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第24回新人公演「フラメンコ・ルネサンス21」

日本フラメンコ協会第21回新人公演「選考委員講評」

選考委員(名前から各講評へリンク)

濱田滋郎(評論家・会長)[G,C]

第24回の「新人公演」も、まずは支障なく、成果を伴って終わることができました。出演者の皆さん、客席を埋められた方がた、選考委員の方がた、今回も親切を頂いた会場関係者の方がた、そしてあらゆる「裏方」の方がたに、統括責任者として深く感謝申し上げます。

今回も、幸いなことに高いレベルを保った3日間を、駆けつけられた参会者の皆様に観聴きして頂けたと思います。私は統括的な役目を果たす関係上バイレ部門の選考にはたずさわっておりませんが、終始、つぶさに見守ることができました。奨励賞を贈られた方がたをはじめ見ごたえのある踊りが多く嬉しく思いましたが、また、同時に次のような感想を抱いたのも事実です。今回に限らずここ数年を通じてなのですが、出場者たちの踊りはどこか小ぢんまりとまとまりすぎてはいないでしょうか。教わった振付けを、破綻なくソツなくこなし、的確な踊りを見せることに専念する、そういう人がほとんどのように思えるのです。もっと大胆に、時には奔放に、“自分らしさ”を打ち出してこそ、フラメンコなのではないでしょうか。もしかして、出場者たちのあいだに、ひとつの誤解があるのかもしれません。もしも大胆に個性を発揮した踊りをして、どこか破綻が生じたなら、それが減点となり、奨励賞の対象から外されてしまうのではないか、と。そんなことはない、と私ははっきり申します。フラメンコらしさで選考委員たちに深い印象を与え得たなら、たとえ多少のほころびがあったとて、その踊りは必ず奨励賞の対象となるでしょう。なぜなら、そうした真の個性の持主をこそ、私たちは待ち望んでいるからです。ぜひ、上のことをご一考ください。何はともあれ、今回立派なステージで奨励賞を贈られたバイレ・ソロの6名の方がた、そして群舞のひと組に、改めて拍手を贈ります。

ギター部門は8名とやや少なめでしたが、いずれ劣らぬ演奏で聴き甲斐がありました。奨励賞の木村尭さんはテクニックの高さに加えて曲想を見事に組立て、起承転結のある快適なソロを披露していましたから、受賞は当然と思います。ただ、私個人が最も感銘を受けたのは、最初に弾かれた森谷忍さんの演奏でした。年配の方ですが、さすがは年季というか、ギターから引き出す音色になんとも言えぬ味があり、後段のトレモロの美しさに聴かれたように、テクニックもしっかりと身についています。けっして当世流ではありませんが、自分の好きな、自分のめざすフラメンコをしっかりとつかんで、充分に、弦に心を乗せていました。選考委員、他の理事たちからも森谷さんの「味わい」に賛同の意を表する者が多く「話題賞」となりましたが、敢えて言わせて頂けば、森谷さんには「会長特別賞」を特例として贈りたい、という気がしています。

カンテ部門は15名と多く、それぞれに気を吐いていましたが、結局、奨励賞を見送りとなり、1名の方(山田ナオリさん)が準奨励賞を得るにとどまりました。皆さんよく精進され熱意をこめて歌われたことは分かるのですが、例年言われるとおり、どうしてもスペイン語をよく身につけてレトラ(歌詞)を“語る”境地にまでは至らない人がほとんどなのです。言葉なくして歌は成立たないのですから、カンテを志すならば、どうか日夜、スペイン語(アンダルシア語)を血肉とする修業に励んでください。ハードルを高く設けるようですが、ぜひこれを越えて頂きたいと思います。

小島章司(舞踊家・理事長)[Bs,Bg,G,C]

第24回Flamenco Renaissance21、真夏の濃密な3日間が過ぎゆき、安堵すると共に名残惜しい念にかられてもいます。今後増々研究を重ねて下さるよう祈念いたします。
以下、出演者の真摯に立ち向かった舞台についての所見を述べてみます。(出演者の敬称は略させて頂きました。)

【21日(金)】
2.近藤綾香:前半ゆっくりしたテンポのレトラに踊りの速さが耐え切れていないようでした。ZAPATEOも、もう少しパワーアップしたら一段階進めると思いました。
3.佐藤哲平:上半身の動きが美しさを放っていました。ピルエットやブエルタの時、もう少し筋肉を持ち上げる力を身につけるともっと良くなると思います。
7.福島沙弓:官能を揺さぶる舞踊でした。ダンスの変化と多様性が表現出来ていました。
9.大野 環:前半マントンとの一体感がもう少し深まればと感じました。スピード感溢れる秀逸なバイレでした。
10.内田好美:身体能力の高さが発揮され、伸縮の自在さが美を生み出していました。
13.佐渡靖子:振付全体のバランスが優れていました。マントン、バータの扱いが上手くシンクロして、最後の静止が美しかった。
19.屋良有子フラメンコ教室:最初から最後まで良く熟考されたmontaje、観客の目をくぎ付けにするダンスの豊潤さを感じさせました。

【22日(土)】
1.森谷 忍:澄んだ一音一音が輝きを放ち、人間の創造力の奥深さが伝わりました。
8.木村 尭:常套的手法だとは思いましたが、〈確かさ〉が魅力を増幅し、全体のバランスを良くしていました。
10.牛田裕衣:落ち着きと安定感が素晴らしい。時にpellizcarする瞬間が光ります。
11.山中純子:演出力が光り、練習の軌跡が見出せました。Palillosの響きがギターやパルマスの音にかき消される時が有り少し残念でした。引込みの最後の1コンパスの静寂は心に響きました。
12.土井わかな:豊かな雰囲気を漂わせるバイレでした。どっしり感と安定感を醸しだして魅力が増幅。
13.小林成江:上半身と下半身の動きがバランス良くシンクロし、踊りを成功へと導いていた。抜群の安定感が光りました。
15.渡辺なおみ:舞台を目一杯使い切る…と言うことではなく、動きを〈ためる〉、とか〈集約する〉力がフラメンコを高めるのでは…。Tangosの入りは絶妙でとても魅力的でした。
18.西山依里:体全体に漲るエネルギーを感じました。Graciaが個性を光らせていました。
21.小河由里子:踊り込んでいることは伝わって来ましたが、客席に思いを届かせる力がもう少し出て来ると良いと思います。
25.川松冬花:悲痛さは立ち現れなかったが、足音を含めた身体能力の高さが抜群でした。足音の正確さは価値ある存在感を示しました。
30.菊池麻由美:肉体の造型力が際立っていました。美しさの中に悲劇性が立ち現われ大きなドラマが生まれました。
31.新海玲子:ゆっくりしたテンポをキープする力強さ、よく考えられた構成、緩急自在な力量は頼もしく思いました。

【23日(日)】
7.金沢賢二:現代感覚のカンテ。音程の良さが心地良かった。
14.ダニエル・リコ:正攻法の歌い方に成長の跡が見えたのが頼もしい。
15.山田ナオリ:素晴らしい声に恵まれていますが、母音の発音とイントネーションを良く研究してください。
19.佐藤理恵:とても濃密な空間形成で、緊張感溢れるバイレでした。ほんの少し〈緩む〉瞬間があっても良いのでは…。
23.柴田千穂:上半身の動きがとてもチャーミング。最後の終わり方に美しさが宿りました。
26.岩泉美帆:バイレをdominarする強い意志、人を引き付ける力があり、しなやかで強靭。美しい世界を構築していました。
27.土方憲人:スピード感に乗り、7分間のバイレを〈疾走した感〉がありました。強いだけではなく柔らかさも加味され観客を魅了しました。
28.久保田晴菜:身体全体の動きがとても有機的になって来たことはとても喜ばしい。踊りを通して深い思考力を養ってください。
31.黒木珠美:重いもの、黒いものを表出することが出来ました。“激情”が一瞬立ち現われました。
32.近藤 朔:長い間の人生の中で培われて来た沢山のものが立ち現れ、ユニークで深い心の襞が見て取れたsoleáでした。
33.相田良子:前半はカンテの奥深い力に捻じ伏せられている感じだったが、後半だんだんと情感が豊かに湧き出て来ました。

私たちの存在はいつも死に脅かされて、いのちはいつか絶えてしまいます。辿り着けないと解っていながら目指し続ける〈フラメンコ〉、心より深い所まで求めて生きる姿勢そのものに価値が宿ることを伝えたいと思います。

山田恵子(舞踊家)[Bs,Bg]

猛暑に咲いた花

<バイレ・ソロ部門>
猛暑の中での新人公演に参加された皆様お疲れ様でした。その中から受賞された6人におめでとうを申し上げます。

今年もまた激戦でしたが、まず総評から入ります。個人的にはテクニック、リズム感など甲乙つけがたいのですが、全体像を拝見すると、まとまり過ぎてあの大きな舞台を自分のものに出来ない方々がいらっしゃいました。つまり、舞台の幅、奥行、高さをキャッチ出来ずに踊っている。そして踊りに入っていく瞬間をどう創るか、それがとても大切な事だと思います。板付、ポーズ、上手、下手からの出、ダンサー個人の思いがそこに凝縮されます。今年はソレア、シギリージャが大変多く、踊りのパターンが同じようで残念に思いました。もっと舞台構成を考えて、大劇場を生かした振付を考えましょう。

今回受賞された6人は、これらの条件を満たしてプラス表情が豊かで心と体が一体となり、爪の先まで踊っていましたし、静から動へ、動から静へ移る瞬間の間(ま)の取り方が上手で見事でした。

また、土井わかなさん、森里子さん、渡辺なおみさん、平尾華子さん、久貝輝代さん、久保田晴菜さん、小坂みはれさん、内田好美さんも心に残りました。なお、もう一方、お年を超越し、フラメンコに情熱をもって挑戦していらっしゃる近藤朔さんに拍手を贈ります。

<バイレ・群舞部門>
群舞ですが、稲田さんはまとめるのが大変でしたね!大勢出れば群舞と思っている人もいますが、群舞は構成、振付、選曲、ダンサー全てが大切でセンスも要求されます。これらの条件を満たし、リズム感にあふれ洗練されていましたが、欲をいうならば、どこかでほっとする瞬間があっても良かったかなと思いました。

三澤勝弘(ギタリスト)[G]

<ギター部門>
今回参加された方々、皆様技術的にはある水準に達せられていたと感じております。しかしながら、フラメンコのギターの発するそれは、技巧による時間芸術のひとつ。その為、その中には“美”も含まれねば。さらにそれを生み出す感覚、さらに感性。それらを追求する努力がもっと望まれると思います。その中において森谷さんと木村さんにはその一端をうかがい知ることができました。聴く私にとっては大変な喜びでした。次に出演順に-。

