イベント・企画・出演依頼について

最新公演・イベント・講習会情報

ANIF設立30周年記念企画 2020年、2020人でセビジャーナスを踊ろう!
フラメンコお役立ちコラム
フラメンコってなに?
日本フラメンコ協会facebook

Sponsors スポンサー

株式会社チャコット(ダンス館渋谷) レンタルダンス・スタジオプレステージ株式会社ビデオソニア・ジョーンズ

第27回フラメンコ・ルネサンス21「新人公演」

日本フラメンコ協会第21回新人公演「選考委員講評」

選考委員(名前から各講評へリンク)

濱田滋郎(評論家・会長)[G,C]

「フラメンコ・ルネサンス21/新人公演」今年度第27回を無事につつがなく終えることができました。催しの統括責任者としましては、このことに関し、たずさわられた皆様-出演者、舞台関係をはじめすべての裏方さんがた、そして来会者の皆様-のご協力に深い感謝を捧げねばなりません。思えばこれまで、大きな問題は何ひとつなく、ANIFにとって大切な「新人公演」を続けて来られたのも、皆様がこの催しを「自分たちのもの」と認識し、愛情と責任感をもって臨んでくださっているからだと思います。心より嬉しく、有難く存じます。

今回もこの公演は、全体として、日本のフラメンコが達するに至った高い水準を保つものであったと思います。バイレに関しては私個人は選考委員はつとめておりませんが、3日間ともつぶさに観させて頂きました。ソロ部門で奨励賞を受けられた6人の方がたを初め、精一杯に己を示されたすべての出演者がたに敬意を表します。ただ敢えてひとつ申し上げたいのは、すべてによく行き届いた踊りが多かった反面、本来フラメンコには最も必要なはずの、個性的な魅力をきわ立てた踊りは、今年も少なかったと感じることです。舞踊の技術的な細かい点は私には解らないわけですが、奨励賞に選ばれなかった方がたの中にも、個性的な魅力、味わいといった点で強い印象を残した人たちはいらっしゃいました。敢えて挙げさせて頂けば、25日13番の諸藤ふみさん。この人には、たとえばヘレスあたりの横町に住む、プロにはならないけれど近所では踊りの名人として親しまれている小母さん(失礼!)のような味がありました。また、大ベテランの25日15番、草野干夫さん。この方のなにか昔懐かしい趣のファルーカは、ずいぶん以前にも拝見したような気がしますが、三木さんのヴァイオリンと共に踊られた今回のそれも、印象に残るものでした。

ギターは今回5人のみと、これまでで最も少ない出演者数だったのは、少々残念です。ただ、演奏は皆さん、聴き応えのあるものでした。カンテの出演者は逆に17名と多く、フラメンコにおける歌の重要性を思えば、嬉しいことです。このジャンルも水準はずいぶん高まりましたが、バイレのところでも触れたように、にじみ出る個性的な味ということでは、どうでしょうか。中で斎藤克己さんあたりは、さすがに“フラメンコ人”としての年季の味でしたが。準奨励賞を得られたお2人はそれぞれに立派でしたが、とりわけ、九州の地で研鑽を積んでおいでの占部智恵さんのファンダンゴスには心打たれました。奨励賞まではほんの一歩で、この人ならきっと越えられる、と私は思っています。

長くなるのでこれ以上は控えますが、改めて、フラメンコを愛し日常の糧にしていらっしゃる日本のあちこちの皆様に、心よりの親愛の情をお伝えしたいと願います。皆様の上に喜びと幸せとが在りますように!

山田恵子(舞踊家)[Bg]

「群舞のすばらしさ」

今年は参加作品が5団体と少なかったのですが、それぞれユニークでした。ソロとは違って何人かで1つのテーマを踊るすばらしさ。構成・振付をする作者はオーケストラで言えば指揮者であり、表現者であるダンサーは楽器です。思う存分各パートの良さを発揮して欲しいものです。

それぞれの作品について。
①斎藤克己フラメンコ アカデミー札幌(グラナダ狂詩曲)
5人の板付から始まって3人、2人、ソロ等と変化していくのですが、時間が限られているので、出入りを抑えてその分ダンサー同士の対比を考えてみると重みが出てくると思いますが、如何ですか。あと、ダンサー全員の心の調和が弱いので、喜怒哀楽をはっきり踊れば最後のポーズの静かさが生きたと思います。

②Estudio El Patio(シギリージャ)
シギリージャはソロでも難しい曲ですが、群舞としてよくまとめましたね。6人が椅子に座ったところから始まった構成が生きています。構成・振付が大変良く、ダンサー達も作者の意図を理解しのびのび踊っているのでその気持ちが伝わりました。私も昔椅子を使用して創作し賞を頂きました。シギリージャのオリジナル曲で。

③島崎リノフラメンコスタジオDaiDai(ロマンセ)
白の衣装で上、下よりパルマでの登場は良かったのですが、構成をもう少し考えてください。空間の美しさが欲しかったです。群舞は全員揃うところから始まりますので、細かいところに注意してください。ブラソがきちんとしていない人が目立ち、中途半端な手の動きにはびっくりが何か所かありました。ブラソに気を使ってください。表現が豊かになります。

④“Hermicanas”~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松(タンギージョ デ カディス)
2人がほとんど同じ振りでした。個性の違いが出たらもっと面白くなったのではと思います。それとブラソをもっときれいにマスターしてください。女性のダンサーはブラソが命だと私は思います。指の先までしっとりと踊る事と、あと2人の踊りの会話が観たかったです。

⑤Las Niñas de Belen(ソレア)
黒の衣裳で上、下に2人ずつポーズ、パルマのリズムで始まりました。ギターが入ってきてテーマへと流れていくのですが、4人のダンサーのハーモニーが欲しかったです。あと一歩考えてみてください。

私の群舞の考え方は①構成・振付②テーマのすぐれた展開③感性あふれる表現力④テーマに合った群舞のハーモニーです。①~④までの中で1つでも理解して頂けたら、良い作品になると思います。来年また良い作品にお目にかかれる事を期待しております。

三澤勝弘(ギタリスト)[G]

参加者5名ということでありましたが、とても今後が楽しみな演奏者たちでした。全体に気付いたことは、音が潰れてしまう場面が多く見られたこと。その原因理由は様々かと思いますが、例えば左右のタイミングのズレ。右手の動きに任せた弾き方ではなく、流れ(歩み)を感じつつ繋ぎ・連絡・渡ってゆくこと。簡単なようでとても難しいことです。その移りゆくさまに“意味(情の世界)”を与えてゆく。ただの丁寧さとは違います。質・密度の変化(音量・空間・音程・音色その他あらゆる移ろい)を感じながら進む。これも難しいことですが、それが無ければ、やはり伝わらない。

・磯谷氏:音の潰れが目立ち、とても残念に思いました。コマ数の多いスローモーションのような練習、そしてその中へ必要な要素を織り込んでゆく。そんなことも大切か。
・大場氏:表現の振れ幅が小さいと感じました。ブレリアといえども懐の深いところも必要かと思います。空間の連結性が少し弱く、表情が前に飛んでこない場面が多かったと思いました。また、低音の動きが少し見えづらく聞こえづらかったのは、装飾的な高音とのバランスに問題があったのか。
・鈴木氏:演奏の物理性に明瞭さを欠いてしまいました、結果的に。表そうとしてはおりましたが、上手く処理ができないようでした。個人的に氏の指の健康状態を知っているがゆえに心苦しさは感じるのですが、演奏に対しての印象としては、やはり、音が前に出てこない感がありました。もっと音数を減らし、“情”のスペースを作っては、と思いました。次の機会には内面に焦点を絞っては…と思いました。ところで気持ちが浮いた状態でのエンディングは……?
・福嶋氏:フラメンコらしい魅力は十分に出ていました。とくに中盤からは更に良かったと思いました。ソロ芸術には不可欠である、ある種の“孤立性”も感じられました。今後は、ソレア、シギリージャやティエントなどでの境地を聴いてみたいと思います。
・内山氏:とても優しく佳い演奏でした。音の潰れもなく、奇麗に聴くことができました。また、好く歌わせておりましたが、私にはその表情が少し多様性に欠け、1つのパターンの繰り返しのように思えました。音の響く領域をもっと広くイメージし、ホール全体に飛ばすという心で演奏に当たるのもよいかと。

出場された方々には、それぞれの可能性がありました。ひとつ、音の飛んでゆく方向とその道筋を考えてみてはどうでしょうか。

小林伴子(舞踊家)[Bs,Bg]

今年も熱い見応え聞き応え充分な3日間!体力、集中力、きつく感じながらも皆さんの熱唱熱演に触れるのは私にとって毎回楽しみな事です。今回は群舞とバイレ・ソロの選考に参加しました。
記憶力の限界を感じつつ3日間のメモを頼りにこの講評をかきます。選考、投票した立場から書くので上から目線を感じたら、ゴメンナサイ!個人的見解です。

<バイレ・群舞部門>
今年の群舞は参加チームも多く、作品はそれぞれ個性的で楽しんで拝見しました。以下各チームの感想です。◎は実際の奨励賞にかかわらず私が奨励賞に投票した、チーム、個人、です。

21.斎藤克己フラメンコアカデミー札幌「グラナダ狂詩曲~Rhapsody~」
チンチーネスの響きと手首がキラキラ光る演出の幻想的始まりとエンディングが素敵でした。
22.◎Estudio El Patio「シギリージャ」
椅子を効果的に使い、踊り手達の揃った動きの確実さがシギリージャの空気感を的確に表現して見ごたえありました。
23.島崎リノフラメンコスタジオDai Dai「ロマンセ」
ノリノリで皆が楽しんで踊っているのが伝わって、好感度大。
24.Hermicanas~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松「タンギージョデカディス」
観ている私達が思わず微笑んでしまう!生き生きと楽しい作品でした。
25.Las Niñas de Belen「ソレア」
ゆっくりな音楽のリズムや動きを、皆で揃って踊る、というとても難しい事に挑戦しました!

<バイレ・ソロ部門>
以下私のメモから気になった方へ一言、「個人的見解」です。初日は記憶が希薄になりやすいので、24日は全員を、2日目、3日目はピックアップして書きました。

【24日】
1.宮崎美香「シギリージャ」トップバッターで緊張したと思いますが、表現したい事への意欲と気持ちを込めて踊っているのが伝わりました。
2.◎平川亜紀「バンベーラ」粘りのあるどっしりとした動きでした!後半少し疲れたか?
3.大里尚子「アレグリアス」手助けと言う言葉が有ります。フラメンコのブラッソの動きも単なる振り付けではなく、身体の動きを助けてより表現しやすくしてくれる物としてとらえてみて下さい。
4.橋田佳奈「カーニャ」身体能力が高く良く動ける方だと思います。フラメンコへの挑戦、続けて下さい!
5.畑中美里「ソレア」決め所がかっこよかったです。その反面全体の流れが途切れ途切れになったのが残念!
6.◎林由美子「ソレア」抑制の効いた渋い動きで素敵でした。私は1票を投じましたが、メモに平川さん同様後半疲れたか?とあり、後一歩だったかも。
7.川田久美子「アレグリアス」膝丈ファルダとエプロンでカッコよく堂々と踊りすごく雰囲気がありました。ただアバニコを使って踊った時、良く踊れる分何時もの空気感?になったのが残念。
8.脇川愛「タンゴデマラガ」丁寧にしっかりと踊っていました。準奨励賞の方は後一歩ぬければ…と言う所でした。
9.谷口祐子「アレグリアス」鮮やかなバタデコーラさばきが素晴らしかったが、私には、それが目的になっている様に見えてしまったのですが…。
10.寺嶋いずみ「カンティーニャデピニーニ」素敵な振り付けなので、フラメンコ力もアップしながら身体に馴染むまで沢山稽古して下さい!
11.持田賀津子「グアヒーラ」始まりのポーズ凄く美しかった!マルカールと苦手な所の表情の差が激しかった。正直な方ですね。是非苦手な部分を克服して下さい。
12.波田多真紀「アレグリアス」バイオリンが参加する意欲的な取り組みでした。素晴らしい音楽を感じながら踊れたら幸せですね!
13.蓮真佐江「ソレアポルブレリア」緊張感を保ちながら最後まで丁寧に踊った。そのぶんメリハリが付き辛くなったのは残念。
14.中溝直美「ティエント」どっしりと、自分の好きなスタイルを貫いて堂々踊り素敵でした。
15.◎渡辺なおみ「シギリージャ」気迫充実して最後まで貴女の世界に引き込まれました。
16.大津絵里香「アレグリアス」私のメモには、若さハツラツ爽やかで可愛い!これからが楽しみ、とあります。実際のお年を知りませんので、的外れだったら御免なさい!
17.川端淳子「ソレア」皆さんの熱い声援を受けて、堂々と踊りました。フレーズの頭が強くなり終わりが弱くなるのが残念。
18.流石泰美「ソレアポルブレリア」カッコ良く始まりましたが姿勢が残念でした。コアなフラメンコを目指すのでなければ、基本姿勢が猫背になるのはもったいないです。
19.鈴木旗江「ソレア」メモでは高いレベルだとあり高得点がついています。後半に疲れが出て姿勢が崩れた、とありました。
20.沖山美環「アレグリアス」不自然な所が全く無くのびのびと、フラメンコ黄金期のスペインの踊り手の雰囲気でした。これからが楽しみです!

