をもっと感じて。ティエントはもう少し重みが欲しい。タンゴにノリを。
○近藤朔:この人ならではのなんとも言えない味がある。少しモダンダンスみたいだが、フラメンコが好きな気持ちが伝わってくる。
○小河由里子:プーロな素直な振りをちゃんと踊っている。身体もしまり、甘さも取れた。どこかに凄い気迫を見せて欲しい。
○寺嶋いずみ:良い振りをちゃんと踊っているのだが、長く感じた。内から発するものがいる。
○大井昌子:足は強いのだが何かがぴりっとしない。頑張っているが少し踊りが荒い。
○田中実華江:スタートのタンゴが面白い。動き過ぎだが、力強く個性もあって良い。
○青木千鶴子:ポーズは美しいが、マントンもバタも踊り込みが必要。上半身のねじりも大切。
○瀬﨑慶太:だいぶ踊りも身体もすきっとしてきたが、もっとこちらに届くような気迫が欲しい。
○富永央子:激しいが少し慌しく見える。いいものはあるのだが、ずっと同じ調子なのが気になる。
○佐野裕子:落ち着いた、安定感のある美しい踊り。上品で自然体のアイレもあり、好感が持てる。どこかにどーんとしたフラメンコとしての強さが欲しい。
○相田良子:ちゃんと踊っているが唄をもっと感じて。肩が上がるのが気になる。どこかにぐっと強い打ち出しを。
○菅家寿幹:このままずっと伸びて欲しいが、どこかにダイナミックさを。
○伊藤千紘:小さいながらよく動く身体。足は凄く印象に残った。
○山中純子:身体をもっとひねって。美しいが何かフラメンコとして訴えかけるものが欲しい。
○齋藤朋之:男性としての歩き方、胸の上げ方が良い。踊りはまだまだだが何か込めたものが伝わってきて目が離せない。
○渡辺亜矢子:マントンを扱うときもっと肘を意識して。女性の美しさを見せてくれたドラマチックな振り。上品で美しい。足を打つときにもう少し外股だと良いのでは。どこかにフラメンコとしての気迫が欲しい。
○河合浩子:ブレリアからのノリは良かったが、上半身、ブラソとマノに女性としての丸みが欲しい。

<バイレ・群舞部門>
今年の群舞はバラエティに富んだ個性豊かなグループが多く、とっても楽しませていただきました。
私が奨励賞に推薦したのは、
★Armonía:実力派3人がそれぞれの個性を活かし、気迫で迫ってきた。溜めの知念さん、込める力の漆畑さん、発するパワーの石川さん。3人の対比が活かされ、面白い構成でわくわくしながら見入ってしまった。
☆カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」:素晴らしい気迫に満ちた子供たちに惹かれ、準奨励賞へと提案。松さんの母のような温かさに包まれた中、子供ながらにフラメンコの心意気を見せてくれた。自分の意志でちゃんと踊っているところが凄い。オレ!しっかりとした身体作りを。
●マグダレーナ:皆、一生懸命でとても良かった。まとまりがあり、構成もしっかり。赤のリボンが効いていた。
●LAMA y SONACAY:揃い踏みが多かったのが残念。フラメンコ性の高い個性の違う2人がどうやり取りするのかと期待していたので、唄の部分をそれぞれが感じた振りを違うレマーテをかけながら踊るとか。もっと熱い気持ちになりたかった。なぜグアヒーラなの?
●斎藤克己フラメンコアカデミー札幌:ソロを踊られた方、アイレ十分でとても魅力的。素敵な踊りに惹きつけられた。次はソロで出演してほしい。克己先生の登場は美学を感じた。群舞の方たちはちゃんとフラメンコを学んでいるのがわかり、女性としてのスッとした美しさに好感が持てた。
○La Puerta Abierta:まじめに取り組んだ群舞。もう少し憂いや含みがあるといいのでは。
○LOS TARANTOS京都:よく揃っていて構成は面白いが、パターンが見えてしまったので・・・。個性的などーんとした踊りの彼女は、ソロで出演されてはいかがですか?他の方たちだけの群舞が見てみたい。
○カデーナ フラメンカ:マノが綺麗できちっと踊っているが、シギリージャとしての熱さや気迫が欲しい。