・森谷さん:中間部にとても美しいところがありました。しかし、例えばトレモロの後半部、情の変わり目に変化が乏しく感じました。破綻のない流れの中で平坦さが全体に渡ってしまった。良質の演奏ではあったが、それに骨太さが加味されれば、と思います。
・和田さん:やはり平坦さを感じてしまいました。中間部、ギター1本では物足りなさを覚えた。パルマなどを想定した編曲かと思いました。
・内山さん:音に力強さを求めたい。雰囲気もさることながら、実(じつ)のある演奏を望みたいと思いました。技術には目を見張るものがありました。ひと言-足音が大き過ぎ(独りでの演奏ですので…私にも経験があり)。
・藤嶋さん:ギター1本での演奏としては少し物足りなさを感じました。技術それぞれが内包している意味・可能性などを吟味して演奏に当たられては、と思いました。期待しております。
・福嶋さん:音の発する瞬間をもっと印象深く、また全体をある程度予見させる始まりを望みたいと思いました。音の大小ではなく“芯”のある音を望みたい。線の細さを感じてしまいました。
・宇田川さん:冒頭部には、もう少し明確な意志が欲しいと思いました。余談ながら、ニーニョ・リカルドはこのような部分を“アラブの太鼓”(出陣の?)と表現しておりました。もっともその必然性のことは解かりませんが…。
・塩谷さん:弾き始めの印象が弱い。覚悟の音が欲しいと感じました。やはり節目節目で動き(心情)が弱く、平坦に流れてしまった印象がありました。人柄の良さは見てとれるが、それを活用して、より深い領域へと踏み込んでくれることを願っております。
・木村さん:中間あたり、とても美しく聞こえました。しかし、全体として演奏に込める“想い”が解かりづらく思いました。

今回は対照的なお2人の演奏。森谷さんは古風な佇まいであり、良質な愛好家的演奏。無理な表現はなく、ある意味では、やや淡々と。一方の木村さんはまったく職能的とも言える才能を内在されておる方。森谷さんには、私見ではあるが、もう少し“生きもの”の顔が覗くことを期待したいのですが…。木村さんには、少しややこしいかもしれませんが、以下のこと。時間芸術、時間のその経過の中で“何か”を表現する。例えば不条理なものへの反抗、悲しみなどを、感性のフィルターで濾してはまた繰り返すことで、フィルターをより細かく、そして感覚へと。縦糸という時間に横糸を織り込んでゆくその“何か”を考えていただきたいと願っております。そしてさらに、職能プラス芸術へと。他の方たちも、ほんの少しのことで大きく変わることのできる領域にあることを信じて、またお会いしましょう。

飯ヶ谷守康(ギタリスト)[G,C]

フラメンコを唄い、踊り、そしてギターを弾く側も、そして聞く側も“人それぞれ”ということを、まずお断りした上で、今回の新人公演についての、あくまでも私的な感想を述べさせていただくことにします。

<ギター部門>
今回の出演者全員に言えることですが、音の芯というか核がハッキリとしていないことでしょう。明らかに弾ききっていない、弾弦の思い切りの良さが足りない、と感じました。自分の部屋で弾いている時には、ちょっとでも弦から指が離れれば自分の耳には聞こえるので弾けていると錯覚を起こすことは良くあることです。しかし、それでは残念ながら“弾いている”ということにはなりません。特に、音数が多い“今風のフラメンコ”を好み、そして弾く場合には基本練習が絶対不可欠なのです。特に、アルアイレが不明瞭だった人が多かったように思います。右手はアルアイレ、左手はスラーが最重要なメカです。これだけはしっかりと身に付けて欲しいところです。そうすれば、軽く弾いても音の芯・核がハッキリと感じられるようになるでしょう。
今回の出場者の中では、木村尭さんが、音が聞き取りやすかったという点で頭ひとつ抜きん出ていたように感じました。たた、エンディングのリズム群の一本調子な感じが、ちょっと惜しかったような気がします。ごく個人的な好みでは、ブレリアスを弾いてくれた内山さん、気持ちは伝わってきました。感じたままに指が動くようになるために、更なる精進を期待しています。

<カンテ部門>
フラメンコの魂とかアイレとかの前に、声と発音と息遣いで勝負しなくてはならないのがカンテです。ということは、まず発音に充分な注意と訓練が必要になります。スペイン語が話せても話せなくても“それっぽい”きちんとした発音で唄うことを目指して欲しいところです。要は母音の発音の仕方でしょう。母音でリズムを取り、母音で唄う…これが基本、ということを理解して欲しいですね。また、出場者の多くが、音程に不安を抱えているように感じました。自分の出した声に責任を持って、その声の行く末をしっかりと見守る、という丁寧さ・繊細さを持っていただけたら、と思います。そのためにも基本のひとつでもあるロングトーンの練習、ぜひやっていただきたいと思います。音程の不安定さも軽減されるでしょう。
更に、歌詞の行末のキメ感が必要になります。これも息遣いに関連することですが、ダラ~ッとしてしまい、キメ感が弱いように感じました。フラメンコのお作法のひとつです。そのあたりの基本的な知識を先生から教えてもらうか、自分で研究してください。

ということで、今回は奨励賞は推薦者無し、という結果になってしまいました。ただ、私の好みを言わせていただけるとすれば、グラナイーナスを唄ってくださった占部智恵さん、良い感じを持っていらっしゃるように感じました。もし、人前で唄う事を目的としていらっしゃるとしたら、基本練習を積み重ねていただきたいと思います。

今田央(ギタリスト)[G]

今回は皆さんレベルが高く、それぞれのパロが持つ特性を生かしきった素晴らしい演奏でした。音響が以前よりタイトに聞こえたせいか細かいフレーズも聞き取りやすかったです。その分生音が弱いとフレーズが出てこない訳で、今回賞を逃した方は皆さんそこが課題だったと思いました。

●森谷 忍
古式ゆかしい演奏で音、間の取り方ともに素晴らしい演奏でした。トレモロの美しさは特筆ですね。Pの音も今ではなかなか聴けない芯のある音でした。今回はより多くの技巧を駆使した木村さんを奨励賞に推しましたが、演奏自体の完成度は全く引けをとらないと思いました。
強いて言えばトレモロの途中でピカードのフレーズが入る箇所。トレモロが終わって、フレーズにいくまで一瞬流れが消えてしまうように思えました。コンパスのある曲も聴きたいです。是非また挑戦してください。

●和田 健
自作ということですが優れた作曲力ですね。ソレア・ポル・ブレリアなのにリブレの中間部がある珍しい構成です。単調になりがちなこのパロですが、起承転結がうまく盛り込まれています。技術的にも申し分ありません。ただ、ノリがソロ重視のギタリスト的なのでバイレやカンテに寄り添うコンパス感を身につければさらなる発展が望めそうです。

●内山 友樹
最後までコンパスがぶれることなく弾ききりました。ファルセータを弾く技量は素晴らしいのですが、ブレリアの刻みがちょっとせわしなく、アクセントを音量で捉えてる感じです。あの足音の刻みだとビセンテの感覚には合わないですね。あとは音質でしょうか。高音部が低音に負けているのでぼやけた印象です。

●藤嶋 良博
これは自作でしょうか?今風の爽やかなアレグリアスでした。途中のファルセータは某カンタオールの歌メロですよね。緊張のせいかちょっと速すぎたのではないかと思いました。最初のアルペジオのフレーズで既に音が抜けていたようです。コンパスとフレーズのアクセント毎の溜めがないため、落ち着きのない演奏になってしまいましたが、破綻することなくよく弾ききりました。ラスゲアードやゴルペの音量バランスを考えるとより音楽的になると思います。

●福嶋 隆児
こちらも疾走感のある演奏で、パルマもなく最後までテンシヨンを保ちつつ弾ききりました。Pによるフレーズ主体ですがその分、奇をてらった音がないのでフラメンコを感じました。惜しむらくはフレーズ毎の消音がないせいかフレーズが浮いてきません。アルペジオも高音部が弱いですね。ゴルペももう少し抑えたほうがよいです。

●宇田川 卓俊
曲の構成、間ともによく弾けていました。音楽性は前回より格段の進化を遂げているとおもいました。個々の技術、特にトレモロは良かったです。曲自体は良いのですが、ちょっと線が細い演奏なのであまり届いてきません。小さい音量で弾くのが最近の傾向でしょうがその分、立ち上がりや音量差をつけないとメリハリがでません。消音も必要ですね。翌日カンテの伴奏もされていましたが、こちらももう少し骨太であったらと思いました。もちろん選考には関係ないことですが。

●塩谷 経
私の中では今回3位の評価です。ギターソロとしてのソレアを感じました。全体の流れとか間は良かったですし、丁寧に弾いているとは思います。これだけ弾けても奨励賞を逃すのですから、昨今レベルが高いです。なぜ賞に推さなかったのかというと音の説得力ですね。最初の掴みがぼやけた印象でその後も全体的に音量差のない平坦な表現でした。もう少し硬めの音のほうがよりフラメンコらしくなりますよ。

●木村 尭
迫力のソレアでした。塩谷さんのソレアよりは踊り伴奏寄りのソロですが、音が響いてきました。ピカード、アルサプーア等もそれまでの音圧に負けず弾きこなしていましたね。森谷さんの演奏もそうですがやはり楽器はまず出音だと改めて思わされました。

片桐勝彦(ギタリスト)[G]

森谷忍:落ち着いていて間(ま)のある演奏、感動しました。粒が揃った1弦から2弦までのiami指のトレモロは、親指もまた6弦から2弦までしっかりアポヤンドが出来ていて気持ちがよかったです。話題賞の選考理由である「豊かで美しい音色」とは、しっかりとメロディーラインが聞こえてきたことと絶妙なゴルペのたたき方があげられると思います。残念ながら奨励賞は逃しましたが、他の人たちには弾くことのできない間と音色、そして力まずにミスタッチもほとんど無い好演奏でした。

和田健:ファルーカ、アレグリアスと続いて、今回はbのソレア・ポル・ブレリア。どの曲も私は最高に好きです。自由であるはずのフラメンコですが、皆ほとんど誰かの曲を弾いている現状の中、和田さんはすべてオリジナルを突き詰めていることにまず敬意を払いたいと思います。そして今回はしっかりとしたタッチで最初から最後まで弾ききっていました。スローテンポのソレア・ポル・ブレリアのコンパス感をギター1本で出せていたのと、アル・アイレのEb調で弾くことによる低音と高音の響きは、ギターの特性をふんだんに出せていたと思います。強いて言うならば、始めのリブレフレーズは更にためて弾いた方が効果的だったのと、ブレリアにカンビオ後、ちょっと走り気味でリズムが甘かったのは残念でした。期待通り前回同様エンディングにピカードを持ってきてくれたのは感動でした。また更なるオリジナル曲、楽しみにしております。

内山友樹:ビセンテ・アミーゴDbのブレリアをパルマやパーカッション無しで、よく弾ききれたと思います。全体的に強弱もついていて、足でのリズムも正確でした。このように有名な曲はついCDの演奏と比較しがちですが、それにしてもテンポといい、ビセンテの特徴であるami指のアポヤンド奏法といい、かなりニュアンスが出ていました。演奏の完成度の割に印象が薄かったのは、エッジのきいた尖った部分が欠けていた点にあると思います、更にドライブ感のある演奏を追求してみてください。

藤嶋良博:タパオからイントロ、そしてA△7から始まるテーマと、徐々に盛り上がる展開は緊張感もあって、センスの良さを感じました。タパオで出したリズムより若干走り気味のイントロは、それでいて所々遅れたリズムだったのでうまくのれませんでしたが、途中ペドロ・シエラのフレーズとも思えるモダンな音使いは、アレグリアスのセンティードを感じました。細かい点としては、アルペジオが最後の音まで出ていない箇所や、他の奏法とのコンビネーションに乱れがあったのと、ピカード時に右手首が若干反り気味になるのが気になりました。もう少しテンポを落としてアルペジオやピカードの切れの良さを出しても良かったかもしれません。A△7から始まるテーマを最後にもう一度弾くのは、印象深くなっていいですね。