【25日】
10.池田理恵「アレグリアス」動きの緩急が心地よく素晴らしかった!昨年に続いてタイムオーバーで投票出来なかったのは残念です。
13.諸藤ふみ「ソレア」好きな踊りのスタイルです。体型を活かして、堂々とどっしりとして素晴らしかった。
14.灘辺佳代子「グアヒーラ」カッコ良い振り付けとステキな照明で印象に残っています。コロンビアーナへの変化がオシャレでした。
24.有田ゆうき「ソレア」ギター無しで歌から始まった演出良かった!ずっと怒っている表情だったのは意図的?
25.◎野上裕美「ソレア」美しい身体条件を活かして、堂々とした演技が印象に残りました。
33.◎齋藤朋之「ソレアポルブレリア」体型や風格から年配の方かと思いました。前回も音楽的感性が素晴らしいと感じ印象に残りましたが。今回はグレードアップしての出演、エンディングの無音の中での佇まいがカッコ良かったです。

【26日】
22.佐藤陽美「ブレリアイシギリージャ」パワフルな演技。細密で強いサパテアードで実力を印象付けました。
28.◎岩丸綾子「ソレア」力強くも抑制の効いた表現が良かった!
31.沖真悠子「シギリージャ」柔らかい肩のブラッソが美しい実力派です!…フラメンコは衣装とパロは関係無いと言う意見も多い様です。実際存在その物が、フラメンコのヒターナの踊り手達は色も形も何でも有りOKです。でも私には貴女の踊りがその路線を目指しているようには見えなかったので、素敵でしたが、衣装の柔らかな雰囲気に凄く違和感を感じてしまいました。
33.◎藤本ゆかり「マルティネーテ」グラマラスな体型を活かしてどっしりと迫力のマルティネーテでした。
34.石田久乃「アレグリアス」始まりの後ろすがたがスペイン人形の様でした。もちろん踊りもとても自然で素晴らしく、アンダルシアの空気を感じました。将来楽しみです。
37. ◎大塚歩「アレグリアス」トリの出演が実力派には、プレッシャーよりパワーになる!不動の安定感で、3日間を心地よくエキサイティングに締めてくれました!

飯ヶ谷守康(ギタリスト)[G,C]

<ギター部門>
奨励賞を受賞された福嶋隆児さん、おめでとうございます。ただ辛口に言いますと、音がブツ切れの時が多かったこと、全体に1本調子に感じられたこと、そして何よりもリズム感・コンパス感に多少なりとも問題が垣間見れてしまいました。今回は出演者も少なく、運が味方した感もありますが、今後の更なる精進を期待したいと思います。

私的には、1番最初に演奏してくれた磯谷徳志さん、しっとりとしたコルドバ風のソレアと、勝手に感じてしまいました。素晴らしい感性をお持ちかも、と思います。また、最後にアレグリアスを演奏してくれた内山友樹さん、ファルセータ群に、これも勝手に粋なセビージャの空気を感じてしまいました。とても洒落た曲作りで、良い意味で日本人離れしていたと思います。ただ、もう少しテンポが欲しかったと思います。

ただ、残念なことは、お2人共に、全体に音が細くて弱かったように感じました。別に力任せの大きな音は必要ないのですが、音の際立ちがあったら、と思います。このあたりのことを多少なりとも意識して今後の練習時に採り入れいただければ、と思います。今後の進化を期待していますので、ぜひ丁寧な練習を積み重ねてください。

<カンテ部門>
今回は出演者が17名と、驚くばかりの人数の参加でした。しかし、残念ながら奨励賞ではなく、準奨励賞の受賞者が2名、という結果になりました。

まず私の耳とフラメンコ心を刺激してくれたのは、小林カルメンさんでした。発音も発声も、パルマの打ち方も音程も…すべて、フラメンコのカンテとして普通に聴けました。素晴らしいと思います。そして、ファンダンゴを唄ってくれた占部智恵さん、かなり本格的なカンテを聴かせてくれました。

ただ、今回も音程が不安定な方、スペイン語の発音に問題がある方、発声がフラメンコ的ではない方、そしてカンテの詩の理解に問題がある方、更に不必要に“がなる”傾向の方が多く見受けられてしまいました。残念でなりません。もちろん、好みで分かれるところでもあると思いますが…!?

勘違いだったらゴメンナサイなのですが、喉に力が入り過ぎの発声をしている方が多かったように感じました。これでは喉が詰まり気味になり、身体全体の共振が不可能になってしまい、説得力の無い、ただ大きいだけの声になってしまう危険がある、と聞いたことがあります。そして、コントロール不能に陥り、リズムと音程に影響を与えてしまう…というような感じを受けてしまいました。ぜひ今後の練習時に気にしていただけたら幸いです。

今田 央(ギタリスト)[G]

磯谷徳志
トラディショナルなソレアで今更ケチのつけようがない程の王道のファルセータばかりでしたね。数多のギタリストが弾いたであろうこの手のソレアは、余程の個性とテクニックがないとなかなか人に振り向いてもらえません。
1コンパス目の③と⑥のアクセントがかなり引っ張っていましたが、あの表現はよかったです。ただその後は割合淡々とした表現になってしまいました。1コンパス目のような意思を随所で出せれば濃密な時間を造れたと思います。
中間部のファルセータでコンパス感が曖昧な箇所がありました。技術的にはP単体の音は良いと思いますが、アルペジオ、ピカードは明瞭ではなかったようです。トレモロはキレイでした。アルサプーアは要研究ですね。せっかく最後に持ってきたのにメロディーが浮かない→リズムが出ない→テンション下がるでそれまで築き上げてきた流れを受け止めるには役不足でした。P単音とアルサプーアの両立は爪の形も含め難しいです。

大場洋平
P指によるファルセータが大部分を占めていましたが、肝心のPのタッチが弱いのかメロディーが浮いてきません。対照的にラスゲアードの部分はちょっとうるさく聞こえました。アクセントだけ急に強くなる癖も気になります。アルペジオも織り交ぜていたのでしょうがこちらも明瞭ではなかったようです。全体にファルセータは突っ込み気味ですね。いわゆる頭ノリですが冒頭のタパーダを聴く限りではコンパス感はお持ちのようです。まず技術面の問題を解決してください。

鈴木敏司
音はよかったのですが全体的に練習不足の感じを受けました。個々のファルセータがちゃんと弾ききれてないですね。単なる緊張からそうなっただけなのかもしれませんが。
このソレアには副題が付いていますが、コピー曲か自作かはわかりません。いずれにしても1曲勝負なら構成がちょっと地味ですね。同じテンションのファルセータが多く、使われているテクニックも限られています。何より、曲の終わりを殆どの方はわからなかったのではないでしょうか?
奏法でひとつ気になったのですが、プルガールを右肘全体を使って弾いているように見受けられました。文章だと説明しづらいのですが、もっと手首のスナップを使って弾くほうが速く、かつ安定した音が出せると思います。

福嶋隆児
今回奨励賞に推しました。パリージャのファルセータでまとめてきましたね。前半で不安定な個所がありましたが曲が進むにつれて心地よい疾走感を感じられました。パリージャのファルセータが持つ強力な個性に頼ることなく自分の技術と解釈でブレリアの世界を構築できていると思いました。アルペジオ、ピカード、プルガール、全てクリアでバランスがよくラスゲアードの個所も音の塊ではなくリズムが聞こえてきました。今去年のソレアを弾いたら全然違って聞こえるのでしょうね。

内山友樹
今回も自作の曲でしょうか。毎回趣向を凝らしたソロを披露されていますが、今回も受賞にはいたらず残念です。個々のテクニックは十分なものをお持ちなのですが、一言で言うと演奏の線が細いに尽きると思います。1つの原因は音ですかね。きれいなのですが輪郭が若干ぼやけています。あのリバーブの中では音が干渉しあってせっかくのファルセータがよく聞き取れなかったりします。毎回感じられるのでお使いのギターの特性かもしれませんが。
とは言えアレグリアスはギターソロでやるのは難しいです。最難関であろうピカードを最後に持って来て弾ききったのですからお見事です。

岡本倫子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【24日】
・林由美子さん:きちんと踊っていて好感が持てました。もっとご自分の個性がでてくると素敵になると思います。
・川田久美子さん:衣裳は冒険でしたね。踊り方とちぐはぐな感じを受けましたし足の捌きを研いてからまた挑戦してみてほしいと思いました。
・脇川愛さん:身体の動きがとてもすばらしかったです。タンゴになってからの表現が挑戦的になってしまいタンゴらしさが感じられなかったのが残念です。
・谷口祐子さん:バタ・デ・コーラとマントンの捌きに磨きがかかったという印象を受けました。ただ、そのせいかバタ・デ・コーラとマントンの巧みな動きにばかり目がいってしまい、谷口さん自身が見えてこないアレグリアスだったように思います。
・寺嶋いずみさん:寺嶋さんのアイレが衣裳とマッチしていてとても可愛らしいアレグリアスでした。振りのメリハリとマノの使い方をもっと身に付けるとよいと思います。
・蓮真佐江さん:スタイルとバランス感覚の良さをいかした振りになっていてとても素敵でした。
・中溝直美さん:安定感がありタンゴ系の振りの雰囲気が伝わってきました。ただ大きなステージではもう少し身体での表現を大きくすることをおすすめします。
・渡辺なおみさん:個性的で重いシギリージャ。黒い衣裳もとてもお似合いでした。ファルダの捌き方のせいか足が見えすぎるのが少し気になりました。
・川端淳子さん:雰囲気、衣裳の着こなしなどにスペインらしいエレガントさがあり素敵でした。
・沖山美環さん:容姿抜群でフラメンコ人形のようでした。踊り姿も美しいのですが、ブラソそして上体の動きをもっと使った振りを期待します。

【25日】
・牛田裕衣さん:昨年同様とてもフラメンコ性の強い存在感を放っていらっしゃいましたがブラソの動きがとても大雑把になってしまった印象を受けたのが残念でした。
・大井昌子さん:とても集中力のある踊りで引き込まれました。
・池田理恵さん:リズム感あふれる身体の動きで魅せてくれたアレグリアスでしたが、昨年同様に時間オーバーがとても悔やまれます。
・伊藤千紘さん:集中力のある切れのいい踊りがとても素敵でした。
・諸藤ふみさん:Muy Flamencaな存在感のある踊りが圧巻でした。
・灘辺佳代子さん:巧みな踊りでしたが後半のブレリア部分にもっとグァヒーラ色が出るとよかったと思います。
・青木千鶴子さん:シンプルながらゴージャス感あふれる衣裳と動きで大人のソレアを魅せていただきました。
・菊原まりさん:ペソのある見応えのあるタラントでしたが、衣裳や飾りに光りものが多すぎて踊りにそぐわない印象を受けました。
・小川千尋さん:丁寧に大切に踊り込んでいるタラントが素敵でした。
・有田ゆうきさん:最初の立ち姿に存在感がありMuy Flamencaな踊りにも貫禄が出てきたように思います。
・野上裕美さん:体幹がしっかりしているので動きの多い振りにもぶれることなく、素晴らしいソレアでした。かなり硬質で力強い印象を受けましたが、エレガントさも併せ持った踊りで感動しました。ファルダ捌きのせいかエスコビージャの際にかなり足が見えすぎていたのは唯一気になったところです。
・本多清見さん:ペソのある落ち着いたソレアで見応えがありました。
・宗形公恵さん:グラシアたっぷりの楽しいアレグリアスでした。
・岡田知子さん:安定感と集中力のあるとてもいい踊りを見せていただきました。
・齋藤朋之さん:つい見入ってしまう味のあるフラメンコでした。
・石田祐子さん:とてもキレのある踊りっぷりが素敵でしたが男性振りっぽい振付でのファルダ捌きには違和感を覚えました。

【26日】
・古迫うららさん:ペソのあるタラント。特にタンゴに入ってからは魅せてくれました。
・鶴幸子さん:スタイリッシュな振付がシンプルな衣裳と相まって、個性的で美しいティエントスになっていました。
・佐藤陽美さん:ステキ!かっこいい!という言葉がぴったり。もう少し安定感が出ると最強だと思います。
・阿部和子さん:貫禄がありグラシアにあふれた素敵で楽しいアレグリアスでした。
・稲垣栄子さん:ソレアらしいソレアで安定感ある踊りでした。
・岩丸綾子さん:振り、衣裳ともにシンプルでしたが、踊りの緩急が絶妙でとても重さを感じさせてくれるソレアでした。
・沖真悠子さん:無駄な動きが一切ない密度の濃いシギリージャで最初から最後まで見入ってしまいました。
・水町祐子さん:やはり動きに無駄がない切れのあるシギリージャで巧さに感動しましたが、衣裳、長いフレコ、大きすぎる花などの赤い色の分量が多すぎて、見た目に注意散漫になってしまったのが残念でした。
・藤本ゆかりさん:安定した動きと見事なステージ使いで存在感抜群でした。
・石田久乃さん:とても素敵なアレグリアスでした。そのまま成長してください。
・橋本佳津枝さん:動きの多い振りをシャープに巧みにこなしていらっしゃいましたが、衣裳がエレガントで女性的なので振りにそぐわない印象を受けました。
・大塚歩さん:これぞアレグリアスという踊りっぷりでした。身体の動きひとつひとつからもリズムが感じられ魅了されました。

<バイレ・群舞部門>
・斎藤克己フラメンコアカデミー札幌
皆さんの立ち姿と動きの美しさが際立っていました。
・Estudio El Patio
1人1人がしっかり踊っていて且つ群舞としての構成もよく考えられていて見応えあるものになっていました。
・島崎リノフラメンコスタジオDaiDai
7人のMuy Flamencasたちの踊りが素敵でしたが、群舞でなく1人1人で踊られるのを見たい気がしました。
・“Hermicanas”~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松
とても楽しんで踊っている姿にこちらもわくわくさせていただきました。
・Las Niñas de Belen
振りを丁寧に踊っていて好印象でしたが、それぞれの個性がもっと発揮できればよかったと思います。

片桐勝彦(ギタリスト)[G]

磯谷徳志:まさにソレアらしいソレアを聴かせてもらいました。時折強すぎると感じるタッチもあったのですが、全体的にしっかりとフラメンコの音が聞こえていました。アルペジオとピカードのコンビネーションも良かったと思いますが、細かい音使いの箇所までさらに丁寧に弾ききることを心がけてください。ソレアのコンパスのきざみ方は特に気持ちが良く、ラスゲアードやトレモロのima指の音も粒が揃っていました。テンポの上げ方も絶妙でしたが、音数が少ない部分をさらに丁寧に弾くことと、全体的にもう少し間を多く、呼吸を深くとってください。冒頭にも書いた通り典型的なソレアで良かったので、いつか全く違う切り口でオリジナルのソレアも聴いてみたいです。

大場洋平:アリーバでのブレリアを軽やかに弾ききったというのが全体の印象です。タッチも強すぎず弱すぎず、そして何箇所かのプルガール奏法では音の強弱もしっかり表現できていて良かったです。タパオから始まる曲の構成だったので、リズムも速すぎず遅すぎずでちょうど良い速さのブレリアだったのですが、高音弦でのファルセータ時にリズムの乱れが少し気になりました。しかし細かい音使いの部分でしたので、パルマが入るかソレアなどでしたら表現しやすいですね。新旧織り交ぜたブレリアのファルセータでしたが、1曲にまとまっていて良い曲構成だったと思います。親指のアポヤンドと人差し指の返しのバランスなども良かったのですが、全体的にラスゲアードの音量に比べてはメロディーが小さい印象を持ちました。後半のアルサプア、ゴルペなど技術的な面も安定していましたので、今後も楽しみにしています。