フラメンコの基礎をきちんと学び一歩ずつ前進しながらフラメンコらしさとは、その曲らしさとは、といつも意識して自分に無理のない振りを、自分の意志で踊れるようになることが大切。身体能力にそんなに優れていなくても良いフラメンコを踊ることは十分に出来るのです。もっと他にも色々な大切なものがフラメンコにはあるのですから。それに気づいて欲しい。気迫ももちろん大切ですが、そればかりでは・・・。本当にそこまで行き着く必然性がいる訳で、どうしたら見栄えがするのか盛り上がるのかばかりを考えていると、大切な何かを見落としていくような気がします。やはり振りが自分のものになっている人は、同じ振りを踊っても伝わってくるものが違います。振りを練習するばかりでなく自分が何を表現したいのかもっと考えて欲しい。それが伴わないと、ややこしい振りを慌しく踊っているように見えたり、物足りない一本調子な踊りになってしまうのではないでしょうか。何もないところ、さりげないところ、ふとした間合いなども大切。ウルトラCの連続ばかりでなく、それは本当に気持ちが行き着いてからにして、もっと自然体の女性としての美しさ、優雅さも欲しいと思うのです。女性は女性ならではのブラソ、マノ(フラメンコ独特の手法)をもっと使って欲しい。男性は男性らしく。自分の個性と感情を大切に自分ならではの踊りを見つけていってください。

EL・POKA岡崎(舞踊家)[Bs,Bg]

フラメンコと遭遇してから56年と半年が過ぎた今も、毎年新人公演に参加することができ、健康に感謝しております。年々レベルアップしているフラメンコに果敢に挑戦している若者の姿を観ることができ、私自身の勉強にもなり、心からフラメンコに出会えたことに感謝しながら、今年も楽しく過ごさせてもらえた3日間でした。

今年一番心を打たれたのが群舞です。群舞とは大勢群がって舞い踊ることです。これが根本!レベルの高い仲間達が数名で踊っている姿もそれなりに素敵でしたが、カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」はフラメンコ大好きな仲間達が大勢群がって、まさに蝶がフラメンコと言うお花畑で舞っている、なんとすばらしい、なんと素敵な群。フラメンコ野郎達なのだろうと感心しました。指導する人も大人になった人も、子達も、皆んなが一丸となっていて、すばらしい作品になっていると感心しました。ありがとう!皆さん!お疲れ様でした。

私が今回強く印象に残った方々を数名だけ挙げてみました。始めに、池田理恵さん、この一年間頑張って、晴れの舞台に立てたのに、時間オーバー失格!が何とも残念です。バックとの噛み合いが少し気になってはいたのですが…まさか!中身は堂々としていてすごく良かったですよ!来年も期待して、待っています。
次に津田可奈さん。私個人としての意見は、すでに4年前最強のメンバーに恵まれ、完全にフラメンコの世界に入っていて、最高の得点でした。ひとまずはお疲れ様でした。これからも前進し続けてください!期待しています!
佐藤陽美さん、ますます上手になられていたのにびっくり!すっかりベテランの味がしみ出ていました。舞台なれした技術と音感!唄も自分の物にして踊っていたと思いました。
久保田晴菜さん、昨年に続き増々上手に、サパテアードも味がついて来て、堂々と自分を押し出して来ましたね。貫禄有る重さや、雰囲気さえも感じられました。今回の一押しです!
平山奈穂さん、すごいバックに支えられ、臆することなく堂々と踊っている姿が頼もしかったし、気持ちよかった。これからもこの調子で頑張ってください。
渡辺亜矢子さん、久しぶりにほのぼのと温かいフラメンコ愛好家の仲間達の広げる、明るく素敵なレベルの整ったフラメンコを観せて頂きました。ありがとう!

ロシオ・ロメロ(舞踊家)[C]

カンテはバイレやギターより難しいことはわかっていますが、まだ参加者の方々は知識が不足しているように思います。CDで勉強するのではなく、経験や知識が豊富なマエストロに習うべきです。
女性の参加者が多く見られたこと、そして、みなさんがフラメンコへの愛を見せてくれたことを、私はとても喜ばしく思います。どうぞこれからも、学び続けてください。がんばって!