福嶋隆児:ある意味リズムが同じ速さで淡々と最後まで流れていくソレア・ポル・ブレリアという曲を、ポル・メディオで弾いたにもかかわらず、最後まで飽きずに聴けました。立派なギターソロであると同時に、どのフレーズを取り出しても踊りや歌伴奏にもピッタリ合うムイ・フラメンコな演奏で、コンデ・エルマーノスの音色でした。4連のアルペジオなど右手の奏法に安定感がありましたが、左手とのバランスがしっくりこない箇所が目立ちました。高い部分のフレットセーハは難しいですが、いつでも音がしっかり鳴るように心がけてください。

宇田川卓俊:前回のアレグリアス同様、どの右手の奏法もよく弾けていました。初っ端リブレ時の左手のスラーは細かい部分まですべて音がクリアに出ていて説得力がありましたが、低音部のピカードの両手のタイミングを合わせることと、全体的にもっと間をとると更に良くなると思います。トレモロは特にすばらしかったです。北海道での活躍、期待しています。

塩谷経:決して派手とは言えませんが、正当的なソレアで好感が持てました。テクニック的には去年のブレリアよりラクな気がしましたが、エミリオのソレアはやはり難しいですね。アルペジオやピカード、アルサプーア、そしてラスギャード、どれをとってもかなり安定していましたが、ブレリアに変わった後の最後のフレーズはポジション移動が多すぎてたいへんそうでした。両用のギターをうまくあやつって低音がよく出ていたので、あとは間や呼吸などで更に良く聞かせるよう研究してみてください。

木村尭:奨励賞おめでとうございます。音量がしっかり出ていたのと強弱がしっかりついた好演奏でした。モダンな音と伝統的なフレーズをうまく混ぜながらピカード切っ掛けでのブレリアへのカンビオは圧巻でした。出演者の中で一番ギターをうまくあやつれていたと思います。粒もそろっていてダイナミクスがあったのですが、ラスギャードなど力を入れた時の音色が少しきたなかったのと、曲の終盤ラスギャードのフレーズが多すぎた感はありました。最後のアルサプーアが走ってしまってリズムがあまくなってしまったのは残念でしたが、全体的には申し分の無い演奏でした。

加部洋(プロデューサー)[G,C]

皆さん、新人公演お疲れさまでした。私なりの感想を一言ずつ述べさせていただきます。

<ギター部門>
今年は例年になくレベルの高い、更に“らしさ”がよく伝わってきたムイ・フラメンコなギター部門だった。その高いレベルの上に、年配の森谷さんと若い木村君が頭ひとつ抜け出ていた、という感じだった。これはある意味理想的な結果と言えるのではないだろうか。

森谷忍君●ひと言、誠に天晴れな演奏だった。森谷さんは60代とお察しするが、気力も体力も衰えていくなか、それに抗うかのような内に秘めた情熱が素晴らしい。スタッカートのきいたメリハリのある低音、歯切れのあるアルサプーア、美しいトレモロ―伝統の香りが横溢するタランタだった。あの大舞台で上がった風でもなく、自分のペースで弾き切ったのは見事だった。和田健君●変則チューニングのソレア・ポル・ブレリア。毎年出場の和田君はいつもオリジナル曲で勝負しているが、今回はその独創性とレベルアップした演奏が良かった。今までの数回の出場のなかで、最も良い演奏だった。そのこだわりと精進がよく分った。欲を言えば、美しすぎるメロディのためか、ソレ・ポル独特のコンパス感が足りなかったことか。内山友樹君●ビセンテ・アミーゴのブレリア。ビセンテのあの躍動感溢れるブレリアの雰囲気が出ていた。それはリズムの刻み方に起因していたと思う。その点は良いのだが、早いピカードが弾き切れていなかったことや、低音が前面に出て来なかったこと、メロディ・ラインが細かったことなどが気にかかった。藤嶋良博君●相当なテクニックを必要としたモダンなアレグリア。その雰囲気はよく出ていたが、ラスゲアードのアタック感の不足、アルサプーアの歯切れの不足、アルペジオの曖昧さなどフレーズの処理に不完全さが目立ち、演奏そのもののスケールが大きくならなかった。福嶋隆児君●いぶし銀のごとき通好みの、文字通りかっこいいソレア・ポル・ブレリア。ソレ・ポルの何たるかが分かった演奏だった。残念だったのはフレーズの抜けなどテクニック面が不完全だったことだ。宇田川卓俊君●情感豊かで、タランタをよく理解した演奏。ピカードのフレージングに曖昧なところが散見されたが、それ以外の個々のテクニックは良かった。ただ、音が前に出ていないなど、演奏そのもののスケール感が足りなかった。トレモロは絶品!塩谷経君●よく歌うソレアだった。ギターの響かせ方も良い。ただ、気になったのはフレーズの処理のモタリなどテクニック面が不完全だったこと。しかし、練習を積めば相当上手くなる可能性を持っていると感じた。木村尭君●木村君の演奏は本番の数日前に聴く機会があった。その時は若干ミスもあり、それがすこし不安材料でもあった。しかしフタを開けたらどうだろう、練習より本番のほうが良いという素晴らしい結果になった。その集中力、強心臓に驚かされた。

<カンテ部門>
今年は山田ナオリさんのカンテと、その学ぶ姿勢に感銘を受けた。つまり完全コピーの姿勢のこと。すべての芸は模倣から始まる。模倣出来なかったらその先はない。模倣の先にこそ本物がある。これを機に忠実に模倣することの重要性を見直すべきだと思う。

川浪郁美さん●声質にふっくらした豊かなものがあり、音程も良く、更にこの人独特の節回しに光るものがあった。しかし、メロディの乗せ方、つまりノリがカンテ独特の裏ノリになっていなかった。節回しが素晴らしいので惜しい。中山えみ子さん●カンテの王道を行くカンティーニャ・デ・ピニーニを含む通好みのカンティーニャ。声の質に独特の魅力があり、節回しの音程も良い。しかし前の出演者と同様に、メロディの乗せ方、つまりノリがカンテ独特の裏ノリになっていなかった。更なる挑戦を!熊谷善博君●熊さんのカンテはペーニャで聴かせてもらっているが、渋好みのアフィシオンが横溢した熱唱だった。ただ、その熱唱にしてはキーが低いのではないか。もっとキーを上げて絶叫し、ハッチャケてもらいたい。川村麻利子さん●サリーダとエンディングの「ティリティ~」ではしっかりとノリが裏になっていたけれども、1歌に入ってから、ノリが表になっていた。音程、節回しは良かったので、歌詞とメロディの乗せ方が裏になるように研究して欲しい。田中敏郎君●時々声のうわずりや音程の不安定もあったが、難しいカンテを歌い切った。一番気になったのは、ノリが裏になっていなかったこと。前の出演者と同様、歌詞とメロディの乗せ方が裏になるように研究して欲しい。松林由美さん●サリーダを聴いただけで年季・経験の豊かさが伝わってきた。音程・節回しも良く、堂々の、貫録さえある熱唱だった。タンゴになってから更に良くなった。気になったのは泣きの部分が若干日本的だったこと。金沢賢二君●泣きの部分に彼独特のものがあり、そこは大事にしてもらいたいところ。歌の隅々まで神経が行き届いた熱唱だったが、肝心なところで節が回り切らなかったところがあり、それが非常に残念。更なる挑戦を!定直慎一郎君●持って生まれた、ヒターノのような声質がムイ・フラメンコ。堂々たるシギリージャだったが、逆に力の抜きどころ、節回しの微妙さなど、テクニカルな面にも気を配って欲しい。占部智恵さん●カンテに対する深い思い、アフィシオンがよく伝わったグラナイーナだった。細かい節回しと発音、メリハリに気を付ければ、更に良くなると思う。岡村佳代子さん●唯一無二の魅力的な中音域を持つ岡村さんの更に磨きがかかったソレア。全体的にドラマティックに仕上がっており、細かいところまでコントロールされていると思った。若干節回しの乱れなどあったが、後半更に盛り上がり、高音域もよく伸びていた。進境著しい出来栄え。深谷恵子さん●展開がドラマティックなファンダンゴ・リブレに挑戦。1歌はあまりメリハリがなく、一本調子に聴こえたが、2歌のグロリアのファンダンゴで次第に良くなり、3歌はたいへんドラマティックだった。スペイン語の発音を直せば更に良くなると思う。小林ゆうこさん●カンテに対する強い思いで歌われたマラゲーニャ。しかし、フラメンコなんだからフラメンコらしく歌おうという気負いからか、固さや力みが感じられた。音程や節回しは良かったが、発音がカタカナスペイン語的なので修正が必要だと思う。山田裕子さん●ギターのイントロに合わせたパルマを聴いただけで、「できるな!」と思った。大声を出せばいいものでもないカンテの、力の抜きどころを心得たキャリアを感じる歌唱だった。ただ逆に、マックスで声を張り上げた時の突き抜ける感じが足りなかったのが惜しかった。ダニエル・リコ君●今年はスペイン語の発音が悪い人が多かったと思うが、唯一母国語であるダニエルさんの発音は、当然だが自然だった。これまでに聴いてきた彼のカンテは、何か違うな、という印象だったが、今回は違っていた。フラメンコの核心に分け入ってきたという感じで納得できた。山田ナオリさん●最初はドローレス・アグヘータが出て来たのかと思った。初めのひと節からドローレス節だった。さてこのテンションで最後まで歌い通すのかと興味津々だったが、見事にドローレスを完コピしていた。すべての芸は模倣から始まる。模倣出来なくて何でその先があろうか。山田さんの学習の姿勢は100%正しい。模倣の先にしか本物はない。すべてのカンテ愛好家はこの姿勢を見習うべきだ。

鈴木敬子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
佐藤哲平さん/もっと強さやキレが欲しいところだが、全体がさわやかな好感触。今後がとても楽しみです。福島沙弓さん/踊りが安定していて強さがあった。大野環さん/キレと強さが備わった踊り。踊りがとても安定していた。内田好美さん/スタイルが良く身体がよく動いていた。サパテアードの質が良かった。牛田裕衣さん/観ている人を引き込む強い踊り。力の抜ける部分があれば更に良くなると思います。山中純子さん/バタ・デ・コーラとカスタネットを使った凝った構成の曲。良く練習して丁寧に踊っていたのが分かった。小林成江さん/恵まれた容姿で踊りも大きく見え舞台映えしていた。渡辺なおみさん/動きにペソがあり安定している。迫力があった。表情に注意したらもっと良くなると思います。川松冬花さん/キレが良く安定していた。以前観た時よりそうとう上手くなっていた。踊りに集中力があり引き込まれた。小坂みはれさん/ぐらつかない安心感のある踊り。ブラッソの指先まで丁寧に踊っていた。佐藤理恵さん/舞台を上手く使った大きな踊り。メリハリのある動きがフラメンコだった。古郡美弥さん/サパテアードがきれいで安定していた。岩泉美帆さん/スペイン人に負けないくらいのスタイルが目を引いた。タラントに雰囲気が合っていて良かった。土方憲人さん/少し肩や姿勢が気になるが、個性的な踊りで会場を熱くした。黒木珠美さん/ブラッソが美しかった。レマテに重さが加われば更に良くなると思います。

<バイレ・群舞部門>
稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団/男性の踊り手を入れたことで活きた作品になっていた。後半にもっと工夫があれば更に良かった。

鈴木眞澄(舞踊家)[Bs,Bg]