鈴木敏司:オーソドックスですが骨太で重いソレアで良かったです。強いて言えば、カポタストを使わずにアルアイレだったので、さらにフレットの高音部を使ったファルセータがあっても良かったかと思いました。アルアイレでのアリーバはEのコードが頻繁に出てくるので、ボイッシングを変えることや弾く弦を減らすなどしてモゴモゴする和音の解消法を研究してみてください。もしくは単純にカポタストを使用するのも良いと思います。曲の構成も良かったのですが、最後の終わり方をさらに工夫すると終わった感じがもっと出せたと思います。

福嶋隆児:奨励賞受賞おめでとうございます。全体的に落ち着いていて安定感のある好演奏で、自分も1票入れさせてもらいました。昨年は迫力が勝っていて、ラスゲアードの音色やゴルペの音量などが少し気になったのですが、今回は何箇所かコンパスの揺れなどがあったものの、リズム、音色、音量、技術ともに安定していて、ソロギターの風格を感じられる演奏だったと思います。足でコンパスをきざみながらの演奏は効果的な部分とそうでない部分があります。パルマなしでブレリアのコンパスを出すのは非常に難しいことですが、永遠のテーマとして追求してみてください。

内山友樹:Aメジャーのアレグリアス。出演者全員の中で一番技巧的で難しいフレーズをよく弾きこなしていました。曲の作り方も良かったので奨励賞候補として私自身最後まで迷ったほどの好演奏でしたが、全体的に音が細いのが一番気になりました。細かいフレーズが多かったので致し方ない部分もあるのですが、やはり音色は大事だと思います。途中のピカードも最後のピカードも最後まで弾ききって音が出ていたのは圧巻でした。素晴らしかったです。去年のブレリアも今年のアレグリアスも作曲・編曲ともにバッチリで、演奏技術も素晴らしかったので、音色などの細かい事だけを注意しながらこのままのやり方で突き進んでいってください。

加部 洋(プロデューサー)[G,C]

<ギター部門>
例年一定の人数とレベルを保ってきたギター部門であったが、今年は出場が5人という少なさで、寂しかった。

磯谷徳志君●ニーニョ・リカルドのスタイルを含め、伝統にしっかり乗っかったソレアで、非常に好感を持った。ラスゲアードやゴルペも良く、ノリも良かった。ただ、ピカードが回り切らないところや、細かい難しいフレーズにミスが目立ったのが惜しかった。大場洋平君●2拍で足を踏みながらのブレリア。その点には好感が持てたが、肝心の演奏では全体的にフレージングが曖昧で、リズムのノリが前に出て来なかった。モロンスタイルのフレーズは面白かった。鈴木敏司君●伝統的なソレアで、深い音が出ていた。しかし、フレーズの抜けが時々あり、気になった。ご自身が出したい音まで届かず、練習不足を感じた。福嶋隆児君●むしろレアかもしれないクラシカルなブレリア。前半は緊張のためかノリがいまいちだったが、後半はぐっと良くなり、奨励賞にふさわしい演奏になった。内山友樹君●イントロから何かを感じさせる味の良さがあった。ラスゲアードのリズムも良く、モダンなフレージングも板に付いていた。強弱・緩急も上手く、アレグリアスの魅力に溢れていた。ただ一点、タッチが弱かった。

<カンテ部門>
カンテ部門でかつてない17人という最大の出場者だった。レベルもそこそこ保っていた。ただ、飛び向けて上手い歌い手がいなかったのが残念だった。気にとまった出演者を書きます。

山田裕子さん●一瞬ニーニャ・デ・ロス・ペイネスを彷彿させるところがあった。そこが光っていた。近藤リナさん●サリーダ良し。歌い方に強弱緩急、タメもあり、シギリージャらしかった。熱唱で好感が持てた。斎藤克己さん●味のあるアレグリア。いろいろな人生経験が盛り込まれたアレグリアなのだろう。じいさんが歌っているような老成した味わいがいい。山本淳子さん●声質が魅力的だ。低い声の歌い方も上手い。力の出し入れもいい。3歌で盛り上がったが、もうひとつ決めて欲しかった。小松美保さん●節回しを忠実に取っていて好感が持てた。日本人にありがちなマラゲーニャの間延びもなく、良かった。アバンドラオになってからもうひとつ盛り上げて欲しかった。西奈津子さん●サリーダが面白い。強弱緩急もある。面白い声質を持っていて、得している。節回しの処理に良くない部分があるので、訓練で改善して欲しい。土井康子さん●ファンダンゴの起承転結の輪郭が余り見えなかった。3歌になって味が出て来た。熊谷善博さん●無伴奏の部分が良かった。熊さんの進境が著しい。いつもより高音域で歌っていたためか、迫力と緊張感があった。

鈴木敬子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
橋田佳奈さん マントンの使い方が丁寧で良かった。表情や踊りが少し硬いのでもう少し技術以外のことにも気を配ったら良くなると思う。/林由美子さん 安定した踊りでとても良かった。/脇川愛さん 強く正確なサパテアードで気持ち良かった。シャープな踊りに加え曲の構成も面白かった。また別の曲を踊っているところも観てみたい。/谷口祐子さん 身体の使い方が美しくバタ・デ・コーラのテクニックも良い。フラメンコを楽しんで踊っているのを感じた。/蓮真佐江さん 安定した技術で好感の持てる踊りだった。/中溝直美さん フラメンコ的なペソと柔らかさを持った踊り。/渡辺なおみさん 貫禄があり踊り慣れている。最後までパワーがあり観ている人を引き付けた。/鈴木旗江さん 安定感のある踊り。後半で身体がブレたりして疲れがみえた。/沖山美環さん 空間を上手く使っていた。アレグリアスを楽しんでいるのが伝わった。最後に爆発がもう1つあればもっと印象に残ると思うが、さわやかな良い感覚が残った。/牛田裕衣さん 踊り慣れている。もう少し踊りに柔らかさや抜け感が加わり表情が付けばさらに良くなると思う。アルティスタのパワーが強すぎて踊りが少し前に出れなかったように感じた。/大井昌子さん 安定感のあるダイナミックな踊り。気が前に出ていた。/池田理恵さん 踊り慣れていて安定感がある。踊りがとても上手いがアレグリアスを踊っているのでもう少し楽しんで欲しい。/伊藤千紘さん 踊りの体のライン、ブラッソ、マノが美しい。上品でとても好感が持てるバイレ。しっかり彼女らしさを出していた。/諸藤ふみさん 個性を生かしペソがありとても迫力があった。後半特に盛り上がり会場を熱くした。また是非彼女のソロを観てみたい。/灘辺佳代子さん チャーミングなグァヒーラ。楽しさが伝わった。/草野干夫さん 多少ブレ等あるが、新人公演に挑戦したことが素晴らしい。とても魅力があり人生を感じた。/青木千鶴子さん 以前よりテクニカが上がっている。安定感が出てきて今回とても良かった。/菊原まりさん ペソと安定感のある踊り。後半のタンゴからさらに良くなった。/有田ゆうきさん 全体的にパワーがあった。特に後半エネルギーがアップして会場の拍手も多かった。/野上裕美さん すみずみまで丁寧な踊り。最初から最後まで集中力が途切れず、観ている人を引き付けた。パワーが前に出ていた。/平田かつらさん 大きい踊り。サパテアードに重みがあり心地良かった。ブエルタ等でブレる時があり少し気になった。/宗形公恵さん 明るくパワーのある踊り。グラシアがあり表現力もとても良かった。清々しい気持ちにさせてくれた。/齋藤朋之さん 以前より踊りのキレが増した。努力が感じられる。姿勢とブレが気になるが、独特の個性が良い。心に響くものがあった。/古迫うららさん 踊り慣れていて安定感がある。曲の後半でパワーが上がり更に良くなった。/佐藤陽美さん 若くエネルギッシュな踊り。サパテアードの技術がある。/阿部和子さん 貫禄があり静かな個性が人生を語っているようだった。踊りの技術ではないところでとても伝わり感動した。/池野美結さん 女性らしいしなやかな動きが上手い。全体に動きすぎ感があるので、要らないものをそぎ落とし重量感を増せば更に良くなると思う。/岩丸綾子さん 無駄な動きが少なく軸がしっかりしている。サパテアードも良い。ブレリアで盛り上がりが欲しかった。/沖真悠子さん スタイルが良く恵まれている。キレが良く踊りも大きく見えた。/藤本ゆかりさん 最後まで緊張感があり観ている人を引き付けた。一つひとつのパソをじっくり考えて練習してきた成果が見えた。今回の出演者の中でも、とても印象に残った人のひとり。/石田久乃さん まだ15歳ということを聞いて驚いた。パルマやサパテアードの技術もあり、明るい雰囲気も好感が持てた。これからとても楽しみです。/大塚歩さん 安定感があり貫禄が出ていた。たくさんのパソを詰め込み過ぎな気もしたが、今回の多くの曲の最後に相応しいとても良い踊りだった。

<バイレ・群舞部門>
Estudio El Patio 同時にそれぞれが違う動きをしながらも統一感のあるバイレ構成。飽きないフォーメーション展開が良かった。とにかく踊り手たちがたくさん努力したことが伝わった。/島崎リノフラメンコスタジオ DaiDai 一人ひとりフラメンカ。エネルギッシュでとても良かった。/Hermicanas~姉妹~ 踊っている時の表情がとても良く、明るく楽しく爽やかな気分にさせてくれた。若い2人のパワーで会場の空気を変えた。今後すごく楽しみです。

鈴木英夫(ギタリスト)[G]

今回はギター部門への出場者が少なく寂しかったですが、出場された皆さんそれぞれ一生懸命頑張って聞かせてくれました。それぞれの方々に私が感じた事を書かせていただきます。

●磯谷さん
演奏が力強いのは良かったのですが、力みすぎたのか演奏が荒くなってしまいました。もう少しソレアらしい抑揚が欲しかったです。

●大場さん
ブレリアはとてもリズムが大事なヌメロですが、今一リズムが甘く歯切れ良さが欠けていた気がしましました。またいろいろとやってはいるのですが、肝心なメロディーが聞こえてきません。

●鈴木さん
オーソドックスな感じのソレアで良かったのですが、ファルセータにメリハリがなく折角のバリエーションがあまりはっきりと聞こえませんでした。

●福嶋さん
奨励賞おめでとうございます。コンパスもメロディーもとてもしっかりとしていて聞き応えのあるブレリアでした。益々の精進を期待します。

●内山さん
中々面白いアレグリアスで、テクニックはあるようですが、目一杯に感じて少し雑になってしまったようです。その技術をもう少し押さえて完璧に演奏すればずっと良くなると思います。

鈴木眞澄(舞踊家)[Bs]

45年取り組んでもまだ届かないフラメンコですが、私の大事にしている視点から 感想とアドバイスを書かせていただきます。それが少しでも皆さんのお役に立てばうれしいです。

【24日】
宮崎さん…お腹に力を入れると動きにもっと重みやスピードが出ると思います。
平川さん…よく踊り込んでいますが芯が時々揺らぐのが残念でした。
大里さん…似たパターンの動きが多いので違う味わいの部分も入れては?
橋田さん…カーニャ独特の雰囲気をもっと考えてみては?
畑中さん…空間の操り方が素晴らしいので、時々揺らぐ体の芯が気になりました。
林さん…引き込まれて拝見していたので後半の疲れが残念でした。
川田さん…素直な表現が素敵でした。大地をつかまえて腰の安定感を考えてみたら良いと思います。
脇川さん…内に込めることが多く、時には解放することがあってもいいのでは?
谷口さん…流れる優雅な振りが多かったので、時には力強さも欲しいです。
寺嶋さん…個性的でチャーミングなところが曲とマッチしていました。
持田さん…個性が光っていました。上半身をもっと使うと表現がより豊かになります。
波田さん…おおらかな表現が楽しかったです。
蓮さん…腕だけでなく身体全体を使って踊ってみてください。
中溝さん…個性的なフラメンコらしさがありました。首の芯が揺らぐのを気をつけてみてください。
渡辺さん…熱いものが感じられて素晴らしかったです。
大津さん…純真な心はそのままに技術を磨いてください。楽しみにしています。
川端さん…シンプルなことに積み重ねが見え、熱さもあって素晴らしかったです。
流石さん…お腹の芯を要に動くことを考えてみてください。
鈴木さん…小さな振りにとらわれず、空間を動かすことを忘れないでください。
沖山さん…重心を落とすと安定感が出ると思います。

【25日】
牛田さん…全体に振りをもう少しシンプルにしたらより自分が表現できるのでは?
櫻井さん…真摯に向き合ったソレアは素晴らしかったです。これからも頑張ってください。
市村さん…構成にもっとメリハリをつけたら良いかと思います。
大井さん…唄とギターをもっと心に取り込むようにしては?
池田さん…よく踊っているのに後ろとの一体感が見えないのは何故でしょう?
岡村さん…振りに流れを持たせるために上半身を使っては?
伊藤さん…踊りは上手なのに訴えてくるものがなくて残念でした。
諸藤さん…素晴らしい体格をよく使ってフラメンコらしく踊っているのにご自身の心が見えなかったのが残念でした。
灘辺さん…曲の構成がよく唄やギターとの一体感もあって素敵なグアヒーラでした。
草野さん…立ち姿に雰囲気があり、バイオリンもお似合いで感動しました!
青木さん…カンテを聴くということは、自分の感情の同じような部分を重ねるという事でしょうか?心で聴くということを考えてみてください。
山形さん…振りにもう少し流れがあったらよいと思います。
坂本さん…体の芯にもっと力を入れて、殻を破ってみてください。
菊原さん…タンゴの面白みはもっと出せる実力があると感じました。
小川さん…大地をつかまえるようなつもりで足をついてみてください。そして上半身は空間を動かすように。
森永さん…回転や振り向く時の首のキレについて考えてみてください。
佐藤直美さん…自分の表現はなさっていますが、それは唄やギターの方々と一緒でしたか?
下山さん…唄と共に踊りを考えてみてください。動きすぎのように感じました。
有田さん…唄やギターとの一体感もあり、熱いフラメンコでした。
野上さん…よく踊っていらしたのですが、唄との関わりがあまり感じられず残念でした。
伊藤さん…独自の雰囲気をお持ちなので、動きはもう少しシンプルで良いかと思います。
本多さん…体はよく動かれているので、メリハリをつけたら良いのでは?
平田さん…ご自分をさらけ出す勇気を持ってください。
川口さん…曲想が変わっても気持ちが伴っていないように感じました。
宗形さん…芯があると小気味よい表現もより生かされます。楽しそうでしたが媚びすぎているように感じました。
細川さん…唄から受け取るものがもっと欲しかったです。
岡田さん…表現力があるのでもう一息の熱さが欲しかったです。
齋藤さん…小手先の振りではなく独自の個性だけで勝負して欲しかったです。
石田祐子さん…冷たい感じがするのはどうしてかな?と思いました。
後藤さん…曲想や踊りと衣裳が合ってないように思いました。着たいものか似合うものか、衣裳の選択は難しいですね。どんな風に踊りたいのかが見えず残念でした。