ディエゴ・ゴメス(カンタオール)[C]

今年もまた、ANIF主催のフラメンコ・ルネサンス21が終了しました。厳しくも希望とエネルギーに満ち、何よりも成長し続けようとする意欲と我々にこの“flamenco”というアルテを共有しようとする気持ちに溢れた3日間でした。
毎年、皆さんのこのイベントに参加する決意、努力、強い意志の力に、個人的にとても驚かされます。出演者(バイレ、カンテ、ギター)が演ずる数分間には、それまでの長い時間と努力があります。すべての参加者に対して、この新人公演が今後も日本で最も重要なイベントであり続けるよう、応援し続けます。
レベルは毎年上がり、厳しいものになってきています。フラメンコが真の世界遺産であること、また心と魂を込めたものは、国境、人種、国籍をも越える。そのことを目の当たりにできることを誇りに思います。
参加されたすべての皆さん、またこのイベントの実施に関わられた皆様、ありがとうございます。そして、ANIFのこのアルテに対する活動とそれに関わる全ての皆様、ありがとうございました!

菊地裕子(評論ライター)[Bs,Bg]

昨年、奨励賞の選考委員をはずれ、ずいぶん久しぶりに新人公演を一観客として見た。そのおかげで、フラメンコ舞踊の多様性を楽しみ、個々の出場者の努力に感じ入るという、かつて純粋に新人公演ファンであった頃の感覚が蘇った。正直いって舞台は水もので、どんなに素晴らしいアーティストでも、日によって出来不出来はある。たった一度の本番で、出場者の真価がわかるわけではない。けれども、多くの観客にとって、出会いはその一度だけ。一期一会の舞台で、余すところなく自分自身を刻印していただきたいとの思いで拝見している。今年の新人公演も、そういう意味で非常に面白かった。中でも私が感動したのは、何度も出場している方々の成長ぶりで、そのうちの何人かの説得力のあるステージには迷わず高評価を付けた。また、歴代受賞者である山田あかり(カンテソロ)、正路あすか(バイレソロ)両名によるエキシビジョンも、3日間のエンディングにふさわしい、見応えのあるものだったことが非常に嬉しかった。
実はここ数年、必死の努力を重ねて舞台に上がった人々に、選考委員という立場からもの申すことが苦痛になっていたのだが、今回はいつにも増して、新人公演の奨励賞というものが、出場者の長年の努力と成果にしっかりと応える形で与えられるのだと感じた。とすれば、自分がそこにわずかでも携われたことはいかにも幸せなことだ。

フラメンコ舞踊を大きな山に例えれば、頂上に向かう登山道はひとつだけではない、と以前どこかで書いた。けれど今は、フラメンコ舞踊は多くの山々から成る連山のようなものかもしれないと思う。フラメンコを志す人々が個々の山を目指し、あるいは自身の山を築きながら、努力を続け、ひとつずつ小さな成果を挙げている姿に、私は非常に感銘を受ける。新人公演に出場した全ての人々に拍手を贈りたい。

以下は、印象に残った出場者についてのメモから。
(◎=高評価、○=評価、△=今後に期待/★=奨励賞に推薦、☆=特別賞)

<バイレ・ソロ部門>
【18日】
○谷口祐子/バタ・デ・コーラとマントンのアレグリアス。マントン使いが優雅で美しい。リズムの楽しさもあって、ワクワクさせた。しかし、今年は同じような演目が多く、ソロにはもっと突出した個性が必要と感じた。上手に使えるという以上の何かが。
○佐藤直美/シギリージャ。気持いいコンパス。メリハリもあってgood! あとは大舞台でやる場合の大きさ。大きく動くという意味ではなく、中のエネルギーを膨らますという意味で。
○池田理恵/シギリージャ。佳い踊り手。メリハリがあって舞踊的に上手いが、あともう少し深みがほしかった。
△牛田裕衣/タラント。よくよく踊り込んだのか、達者な踊り。しかし前半、ちょっと頑張り過ぎか。緩急がほしい。タンゴになってから、自由な感じがよく出ていた。
○松下ひろみ/シギリージャ。コントロールがきいていて佳い踊り手。しかし、曲としては盛り上がりに欠けた。体力的なことも含めて、力配分の工夫を。
◎大岩奈青★/シギリージャ。ムイ・フラメンコ!この日いちばん、ゾクゾクした。コンパス感が心地よい。惜しむらくは、ブエルタのキレが今ひとつと見えてしまうこと。体の使い方にさらに工夫をこらし、このままフラメンコの恰好よさをずんずん求めていって!
○平川亜紀/ソレア・ポル・ブレリア。小柄だが踊りのセンスが良く、なかなか魅力的。だが、全般的に中のエネルギーが小さい。特に後半はもっと膨らませてほしかった。
△山形志穂/パリージョのシギリージャ。踊り込んでいる感じはあるが、無難な印象。振りに自発性が乏しい。もっと自分の踊りにしてください。