まずはじめに特に印象に残った方々を挙げます。
・福島沙弓さん…個性的な表現がすばらしい。・大神明希さん…踊りに対する誠実な向かい方。・佐渡靖子さん…すばらしかったです!・青木千鶴子さん…上達なさっていく過程を見届けられるのはうれしいです。・丸岡みゆきさん…緊張感の中にあるまっすぐさに心が打たれました。
群舞・Estudio El Patio…真摯に向かう姿がまさにフラメンコでした。オレーッ!・Los montañeros…フラメンコへの愛情を感じて楽しくなりました。

私はギターやカンテの選考はしませんが特に心に残ったことをここに書きとめておきたいと思います。
ギター・森谷忍さん…ただただ感動しました。1つ1つの音が心に響いてきました。・土井わかなさん…心が熱くなりました。・廣木恵理さん…熱い想いが伝わってきました。・小河由里子さん…自然な動きがとても良いです。・藤本ゆかりさん…熱い想いが伝わってきました。・川松冬花さん…すばらしかったです!・新海玲子さん…フラメンコらしさを感じました。
カンテ・熊谷善博さん…フラメンコに向かう姿勢に感動しました。・金沢賢二さん、深谷恵子さん、ダニエル リコさん…真摯に取り組む姿に私も襟を正します。エンリケ坂井さんのカンテ伴奏はフラメンコの原点を見据えながらあたたかく見守っているようで感動しました。

・小坂みはれさん…踊りそのものが上手いです。・土方憲人さん…すばらしかったです!・清水千夏子さん…感動して涙がでました。・黒木珠美さん…熱い想いが伝わってきました。・近藤朔さん…たゆまぬ努力を続けいつも真摯に取り組まれている様子がうかがえて、この公演の趣旨である「私たちは常に新人の心を持って…」にふさわしい方だと感じました。是非また拝見したいです。

フラメンコだからこそ人生の積み重ねがすばらしい形で表れると思うので、もっとキャリアのある方の踊りも拝見したいと思います。きびしい状況で生まれ育ったフラメンコは魂の叫びと言われます。感情を伝えてこそフラメンコだと思うのです。
最後にこの舞台は、出演の方だけでなく、楽屋でも客席でも駆け寄ったり、抱き合ったりして旧交をあたためる場面をたくさん拝見し、皆さん一年に一度のこの日をいろいろな意味で楽しみにしている様子がうかがえました。フラメンコ界の交流の場としてもこの公演が続いていくことを心から願っています。 ありがとうございました。

曽我辺靖子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【21日(金)】
新井ゆふ子さん:大人の雰囲気もあり、ラストまで途切れることなく良く踊れていました。
近藤綾香さん:体から溢れるリズム感が伝わってきました。心から踊りを楽しんでいる感じに好感。
福島沙弓さん:センティードを感じ熱の入った踊りにオレ!
大神明希さん:しなやかさがあり、好感のもてる踊り手です。
大野環さん:芯がぶれずマントンとの一体感が良い。今までにない成長を感じました。
内田好美さん:タメがあり、曲に秘める情感を感じ引き込まれました。結末へのつなぎも良い。
鈴木雪花さん:丁寧に踊っていました。特にラストが印象深かった。
佐渡靖子さん:マントンとバタのさばきが艶やか。手足の長さを生かした踊りでした。
青木千鶴子さん:個性的な衣装。大きな成長の跡がうかがえました。

【22日(土)】
持田賀津子さん:足音も強く、流れ良く踊れていました。背中からのブラッソの動きを研究すると幅が広がるでしょう。
牛田裕衣さん:凄みがあり、自分の世界観を持っている踊り手です。
土井わかなさん:足音強くリンピオ。上体を生かせるとさらに良いでしょう。
小林成江さん:素晴らしい成長です。曲の中に入り込み1つ1つの動きに呼吸を感じました。丁寧なサパテアードも心地よく響きました。
森里子さん:華やかさがあり、足も強く最後までとぎれない!
渡辺なおみさん:熱のはいった素晴らしいタラント。味があり引き込まれました。
廣木恵理さん:自然体の感じがとても良く、ノリのある踊りでした。
山形志穂さん:女性らしい上体の柔らかさが武器です。これからを期待します。
平尾華子さん:上体がぶれず、足音も確かでした。
小河由里子さん:重さを感じ、結末のタンゴからのノリが良い。足音もしっかりしていました。
藤本ゆかりさん:カンテをよく聴き、くいついていく姿が素晴らしい。ラストがもったいないです。
川松冬花さん:ぶれないサパテアード。バランス、リズム感共によく、向かっていく姿に自信を感じました。
東田美智江さん:足音強く、マノの柔らかさが貴女の宝です。パワーを感じました。
新海玲子さん:カンテを感じながら流れ良く踊っていました。
小林浩子さん:1つ1つを丁寧に踊っていました。後半の切り替えに味がありました。
坂本恵美さん:曲の雰囲気を大切に踊った方。今後に期待!

【23日(日)】
小坂みはれさん:サパテアードの音がとても心地よく響きました。イキな踊り手です。
佐藤理恵さん:しなやかな中にもタメがあり、サパテアードもリンピオです。スケールの大きな踊り手。
李成喜さん:華やかさがあり、足もしっかりしている。
古郡美弥さん:体がよく動き元気一杯のアレグリアス。グラシアがあり将来性をとても感じました。
柴田千穂さん:バタの使い方が良く表現力のある踊り手さん。ラストが?
岩泉美帆さん:カンテをよく聴きタメがあり表現力も良い。すみずみまで神経が行き届き、手足の長さを良く生かし踊っていた。独特な個性があり輝いていました。
土方憲人さん:上体の動きが自然に足に繋がり、心地よい響きとなっていた。空間を巧みに使いこなしスケールの大きさに将来性を感じました。
久保田晴菜さん:サパテアードの強さもさることながら、表現力も身についてきました。
津島直美さん:きちんと踊っている姿に好感がもてます。
黒木珠美さん:最後までモチベーションを維持して踊りきりましたね。タメが出てきて成長が感じられました。もう一度観たい踊りです。
近藤朔さん:以前より上達が感じられ感動です。最後までサパテアードもぶれずによく踊りきりました。大拍手です。今後も続けられることを期待します。

<バイレ・群舞部門>
Estudio El Patio:よく揃って踊っていますが、もう少し1人1人の個性が発揮されると、より深みが増すと思います。
奥野裕貴子フラメンコ教室LOS TARANTOS京都:ストーリー性のある心温まる作品でした。
屋良有子フラメンコ教室:皆の体が良く動き構成も面白いです。誰もが知っている曲を使うことはとても勇気のいること。挑戦に拍手です。
稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団:各自が自分というものを持ち、自信をもって踊っている姿にパワーを感じました。もう一度観たい作品です。
Los montañeros:3人が楽しんで踊っている姿が印象的でした。

高橋英子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
今年も皆さんの思い入れが心に伝わってくる素晴らしい演技が続いた3日間でした。実力もあり、いいものを持っている踊り手さんが沢山いらっしゃることは、フラメンコのアカデミー数を世界に誇る日本の誇りかもしれません。演技の内容もフラメンコへの情熱とテクニックの向上で洗練されてきていると思いますし、より強いインパクトを求めてか、凝った振付や効果を狙った照明演出が目立つようになり、舞台芸術性も感じられるものとなっています。衣装美術も素晴らしい。いろいろな意味で日本のフラメンコ舞踊の世界には目を見張る進歩があります。それは、何よりもこのところスペイン人もたまげるような新人が発掘されていることで実証されると思います。そんな華やかな雰囲気の中で激戦を繰り広げる新人公演に、果敢に挑む皆さんがいらっしゃることは本当に頼もしいです。各人の演技を拝見していて、それぞれの価値観をもって新人公演に出場しているのが窺えました。「奨励賞に輝く」という目的だけではないと思いました。このフラメンコ界最大の祭典が、ひとつの意義ある集いの場として皆さんに愛され続けることを願います。

さて、甲乙つけがたい競り合いの中で、受賞させた方々はそれぞれに秀でたものがあったと思います。出演順に簡単な私の感想などを書きます。福島沙弓さんは白黒はっきりした存在感と気迫で観る人を圧倒するテンションの高い演技で見せました。小林成江さんは振付や演出にうまく融合する独自の表現力と美しい踊りが光りました。川松冬花さんは揺るぎないテクニックと時々見せるアルテ、その迫真的な演技で魅了しました。佐藤理恵さんは大きなうねりのある身の熟しと、シンプルな中に威圧感のある渾身の踊りで見せました。岩泉美帆さんは、スペインの名バイラオーラを彷彿とさせるクエルポのフラメンカな美しさと逞しさ、高品位な魅力が引き立ちました。土方憲人さんは、粋で洒落た上体の動きと攻めの利いた力強い下半身でフレッシュな息吹が炸裂しました。また、準奨励賞の平尾華子さんはとても惜しかったですが、リズミカルにアレグリアスの軽快で粋な世界を持ち前の華と現代的センスで表現し、輝くスター性を感じました。

それぞれが自分の世界を持ち、あとちょっと一息といったところで惜しかった方々などが沢山いらっしゃいました。目立った方々を曲目別に挙げてみます。先ず、シギリージャを踊られた山中純子さん、藤本ゆかりさん、久貝輝代さん、矢村万意子さん、菊池麻由美さん、瀬﨑慶太さん、松本千晶さん、黒木珠美さん。特に松本千晶さんや黒木珠美さんの踊りには惹かれるものがありました。また、山中純子さんのカスタネットとバタ・デ・コーラで踊るシギリージャは、昔からの伝統的スタイルを覆す現代風な凝った振付と音楽演出が印象的でした。
タラントを踊られた渡辺なおみさん、久保田晴菜さん。この2人の演技はなかなか惹きつけられる魅力がありました。ソレアを踊られた内田好美さん、新海玲子さん。新海玲子さんの正統的で自然な表情の素直な踊りには好感が持てました。アレグリアスを踊られた佐渡靖子さん、古郡美弥さん、佐藤直美さん。アレグリアス独特の優雅でエレガントなブラッソ、又はチャーミングな華やかさで魅せられました。ソレア・ポル・ブレリアを踊られた牛田裕衣さん、岩丸綾子さん、小坂みはれさんは各人堂々としていました。特に小坂みはれさんはなかなかフレッシュフラメンカで技術も有り、楽しめました。バンベーラをマントンで踊られた大野環さんの演技は選曲も良く、マントンも映えて格調高くなりました。ティエントをバタ・デ・コーラで踊られた柴田千穂さんもしっとりした品性がありました。

珍しくソロンゴを踊った方(1日目のニエベユリさん)がいらっしゃったのは嬉しかったです。昨年の講評でも、幅広く豊かなフラメンコの世界には沢山のフラメンコ曲があり、それなりの味があり、それらを皆さんの色々な個性で踊るのはステキなことだと書きました。豊かなフラメンコのパロ(曲)の世界を楽しめるような新人公演でもあって欲しい、それは引き続き思っていることです。

<バイレ・群舞部門>
群舞はやはり沢山の踊り手さんで作り上げるエネルギッシュな世界を期待してしまいます。ですから人数が少なければ少ないほど、群舞としての魅力を出すのが難しいように思いました。でも考えようによっては男女で踊るパレハの踊りなんかもあるし、数人の演技力ある踊り手さん達で現代的で斬新な世界も生み出せるかもしれないので、そういうのも今後の楽しみであります。