【26日】
桒村さん…今の踊る事の楽しさを忘れずに、体の使い方をより学んでください。
古迫さん…踊りのうまさを生かしながら、ガン!って精一杯の部分が欲しかったです。
鶴さん…きれいに踊る事の殻を破ってみたらいかがでしょうか?
森さん…同じテンションの振りが多いように感じたので、メリハリを持たせたらより魅せられます。
佐藤陽美さん…心があまり見えてこなかったのが残念でした。
藪内さん…腕だけでなく上半身全体を使ったらより表現が豊かになると思います。
小野さん…フラメンコの動きは曲に合わせて踊るのではなく、痛めつけられて耐えてそれを爆発させるような感じがするのですが。
阿部さん…唄とギターとともにご自分の踊りを踊っていらして、ためもあって素晴らしかったです。
池野さん…後半に見えた強さが嬉しかったです。首のぶれに気をつけて。
稲垣さん…感情がこもっているのに後ろとの一体感が感じられないのは何故でしょう?音に合わせて動いているという感じがして残念でした。
岩丸さん…唄い手が痛みを持って唄っている時にただ歩いていたのが残念でなりませんでした。
稲沢さん…マントンを使うことがご自分の表現したかった事かを考えてみてください。
小山さん…唄やギターとマッチした振りでよかったです。芯がぶれるのが残念でした。
沖さん…フラメンコらしい動きだったのに心に響いてこないのは何故でしょう?
水町さん…力の入れ方に強弱をつけたら良いと思います。
藤本さん…全体の構成はよかったのですが一体感が欲しかったです。
石田久乃さん…楽しむ事を忘れずに体の使い方を学んでいってくれたら嬉しいです。
清水さん…真摯に向かう姿勢と熱さがありました。
橋本さん…一体感があって素敵でした。
大塚さん…作り込んであるのにそれを自然に踊り、こちらの心も踊りました。

最後に、3日間拝見して感じたのは、心がこもっていると技術の未熟さはあまり目立たない。唄やギターとの一体感は何がそうさせるのか?曲に合わせてでもなく、数合わせでもなく、これはフラメンコにおいて大きな課題だと思います。これからも一緒に考えていきたいです。

曽我辺靖子(舞踊家)[Bs,Bg]

【24日】
畑中美里さん:バックとの一体感を保ちながら曲を謳歌していました。
林由美子さん:リズム感良くサパテアードもリンピオ。気持ちの入ったソレアでした。
脇川愛さん:メリハリのある動きの中に緩急のあるサパテアード。とても印象に残りました。
谷口祐子さん:バタデコーラとマントンのさばきが見事でした。表現力が加わるとさらに魅力が増すでしょう。
寺嶋いずみさん:個性的な衣装に熱さが感じられました。ラストがとても印象的でした。
蓮真佐江さん:丁寧に踊っています。重心の安定と心の強さを望みます。
中溝直美さん:素敵なティエント。タンゴから益々ノリが加わりました。
渡辺なおみさん:カンテを深く理解した表現力と強さのあるサパテアードとのコントラストに引き込まれました。
川端淳子さん:心の流れの一貫性を感じました。
流石泰美さん:体が良く動く長所を生かしながらセーブする力を意識するとさらに良いでしょう。

斎藤克己フラメンコアカデミー札幌:一筋の中からの動き出し、一人一人の鮮明な動きに魅了されました。
Estudio El Patio:見事な構成力に息もぴったり合い一体感のある作品でした。
島崎リノフラメンコスタジオDai Dai:それぞれの衣装と共に各自の輝きが感じられました。ソロであったらうまく対応できるものでも群舞だと難しいですね。
“Hermicanas”~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松:タンギージョの陽気な曲調が若さ溢れるお2人にピッタリでした。
Las Niñas de Belen:4人の頑張りが熱のこもったソレアに生きていました。

【25日】
櫻井美砂子さん:踊り続けることも才能だと思います。ラストまで途切れることなく踊り切った姿に感激です。
大井昌子さん:無音の始まりからラストまで空気を感じたシギリージャ。足音もリンピオでした。
池田理恵さん:パソのつなぎが滑らかで切り替えが上手。グラシアがあり引きつけられたアレグリアスでしたが、タイム内で表現するのも大切なこと。昨年に続きとても残念です。
伊藤千紘さん:ラストまで途切れることなく続くパワーは見事でした。
諸藤ふみさん:表現力豊かな彼女に、昨年の群舞に引き続き今年もオレ!
青木千鶴子さん:技術面の進歩を感じます。表現力をさらにもう一歩。
山形志穂さん:足が強くブラッソも綺麗です。上半身の使い方に一工夫を。
佐藤直美さん:メリハリ良く華のあるアレグリアスでした。
有田ゆうきさん:昨年より数段上達しましたね。感じる心と安定感。楽しみな人です。
野上裕美さん:体がよく動き表現力も素晴らしい。バックを引っ張っていくパワーに拍手。
伊藤真由美さん:てらわないシンプルなソレアが印象的でした。
平田かつらさん:重く深みのあるシギリージャでした。カンテの表現も良くグラデーションのように流れる足音が心に残りました。芯の弱さが少々気になりました。
宗形公恵さん:茶目っ気たっぷりな雰囲気のアレグリアスでした。
齋藤朋之さん:好感度良く特にラストはおしゃれでした。

【26日】
鶴幸子さん:印象的な始まりのティエントでした。個性的で実力のある人だけにもっと心の爆発を観せて欲しかったです。
佐藤陽美さん:リズム感のある男性的なサパテアードが途切れることなくラストまで素晴らしかった。
阿部和子さん:個性的な味に加え、バックと織りなすハーモニーに魅了されました。
岩丸綾子さん:重心深く一貫性のあるソレアでした。
沖真悠子さん:ベソがありスケールの大きさとメリハリを感じました。三位一体感も素晴らしい。
藤本ゆかりさん:無音からの空気感…ドラマを感じ客席を引きつけましたね。バックとの一体感が抜群!
石田久乃さん:丁寧に踊っている姿に将来が期待されます。
清水和美さん:周りに流されず一生懸命踊っている姿に微笑ましさを感じました。
大塚歩さん:パワー溢れるアレグリアスを惜しみなく披露してくれました。お見事!

高橋英子(舞踊家)[Bg,G,C]

<バイレ・群舞部門>
G‐1:袖先がラメでキラキラ光る黒の衣装、エレガントな5ムヘーレスが織りなす神秘的な世界。出だしやラストの静寂に鈴の微音が効果的。音楽的には地味でしたが、「ソロンゴ」の妖艶なムードの中で舞踊手一人一人を浮き出す振付、演出など舞踊構成の繊細さが感じられたのは良かったと思います。
G‐2:出だしやラストに鍛治場のマルティージョでコンパスを刻むことにより一層シギリージャの荘厳な世界を引き立て、6ムヘーレスは青いマンティージャをまとったお揃いの黒衣装で締まったイメージ。群舞ならではのダイナミックさと唄振りで見せた各人の細かい感情表現など、意気込みや息吹が伝わってきました。
G‐3:純白の塊がコンパスに乗って渦巻くようなゴージャスなサリーダ。気が付くと白ではなく藤色に変わって赤いバラがフラメンカに浮き上がる効果的な照明、独創的な色彩。7ムヘーレスがリズミカルな音楽の中でハレアールする、トレアールするという演出などで連帯感が湧き出る。曲風に合った躍動感ある群舞でした。
G‐4:赤青調の花柄?に黄色のフリルが華やかな衣装に粋なソンブレロ。短いセリフで始まる軽やかなリズムに乗った小さな姉妹の織りなすタンギージョの世界は何をとってもただただ「可愛い」の一言に尽きる。しっとりとした場面も加え、後半でパニュエロを振り回したりの演出、音楽も考えられた飽きない構成で楽しめました。
G‐5:胸元に青を使ってアクセントを付けた黒い衣装の4ムヘーレス。それなりの群舞的な動きや照明が生かされたまとまった構成で、レベル的に各人とも似通っていたのが小迫力を出していたと思います。それぞれがソレアの世界に没入していて、フラメンコの魅力がダイレクトに伝わってきました。

<ギター部門>
磯谷徳志さんのソレアは雰囲気ありましたが、ちょっと粗い感じがしました。テクニック的に不十分さを感じつつも何かを期待させましたが、時間切れとなったので残念でした。
大場洋平さんはさりげなく白地に大きめの赤い水玉模様のシャツで登場。ほのかな意気込みを感じました。音作りの工夫で雰囲気を出している感じはありましたが、心躍らせる何かブレリアらしいノリや展開がもう少しあったら良かったと思いました。
鈴木敏司さんはまだ楽譜に倣って弾いているようなイメージの演奏ですが、丁寧に弾かれていて好感が持てました。気のせいか?かなり短かったように思います。
福嶋隆児さんは、安定したテクニックと地味ではありますがフラメンコ的なアイレを持ち、ブレリアを弾くための正統的な流れを掴んで無難にまとめ、その演奏は自然に聞こえてきました。もう少しブレリアらしい火花的なノリがあると映えました。
内山友樹さんの弾き方はもろ現代風で軽やか。細く流れるように展開するアレグリアス。テクニックもあり、音楽性もあってそれなりに良かったのですが、どうも音に芯がないというか、耳に響き、心に刻まれるようなコンパス感を感じられなかったのがちょっと残念でした。(出演順)

<カンテ部門>
山田裕子さんのアレグリアス。ちょっと甲高い声が不思議なムードを作りだしました。ポピュラーな歌詞を明るく元気に歌われていました。くちゅくちゅっと早口になるところとかがあって面白い、愛嬌でしょうか。
渡橋美穂さんのグラナイーナ。出だしの歌詞がステキに響きました。正統的なアイレを大切にしながら綺麗に、そして丁寧に歌いあげました。技術的な甘さを今後改善していくともっと良くなる可能性があると思います。
近藤リナさんのシギリージャ。細かな技術をちゃんと勉強なさっているのが窺われました。なにかデンとした芯のある強さは感じませんでしたが、頑張りが利いて、感情が籠る歌いっぷりはとても好感が持てました。
斎藤克己さんのアレグリアス。変わった歌詞で始まり、興味を引きました。細い声で全体的に華奢な感じの歌い方。一つ一つ見栄を切りながら決めて、それなりのアイレを求めている雰囲気が頼もしかったです。
渡辺都美さんのソレア。この方はシブい!淡々とつぶやくように、アイレを内に発しての演唱はとても印象的、心に残りました。カンテの幅広く、奥深い世界に改めて引き込まれます。
小林カルメンさんのアレグリアス。なかなかキレのいいリンダな高い声が愛くるしい。まだ青くささも感じましたが、後半の歌いっぷりは流石にサングレを感じさせるノリとなり、将来が楽しみです。
山本淳子さんのアレグリアス。流暢にそつなく歌っていて、違和感なくすんなり耳に入って来ました。愛嬌あるポーズを見せ、そんな余裕もフラメンカでよかったです。
松岡恭子さんのカーニャ。ちょっとか細い声で生気がない感じでしたが、頑張って歌ってらっしゃいました。曲のアイレが失われないように力の配分も考えながら、更なる練習を期待します。頑張ってください。
竹内恵理子さんのシギリージャ。何か無理があったように思いました。全体を覆うか弱さからか、突っ切れた感じで余韻が残りませんでした。女らしい綺麗な声が、深く重厚なシギリージャには合わないのかとも思いましたがそんなことはないと思います。とにかく、もう少し歌唱力を付け、豊かな表現を目指して頑張ってください。
小松美保さんのマラゲーニャ。歌詞の雰囲気を壊さず、味わい深く歌われていてよかったです。歌唱力も有り、抵抗なくすんなり耳に入ってきました。いい感じで始まったアバンドラーオでしたが、後半の表現がちょっと今一難しかったのかもしれません。
西奈津子さんのタランタとカルタヘネーラ。しっかり声は出ていましたが、流されてしまい、感情の籠め方などで物足りなさを感じました。ちょっと残念、もう少し歌い込んで頑張ってください。
永井正由美さんのシギリージャ。どちらかというと細い感じの声だったと思いますし、小柄?でも、どこからあんな力強さが出て来るのかと思うくらいスカッとするバリエンテな演技でよかったです。特に後半は力の入った盛り上がりをみせ、凄かったですね。
土井康子さんのファンダンゴ。立っているとPaqueraのようでムードありますね。声はしっかり出ていてパワフル、ちょっと聞き取りにくいファンダンゴでしたが、堂々と歌われまして好感が持てました。頑張ってください。
大西保孝さんのファンダンゴ。この方は惜しい!声もしっかり出ていて男らしく、大らかで朗々と流れるような演唱は気持ちよく響きますが、ちょっと薄味のファンダンゴで、説得力に乏しいように思いました。何か一つフラメンコなアイレが加わればもっと頼もしく聞こえてきそうです。
熊谷義博さんのマルティネーテとシギリージャ。きっとこの方はかなり研究なさっていると思います。歌詞もスタイルもちょっと一般的に耳にするものとは違っていて、興味深いです。歌い方は少し一本調子に聞こえてしまう感がありますが、さりげない歌いっぷりで異色です。
占部智恵さんのファンダンゴ。最初のサリーダからして典型的なファンダンゴの響きで印象的。出だしの歌詞もプーロ。素直に歌い、歌のエッセンスを失わないアイレを掴んでいてとても良かったです。ですから最後の表現にもっと大胆さがあってもよかったかなと思いました。
白鳥光良さんのカーニャ。よく練習なさっています。正統的アイレで丁寧にきちっと歌うように努めているのが窺われ好感が持てました。今後に期待したいと思います。(出演順)