【19日】
○小島智子/ティエント。よく踊れている。ブラソが美しい。ただし、まだ振付をなぞっている感が否めない。もっと自発的に踊れるように頑張って。
△瀧野晴美/ソレア・ポル・ブレリア。よく鍛えられた身体。だが、発するエネルギーが小さいせいか、踊りというより、運動のように見える。表現力を養って。
○服部亜希子/シギリージャ。キレがあって非常に上手い。ただし、求心力に難。もっと惹き付ける工夫がないと、客は置いていかれてしまうのです。
◎藤本ゆかり★/ソレア・ポル・ブレリア。別人かと思うほど迫力と表現力に富んでいた。ステージの使い方にも進歩のあと。踊り全般に非常にコントロールがきいていて、素晴らしい踊り手に成長した。平板になりがちなソレア・ポル・ブレリアが、これほど感動的なものになったのは驚きだ。お見事!
◎西山依里/タラント。しなやかさが際だつ踊り。自分らしさがあって、非常に佳い踊り手。しかし、なかなか突出するところまでいかない。もっとフラメンコのセンティードを深掘りしてみては?あなたなら出来る!
○菊池麻由美/シギリージャ。長くて雄弁なブラソが印象的。美しい踊り。しかし後半、息切れの感。惜しい。
△有田ゆうき/ソレア。なかなかフラメンカ。全般的に好印象だが、これぞ!と光るものが感じられない。好きなことを徹底的に突き詰めてみてほしい。
◎平山奈緒/ソレア。佳きフラメンカ。身体も良く使えているが、ブエルタが今ひとつで損な感じ。苦手は克服するに越したことはないが、見せ方を工夫するのもひとつのやり方。そして自分のやりたいところをさらに磨いてほしい。
△内田好美/ソレア・ポル・ブレリア。あれっ?と思ってしまった。上手い人だけに期待していたが、今回は厚みに欠けた。存在感、個性は有している。頑張れ!
○鈴木雪花/シギリージャ。果敢なる挑戦と見えた。今のところ、まだ荒削りの感はあるが、大きな踊りが踊れる人だと思う。エネルギーのタメをもっと。下半身に安定感をもっと。芯を太くして。
△竹村歩/ソレア・ポル・ブレリア。なかなかのフラメンカ。良く踊れているけれど、自分を出していくには、リズム感も身体も表現力ももっと磨くべし。衣装が踊りをどう印象づけるかも意識して。
△大井昌子/ソレア・ポル・ブレリア。面白い才能の持ち主だが、やや雑な印象。後半は少し単調になった。丁寧に、息切れしないよう、精進して。
◎黒木珠美★/ソレア。長いこと、「踊り巧者」だけど決め手に欠けると書いてきたが、今年は化けた!開き直ったかのように個性がにじみ出て、ソレアという演目を良く消化していて、非常に見応えがあった。ここまで精進してきた方が大輪の花を咲かせるのを目の当たりにするのは、心から嬉しい!
△田中実華江/ティエント。ツボを押さえて、フラメンカな踊り。あと一歩、自分の魅力を押し出す勇気がほしい。自分だけのものを。
△青木千鶴子/バタ・デ・コーラとマントンのアレグリアス。バタ使いが上達して優雅だった。しかし、今回は同じような振付の演目が多く、技術は当然ながら、それ以上の表現力があるかないかが評価の分かれ目となった。さらに頑張れー!
△岡田麻里/ソレア。悪くない。フラメンコのセオリー通りではあるけれど、新味や個性が感じられず、新人公演では埋もれてしまう。もっと自分の踊りを目指して。そのために何が必要か考えて。