Estudio El Patioは1人1人の心のこもった演技はとてもよかったですが、全体の振付にもっとバリエーションがあると更によかったように思います。奥野裕貴子フラメンコ教室LOSTARANTOS京都のタラントは、アラブ風の同色彩の豪華な衣装とドラマ風の演出と音楽、照明効果など全て工夫されていてとても華やかなインパクトある力作でした。ドラマ風の展開が私にはちょっと分かり辛かったのですが、中堅の踊り手さん達の意気込みが一体となり、パワフルなシーンの連続で楽しめました。屋良有子フラメンコ教室のメンサへは舞台芸術としての世界を意識し考えられた躍動的な振付構成で、照明効果もありなかなかステキな仕上がりになっていました。受賞した稲田USUMUjeres内圧と間舞踊団は、その舞踊団名そのままのイメージが各自の踊りに感じられました。特に斬新な振付構成の展開はなかったように思いますが、全体的に男性2人と女性6人がリズミカルな音楽の中で、それとは逆のエネルギーを作り出したような、なんだか不思議なムードが漂い印象的でした。Los montañerosは1曲の中に色々なシーンを作り、また各自の個性も出したいと、あれこれ振付を工夫した努力作、とても微笑ましく拝見しました。

手塚真智子(舞踊家)[Bs]

21-1 新井ゆふ子さん ソレアの唄をしっかり聞きながら踊ったと思いました。
21-7 福島沙弓さん 貫禄があり 最後までテンションがきれずに熱いタラントでした。
21-9 大野環さん  少し動き過ぎの感がありましたが、最後の決まりが良かった。
21-10 内田好美さん 全体的に良いソレアでした。
21-13 佐渡靖子さん バタのさばきに少し気になるところがありましたが、ポーズが綺麗で、あっと言う間に終わった感じでした。
21-15 丸岡みゆきさん 緊張がこちらまで伝わってドキドキしてしまいました。
21-16 本多清見さん フエルサを感じるソレアでした。
22-10 牛田裕衣さん 迫力あるソレア・ポル・ブレリアでした。
22-12 土井わかなさん ドラマ性のある良いティエントでした。
22-13 小林成江さん 安定感が出てきてひたむきに練習してきたのだと思いました。最後の抜け感がもっと出ると良かったと思います。
22-16 廣木恵理さん 踊りたい気持ちは、良く伝わったように感じました。
22-21 小河由里子さん 大きい身体を良く使いこなせるようになったらと思います。
22-25 川松冬花さん 最後までテンションが途切れず熱い踊りでした。
22-26 久貝輝代さん 気迫がある良い踊りでした。
23-18 小坂みはれさん 躍動感を感じました。
23-20 李成喜さん 爽やかな衣装で笑顔が印象に残りました。
23-23 柴田千穂さん バタを良く使いこなしていたと思います。
23-24 松本千晶さん 心を込めた踊りと感じました。
23-26 岩泉美帆さん “オーレ”と掛け声をかけたくなりそうな箇所がありましたが、今一つだったのが残念です。
23-27 土方憲人さん ひたむきにフラメンコに向かった姿が好印象で成長を感じました。
23-28 久保田晴菜さん 全体的に安定感があり、ブラッソ、足音が綺麗でした。
23-31 黒木珠美さん ¡Baila bien! でした。
23-32 近藤朔さん ごまかしを許さない徹底したその姿が印象に残りました。

花岡陽子(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
【21日(金)】
新井さん:気持ち良く拝見出来、よかったです。
近藤さん:変化があり、楽しそうに踊られていました。
佐藤(哲平)さん:踊りに工夫があり、あと少しです。
石川さん:うっとり美しさに見とれてました。
下山さん:内面から出るブラソを研究してみて。
ニエベさん:舞踊性が欲しいです。
福島さん:アイレがあり、全身で表現していました。
大神さん:細身でよく踊っています。将来性があります。
大野さん:身体がしなやか。大変好ましい踊り手さん。
内田さん:足が強く、ねばりもあり、表現力もあります。
鈴木さん:明るく楽しい美しい。衣裳のセンスも。
高木さん:楽しそうでよいのですが、少し雑になったかしら。
佐渡さん:コーラで大変難しい技術をよく踊っています。
青木さん:力強さがもっとあれば。また挑戦してください。
丸岡さん:少し弱いかも。踊り続けていってください。
本多さん:全体にきれいにまとめています。

<バイレ・群舞部門>
Estudio El Patio:きちんと、そしてりんとしたフラメンコでした。
奥野裕貴子フラメンコ教室LOS TARANTOS京都:タラントがこのように振付、と面白く拝見しました。
屋良有子フラメンコ教室:つぶが揃って美しくよかったです。
稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団:技術性、舞踊性、優れていました。
Los montañeros:アレグリアスらしく、楽しくまとめていました。

<バイレ・ソロ部門>
【22日(土)】
持田さん:工夫がありましたが華やかさが欲しいかな。
牛田さん:力強くフラメンコを自分のものにしています。
山中さん:パリージョ、コーラとよく挑戦しました。重厚感が欲しい。
土井さん:成長しました、ぐっと。よかったですよ。
小林(成江)さん:全体にとても気持ちよく拝見しました。
森さん:若々しい未来を感じます。
渡辺さん:大変よかったです。好きな踊り手さん。
廣木さん:全体的によくまとまっています。
山形さん:サパティアートが面白いです。パソが多いかも。
西山さん:ボリューム感がよいです。シレンシオに工夫が。
平尾さん:舞台の使い方、舞踊性、優れた踊り手さん。
岩丸さん:きちんと踊っています。特長が欲しいかな。
小河さん:よくまとめています。ちょっとドラマ性も欲しい。
瀬﨑さん:たくさんのサパティアート、お見事でした。
石塚さん:よく踊りきりました。またステージをめざして。
藤本さん:ティエンポ、アイレ、とてもよかったです。
川松さん:ねばり、重厚感あり、表情もよいです。
久貝さん:しなやかさ、ブラソの美しさが目立ちました。
東田さん:力が少し入りすぎたかしら。でも良いのですが。
佐藤(幸子)さん:フラメンコのひとつのスタイルですね。
矢村さん:踊りが本物になってきました。いいです。
菊池さん:“静”の部分が魅力的です。
新海さん:ねばりのある、味のある踊りでした。
小林(浩子)さん:曲想に衣裳がどうでしょう。考えて。
坂本さん:コーラのアレグリアス、今ひとつです。

【23日(日)】
津田さん:強さはいいのですが、怒りのようになっては。
大家さん:今ひとつです。パソを心から表現してみてください。
小坂さん:全体にバランスがよい。美しいです。
佐藤(理恵)さん:素直に強さが出て、成長しました、ぐんと。
李さん:若々しい明るいアレグリアス。いいです。
古郡さん:おしゃれなアレグリアス。工夫もあります。
池本さん:動きとブラソのバランスを考えて。踊り込んでいって。
柴田さん:コーラの使い方が見事!よかったです。
松本さん:無理のない力強い動きでした。
佐藤(直美)さん:明るくきれい。サパティアートもいいです。
岩泉さん:舞踊性もあり、全体のバランスがよい。
土方さん:魅力のある男性バイラオール。しなやかさと強さと。
久保田さん:女らしい優美なタラント。ステキでした。
清水さん:曲想にマントンとブラソがとけ込んでくれたら。
津島さん:きれいにきちんとステキでした。衣裳もとてもステキ。
黒木さん:欠点が少ないです。きれいでした。
近藤さん:自分らしいフラメンコで立派でした。
相田さん:もうひとつ、観客にアピールの何かが…。

本間牧子(舞踊家)[Bs]

受賞された方々と惜しくも逃した方々の差はいったい何か…と考えた時、いつも同じことを思うのです。フラメンコは三位一体といわれています。が、もうひとつ、自分の中の三位一体もあるのではないでしょうか。肉体(技術)精神(集中力)感性(感情)…自分の中をひとつにできるかどうかだと思います。

【21日(金)】
3.佐藤哲平:素晴らしい資質を持っています。しなやかなブラソ、サパテアードの強さが魅力的です。
7.福島沙弓:どっしりとした存在感から強烈なエネルギーとアイレを感じさせてくれました。ブラソの間が素敵です!!
13.佐渡靖子:躍動感があり、出だし、最後、とても美しく印象に残りました。

【22日(土)】
10.牛田裕衣:舞台の空気感が変わり、無駄のない動きから生き生きとしたエネルギーを感じました。
13.小林成江:凜とした強さと存在感!!そしてブラソ、マノのしなやかさと柔らかさがかもし出す静と動、そして間の美しさに感動しました。
19.平尾華子:確かな技術、そしてエレガントさとキレ、両方が光りとても魅力的でした。
24.藤本ゆかり:重心や移動、ブラソや身体のひねり、間も良かったです。
25.川松冬花:落ち着いたなかに強さがあり、マノ、ブラソ、脇などのひねり、静止の間が素晴らしかったです。

【23日(日)】
18.小坂みはれ:決して媚びず品格のある丁寧な踊りから伝わってくるアイレ、後半の盛り上がり、とても良かったです。
19.佐藤理恵:存在感とぶれない軸、そこから生まれ出る重厚な空気感が素晴らしかったです。
26.岩泉美帆:立ち姿が素晴らしく、足元からブラソ、マノへ繋がっていく間の表現はとても素晴らしく感動いたしました。
27.土方憲人:しなやかなブラソ、まわりの空気をも取り込んでいく呼吸、そして凝縮され放出される強烈なエネルギー、静と動、見事にコントロールされ圧巻でした。

最後に22日出演、ギターの森谷忍さん、温かく透き通った音色が心に染み入りました。出演されたすべての方々、新たなスタートです。それぞれの課題を見つけ、また精進されることを願っています。

渡邊薫(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>(◎奨励賞に推薦と来年に期待する出演者)

【21日(金)】
佐藤哲平:恵まれた身体です。もっと体幹の訓練をすると表現力が広がると。ジャマダの切れを良くすると。
◎福島沙弓:彼女のアイレを感じた。タンゴの入りも良かった。
◎大野環:堂々としてバックとも上手くかみ合っていた。彼女らしさが充分に出ていた。
佐渡靖子:シンプルな振付ながら上手くバタ・デ・コーラを扱って好ましい踊りでした。
青木千鶴子:カンテへのコンテスタションが弱いが、タンゴへの入りは良かった。

【22日(土)】
牛田裕衣:安定した腰、挑みかかるような踊り。貫録さえ感じた。サパテアードもリンピオでした。
山中純子:パリージョ、バタ・デ・コーラのシギリージャ素敵でした。もう少しティエンポのメリハリが欲しかった。
土井わかな:入りのカンテソロに寄りそう踊りでした。小粋なタンゴが良かった。
◎小林成江:前回(2年前)から数段に上達されましたね。溜めも有り、踊りをしっかり自分のものにしていた。
渡辺なおみ:実力のある踊り手だが、もっとカンテを感じて。
廣木恵理:ゆったりとした唄振りなので、もう少しpesoがあったら。楽しんで踊っていたのは好ましい。
平尾華子:よく訓練された身体。重心の置き方に注意されるとよりフラメンコに。
小河由里子:上体の表現を工夫されるとより良いでしょう。
瀬﨑慶太:努力のあとが見られました。体幹に注意と首の前傾が少し気になりました。
佐藤幸子:振りが唐突なので、もう少し流れを考えてみられたら。リズムの乱れが気になりました。
矢村万意子:走り込みの出が不安定でしたが、昨年に続いてのシリギージャは落ち着いて踊っていた。カンテとのからみがあと一歩。
新海玲子:丁寧な唄振りが良かった。オーレが出る場面も。

【23日(日)】
小坂みはれ:シンプルな振付が彼女によく合っていた。溜め不足だが、後半になるにつれて良くなっていった。
李成喜:止まりをしっかりと。自然な表情が好感的。
◎古郡美弥:確かなテクニック。体幹もしっかりしている。ゆったりなエスコビージャも良い。はつらつとしていた。
柴田千穂:カホン・カンテのみでの動きが良く、ブラソ美しさが光った。
◎松本千晶:前回(ソレア・ポル・ブレリア)の時よりはるかに落ち着いてバックとも上手くからんでいた大人の踊り。
岩泉美帆:エレガンシアでメリハリのある渋い踊り。
◎土方憲人:マルカーヘがすごく良い。サパテアードがリンピオ。ブラソがとても表情豊かで粋さがあった。
久保田晴菜:高い集中度、上体使いが上達した。
黒木珠美:自分の個性を良く活かした振付。盛り上がり不足が残念。
近藤朔:たゆまぬ努力の成果が見られました。益々フラメンコに向き合っていらして下さい!