手塚真智子(舞踊家)[Bs]

●林由美子さん:前々回に比べて格段の進歩でした。
●牛田裕衣さん:良い構成でしたが、動きすぎの感じを受けました。
●櫻井美砂子さん:もっと表情を豊かに。
●大井昌子さん:目力が出て、踊り切った!シージョが綺麗でした。
●岡村志帆さん:引っ込みのブエルタの芯がずれたのが残念でした。
●伊藤千紘さん:身のこなしが軽やかで、コンパス感が良かった。
●諸藤ふみさん:迫力あるソレアでしたが、ご自身らしさを出すと良いと思います。
●灘辺佳代子さん:曲調をよく捉えて素敵でした。
●草野干夫さん:フラメンコに対する尊敬の念を感じるファルーカでした。
●青木千鶴子さん:毎年挑戦する姿勢とその上達に感服です。
●菊原まりさん:安定感のあるタラント。ブラッソの使い方の研究を!
●佐藤直美さん:解放感を感じるよいアレグリアスでした。
●野上裕美さん:気迫のソレア!
●伊藤真由美さん:パソの詰め込み過ぎなのか、表現したいことが見えませんでした。
●本多清美さん:本当に丁寧な踊り。
●宗形公恵さん:笑顔が魅力的。
●桒村洋子さん:長いブラッソを活かすと良い。
●古迫うららさん:時々重心のブレが気になったが、身体をよく使えていた。
●佐藤陽美さん:力み過ぎでしたが、オーレ!
●阿部和子さん:ファルダの持ち方が綺麗で、パニュエロでの引っ込み素敵でした。
●岩丸綾子さん:メリハリの利いた力強いソレアでした。
●沖真悠子さん:ブラッソが綺麗でした。
●清水和美さん:心がこもったソレアでした。顔の表情、目を開けてほしかった。
●大塚歩さん:瞬発力があり最後まで気持ちが途切れずに踊りきった姿がオーレ!

花岡陽子(舞踊家)[Bs,Bg]

新人公演おつかれさまでした。出演者の方全員に心からの拍手を送ります。

<バイレ・ソロ部門>
【24日】
宮崎さん/しなやかに踊っていますが、もっと踊り込んでください。
平川さん/将来性を感じる素晴らしいバイレでした。
大里さん/アレグリアスらしく明るく、テニクニックもあります。
橋田さん/マントンさばきステキです。パソが少し多いかも。
畑中さん/魅力いっぱいのパソ。これからが楽しみです。
林さん/フラメンコアイレを感じます。ギター、カンテと一体となっていました。
川田さん/表現豊かです。衣裳も工夫があり、面白味があります。
脇川さん/体全体にバランスが取れていてみとれました。
谷口さん/コーラのさばきも美しく、マントンも美しくさばいていました。
寺嶋さん/これからもたくさん踊ってまた挑戦してください。
持田さん/美しく踊っていましたが、強さが欲しいです。
波田さん/表情が良かったです。踊り続けてください。
蓮さん/ブラソもエスコビージャもよく踊っています。
中溝さん/パソの中に重厚感があります。
渡辺さん/ムイフラメンコを見せてくれました。
大津さん/初々しいです。これから肉付けしていってください。
川端さん/ソレアの物哀しさがよく表れています。
流石さん/ティエンポが正確です。少しバランスがくずれます。
鈴木さん/気持ちが入ったソレア。足も強いです。
沖山さん/大柄の体を生かした美しいフラメンコでした。

【25日】
牛田さん/曲想によく乗っています。ヒターナフラメンコを楽しみました。
櫻井さん/パソが少し単調かも。たくさん踊ってください。
市村さん/表現力があります。サパテアードお見事。
大井さん/恵まれたお身体で伸び伸びと踊っています。
池田さん/オリジナリティがあり、舞踊性もあります。
岡村さん/ボリュームのある踊り。カンテもギターもボリュームです。
伊藤さん/アイレもコンパスも良く、ご自分のフラメンコにしています。
諸藤さん/フラメンコが身体に入って、まさに踊りたい!が表れています。
灘辺さん/グアヒーラの華やかさ、明るさがよく出ています。
草野さん/ご自分の人生がファルーカに乗せて、味わいがあります。
青木さん/なめらかで美しいソレアを踊り切りました。
山形さん/テアトロフラメンコでした。ステキなソレアでした。
坂本さん/静と動が見事に表現されていました。
菊原さん/ねばり、ため込み、よく表現されています。
小川さん/ブラソが美しいです。いつもの力が出なかったかも。
森永さん/グラジオラスのような優雅さです。力強さが欲しい。
佐藤さん/ステージをよく使い、気持ちよく拝見しました。
下山さん/寂しさ、つらさの表現、難しいですが頑張って!
有田さん/あふれるばかりのエネルギッシュ、良かったです。
野上さん/上半身、下半身よくきたえて、力強く美しいです。
伊藤さん/どうぞ更に上をめざして頑張って!貴女には出来ます。
本多さん/ねばり強く、カンテによく乗って良かったです。
平田さん/ひとつひとつのパソが見事でした。
川口さん/笑顔が素敵。舞台をよく使って、楽しませてくれました。
宗形さん/軽妙さが出て、サパテアードが見事です。
細川さん/細いお体で力強さが出ていました。
岡田さん/女性らしい大人っぽい動きが印象的です。
齋藤さん/重厚感があり、練習の成果ですね。鈴が素敵!
石田さん/ティエンポ素晴らしいです。ブラソを少し研究して。
後藤さん/全体に欠点はありません。あともう少しです。

【26日】
桒村さん/楽しく踊られています。たくさん踊っていってください。
古迫さん/後半に素晴らしく、踊っています。時々乱れました。
鶴さん/味のあるおしゃれなティエント。長年の成果ですね。
森さん/曲によく乗っています。パソにもう少し工夫を。
佐藤さん/強い足で気持ちよく踊っていました。再度挑戦しましたね!
藪内さん/難しいフラメンコにこれからも踊り続けてください。
小野さん/ソロンゴの物哀しさがもう少し欲しいです。
阿部さん/重厚感のあるアレグリアス。よかったです。
池野さん/強弱をきちんと出して、練習の成果ですね。
稲垣さん/内面からの情熱をよく表していました。
岩丸さん/多種多様なサパテアード、素晴らしいです。
稲沢さん/ご自分のソレアにしています。将来が楽しみです。
小山さん/踊り込んでいらっしゃる、欠点がありません。
沖さん/アイレを感じます。全体にバランスが良いです。
水町さん/小柄な体にエネルギッシュな動き、よかったです。
藤本さん/オリジナル性があり、観客に語りかけ、心が燃えていました。
石田さん/未来への可能性、期待の星。
清水さん/これから勉強していってください。頑張って!
橋本さん/あなたの人柄が踊りに出て、後半が良いです。
大塚さん/指の先、足先まで行き届いた素敵なアレグリアス。

<バイレ・群舞部門>
斎藤克己フラメンコ アカデミー札幌/5人がフォーメーションを変えて面白いエンティングでした。
Estudio El Patio/6人のエネルギッシュな動き、サパテアードが心地よく、全体的に心地良いです。
島崎リノ フラメンコスタジオ DaiDai/華やかな7人がブレリア。オレーフィエスタ!
“Hermicanas”~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松/可愛らしいタンギージョ。ジュニアの方たちに人気が出たのでは。
Las Niñas de Belen/4人の群舞。迫力があります。息がよく合っていて素敵です。

本間牧子(舞踊家)[Bs]

この度ほど決められた人数を選出するということの難しさを感じたことはありません。受賞された方々以外に、私的に奨励賞をさしあげたかった方、心に残った方々を書かせていただきました。

24-6 林由美子さん…軸がしっかりして安定感があり媚びずに振りを大切に踊られていました。自己コントロールされたクエルポ、ブラソ、マノ、体の隅々まで伝わっていく間合いが素晴らしかったです。
24-8脇川愛さん…安定感と力強さメリハリがあり構成も良く、ブラソ、マノが美しく絶妙な間とスピード感がすごかったです!
24-9谷口祐子さん…コーラ、マントンそしてクエルポとの一体感のある踊り、しなやかなブラソとアイレと華!輝いていました。
25-13諸藤ふみさん…理屈抜きでドカーンと来ました。言葉はいりませんね!素晴らしい直球フラメンコ、しっかり受けとりました。
25-24有田ゆうきさん…重々しさと気迫!間合いの作り方、歌との会話感、メリハリのつけ方に引き寄せられました。
25-33齋藤朋之さん…ひとつひとつの事を大切にする思い、立ち方、歩き方、すべてに心のこもった踊り、フラメンコに真摯に向き合う姿に感動しました。
26-20鶴幸子さん…弧を描き、うねりエネルギーを発するブラソ。まるで海の底から渦をまき、沸き上がる波のよう!美しいです。構成も素晴らしく物語を感じさせてくれました。
26-32水町祐子さん…気合いと隙のなさ、レマーテも良かったです。魂の怒りとも思えるアイレを感じました。

他にも素晴らしい方々がいらっしゃいました!あとひと息、あと一息…それは何なのか。自分の踊りに迷いが生じた時、わからなくなった時…フラメンコの原点に返ると何かがきっと見えてきます。昔私もある人にそう言われて気がついた事がありました。技術の面で自分の得意なところは何か、好きなところはどこか、どのように踊りたいのか。誰かと競べるのではなく自分を信じ、体、五感、すべてを研ぎ澄まし集中させる…自ずとするべき事が見つかるのではないでしょうか。強い意志を持つことが大切です。強い意志と自信を持って自分の感じたフラメンコを踊ることです!「心の隙、迷いは体にもすぐ現れる」「しっかり大地に立つ」「力みは大敵」。私の大切にしている事です。

渡邊 薫(舞踊家)[Bs,Bg]

第27回新人公演、各部門出演者の皆様、本当に熱く充実した舞台をありがとう。そしてお疲れ様でした。稀にみる厳暑の中、本番当日にベストなコンディションで臨むのは大変だったと思います。

<バイレ・ソロ部門>
今回奨励賞として推したのは以下7名の方達です。(敬称略)
蓮真佐江:アセントもしっかりあり、切れも良く全体的にバランスの取れた踊り。
伊藤千紘:鍛えられた身体。振りを自分のものとし、サパテアードもリンピオでよくコントロールされた踊り。
古迫うらら:特にタラントパートが、内に秘めた思いを感じた。タンゴもメリハリがあり良かった。
佐藤陽美:ブレリアからシギリージャへの転換が上手く、構成も良かった。リンピオな踊り。
沖真悠子:前回より大きく上達。溜めもありすごく良かった。
藤本ゆかり:ギター無し!カンテ・パルマ・カホンで構成されたシギリージャ。この大胆な(!?)構成をこなし生かされた振付を踊り切った。
大塚歩:自然な流れの踊りで、サパテアードもリンピオ。コケティッシュさも加わり、観ていて気持ち良く引き込まれました。

次点でどうしても推したかったのが以下の方です。準奨励賞おめでとう!
阿部和子:以前にも増して、フラメンコのアイレたっぷりに自分のアレグリアスを踊っていたのが素晴らしい!また来年に期待しています。

【24日】
平川亜紀:独自のアイレがある。止まる時など重心の位置に注意。
脇川愛:準奨励賞おめでとう!良くコントロールされた踊りですが、あなたが何を伝えたいかもっと明確になると前進出来るのでは…。
谷口祐子:バタ・デ・コーラとマントンの扱いが美しい。ベジスコ不足が惜しい。
沖山美環:長身を生かしたのびやかな踊り。自分の中にあるものをもっと見つめ出してください。さらなる挑戦に期待!

【25日】
平田かつら:最後までテンションを保ち、静かな炎が感じられた。
川口美郁菜:踊り手としての資質豊かなので、それを生かし、ヌメロ(今回グアヒーラ)の持つ特徴をもっと表現して。
岡田知子:抑えの効いたフラメンカな踊り。
齋藤朋之:この1年のめざましい成長、上達を観させてもらった。立ち方、ブラソなどへの注意を。
牛田裕衣:丁寧な踊り、上体の固さ、身のふりが気になった。
大井昌子:無音での動きが印象的。2唄のレマーテが私にはちょっと不自然で流れを止めた様に感じた。
諸藤ふみ:フラメンコ大好きが伝わってきた。サパテアードもリンピオ。
草野干夫:キャリアを感じる踊り。マルカーヘの安定、ジャマーダに入る時の間をもっと大切に!
青木千鶴子:マルカーヘが素晴らしい。たゆまぬフラメンコへのレスペートを感じた。今回が今まで観た中で1番良かった。来年期待しています!

【26日】
石田久乃:素直な踊りで魅力的。体幹をもっと意識して。来年楽しみにしています。

<バイレ・群舞部門>
5組各々が異なった趣向、方向性で選考するのが難しかった。
斎藤克己フラメンコ アカデミー札幌:ソロンゴ・ヒターノからソレアへ。全体の構成は良かった。6人が各々、内にあるエネルギー、想いをもっと発して欲しかった。
Estudio El Patio:工夫がみられた構成、奨励賞おめでとう!踊り手のレベルが揃っていてバランスが取れた群舞。全員の気持ちの一体感があり良かった。
島崎リノフラメンコスタジオDaiDai:出だしに勢いがあり期待しました。フラメンカな振付を踊り手達が感じて踊っていた。後半ためらって踊っていたのが残念(カンテが長かった!?)。
“Hermicanas”~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松:若い時にしか持っていない清々しさ!テニクニック的にも、しっかりして良い雰囲気。パニュエロを使った振りは、私には懐かしかった。今ではかえって新鮮で最後まで大いに楽しませてもらいました。
Las Niñas de Belen:群舞としてのレベルは揃っていて高かった。フォーメーションにもう一工夫すれば、もっと良い作品になると。再挑戦してください!