【20日】
△野上裕美/ソレア。良くコントロールされ、中が充実している感じで、踊り手としての質の佳さを思わせた。ただオーソドックスな振付が、素直ではあったが、見せる決め手に欠けた。これから!
◎佐渡靖子★/バタ・デ・コーラとマントンのシギリージャ。うぅーーー!何と充実した踊りだったろう!マントンとバタでこれほど内実を感じさせるとは!本当に佳いものを見させてもらいました。Muy bien!!
◎堅正はるか/タラント。身体は出来ているし、踊りも上手いし、見せ方の工夫もあった。あと一歩のところをどう突破するかといえば、フラメンコを深掘りすることかと。
△久貝輝代/バタ・デ・コーラとマントンのアレグリアス。踊りは上手くなった。だが、まだ振付をこなしているところに留まっている感。あと、エスコビージャがパルマの音で聞えないのは損です。
○河合浩子/アレグリアス。小柄だが非常にエネルギッシュで、舞台を大きく使えたのが良かった。ただし足はマイクの前でやってほしかった。楽しさは客も共有したいのです。
△佐藤陽美/ソレア・ポル・ブレリア。気持ちの良いノリ。それを感じさせるだけでも凄いことだが、新人公演で7分30秒ソロで踊るためには、もう少し内側からの表現力を磨く必要があるかも。
◎津田可奈★/シギリージャ。精進しましたねえ。非常にコントロールのきいた、緊張感のある演目で、見応えがあった。舞踊度高し!
◎久保田晴菜★/ソレア。うわぁ、本当にびっくりした。今までのあれやこれやを全部払拭し、見どころ満載な上に、非常にコントロールのきいた素晴らしいソレア!最後まで惹き付けられた。Ole!
◎津幡友紀★/ロマンセ。小さなヒターナの圧倒的なエナジー!ばんざーい!!
△東田美智江/アレグリアス。踊れる人のようだが、唄振りが忙しく感じるのは、振りに追われているから?せっかくのアレグリアス、リズムの面白さをもう少し感じさせてほしい。
△山内佳代子/アレグリアス。まずまず個性的。エスコビージャが楽しい。しかしクエルポがまだ。表現力のある身体を作って、自分の好きなことを追求してほしい。

<バイレ・群舞部門>
○カンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」☆/「すばらしい!」としかメモがない。小さな子供達が、群舞とは思えないほど生き生きとした踊りを見せ、それがいかにもフラメンコに見えたことに感動した。個人的には群舞で最も楽しめた演目。だから、この組が結果として奨励賞でも準奨励賞でも異論はないのだが、私の当初の採点欄には「特別賞」とあった。つまり、奨励賞対象としての採点を留保したのだ。なぜ留保したのか。それは、子供達の生き生きした踊りが、果たして彼らの自発性に基づいているか、私は驚き以上の感動を認めたかという、いくつかの躊躇があったためだ。もちろん、繰り返しになるが、演目としてはこの上なく楽しかった。今後、カンデーラがまた、私の躊躇など吹き飛ばすほどの群舞作品を携えて出場してくれることを心から願っている。
○Armonía/よく踊れる3人による厳しいマルティネーテ イ シギリージャ。踊りは見事だったが、何故だろう、私としては胸に迫るほどの感動には至らなかった。そこが群舞の難しさか。迫力はあったが、全体に色が均一になり過ぎた感がある。せっかく踊れる人々がやるのだから、もう少し自由な部分があっても良かったと個人的には思った。
◎LAMA y SONACAY★/かつて新宿にあったエル・フラメンコでメインの踊り手だったスペイン人のバイラオールに、あなたはそんなにフラメンコが好きなのに、どうしてステージではバイラリンみたいな構成にするの?というような質問をしたことがある。彼は、日本人はファルーコ(祖父のほう)とかカルメン・アマジャとかが好きだけど、決してヒターノにはなれないだろ?僕だって同じだから、作り込んで踊るんだよ、みたいに答えた。暗い顔して。日本のプロの踊り手も、長いこと同じようなことを言っていた気がする。だから、今回のように、フラメンコだけで大舞台で遊んでみせ、観客を楽しませることができることを証明してくれた2人のバイラオーレスが、私には眩しくて仕方なかった。完成度はともかく、私は彼らの勇気と日々の精進に感嘆した。ほら、日本のフラメンコもやっとここまで来たよと、私はあの日の自分に言いたい。日本人による群舞(というかパレハだけど)の新しい可能性が見えてきたステージ。ありがとう、LAMA y SONACAY!