<バイレ・群舞部門>
Estudio El Patio:3人の実力が揃っていて、カンテとのからみも良かった。シンプルだがムイフラメンコな振付。もっとはじけて下さい。
奥野裕貴子フラメンコ教室LOS TARANTOS京都:少し荒けずりだが個性的な踊り手達。ドラマティックな構成だったが、こちら側に伝わるものが少し不明瞭でした。
屋良有子フラメンコ教室:始まりの無音の踊りがすばらしく美しい!曲をよく理解した振付、構成が良かった。実力のある踊り手達。
◎稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団:各人の実力が高く、構成、フォーメーションの上手さ!フラメンコの群舞としてすばらしかった。
Los montañeros:活き活きと踊られました。ソロ・デ・パソのリズムが不明確でした。何故、男性名詞のグループ名だったのでしょうか。

市川惠子(舞踊家)[Bs,Bs]

この新人公演に臨まれ、本番に向かって自分のフラメンコを見つめ直し、立ち向かい、頑張ってこられたこと自体が、必ず皆さんの成長につながっているのではないでしょうか。
今年もレベルが高く、技術や身体能力の優れた方がたくさんいらっしゃいました。また、技術的にはまだ課題があるものの、個性豊かな方、フラメンコとしての味を感じる方、心意気を見せてくれた方もいらっしゃいました。それぞれが自分の信じる道を、真摯な気持ちで、この大舞台で立派に踊りきったことが、これからのフラメンコ人生の大きな糧となることと思います。
再挑戦の方々の成長もめざましく、その努力に胸打たれたものの、フラメンコとしてもっと強烈に迫ってくるものが見たいと思いました。よりフラメンコとしての感動を追い求め、奥深いところから込み上げてくる思いを大切に、自分自身のフラメンコを見つけていかれることを願っています。

私が奨励賞に推薦した方々は、
★福島沙弓:ムイフラメンカ!昨年には感じられなかった重みとアイレが出てきた。前からパワフルで個性的だったが、そこに表現力と存在感が加わった。終始ゆるぎない空気感があった。
★牛田裕衣:個性溢れる、存在感のある印象的な踊り。唄振りがすごく良い。足もしっかりしていてコンパス感もある。気迫に満ち、アイレもある踊りに惹きつけられた。
★小林成江:身のこなしが美しく魅力的。腰も落ち着いている。静けさの中に何か伝わってくるものがある。情感がある質感の良い踊りに見入ってしまった。どこかに強烈に迫ってくるものが欲しい。
★平尾華子:切れ味バツグン。隙のない動き。魅力的でとにかく上手い!優雅でパワフルなその踊りに惹きつけられた。あとはフラメンコとして何か強烈に訴えかけてくるものがいる。
★川松冬花:良かった!一時も緩まない空気感。身体の締まった込める力のある良い踊り。重みもうねりもあり、内から発するものに胸が詰まった。思いのたけを踊っている。素晴らしいシギリージャに見入ってしまった。感動!
★松本千晶:上手い!既にベテランの風格、最後までじっと見てしまった。しっとりとした重みのあるびくともしない腰の据わった良い踊り。唄は一度締めて。上質な踊りなのだが、盛り上がりに欠けるので、もっと感情をあらわにして爆発するところを見せて。

次点で推薦した方は、
☆土方憲人:こんな男性舞踊手が出てきたのかと嬉しくなった。面白く味があり不思議な魅力がある。何か匂いがある。そして新鮮。事も無げなブエルタ、切れ味の良いピエ。瞬発力のあるレマーテ。後はどしっとした重みが出ると良いのでは。今後の成長が楽しみ。

特に印象に残った方々は、
●佐藤理恵:大きく舞台を使いこなし、唄もギターも良く感じて、ドラマチックな振りを自分のものにしている。足もパワフルでクリア。静けさ、するどさもある良い踊り。心に沁みたソレア。最後まで頑張って。
●岩泉美帆:お見事。ほとばしるエネルギーを感じた。一時も緩まない空気感、手足が長く、美しい身体を活かしたうねりと含みもある唄ぶり。切れ味の良いエスコビージャ。タンゴも素敵。緩急のある踊りに惹き込まれた。唄の最後を大切に。
●久保田晴菜:優雅でしなやか。隙のない踊り。落ち着きも出て、しっとりとした女性の魅力を感じた。技術もしっかりしていて足もクリア。舞踊的に優れていて上手いのだが、もっと唄やギターを感じてフラメンコとして迫ってくるものが欲しい。

次に印象に残った方々は、
◎大野環:ずっと頑張ってきたことが実になった。今までで一番良い。身体も締まってきたし、落ち着き、重みが出てきた。大胆なはっきりした振りが個性にマッチしていたが、目線が決まっていないのがとても気になった。
◎内田好美:気合は充分に伝わった。アイレもある。ピエもしっかりしていて印象的。身体は良く使っているが、情感を大切に。
○佐渡靖子:マントンも踊りも技術的には優れているが、バタならではの優雅さ、アレグリアスとしてのアイレが欲しかった。激しさが慌しく見えた。もっとしっとりした方があなたの美しさが映える。
○青木千鶴子:足はしっかりしていて身体も使っているが、盛り上がりに欠けたので今年は全体に弱く感じた。
○山中純子:始まりは良かった。足もしっかりしていて、コーラさばきはきれいだが、シギリージャの重みが欲しい。バックで決めすぎている。
○土井わかな:独創的で素敵だが、色々し過ぎて少し軽い。良いものを持っているので頑張って。
○森里子:晴れやかでアレグリアスらしく良いのだが色々し過ぎと、バックが作りすぎているのがマイナスでは。
◎渡辺なおみ:個性が印象的。気迫に満ちた踊りでうねりも重みもあり良かった。激しさが全面に出ているので、どこかゆったりした部分が欲しい。
○廣木恵理:荒削りだが、面白い。拙いところもあるがアイレがあり、何か味がある。どこかグッとくる程の強いものが欲しい。シンプルなプーロな踊りをする人は少ないので頑張って欲しい。
○西山依里:すごく独特だが見ていて楽しい。リズムもしっかりしていて、ずっと自然体。そんなに動かないで、どこかグッと締まったところがあると良いのでは。
○藤本ゆかり:アイレもあり訴えかけてくるものがあるが、もっと腰を据えて、情感を大切に。最後の足が残念。もっとシンプルな振りのどーんとした踊りが見てみたい。
○久貝輝代:頑張りを感じる力強い踊りだが、身体の軸がまだ甘い。肝心のジャマーダが弱いのが残念。深く心に沁みるようなところが欲しい。マノも大切に。
○東田美智江:真摯でひたむきな思いは伝わった。熱さも気迫もあるがまだ硬い。抜くことも大切。うねり・含みが振りではなく、自分の内から滲み出ることを期待したい。
○矢村万意子:足強い。粗いが迷いのない良い踊りに伝わってくるものがあった。バックと一体感があったが、ずっと必死な印象。
○菊池麻由美:個性的で不思議な魅力に惹きつけられた。見てしまう。長身を活かしたダイナミックな踊り。マノをもっと使って、最後の頑張りは大切。
○新海玲子:小さい身体で力強く無駄のない踊り。テクニックもペソもある。表情に変化がないので、感情の起伏が伝わってこない。
○津田可奈:切れがあり、足もしっかりしていて上手いのだが、腰が落ち着いてないので流れて見える。起承転結を大切に、自分でもっと音頭を取って。
◎小坂みはれ:印象的な始まり。パワフルで重みも切れ味もある。表情も豊かで、グッと上手くなったと思うが、何か物足りなさを感じた。
○古郡美弥:個性的で面白い。表情豊かで可愛く魅力的。唄振りは良かった。身体は利くが、エスコビージャの表情が真剣すぎてマイナスに。後半振りがてんこ盛り過ぎたので、慌しく感じた。
○柴田千穂:静かな重みと込めた力のある良い踊りなのだが、伝わってくるものが物足りない。素敵な振りなのだが、凝り過ぎて何か小難しく感じた。
○黒木珠美:以前の華やかさとは違う静けさの中の強さに惹かれた。雰囲気もあり何か心に沁みたが、少し腰が浮いてるように感じた。後半に少し空気がたるんだのが残念。

今後に期待したい方々は、
□近藤綾香:身体は利くが、表現が大げさすぎるのでは。面白い個性はあるが、ソレアらしさについて考えて。
□佐藤哲平:熱さとひたむきさに惹かれ好感が持てた。ブラソとマノがきれい。軸と重みを意識してこのまま精進して。
□石川雅子:雰囲気があるがジャマーダが弱く、盛り上がりに欠けた。
□鈴木雪花:印象的な始まり。アレグリアスとしての良さはあるが、締りがなく、何か物足りない。
□本多清見:良いところもあるが、一本調子に見えるので、激しいところも欲しい。
□瀬﨑慶太:真っ直ぐな気持ちが伝わった。だいぶ身体がしっかりしてきて良くなっているので基本的な力を身に付けるよう頑張って。
□石塚真理:ちゃんと踊っているがおとなしい印象なので、どこか強烈なところが欲しい。ブエルタが甘く、ジャマーダが弱い。
□坂本恵美:始まりが良かった。踊りに華があるが、少し慌しく感じた。コーラのさばきだけでなく、上半身の優雅さ、マノを大切に。
□李成喜:マントンさばきはきれい。足も奏でているが、コンパスの締め・アセントが弱いので流れて見える。伸びやかだがフラメンコとしての力が要る。
□近藤朔:技術的にはまだ拙いと思うが、年を重ねたからこその味を感じた。宙を掴む腕、一点を見つめる目。フラメンコに対する真摯な気持ちが伝わってきた。

今年の群舞はバラエティに富んでいて見ていてとても楽しませていただきました。ですが、奨励賞を選ぶのはとても難しかった。個性豊かで特色もあるが、素直なフラメンコ性について考えて欲しい。今後への期待を込め、次点としてEsudio El Patioを推薦。
☆Esudio El Patio:ソレアの空気感が出ている。3人の一体感もあり好感が持てた。まだ拙いが丁寧に踊っており、ひた向きな熱い心意気に惹かれた。