今回全体の舞台(特にバイレ・ソロ)を観て感じたこと。
・全体のテクニック的レベルが高くなっているのは、ここ数年以上間違いない事です。私が大事に思っている事、心がけている事は、全体のバランスです。カンテを感じながらのマルカーヘ、リンピオなエスコビージャ、そしてリズム・テンポの転換、最後までテンションをキープする事です。これらの事を考えると、本当にフラメンコは奥深く、大変なことですね。
・今回かなりの出演者に、首の前傾、いわゆる「ストレートネック」「スマホ首」の方が多いのに驚きでした。それは今の流行なのでしょうか?
・ヌメロ、振付に合った衣裳選びをして、ファルダの扱い、マントンなど小物の使い方にもっと細心の注意をはらって欲しいと思いました。
・数年前から地方の出演者が増えてきました。彼ら達はカンテ、ギターとの合わせ等、色々大変だと思いますが、来年も期待しています。

市川惠子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
全体的なレベルは上がっていると思うが、技術、表現力、個性においても突出した方が少なくなかなか感動するまでには至らなかった。ある程度上手な方が多く、いいなと思う方は15人位いらしたので絞り込むのがとても難しかった。色々と考えた末に次の7人を選出した。

私が奨励賞に推薦したのは、
★渡辺なおみ:唄振りは静かで良いのだがもっと感じられるはず。アセントをもっと掴んで。エスコビージャからのテンション、マッチョの気迫は凄く良い。内から発するものに思わず引き込まれ目が離せなかった。
★野上裕美:奇をてらうところもなく、自然体の中で重みも気迫も感じられた。足もリンピオでマノも綺麗。込める力もうねりもあるフラメンコらしい良い踊り。思わずずっと見入っていた。素晴らしい成長に感動。
★岡田知子:身体もコンパスもしっかりしている。さり気ないが芯がある。抜けも素晴らしい。力んでいないがフラメンカ!スカッとしていて自然体だが上手い!バランスの取れた質感の良い踊り。
★佐藤陽美:身体は締まっていて足は凄い。繊細でモダンな難しい振りを良く踊り込んでいる。もう少し上体やブラソ、マノにうねり含みがあるともっと深みが増す。自然体の踊りからスカッとした大人の踊りに大変身。
★沖真悠子:登場から凄い!空気が一時もたるまない!2つ目の唄の始まりとても面白かった。女性としてのしなやかさもあり、込める力もある。足もリンピオ。洗練されて切れ味も良い素晴らしい踊り。
★藤本ゆかり:重みも増しアイレもあるが、足の時に上体が動くのが気になる。無音の振りも存在感で見せ、唄も静かに動かず凄く良い。長く挑戦し続けてきたその気迫に圧倒され、胸が詰まった。
★大塚歩:凄く上手い!振付がすっかり自分のものになっていて、全てがこなれている完成度の高い踊り。会場がどよめく存在感。ノリがよく、アイレもあり魅力的。終始目が離せなかった。

次点として推薦したのは、
★脇川愛:始まりからピシッと決まって印象的。切れ味も良く、パワフルで足もリンピオ。切り替えも良く、リズムも心地良い。タパオも素敵。全体的に表情もあって魅力的。最後も洒落ている。

時間オーバーで惜しかったのは、
※池田理恵:少し複雑だが素敵な振付を即興的に自由自在に踊りこなしている。上体も素晴らしく目が離せない。凄く上手いのだから、時間内でおさめて。

特に印象に残った方々は、
☆林由美子:意志を感じる表現力のある凛とした踊り。間合い、次への展開も良い。切れ味もあり空気感もある。少し押さえ気味のところも良く、最後も綺麗。
☆牛田裕衣:今までと違う印象、とてもしなやかで女性らしく美しい。いつもパワフル大なだけに少し物足りなくも感じたがピエもクリアでテンションも良く、タンゴからラストにかけて本領発揮で魅力的。
☆諸藤ふみ:凄く頑張っている。気迫に満ちたその踊りに目を見張った。オレ!個性を活かしていてとても良い。どこまで自分のものに出来るのか今後が楽しみ。
☆宗形公恵:こなれていて余裕がある踊り。面白い個性で見ていて楽しい。パワーも感じられ、コンパスも足もしっかりしているのだが、どこかピリッとした良い緊張感も欲しい。
☆古迫うらら:押さえ気味だがノリがあり、重みのあるアイレもある。身体も締まっていて込める力もコンパスの締めもあって良い踊りなのだが、今回は少しインパクトに欠けた。
☆鶴幸子:モダンでエレガンテで作品的な印象。奏でて始まる足も素敵。繊細だが切れ味も込める力もあり魅力的。引き込まれる。止めは強く。
☆稲垣栄子:思わず見てしまう良い踊りで好感が持てる。表情良く、唄ぶりもソレアらしく心に沁みた。勢いまかせでなく自然な流れで良かった。
☆岩丸綾子:良い唄に応えていた。込めた力がある。メリハリがあり、足の音もリンピオ、エスコビージャ後半にかけて特に良かった。少し肩に力が入っていたのか。でも熱いものを感じずっと見てしまう。
☆水町祐子:小柄な身体から発する全身から溢れるエネルギー、パワーが凄い!ピリッとした踊りで気合気迫を感じる。激しい思いは伝わるが、どこか溜めて。

次に印象に残った方々は、
◎畑中美里:個性的で不思議な魅力がある、時々面白い表現で印象に残る。動かない良さもありジャマーダは良いのだが足の音が聞こえにくく残念。
◎川田久美子:個性的な出で立ちで印象的だが始まりで膝が丸見えになるのが気になった。足も奏でていて切り替えも小気味良い。切れ味の良い、意志を感じられる踊り。
◎蓮真佐江:パワフルな始まり。肢体を活かした、テンションの高い踊り。身体は出来ている。エスコビージャが印象的だが抜けの表情も欲しい。
◎中溝直美:不思議なブラソで個性的。小柄だが存在感、気合も込める力もある。表情が険し過ぎるのが気になったがタンゴに何か良い味がある。
◎川端淳子:プーロな素敵な振り。女性らしく重みのある踊りで感じが良い。ギターと足の音もよく合っていたがブレリアの抜けをもっと強く。
◎沖山美環:シンプルな振りをクラシカルな衣裳で踊り好印象。少し単調に感じるのでもっとメリハリをつけて。ジャマーダは強く。今後に期待。
◎大井昌子:上手い。振りも良く、無音の印象的な始まりから唄も良い。マノも綺麗。身体も利いてアセントもある。足を打つ時肘を上げて。
◎伊藤千紘:切れ味あり空気が一時も揺るまない。マノブラソもゆったり、凄く良いのだがずっと同じ印象なのでもっと緩急をつけて。
◎青木千鶴子:年々フラメンコらしくなってきた。味も空気感も出てきた。美しいがソレアとしてのもう少し重みが欲しい。
◎菊原まり:身体も出来ていて込める力もある。始まりの足も強く、唄も良いし上手い。タンゴにうねりもあって良いのだが、足が多過ぎ。
◎有田ゆうき:ピリッとした緊張感と気合、熱さもあって上手い。身体が出来ていて振付も良い。音の取り方も良いが行きつくところが欲しい。
◎本多清見:静けさの中に込めた力があり、何か魅力的。唄の締めに足が入るのが気になった。ブレリアのマルカールが流れている。
◎平田かつら:品があり凛としたところのある踊り。整っていて、重量感もあるが後半バテたのか、マッチョにもっと惹き付ける何か頑張りがいる。
◎川口美郁菜:身体はよく利き力強い。バイオリンで作りこんであって可愛いく良い感じ。ブレリアに抜けるテクニック好き。
◎石田祐子:足は凄い。フラメンコとしての気迫もあって良いが、ブラソ、マノをもっと使って。足を打つ前に身体を整えて。上半身でも魅せて。
◎後藤悦子:モダンでフォルマの振りを良く踊っていて雰囲気もあるが、少し構成考えすぎでは?フラメンコとして惹き付けるもっと何かがいる。
◎阿部和子:コンパス力があり味がある。面白く楽しい。タパオから良い。アイレもあるが調子が一緒。止まりはもっと強く!でも応援したくなる。
◎石田久乃:素直で気持ちの良いアレグリアス、華がある。姿勢も良く足もリンピオ。子供ながら自分の意志で踊っている。抜けも良く素晴らしい。
◎橋本佳津枝:新人らしく、伸びやかで華やか。スカッと感じの良い踊り。優雅だが、足多過ぎるので静かなところも欲しい。もっとアセント捉えて。

今後に期待したい方々は、
●平川亜紀:アイレもありリズムも良く好感が持てる。ちゃんと踊っているが少し弱い。もっとメリハリを付けて。さり気ないところがあると良い。
●大里尚子:印象的な始まり。アレグリアスらしい雰囲気で明るく笑顔がかわいい。2つ目の唄はもっとパワフルに。エスコビージャにもう一工夫。
●谷口祐子:リブレの時のバタ、マントンは綺麗で良い。軽やかだが、バタを手で扱う所が多いのが気になる。本来のバタさばきをもっと見せて。
●持田賀津子:一生懸命さが伝わり、年々良くなって来た。立ち姿は綺麗で始まりも素敵。上体が動き過ぎで、タコンの音を出せるよう頑張って。
●大津絵里香:新人らしくかわいらしい。派手で艶やかな振付を楽しそうに伸びやかに踊るが大きく動き過ぎ。バタはもっと腰を入れて。肘も注意。
●鈴木旗江:とてもシックでエレガンテで全体的に良いのだが、身体を使いきれてないように感じる。最後は背中を使ってもっとそった方が良い。
●市村美穂:激しくて良い振りだが踊りこなすには難しそう。唄はもっと重みを。肘、足を打つ時の姿を意識して。ブレリアの入口の足は良かった。
●岡村志帆:印象的な始まり。2つ目の唄は応える気持ちと身体がいる。頑張っているが、どこか心に響くどーんとしたところがいる。絞りも大切。
●灘辺佳代子:絵画のような始まり。グアヒーラらしく明るくてにぎやか元気一杯で楽しそう。もう少し胸を上げて。
●山形志穂:よく頑張っているが振りが大げさで動き過ぎ。足はしっかり打っているが硬い踊り。もっと緩急をつけ強さが出せるように。
●坂本恵美:ちゃんと踊っているがもっと感情表現が必要。カーニャらしさとはをもっと考えて。唄も感じてラストをしっとりと。どこかに強さも。
●森永泉美:良く頑張って踊っていたが、全体的に寂しい感じ。振りの意味を考えて唄の終わりは締めて、アセントをしっかり、抜けも大切に。
●佐藤直美:メリハリのある振りを自分の意志で踊っている。楽しそうで晴れやか。初々しいアレグリアスらしい踊りで良かった。
●下山明子:バックととてもよく合っていて大人らしいソレアで良かった。身体の軸をしっかり、体重がどちらに乗っているのかを常に考えて。
●伊藤真由美:振りが懲りすぎ。もっと削ぎ落として。足はよく動いているのでぶれない上体を意識して。フラメンコとしての身体作りを頑張って。
●細川由香:しっかり踊っているがまだ身体の強さが足りず、軽く見える。唄は頑張っているが硬さもあり、気持ちを伝え切れていなくて残念。
●齋藤朋之:何か心に感じるものがある。味もあって個性的で面白いが、今回は動き過ぎ。肘が抜けている、足元も注意。姿勢ももっと意識して。
●池野美結:ブラソはやわらかくて良いが、振りが自分のものになっていない感が。作り過ぎで勢いがない。タンゴからは表情も出てきて良かった。
●稲沢静:一生懸命さは伝わるが全体の流れがつながっていない。肩に力が入り過ぎ。マントンはまだ拙い。肘と身体使いに注意。感情表現は大切。
●小山理絵:姿勢が気になったがしんみりとした良さもある。身体の芯がまだ出来ていない。盛り上がりに欠けるのでどこかに強さが欲しい。

今後の課題を頑張って欲しい方々は、
○宮崎美香:動かないのならそれなりの何かがいる。色々頑張っているのだが、バックとの一体感もしたいことが伝わってこなくて残念。
○橋田佳奈:必死なのは伝わるが、慌しく見え、マントン振りは色々しているが、感情が伝えられるようもっと唄を感じて。足の時の姿勢に注意。
○寺嶋いずみ:可愛いのでホッとする面も。唄を良く聴き、腰を入れて踊り、作り過ぎず流れをもっとわかりやすくすると良いのでは。
○波田多真紀:多少のずれも気にせずとても楽しそう。バイオリン付きのメロディをもっと感じて。エスコビージャの出だしは大切。
○流石泰美:フォルマの振りの形は感じるがもっと自分の意思が大切。色々がんばっているが、下を向いていると気弱に見え損。自分が楽しんで。
○櫻井美砂子:静かに踊るが、唄ぶり、抜けも良い。姿勢も良くむしろまじめ過ぎるので、もっと流れを感じて。訴えかけるものが何かいる。
○草野干夫:フラメンコとして大切にしているものを何か感じた。雰囲気がある。上の手をもっと高くあげて。今後は表現する為の身体作りを。
○小川千尋:気合は感じるが身体が上下しないよう腰を据えて。軸をしっかり。胸にも力を入れて、ブラソマノも使って。上体にねじりが欲しい。
○桒村洋子:一生懸命だが全てが流れて見える。姿勢に気をつけて。ブエルタは目線をつけ全ての振りにコンパスを感じ、マノもブラソも頑張って。
○森加寿子:ちゃんと踊っているが硬く見えるのでうねりねばりが欲しい。マノもブエルタも頑張っているがジャマーダは強く、足はしっかりと。
○藪内恵利子:優雅さもあるが不確か。色々な振りをしているが、マルカールが流れ気味。説得力に欠けるので身体作りを。ブラソマノを使って。
○小野栄子:最後はスカッとしていたが振りが多すぎて効果的でない。唄も足もアセントを掴んで。マルカールはノリが大切。ブラソは頑張って。
○清水和美:時々良い表情をする。何か味はあるが、まだ身体が全然使えていない。マノブラソ肘が抜けているが、抜けに気合があった。

<バイレ・群舞部門>
それぞれのグループに個性を感じ、一丸となって取り組んできた気持ちが凄く伝わったが、これという決め手に欠けたので奨励賞の選出を控えました。

●斎藤克己フラメンコ・アカデミー札幌:女性ならではの美しさを知った上での振付。何とも品があってドラマチックで最後も美しい。綺麗に揃っていたが、1人ずつのところがあまり効果的ではなかった。
●Estudio El Patio:椅子の上での振りもシンプルで良かった。素晴らしく揃っていて、1人ずつのところも面白く見ていて飽きなかったが、もう少し重みうねりが欲しい。
●島崎リノフラメンコスタジオDaiDai:1人1人がフラメンカ。表情も良く、熱いものが伝わってきて、見ていて面白かった。途中、唄でバラバラとなってしまったのは、本当に残念!
●Hermicanas~姉妹~:元気いっぱいで子供らしさ全開のパワーで、表情も踊りもとても可愛く好感が持てたが、マノ、ブラソも頑張って欲しい。
●Las Niñas de Belen:振りも良くソレアらしい踊り。少し懲り過ぎ動き過ぎだが構成も凄い。踊りはまだ拙いところもあるが皆の気持ちが一丸となって何か伝わってきた。(期待を込め次点として推薦した)

本当に人を感動させるのは難しい。年々振りも複雑になってきているが思いを伝える為にもフラメンコとしての身体作りは重要。やはり自分の感情を一番大切に。もっとフラメンコとして迫ってくるもの、心に響く感じさせるもの、何か熱いものをもっと見せて欲しい。そして女性らしい情感を大切に。マノブラソの美しさをもっと表現して欲しい、と今年も思った。フラメンコに近道はありません。時間の掛かるもの。自分の信じるフラメンコといつも真摯な気持ちで向き合い自分だけの踊りを見つけていってください。

EL・POKA岡崎(舞踊家)[Bs,Bg]

今年も一生懸命観させて頂きました。皆さん、お疲れ様!