瀬田 彰(ギタリスト)[G]

1番・塩谷(ブレリア):
⑥②①弦を変則に下げたReオープンチューニングのモデルノ曲。
テクニックも良く曲想も良かったが・・・各レマーテの追い込み部がややはしるのが残念。

2番・森谷(シギリージャ):
渋い伝統的スタイルのシギリージャ。
プルガール(親指)で歌わせるテクニックも良く感情を良く表現した演奏だったが、ファルセータ中にコンパス感があまい部分が何箇所か有り気になった。

3番・池川(ロンデーニャ):
前半はゆったりしたリブレなロンデーニャ+後半はリズミックなロンデーニャ。
情感をしっかりとギターの音で表現して良い演奏だった。さらに最後のピカードが決まればもっと良かった。

4番・福嶋(ソレア):
しっかりした演奏だがソレアのコンパスのアクセントが大げさに聞こえすぎる。
それと楽器の関係か音潰れが多かったのが残念。

5番・和田(グァヒーラ):
自作のグァヒーラ。曲のもつメローな感じは出ているが演奏がソフトすぎる。
フラメンコなのだからもっと快活なキレがあると良かった。

6番・鈴木(シギリージャ):   
伝統的な響きのシギリージャ。
演奏は独自のタメを作り良かったが、後半のカバール部はテンポ設定が速かったのか音もれが多かった。

7番・内山(ブレリア):
ロンデーニャ調弦の自作ブレリア。
曲は良かったが…ラスゲアードの音量とファルセータ(指弾き)の音量の差が大きすぎて肝心の旋律が聞き取りづらかった。

北井一郎(現代舞踊協会)[Bs,Bg]

入賞も決まりましたが、小生の印象の強かった踊り手を紹介させて頂きます。

18日庄子裕子:自分の踊りになりきっている
19日瀧野晴美:踊りを自分にこなしている
19日服部亜希子:重厚感がありサパテアードの強弱の使い分けがうまい
19日平山奈穂:長いドレスで情感をうまく表現
19日黒木珠美:黒の衣裳が映え、サパテアードが見る人の心にひびく
20日堅正はるか:踊りの切れ味抜群、動きの間が良く充分楽しませた
20日佐藤陽美:激しいサパテアードが印象的
20日津田可奈:力が入り過ぎる。柔らかい表現を取り入れたら
20日小宮山葉子:エネルギッシュな踊りだが、顔の無表情が気になる
全体に踊り手のレベルが上がって今回は水準が高かった。群舞は気に入った作品がなかったのが残念でした。

小倉泉弥(専門誌編集長)[Bs,Bg,G,C]

今年も全ての方の舞台を拝見しました。例年の長丁場ですが、こちらも慣れてきたのか集中力を切らさずに乗り切れたので、よかったです。

まずはギター部門から。僕が票を入れたのは森谷忍さんです。それは見事なシギリージャでした。一番感激したのはご自身の音色をお持ちだということです。よく枯れた愛器から響く音色は一朝一夕に得られるものではないでしょう。気力も真っ直ぐに演奏に現れ、迫力十分。リズムも安定している上に、メロディとハーモニーがくっきりとしてわかりやすい。安心して聴ける名演でした。その裏には、弾けるものと弾けないものを厳密に見極める姿勢と、ファルセータをどう弾くかといった研究の日々があったのではないかとお察しします。ぜひまた、拝聴の機会を熱望します。また、池川史洋さんのロンデーニャ、福嶋隆児さんのソレアも甲乙つけがたく、奨励賞を受賞されても遜色のない出来栄えだったと僕は思います。お二人とも過去の新人公演で拝聴していますが、今年が一番よかったです。