印象に残ったのは、
○LOS TARANTOS京都:新人の先生ならではの斬新な演出。ドラマチックで面白かったが、フラメンコとしてタラントとしてはどうなのか疑問が残った。
○屋良有子フラメンコ教室:美しいドラマチックな始まり。モダンダンスのような振付の場面は素晴らしく、良く踊ってはいるが、まだフラメンコとしての身体が出来ていない。
○稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団:全体に抑制されたものを感じたが、こういう振付は本当に踊り手の力が問われる。実力を持っている方が多いはずなので、もっと一人ずつの個性を活かしたほうが良かったのでは。踊りそのものよりも構成で見せられているような気がした。服部亜希子さんは表情も良くフラメンコ性を感じた。

フラメンコはじっくり踊りこんでこそ、自分のものとなりその人の味が出てくるものではないかと思います。皆さん器用すぎて深く知る前に次の曲や次の振付へと行っていませんか。それではフラメンコの奥深いところにいつまでたっても触れることが出来ないのではないでしょうか。しっかりとしたフラメンコとしての身体ができている方は良いのですが、色々し過ぎると慌しいだけで、よほど身体能力に優れていなければ、振りが詰めすぎで、あれやこれやしても、また大げさすぎても、かえって逆効果な気がします。まだ拙い方は、奇をてらうことなく、もっと普通のマルカールを素敵に踊れるようになる努力が必要かと思います。もっと一振りを大切にしなければ、じっくりと取り組んでいかなければ、頑張っているのだけれど一本調子に見えたり、何も心に残らなかったりするのでは。いくら身体を動かしても、フラメンコとして踊らなければ何も意味がありません。今年は振付も工夫が多く、よくこれだけ色々と考えられるものだと感心しますが、もっとシンプルな振りをフラメンコならではの表現で感動させてくれる方の出現を熱望しています。

EL・POKA岡崎(舞踊家)[Bs,Bg]

<バイレ・ソロ部門>
今回私が気に掛かった12人の方々。
始めに津田可奈さん、相変わらずギター、カンテ、振付が一体になっていて、お互いに会話が出来ていたので、観ていて気持ちがよかったし、すばらしかったです。大野環さん、衣裳のセンスも良く、マントン裁きも、リズムもきれいに乗って見事だったし、音の強弱さもすごくうまく感じました。土方憲人さんは場慣れした雰囲気を全体に感じたし、佐藤理恵さんからは、綿密な打ち合わせの上、舞台機構を知り尽くした上、照明まで見事に計算に入れられていましたね。踊りはもちろん素敵でした。久保田晴菜さん、衣裳のセンスも良く、清楚な雰囲気も、踊りも、私は好きでした。頑張ってください。土井わかなさん、小柄ながら大舞台に負けることなく、振付も自分のものにしていたし、音の強弱、またバックの人達とも、きれいに打ち解けていました。小林成江さんも文句無く良かった印象が残ります。岩泉美帆さん、今回は少し体調が良くなかったのかな!でも優秀な成績を残すところが流石です。小坂みはれさん、構成、演出がすばらしい中、堂々と踊りこなしている姿は立派でした。最後に森里子さん、間違いなく無くすごいスタッフ達に囲まれ、最高の条件の中で育っていると思われます。踊りも笑顔が良く、マノが途切れる事なく、きれいでした。このまま頑張ってください!楽しみにしています。

<バイレ・群舞部門>
私が思うに、群舞は第一に作者の創作力が問われること。創作に必要な事は音楽を一体化した振付、作者の意図。いつもほしいと思っているのは、なる程と思える題名!これが観る側にしてみたら一番ほしい。今回もある作品はレベルの高い踊り手達が楽しそうに踊っていましたが、こちら側まで伝わって来るものが、私にはほしかった。その点だけで言うと、フラメンコ大好きな3人が、群がって、まるで蝶がフラメンコと言うお花畑で舞っている様な姿を観せつけられた時、何故か急にほのぼのとさせられ、一見に値しました。私はいつも、群舞のどこを観て価値を決めるか、今回も悩みました。でも群舞を観るのは好きです。毎回楽しみに期待しています。今回出演の皆様、ありがとう!お疲れ様でした。

東仲一矩(舞踊家)[Bs,C]

<バイレ・ソロ部門>
まずは奨励賞を受けられた方々、おめでとうございます。
「土方憲人」さん、素晴らしい踊りでした。基本がいかに大切かという事を観せてくれました。その上に自分の表現があるという事を。
「小林成江」さん、フラメンコの持っている重さをしっかりと観せてもらいました。作品の完成度は素晴らしいものでした。
「岩泉美帆」さん、人柄が踊りの中に見えかくれして「おもしろい」構成も素晴らしいと感じました。
「川松冬花」さん、シギリージャを自己のものとして、自己の世界を創っていく方向性を感じました。
「福島沙弓」さん、肉体から発するシンフォニーを感じました。タラントを自分のものにしている表現は素晴らしいものでした。
「佐藤理恵」さん、完成度の高い作品でした。ペサがあり、個性がしっかりと出た踊りでした。
『準奨励賞』の「平尾華子」さん、アレグリアスをパンタロンで踊る方を観たのは初めてです。ピルエットのスピード感、ピエの強さを感じました。

奨励賞に選ばれなかった人で私が素敵と思った方々を連記いたします。
「大野環」「内田好美」「西山依里」「藤本ゆかり」「菊池麻由美」「柴田千穂」。彼女達には、私的意見として素敵な舞を観せてもらいました。

<カンテ部門>
「山田ナオリ」さん、ドローレスのシギリージャを忠実に唄われました。次はリズムの必要な唄を聞きたいものです。
個人的には今回の「中山えみ子」さん、マイテ・マルティンにスペインで習ったという結果が出ていました。会場に響く体勢を考えるともっと良いのかなと思います。(小柄なので)
「金沢賢二」さん、音程は良く、声ののびも良かった。スペイン語がはっきり聞こえれば。
「川村麻利子」さん、声量があって良く声が飛んでいた。
「占部智恵」さん、自分の唄にしてブレスが続いた。腹式で唄っていた。

ロシオ・ロメロ(舞踊家)[C]

カンテの会の選考というものの難しさは、バイレのそれ以上だと思います。カンテはフラメンコの中で最も難しいジャンルです。したがって、これを習得しようとする歌い手たちの要する努力は大変なものです。たんにメロディーを覚え込むだけでなく、言葉をはっきりと発音することを会得せねばならないのですから。

選考にあたり、私が評価の基準としたのは、出場者たちが、それぞれに取り上げて歌ったカンテのパロ(形式、曲種)を、各自、いかに深く識り、理解しているか、ということでした。ともかく、出場者たちが示されたカンテへの愛情に、(スペイン人として)私は感謝を捧げたいと思います。そして、彼らがこれからも日ごとに研鑽を重ねられますよう、励ましの言葉を贈ります。

※訳:濱田滋郎

菊地裕子(評論ライター)[Bs,Bg]

今年のバイレ・ソロ部門で素晴らしいと感じた人は8名。選考会ではその中から6名を推薦した。その差は大きくはなく、今回、私が文句なく奨励賞と思ったのは、 廣木恵理さんと土方憲人さんの2名で、あとはボーダーライン上にいた。廣木さんに関しては、その突出したフラメンコ性に感動し、土方さんに関しては、既にフラメンコ舞踊手として突出していることに感銘を受けたが、他の方々は「突出」ということがなく、総合的な判断が働いての選出だった。私見だが、フラメンコのバイレ・ソロが目指すのは、唯一、その人だけの印のある踊りだと思う。これで新人公演を卒業する人も、これからチャレンジする人も、そのままでは多くの舞踊手の中に埋没する可能性が多々あることを、ぜひ忘れずにいて欲しい。
しかし、いつものことながら、何年もチャレンジしている出場者が成長している姿を見るのは、何より嬉しい。今年は、バタ・デ・コーラやマントン、パリージョなどを使った演目が増えたことも喜ばしかった。受賞云々に関係なく、こうした技術が受け継がれていくことも大事なことだと思う。

群舞部門は、群舞に新たな指標を示そうとした作品や、まっすぐにひとつの指標を突き進んだグループなど、興味をそそられるものがほとんどだった。ただ奨励賞の選出ということになると、総合的にはどのグループも過去の奨励賞受賞作品に迫る作品とまでは言えず、推薦なしとしたが、正直言って、今回はどのグループも出演者の精進のあとが心地よく映り、フラメンコを踊ることの楽しさや素晴らしさを伝えてくれる作品が多く、観る者にとって大きな喜びだった。こういう作品が、新人公演にとどまらず、アニフェリアにどんどん出てくれるようにならないものかと思う。
最後に、地方からエントリーした出場者たちに声を大にしてエールを送りたい。そして出場した全ての人に、お疲れ様! ありがとう!

(推薦=奨励賞に推薦、◎=特別評価、○=高評価、△=今後に期待)

<バイレ・ソロ部門>
【21日(金)】
△新井ゆふ子/最初の唄振りは、たっぷりとした感じで好印象。安定感はあるが決め手に乏しい。もっと沢山のエネルギーで踊って、表現に緩急を。
△近藤綾香/よく踊れていたが、唄振りがやや気持ちと離れた感じで、観るほうに伝わって来ない。リズムを意識した振付の部分は、あと0.1秒速く動いて欲しい。
△下山明子/フラメンカな魂を感じた。ただ動きに硬さがあり、ノリが伝わって来ない。また、足音がカホンの音に負けて、さっぱり聞こえなかった。足を打つ立ち位置を考えて。
◎福島沙弓/メリハリの効いたタラント。見応え満載で、非常に秀逸!あとは、コレだけは誰にも負けない!という部分をもっと磨いて、あなたらしさを究めて。
△大神明希/けれん味のない、爽やかで健康的な印象。筋の良さを感じる。シレンシオが美しかった。ただし内側のエネルギーがまだ小さい。頑張れ!
◎(推薦)大野環/フラメンカなバンベーラ。見せ場を上手く配して、見飽きさせない。安定感が増し、さらに自分らしさがギュッと濃縮されていたのが非常に魅力的だった。
◎内田好美/大きな空気感を持ったソレア。エスコビージャの入り方が粋で、よく聴かせた。ただ、もう少し抑制が外れるようなポイントがあっても良かったかも。
△佐渡靖子/身体がよく動く。ラインが美しい。マントンとバタを選んだのは、あっぱれ!今年は少しバタバタした印象だったけど、ぜひ修練を重ねて再挑戦を。
△青木千鶴子/安定感があり、昨年より成長した。ただ、今年は動きが逆にチマチマして見えた。ペソをしっかり持って、どこを膨らますか、緩急をどうするか、研究を。
○本多清見/よく研究していて好感度大。けれども、自分らしさがまだどこか奥のほうに潜んでいる感じ。感じたものが出るという道筋を、自分の中で探って。