藤本ゆかりさん、見事でした。坂本恵美さん、バックとの一体感が素晴らしかった。沖真悠子さん、全てを身につけている、身体能力の高い人。谷口祐子さん、踊りを自分の物にして、楽しんでいるところに惹かれました。川口美郁菜さん、クラシックが体に入っていて、その上、フラメンコを楽しんでいるところ、好きです。山形志穂さん、流石に隙無し、楽しく鑑賞しました。鈴木旗江さん、実力を身につけていて、自分の踊りにしていました。すごい!野上裕美さん、キレがあり、気力もあり、バックとも融合していました。牛田裕衣さん、ブエルタの切れが気になりましたが、この次を楽しみに待っています。脇川愛さん、しっかりと勉強していて、度胸もあり、気迫も充分、唄とのからみも良く、シンギターラを楽しんでいる姿にも、心を打たれました。ありがとう!細川由香さん、リズム感もよく、臆することなく、ソレアになっていました。拍手!佐藤陽美さん、度胸があり、動から静、急止等うまく踊っていましたね!岩丸綾子さん、全体的にバランス良く勉強されている、楽しみな方です。水町祐子さん、リズム感もあり、気力も充分!身体作りにも努力してください。楽しみに待っています。石田祐子さん、出が少し軽すぎたかな?リズム感も抜群だし、また能力に合わせた振付がとても気持ちよく感じました。

中溝直美さん、菊原まりさん、有田ゆうきさん、齋藤朋之さん、諸藤ふみさん、皆さんに共通して感じることは、フラメンコを深く愛し、楽しんでいる大人の踊り、サパテもしっかりしているし、気力も充分!バックともかみ合っていて、観ていて気分が良かった。

最後に灘辺佳代子さん、持田賀津子さん、君達は確実に成長しています。道は近くて遠いけど、必ず登り切って、幸せを掴みきってください!待っています!

追伸:ここに掲載出来なかった出場者の方々の資料も残してあるので、もし少しでもお役に立つのなら、遠慮なくお知らせください!必ず返信致します。

東仲一矩(舞踊家)[Bs,C]

<バイレ・ソロ部門>
出演者の皆様、御苦労様でした。奨励賞を受賞された方から順に私見を記します。

「渡辺なおみ」さん
完成度の高い踊りで、それでもなお踊り込んでいると思われ、何より安定感が素晴らしいものでした。
「野上裕美」さん
素晴らしいソレアでした。テクニックもしかり、舞曲の中に肉体を同調させながら自己の色、においをかもしだされていました。
「佐藤陽美」さん
シギリージャをブレリア取りする傾向がある中で、その違いを表現されました。
「沖真悠子」さん
完成度高く、ピエのペソ、ブラソ等を通して自己の踊りにしてなおかつ、この舞曲の内面までを表現されていたと思います。
「藤本ゆかり」さん
創作作品として完成されたものでした。テクニックと身体表現のアンサンブルは見事でした。
「大塚歩」さん
素晴らしいアレグリアスでした。自身に裏付けされた感じを久々にもらえました。舞曲の持つ意味を自分のものとして表現されていました。

残念ながら賞にもれた方々で私の気になった人を列記します。
「谷口祐子」さん、「沖山美環」さん、「古迫うらら」さん、「鶴幸子」さん、「阿部和子」さん、「諸藤ふみ」さん、以上の方々に感動をいただけました。

<カンテ部門>
「小林カルメン」さん
ネイティブなスペイン語で自然に聞こえました。
「占部智恵」さん
ファンダンゴは私は一番難しいものと思っています。心地良く聞けました。

惜しくも入選されなかった方の中で頑張ってほしい方は、「渡橋美穂」さん、「近藤リナ」さん、「永井正由美」さん、「大西保孝」さん。今後に期待しています。

ロシオ・ロメロ(舞踊家)[C]

今年は何人かの出演者に驚かされました。かなり進歩していたし、とてもよく勉強を積んでいるのが明らかだったからです。私がいつも言いつづけていることですが、カンテを深く知っている良い師を選ぶことが大切です。奨励賞は出ませんでしたが、準奨励賞を受賞された方々を祝福したいと思います。渡辺都美さんのソレア・デ・トリアーナ/アルファレーラ/アポラーには本当に驚かされました。そして小林カルメンさんは、そのアレグリアスのアイレでホールをいっぱいにしました。彼女には大いなる未来があります。皆さんのアフィシオンに心から感謝します。

ディエゴ・ゴメス(カンタオール)[C]

今年も「フラメンコ・ルネサンス21」全参加者の皆さんに、ありがとうと言いたいです。受賞された小林カルメンさん、占部智恵さん、おめでとう。その他3人の方(渡辺都美さん、斎藤克己さん、山本淳子さん)はすばらしいレベルに達していました。本当に満足です!自分にとっても1か月にわたる大仕事でした。でもとても楽しく、実りある日々でした。改めてもう一度、皆さんにありがとう!

菊地裕子(評論ライター)[Bs,Bg]

今年の新人公演のバイレ部門も、多彩な出場者それぞれの全力投球が心地よかった。初めての方のフレッシュな踊り、何度も挑戦している方の練り込んだ踊り、キャリアを積んだ方の芯の通った踊りなどを見るにつけ、日本のフラメンコの進化・深化も感じられ、大変な酷暑の中だったにも関わらず、いつにも増して実に楽しく拝見できた。
個々の講評には書いていないが、全体で気になったことを2つ。スマホ首なのか、頭を前に落として踊る人が目についたことと、ファルダの扱いが雑な人が多かったこと。頭を前に落とした姿勢は美しく見えないし、振付の説得性を削いでしまう。特にブエルタの場面はマイナスになる。また、どんなに美しく踊っても、ファルダの扱い方が汚いと興ざめだ。踊り手として損になる。どちらも努力で直せるので、ぜひとも気に留めていただきたいと思う。
ともあれ、一つひとつのステージに各自の精進のあとが感じられ、渾身の踊りには沢山の感動と勇気をいただいた。フラメンコって凄い!好きになるって凄い!と、あらためて思わされたステージも多数あった。さらに言えば、私自身、バイレが大好きなんだと再発見した3日間でもあった。伴奏者も含め、出場された全ての方々に感謝です。
以下は、いつものように印象に残った出場者のメモから。
(◎=高評価、○=評価、△=今後に期待/★=奨励賞に推薦)

<バイレ・ソロ部門>
【24日】
△宮崎美香/シギリージャ。ブラソが美しく、身体の使い方が上手い。しなやかさは良いけれども、ギュッと凝縮されたものが感じられない。足音をもっと聞かせられるように精進して。
○平川亜紀/バンベーラ。エネルギーの持って行き方がとてもフラメンカ。湧き出る感じがして、心地よい。ただ全体に一本調子になり過ぎた。今のあなたで、違う曲種を見てみたい。
○大里尚子/アレグリアス。唄振りがなかなかユニークで興味をひかれた。単なるニコニコアレグリアスとは全然違う。ただ、独自性を追求するなら、そこをもっともっと!と、私は勝手に思います。
△畑中美里/ソレア。序盤はとても良かった。けれども、何が間違っているわけでもなく、中だるみしてしまった感。体力的なことか、構成の甘さか。頑張れ!
○林由美子/ソレア。佳い感じ。自分の中にソレアのイメージがくっきりとあると思わせる。惜しむらくは、ペソが足りない。あともう少し。どしっと動かない感覚。いや、動けない感覚をぜひ。
△川田久美子/アレグリアス。見せ方は上手で、達者な踊りに見えるのに、中だるみしてしまった。
中だるみの原因は色々あるだろうが、とにかく深く呼吸して、あなたの中から出るものを大事に踊ることを推奨します。踊るってことは舞台で生きるってことだからね。
○脇川愛/タンゴ・デ・マラガ。コンパス感が良い感じ。良い踊り手だということはわかる。でも何だろう、踊りが記号化しているみたいで、心が騒がないのだ。あなたの感情は動いていますか?
○谷口祐子/アレグリアス。マントンの扱い方は優雅に映ったけれども、バタ・デ・コーラのさばきに今ひとつ品がない。上手い踊り手だと思っているが故に残念。精進しかない!
○中溝直美/ティエント。全部フラメンコの美味しいところでできている踊り。カンテとの一体感、あふれ出るアフィシオン。ああ大好き!しかし、あにはからんや、素晴らしい緊張感は7分半保たなかった!実に残念。体力つけて、また出るべし。私はあなたを待っています!
○渡辺なおみ/シギリージャ。身体がとても良く動く人で、技術もあるし、表現力もあるけど、いかんせん、シギリージャに見えない。カンテを受け止めていたら、そんなふうに踊れるかな。高度な要求ではありますが、私はこれはフラメンコの根幹に関わる問題だと思っているので。「踊り難きを踊る」という心の向きが大事ではないかな。ご一考願います。
◎鈴木旗江/ソレア。自身の中が充実している感じが凄く良い。シンプルな振付ではあるけれども、どれだけ自分のものになっているかが良くわかる。身体を良くコントロールできていて緩急もあり、人と違う自分が表現できていた。でもあと一歩、あなたをガシッと刻印する何かを、私は求めたい。舞台に立つ人の勝負はここからです。
△沖山美環/アレグリアス。最初は固かったが、途中から天真爛漫な持ち味(?)が出て、心地よい踊りに。まだ踊り全体を自身でコントロールできていない感はあるが、素地の良さが踊りに出るのは買い。もっと大きな踊りができるはず。

【25日】
◎牛田裕衣/タラント。サリーダから華やかで、舞踊度がとても高い。目を引く踊り。ただ、タラントって、踊りの技術を見せるために選ばれる可能性が高いのか、皆、詰め込みすぎる感がある。思うに何の曲種だろうと、全てのパソは自身の中から湧き出てこなくては意味がない。なぜそう踊るのか、そう動くのか、動けない時もあるでしょうに、それも踊りでしょうに、と。
△市村美穂/ソレア。破綻なく一通り踊れているけれど、まだ不安定。唄振りは影のよう。エスコビージャの時には生き生きしているのに、カホンで足音が聞えないという謎。もっと踊り込んで、自身が何を踊りたいか深掘りを。
◎大井昌子★/シギリージャ。とてもスタイリッシュなパソを高いレベルでこなしていた。機械的になりそうなところも血が通っている感じで、私は好きでした。あとはもっとあなたを見せることかな。お馬鹿なところも黒いところも全部開いて、えいっ!と踊ってほしい。
◎池田理恵/アレグリアス。時間オーバーで奨励賞対象にはならなかったけど、伸びやかで表現力に富んだアレグリアスだった。身体のコントロールも利いていて、感性も良い踊り手だと思うが、作品としては破綻が無さ過ぎて面白みに欠ける。受け身に終始しているせいか。勇気を!
△岡村志帆/ソレア。パソのアセント感が半端ない。フラメンコをこのように理解していますというように踊るので、本当に面白い。ただ全体として繋がっておらず、雑なことろも散見されるので、そこは精進しつつ、芯のところはこのまんま成長していただきたい。
◎伊藤千紘★/ソレア・ポル・ブレリア。もうびっくり!非の打ち所がないとはこのことだという、ソレア・ポル・ブレリア。火の玉のようであるかと思えば、エレガントな面を見せたり、そしてすこぶる楽しいコンパス感。それら全てに無理が感じられず、素直で美しい。フラメンコ娘じゃ!あとはあなたの印が出てくれば鬼に金棒でしょう。いや〜奨励賞取らなくて良かった、また見られる!と、密かに思ったよ、ごめん。
○諸藤ふみ/ソレア。ふくよかな身体を生かして、自分の好きなフラメンコをやっています!という意気は買い。さらに、技術的にもレベルが高い。問題は表現のありようだ。自分で感じている以上のことをやっている。いや、感じる前にやってしまっている。客は敏感だ。段取りはすぐにばれる。動きの密度を上げていかないと、予定調和の大げさな踊りと客が感じたら終わりです。感性を磨いて、何をやって良いかいけないか、その感性に聞くこと。期待しています!
○灘辺佳代子/グアヒーラ。うーん素敵!今まで見たこともないような素直で爽やかなグアヒーラに、心底驚いた。自分の世界を貫いて、最後まで美しかったが、展開にあと少し意外性が欲しかった。また出てー!
○青木千鶴子/ソレア。出るたびに上手くなっている人だが、今回は格段にレベルアップした。あとはコラへをもっと。丁寧に踊っていても、全体にそつのない踊りと見えてしまう。頑張れ。
○坂本恵美/カーニャ。小気味良いマントンさばき。振付を自分のものにしている感じで、非常にあでやか。あと一歩、これでもかというこだわりを見せてくれれば。
△菊原まり/タラント。そこそこ上手に踊れているが、全体に同じトーンで続いてメリハリがない。踊りの輪郭がぼやけた感じになっている。ここぞというところをぜひ。
△佐藤直美/アレグリアス。踊る喜びを身体いっぱいで表現して、思い切りも良いが、まだ踊りが全体に流れてしまう。マルカール、コンパス感、所作をもっとブラッシュアップすること。
△有田ゆうき/ソレア。良く踊れていて、気合いも○。でも、まだ踊りに厳しさが足りない。もっと足音を磨き、動きの緩急も研究して。
○野上裕美/ソレア。密度のある大きな踊りで非常に良い。だが、全体に同じように力が入っていて、焦点がぼやけた。何を感じて、何を伝えたいのか、ここからの深掘りを。
○本多清見/ソレア。抑えの利いた踊り。手数こそ少ないものの、表現は鋭く、鮮やかな印象があって、非常に良い。欲を言えば、もっとペソを。そしてあなたらしいインパクトを。
△平田かつら/シギリージャ。ゴージャスな雰囲気があり、よく踊れている。でもエスコビージャがまだまだ。そこを精査しないと、シギリージャの魅力は伝わらないのでは。
△川口美郁菜/グアヒーラ。雰囲気はあるものの、全体に一本調子で、漫然と踊っている感じ。グアヒーラの魅力は何?どこが好き?そこをきっちり踊りで彫っていって。
○宗形公恵/アレグリアス。キュッとして面白い個性。唄振りはややコミカルに、シレンシオは優雅にと、その落差が良かった。このやり方なら、さらに技術を磨いて欲しい。深い踊りも見たい。
◎岡田知子/ソレア・ポル・ブレリア。堂々と落ち着いた踊りで好印象。エスコビージャの足音が美しい。ただ全体におとなしい印象で終わったのが残念。持ち味を際立たせる工夫を。
△石田祐子/シギリージャ。フラメンコを自分なりにしっかり捉えていて、パソにも凄みは感じられるが、まだ身体に時折ゆるみが見えるのが気になる。頑張れ頑張れ!
○後藤悦子/バンベーラ。身体もできていて、技術も高いし、表現力もある。上手い踊り手だと思うのに、衣装が踊りや本人に全くのミスマッチで、踊りの内容に集中できなかった。残念。