次にカンテ部門です。カンテを聴くにあたり、メロディのアクセントこそがカンテの醍醐味だと思いを新たにしています。そこには音程、発声・発音、リズムなども渾然一体となってくる。……ところがどうしたことか、そんなことはすっかり忘れて、結局のところ「あぁいいなあ」と思うかどうかという、素朴な気持ちで票を投じました。それで今年も熊谷善博さんに入れました。熊谷さんの歌は、カンテを丸ごと呑みこんでいるような感じがしたのです。その歌に不思議とピュアなものを覚え、ほだされました。

続いて、バイレ・群舞部門を。なんらかの感性が欠落しているのか、幼い子が踊ろうと老年の方が踊ろうと、舞台である以上は、「子どもが踊るとかわいい」「ご老体なのにすごい」という人情を僕は勘案しないようにしている気がします。なぜなら、舞台だからです。舞台を見る以上は、一定の技術を求めます。これは数ある物の見方のわずか一つに過ぎません。さておき、僕はカンデーラ発「ともだち列車 たからもの号」に投票しました。先生を除く7人が小学生くらいの子どもたちの群舞です。一見矛盾するでしょうか?僕は彼らをカッコいいと思いました。伴奏の繰り出す音に対して、素晴らしい反射神経でバシッと踊りを決める姿は、優れたアーティストでした。正直なところ前後の演劇的なシーンはなんともわからなかったのですが、中核を成すフラメンコでいい踊りをしており、感激しました。また、奨励賞を得たArmoníaですが、2011年にバイレソロで受賞した知念響さんが非常に印象的でした。あれから6年が経ち、久々に踊りを拝見しましたが、さらに上手くなっている!びっくりしました。鍛錬を怠ることなく日々を過ごしてきたのだと思うと頭が下がります。なお、カホンを叩いた朱雀はるなさんや、ホセ・コロンのプレイもさすがプロだと感心してしまいました。余談ですが、伴奏を楽しむのも新人公演の見所です。

最後にバイレ・ソロ部門です。票を入れた方は、牛田裕衣さん、藤本ゆかりさん、平山奈穂さん、黒木珠美さん、久保田晴菜さん、竹村歩さん、伊藤千紘さんです。
牛田さんはごく普通にタブラオで踊っていそうな雰囲気を感じました。リズムに香りがあるというか。地力があると思うので、花が咲く日は近かろうと期待しています。藤本さんは、動作がキビキビしており、軸は真っ直ぐ、横のラインもキレイで、ズシッとした佇まい。堂々としていて、昨年からいいレベルアップをしていると感じました。受賞されてもおかしくなかったと思います。平山さんは面目躍如でしょう。CAFコンクールで優勝し、勢いそのままに行きましたね。縦横に舞台を広く使い、気合いも入っている上に、それでいて踊りが上品。あれだけ動きながら、端正に踊りをまとめるセンスは素晴らしいです。自分がよく見えているのでしょう。黒木さんは烈火な感じでよかったです。気合いが漲っていて豪快、でもリズムはきっちりハマリ、そして客席に向かって踊るところが好印象でした。
久保田晴菜さんの魅力はなんといっても大きな踊りでしょう。広い可動域を活かしたブラソは大変見栄えがよく、記憶に残ります。これまでも良かったのですが、今年受賞したのは、曲種を変えたから?去年はアレグリアス、今年はソレア。2014・15年はタラント、2011年はロメーラ。うまく説明できないのですが、徐々に良くなってきているのは感じていました。それが一定のところまで達したということだと思います。竹村さんは後半ブレリアになってからよくなりました。舞台を広く動きながらも、身体は一定の美しさを保ち、いい熱を帯びていました。ソレアからこの質だとなお良かったです。
伊藤さんは足も身体も腕もリズムも、それぞれに一定の水準に達していたのではないでしょうか。特にリズムによい雰囲気があったと感じました。

最後に、池田理恵さんはもったいなかったです!入れようかと考えていましたが、時間オーバーということで泣く泣く外しています。切れ味鋭く、よく攻めた踊りでした。では、来年も会場でお目にかかります。

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