【22日(土)】
△牛田裕衣/上手いが、正面を切るパソが多すぎてニュアンスの面白みが伝わりにくい。個性的な部分はgood!足がやや走りがちなところに気をつけて。
△土井わかな/空気感がある。唄を聴いて踊ろうとしているのもgood!願わくば身体にもっと強さを。また、動きは中の深いところから出てくるものであって欲しい。
○小林成江/コンパス感がよく、フラメンコしている。大輪の花の魅力があるが、それにのみ頼らずに、もっと観る者を突き動かすような大きなエネルギーを内側に蓄えて。
○森里子/芸達者。見どころ満載で、小気味良さ、楽しさがあちこちに。あとは振付・構成にさらに工夫をして鮮烈な印象を。
△渡辺なおみ/表現力はあるが、時折、オーバーアクション。中を大事に踊らないと、客を置いてけぼりにした上に、足も動きも1本調子に映ってしまうかと。
◎(推薦)廣木恵理/Ole!これぞフラメンコ!コンパスに乗って、マルカールとジャマーダとちょこっとしたエスコビージャ以外に何かあったっけ?私には途中からアンヘリータ・バルガスが踊っているように見えた。素晴らしかった!
○平尾華子/舞踊性でいえば、今回、最も上手なレベル。緩急もあって、見せ方も上手い。けれどもコンパス感や諸々の味わいが足りない。フラメンコ的感興の研究を。
◎(推薦)藤本ゆかり/深みがあり、大変に進歩を感じたひとり。自分の印をちゃんと持って踊っていたことに、非常に感銘を受けた。派手さはないが、誠実なフラメンコ。
○川松冬花/抑制が効いてコンパス感もあるが、なぜか唄への共鳴が感じられない。一定の緊張感があり、作品としての完成度は高いが、全体に平板な印象に。観ている者を巻き込んで感性の交感をするという認識をぜひ。
△久貝輝代/自然な感じで唄と呼応している感じは良い。あとは身体に強さがもう少し。このままでは動きが単なる振付で終わって、途中から退屈に。
○矢村万意子/しっかりツボを押さえた踊りで、上手さが光る。だが沢山、色んなことがあった割には、決め手に欠けた。惜しい!
△菊池麻由美/長いブラソが雄弁に独自の魅力を見せてくれて表情豊か。あともうひとつ強さが出ると、もっと表現の幅が広がるはず。
△新海玲子/振付に新奇さはないが、バックと呼応している雰囲気が心地よい。あとは自分らしさをどう深めるか。自分の好きなパソをどう研ぎすませていくか。
○坂本恵美/バタ・デ・コーラが美しく舞い、全体にメリハリがあって楽しかった。かなりの舞踊センスを感じるが、アレグリアスなら、どうしてもコレ!という何かをぜひ。

【23日(日)】
△小坂みはれ/気合いが入っているが、全体にエネルギー出力が小さい。身体にバンバン叩き込んで、同時にフラメンコの感性をもっと磨いてください。
◎(推薦)佐藤理恵/王道の大きなソレア。フラメンコの感性に満ちた唄振り、メリハリの利いたエスコビージャ。シンプルな中にその人そのものがにじみ出てきて惹き付けた。
◎古郡美弥/バランスの取れたアレグリアス。舞踊手としてのセンスの良さを感じた。軽々と踊っているのが良い!あともう少しフラメンコ性が高めて欲しい。
△松本千晶/唄から歩き出して足に入る出だしは、かなり良かった。もうひとつ求心力が欲しい。ブエルタ頑張れ。
◎(推薦)岩泉美帆/自発的な動きが印象的。長い手が緩みもなく生きた表現をする美しさ!全体に緩急があり、すっかり自分のものとして踊っていて飽きさせなかった。
◎(推薦)土方憲人/華がある。始めから終わりまでフラメンコとして文句のつけようのない格好よさ。しかも自分のスタイルを持っていて、スター性まで感じさせる。
○久保田晴菜/よく練られたタラント。今までの彼女の踊りの中で一番良かった。しかし、もっと足にも動きにもコンパス感が欲しい。客席とその心地よさを共有できるまで。
○黒木珠美/踊り巧者。曲をよく捉えているし、見せ方も心得ている。けれども、最終的にあとひとつ心に迫らないのはなぜか。もっと痛みを抱えて踊ること。そう思う。

<バイレ・群舞部門>
○Estudio El Patio/舞踊手のレベルは突出して高いわけではないと思うが、フラメンコの感興が凄い。バイレ・ソロが自分の身体ひとつでカンテやギターと呼応しているのに対し、彼らはフォーメーションで呼応した。ソレアの骨の部分を、3人が増幅装置のように演じて胸を揺さぶった。個人的には準奨励賞!
△奥野裕貴子フラメンコ教室LOS TARANTOS京都/赤い衣装の3人と青の衣装3人が対峙するという形で始まり、いくつかの葛藤の末、和解を迎えるという筋書き。舞踊レベルはまずまずだが、その対決や葛藤のありようが演技的に今ひとつリアリティに欠け、心に迫るまでに至らなかったのが惜しい。要研究。
△屋良有子フラメンコ教室/全員が白一色の美しさといい、センスの良いステージングといい、創り手の美意識の高さを感じた作品。音楽性に特化した舞踊作品として受け止めたが、そうなると、個々の舞踊手にかなりの舞踊レベルが要求される。個々の舞踊手の身体性や舞踊レベルを生かすような方向性も探ってもらえると嬉しい。
△稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団/硬派なタンギージョ。舞踊レベルの高い人たちが、フラメンコの「内圧と間(ま)」を追求しつつ、ユニセックスなダンスを披露。奨励賞を受賞したが、私は、8名ものエネルギーが思ったほど伝わってこないもどかしさの方が大きかった。また個人的にはタンギージョらしい大人の茶目っ気が皆無だったことも不満のひとつ。ともあれ、面白いチャレンジだったことは確かで、奨励賞受賞に異議はない。

瀬田 彰(ギタリスト)[G]

今回の私の採点順位は1位・木村さん、2位・宇田川さん、3位・森谷さんでした。
以下、出演順に印象を述べます。(敬称略)

1番・森谷(タランタ):セラニート等の伝統的なファルセータで組上げたタランタを明瞭な音で演奏し、いぶし銀の様な風合いを持つ良い演奏だった。しかし後半のタラントに転じてからは単調なリズムで残念だった。

2番・和田(ソレア・ポル・ブレリア):一風変わった響きのE♭調で演奏したソレア・ポル・ブレリア。ビセンテ・アミーゴ風の雰囲気が出ていて良いのだが、最後の3連音ピカードがもっと決まれば良かった。

3番・内山(ブレリア):モデルノのコンパス感を持ったC♯調のブレリア。各ファルセータ中のメロラインの表現が弱いので全体に不明瞭な印象を与えてしまったのが残念。

4番・藤嶋(アレグリアス):
モデルノ系のアレグリアで曲のセンスは良いが、音の肌理が揃っていないので不完全燃焼な感じを抱かせてしまう。特に4連音中心のアルペジオを使ったファルセータ部分は音の綾織り感が出てこないので残念だった。

5番・福嶋(ソレア・ポル・ブレリア):
マヌエル・パリージャ風のソレア・ポル・ブレリア。モダンで且つ躍動感有る演奏で良かったが、p,i,m,a,の音量にばらつきがあり特に4連音中心の部分はコンパス感が失われて残念だった。

6番・宇田川(タランタ):
細かいミスタッチはあったが全体としての曲のまとまりやアイレなど、表現には深みがあり良かった。しかし今一つピカードの音に押しがなかったのが惜しかった。

7番・塩谷(ソレア):エミリオ・マジャのソレア。淡々とした演奏スタイルなのか各ファルセータの起承転結がはっきりしていずエネルギーを感じなかった。変奏ごとにメリハリをつけて曲の盛り上がり感を出せたら良いと思う。

8番・木村(ソレア):1/2倍速のような遅いテンポで始まった印象的なソレア。テクニックの偏りもなく、良くソレアを表現していた。曲としての躍動感も有り、当夜1番良い演奏だった。

北井一郎(現代舞踊協会)[Bs,Bg]

ゲスト選考委員として3日間の熱気あふれる舞台を拝見させて頂きました。奨励賞は発表されましたが、それとは関係なく、小生が選んだ上位の方の感想を述べさせて頂きます。

【21日(金)】
〇福島沙弓-手の動きにアクセントがあり激しい情感の表現が光る。
〇内田好美-大人の踊りだが、サパテアドが力みすぎ。硬軟おりまぜたら。
〇青木千鶴子-スタイルの良さが目につく。手の使い方があざかで光る。

【22日(土)】
〇小林成江-長身が舞台に映える。発散するテクニック、雰囲気大人の味。
〇瀬﨑慶太-黒の上下が映える、長身から放つ大人の味。サパテアド抜群。
〇菊池麻由美-腕の使い方が抜群のうまさ。

【23日(日)】
〇岩泉美帆-大人の風格のある踊り。戦後の名手、加藤よう子さんを彷彿させる。
〇土方憲人-スタイル抜群、サパテアドも群を抜くうまさ。踊りの間のとり方もプロの味。
〇佐藤理恵-黒の長衣が大人の風格をかもしコクのある演技が渋い。

皆々の健闘をたたえ、今後の大成を期待しております。

小倉泉弥(専門誌編集長)[Bs,Bg,G,C]

今回初めて選考委員を務めさせて頂きました。2010年から毎年全ての演目を拝見し、自分なりの感想を書き留めていたので、今年も普段どおりの心持ちで臨みました。

ギター部門で僕が投票したのは、塩谷経さんのソレアでした。当初僕のメモには、「賞」という文字を、森谷忍さんとひどく悩んだ末に木村尭さんに付けていました。ですが、投票のとき、どうしてもこの曲を推したいという頭の片隅の感情が湧き出ました。感激の大きさは森谷忍さんのタランタが、テクニカは木村尭さんのソレアが上だった。森谷さんのタランタ、あの音色に辿り着くのは本当に得がたいことでしょう。伝統を愛する姿勢も堪らなくステキです。木村さんのテクニカ、まさに奨励賞に相応しいと敬服します。でも塩谷さんは、きっともっとこの曲を上手に弾けるようになるはず!あの瞬間、思いがけずそんな期待を込めました。それと同時に、投票の難しさを思い知りました。

続いてカンテ部門ですが、僕が投票したのは、熊谷善博さんのソレアと、川村麻利子さんのアレグリアスです。熊谷さん、キャラクターが規格からはみ出ていて、それが芸術的で楽しかった!川村さんは、冒頭の「ティリティ……」がキレイに聴こえました。あと、田中敏郎さん、ずいぶんレベル・アップしたのではないでしょうか。その姿勢にグッと来ました。

バイレ群舞は、屋良有子フラメンコ教室と稲田SUSUMUjeres内圧と間舞踊団で悩んだ結果、内圧と間に入れました。くさびを打ったように存在した二人の男性舞踊手が、集団を引き締めていました。

バイレソロは以下の通りです。津田可奈さんのソレア・ポル・ブレリアは、ブラソの表現もリズムに遅れることなく、また全体に緩急がついていて、踊り慣れている印象を受けました。古郡美弥さんのアレグリアスは、しっかり骨があると感じました。岩泉美帆さんのタラントは軸ブレがなく、安心して観られました。土方憲人さんのシギリージャは、息つく暇も無い面もありましたが、コンパスに乗ってビシバシ決まって面白かったです。さらなる洗練を希望します。久保田晴菜さんのタラントは、可動域の広いブラソと長い四肢を駆使した舞踊が見事でした。黒木珠美さんのシギリージャは、技術、表現がハイレベルと感じました。

微力ながら、とにもかくにもまずコンパス、次に技術と表現に加え、演者はどんなフラメンコが好きなのか、そして動機となる感情に着目したつもりです。しかしそれでも悩みました。小林成江さんのタラントが受賞して安堵したのも事実ですし、平尾華子さんのアレグリアスも奨励賞を受賞しておかしくなかったと思います。

さて、新人公演は、コンクールと呼ぶには情があり、フェスティバルと呼ぶにはストイックで、発表会と呼ぶにはレベルが高いです。奨励賞を目指す方もいれば、夏の風物詩となる方もいる。いろいろ考えましたが、やはり「新人公演とは何か」を決めるのは、出演者だという結論に達しました。選考委員として、日本のフラメンコの発展にわずかばかりでも貢献できたとしたら、幸いです。

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