【26日】
△鶴幸子/ティエント。モダンな振付を自分のものとして踊っているが、全体に彫りが甘い。もっと鋭さが欲しい。あと、もっと深い集中力を身につけて。
◎佐藤陽美★/ブレリア・イ・シギリージャ。幕開きのスポットの中でのブレリアは目が醒めるようだった。身体のコントロールが利いていて、スタイリッシュな振付が全て美しい。オレ!
◎阿部和子★/アレグリアス。私の希望の星が、すこぶる腕を上げて登場。何というグラシア。アイレたっぷりで、大好きな振付を心から楽しんで踊っている印象。「見させられている」感が全くない、フラメンコらしいフラメンコ。毎日見たい!
△池野美結/タラント。かなり表現力を必要とする振付だが、まだこなしている段階なのか、全体にエネルギーが小さく、クエルポの表現もエスコビージャも説得力に欠けた。色々頑張れー!
◎稲垣栄子/ソレア。良くコントロールされた演目で、素晴らしい安定感だった。佳き踊り手なり。問題は展開に目新しさがないところか。フラメンコにはドキドキわくわくも必要かと。
○岩丸綾子/ソレア。唄と良く呼応した踊りで、前半はとても良かった。しかし体力がもたなかったのか、中だるみして、ブレリアではエネルギーが不足気味となった。才能は感じるので、まず体力を養って欲しい!
△小山理絵/ティエント。唄振りはまずまず良かったが、エスコビージャの見せ方が地味。観客が飽きてはいけない。あと、もっと身体の中から動きが湧き出るようにして欲しい。ペソ!
◎沖真悠子★/シギリージャ。大きな劇場だというのに、空間の支配力が凄い。身体のコントロールが良く効いていて、訴えかける力が半端ない。劇場が良く似合う、ザ・踊り手だ。楽しみ!
△水町祐子/シギリージャ。小柄だが、強さも鋭さもペソもある。良い感じだったが、後半、集中力に欠けた。フィギュアスケートで後半に4回転が入ると拍手喝采になるのと同じで、最後のあと一踏ん張りも観客は見たいのです。
◎藤本ゆかり★/マルティネーテ。何度も出場してきたあなたの今回の成長ぶりは本当に凄かった。大作を思わせる構成に果敢に挑戦し、魅せることができたことは賞讃に値する。心からオレ!
△石田久乃/アレグリアス。技術的にはまだこれからだけど、とても伸びやかで無理がない。オーソドックスな振付が逆に新鮮に見え、多くの可能性を感じさせた。まだ10代だとか。期待大!
◎大塚歩★/アレグリアス。良く動く身体にコンパスが息づいていて、なんと楽しいこと!難しいことを軽々とこなしているように見せるハイレベルな踊りで、思わずニヤニヤしてしまった。3日間の大トリに最高のアレグリアスをありがとう!

<バイレ・群舞部門>
○斎藤克己フラメンコアカデミー札幌/グラナダ狂詩曲~Rhapsody~。幕開きの美しさは今回の群舞で随一。その後も飽きさせないフォーメーション展開の素晴らしさ、ステージングの見事さには唸った。ただ舞踊のフラメンコ性が足りないため、私には美しい以上の感興が湧かない。群舞としてのフラメンコというところを、もっとやって欲しい。
◎Estudio El Patio/シギリージャ。非常に厳しさに満ちた、真摯な群舞。惜しむらくは、よくよく練習されたフォーメーション展開が、いかんせん印象としては平板で、予想を裏切るものがなかったこと。これ、大事なことだと思うので、書いておきます。舞台を海に浮かぶ平らな氷山に例えると、全体に均等の重さがあって初めて平衡が保たれるが、それは個々が等間隔に同じようなエネルギーで立つことだけを意味しない。上手と下手(客席から見て舞台の右側と左側)に、例えば2対4で立ったとしても、2により強いエネルギーがあれば、見る側の印象として氷山は平衡を保つし、また、時には平衡が崩れそうになることも観客の心をひくという側面がある。ステージングは、単にバランスだけでなく、そういうエネルギーの動きや変化をベースに考えると、もっと伝えたいことが伝わるはず。期待しています!
○島崎リノフラメンコスタジオDaiDai/ロマンセ。沢山の村娘が、皆、生き生きと踊っている感じで、非常に好感度大のステージ。ただただ楽しんで見ていられると思ったら、カンテとのズレが出て、流れが一瞬止まった。残念なことではあったが、スペイン人カンタオールの場合はありがちなことなので、こういう時にどうするかを今後の課題として取り組むのも有りかと。劇場型の群舞だと、おおかたはきっちり決めていくが(照明のきっかけもあるからね)、多少の即興性を盛り込むことが出来たら、そっちの方が格好良いなと、私なんかは思います。
○Hermicanas~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松/タンギージョ・デ・カイ。10代の姉妹らしいが、何とも息ぴったりで愛らしい。懐かしい振付が、こんなにも素直に生き生きと踊られることに嬉しくなった。カディス好きにはたまりません。これからの期待も大!
◎Las Niñas de Belen★/ソレア。曲調を良く捉えたフォーメーション展開が素晴らしく、また、4人の身体にそれがよく染み付いていることが一体感となって伝わってきた。今回も群舞は、様々な方向性の作品があって、正直、点数など付け難いのだけど、このソレアは今回の群舞部門で最もフラメンコ性を感じ、劇場型の群舞としても成功していると思った。奨励賞は惜しくも逃したが、ベレンの皆さんには、またぜひ出場していただきたいな。

瀬田 彰(ギタリスト)[G]

今回私は奨励賞に福嶋さんを推しました。以下、出演順に印象を述べます。(敬称略)

1番・磯谷(ソレア):
伝統的なスタイルのソレア。安定感がある演奏で良かった。但し、右手のタッチが強すぎてノイズ的な音になった箇所が随所にあり残念。一般論だがソロ曲を弾く場合、テクニック面で見るとアルペジオ、プルガール、トレモロなど音量の平均化が出来ることが必須条件。その上でコンパスなりのアクセントを適度に乗せることが良い演奏。過度にアクセントを優先させると凸凹の演奏になってしまう。

2番・大場(ブレリア):
E/Fのブレリア。初頭部分はソレアのファルセータをそのままブレリアのコンパスに移し替えたもの。アイデアは良いがあまりにも長く使いすぎるとフラストレーションが貯まり、ブレリア風では無くなってしまう。ポル・アリーバの雰囲気は良いが、演奏面での音の粒立ちが悪かった。

3番・鈴木(ソレア):
伝統的なスタイルのソレア。丁寧な演奏だが不完全燃焼的な演奏に聞こえた。ソレアの演奏で核となるプルガール奏法の音の通りが悪い。もっとリンピオ(鮮明)な音を求めて欲しい。

4番・福嶋(ブレリア):
伝統的スタイルのブレリア。シギリージャ風なアイレを持った前奏に始まり、最後までブレリアの緊張感を持続させた演奏が良かった。曲中、古風なヘレス風のファルセータも織り交ぜとても良い雰囲気を出していた。

5番・内山(アレグリアス):
リブレで始まるA調のアレグリアス。とても綺麗でテンションがあり心地よい曲作りだが、アルペジオのファルセータなどに音斑があり、はっきり聞こえなかったのが残念。

池田瑞臣(現代舞踊協会)[Bg]

群舞は5作品、私なりの直感的感想をのべさせて頂きます。

①斎藤克己フラメンコ アカデミー札幌「グラナダ狂詩曲」
優雅な作品。幽遠な叙情詩に触れたようで魅かれたが、ともすると起伏か単調。どこか瞬間的でも、心の叫びのような変容が飛び出していたらと思いました。

②Estudio El Patio「シギリージャ」
椅子に並ぶ6名の意気込み。まさに威力的な総力が見える。この力関係を最後までどう持ち堪えられるかとの危惧があったが、動きや構成配分の流れが生かされ、内容が盛り上げられていた。

③島崎リノ フラメンコスタジオ DaiDai「ロマンセ」
純粋な存在感にほほ笑みを感じた。各々の発言の交流も自然体のようで好感だったが、ふと呼吸の乱れの場面があった。かすかだったが動きの戸惑いが、踊りをせばめた感覚を感じた。残念です。

④“Hermicanas”~姉妹~大塚友美フラメンコスタジオ浜松「タンギージョ デ カディス」
華やかで楽しい。舞台を自由闊達に振り舞う明るさ。積極的な表現だったがもっと深さが欲しい。「間」の面白さにも挑戦してみてはと期待しています。

⑤Las Niñas de Belen「ソレア」
変化の続く舞踊構成は、いつの間にか舞台空間を広げて見せていた。踊るそれぞれの目線にも心に通じる語りがあって作品を大きくしていた。快い余韻を受けた。

川上茂信(東京フラメンコクラブ)[C]

今回、東京フラメンコ倶楽部のメンバーとして選考に参加させていただきました。アフィシオナードとしての発言が期待されていると理解して、書きます。印象論的で具体性に欠けるところが多くなるかと思いますが、素人の感想ですのでご容赦ください。
まず、ほとんどの人について、ここを直せばもっと良くなると思ったのがスペイン語の発音です。残念ながら、歌詞が聞き取りにくい人が大勢いました(私が知っている歌詞だと気づくのに2行かかったり)。最低限、個々の音、u や rr をきちんと出すことは心がけましょう(u について言えば、tú は案外難しいですし、特に cuando とか muerte のように後に母音が続くときに怠けないようにしましょう)。もちろん発音を良くしようと思ったら、これで終わりということはないですし、完璧(ネイティブ)な発音を身につけなければいけないわけでもありませんが、カンテが歌である限りは歌詞があり、歌詞には意味があるので、それを表現する努力はして欲しいと思います。そして、テレモートのように何言っているのか分からないけど凄い、というカンタオールはいますが、それは別のレベルの話です。

発音に関して、もう1つだけ言っておきます。それは、単語あるいはフレーズのアクセントに気をつけて欲しいということです。これも、多くの人ができていない点です。アクセントは、コンパスの強拍に当たるとは限りませんし、長く高く歌われるわけでもありません。むしろ、その複雑な関係が面白いのですが、言葉のアクセントがつかないと、のっぺらぼうなカンテになってしまいます。そこに無理に表情をつけようとすると日本語的な、あるいは演歌的な踏ん張りが出て来てしまう。仲間内で歌うのなら、それも個性として面白く聞けるのでしょうが、大ホールで聞くには、やはり居心地が良くありません。ちなみに、スペインのプロのカンタオール・カンタオーラが歌っても、言葉のアクセントがずれることは皆無ではないようですが、これもレベルの違う話です。

以前と比べると、ポップス的な声は減った印象で、不思議なメロディーも少なかったと思います。フラメンコ的な音運びを身に付けるためには、やはり沢山のカンテを聞いてシステムに慣れることが重要です。自由に歌ってしかも通るべき音を外さないというレベルを目指して精進を続けてください。

ところで、歌い始める前のギター部分が随分短い例が散見されました。制限時間内に収めるための苦渋の選択だったのかもしれませんが、良い効果は得られませんでした。ギターが上手くお膳立てをしてくれれば歌い手は随分楽になるでしょうし、聞く側にとっても、そのカンテの世界に入るための準備が欲しいところです。また、歌い手の力量が足りない場合は致し方ないのかもしれませんが、ファルセータが主役のように感じられた例が1・2ありました。これは伴奏の失敗と言って良いでしょう。

全体的な印象はこんなところですが、占部智恵さんのファンダンゴが自然な声と全体の構成感の点で良かったと思います。ファンダンゴは語り物の要素が強いですから、言葉が生きてくると更に良くなるでしょう。また、ギターのファルセータが終わって一呼吸入れてから歌い始める「1拍休み」感がワンパターンなので、その辺りは研究の余地があります。もう1人、小松美保さんのマラゲーニャは、メジーソでもチャコンでもなく、トリーニのスタイルをきちんと歌おうとしていた点が良かったです。トリーニのマラゲーニャは最近取り上げられる機会が増えているようですが、じっくり取り組む価値のあるスタイルですから、ぜひ深めていって下さい。声は多少震えるところがありましたが、自然に出ていたと思います。小林カルメンさんのアレグリアスは、当然とは言えネイティブな響きで、技術的にも安定していたと思いますが、何と言ったらいいか、カンテが流れ気味で、フレージングに違和感を覚える部分が少しありました。敢えて推薦しませんでしたが、これから伸びる余地がまだまだあると感じました。

pagetop